マーケティングオートメーションは、アメリカで急速に導入が進んでいます。 Social Media Today社の調査 (英語) によると、2019年には75%の企業が「利用している」と答えています。

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一方、 Mtame社の調査のアンケート調査 によると、日本では94%が「必要ある」と答えつつも、13%の導入率に留まっていることが報告されています。

マーケティングオートメーションは「大企業向けではないのか?」「高額なのでは?」「使いこなすのが難しいのではないか?」と考えるマーケティング担当者のために、本記事ではマーケティングオートメーションとは何かを押さえた上で、導入事例や導入時のポイントや注意点を紹介していきます。

マーケティングオートメーション基礎ガイド

マーケティングオートメーション(MA)とは?

マーケティングオートメーション(MA)とは?1

マーケティングオートメーションとは、有望見込み客を獲得し、Webサイトやメールを通じたマーケティング施策を自動化するツールです。幅広い機能を持ち、BtoB、BtoCといったビジネスモデルを問わず活用されています。

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マーケティングオートメーションの4つの役割

マーケティングオートメーションは以下の4点で大きな役割を果たします。

  1. リードジェネレーション(有望見込み客の創出)
  2. リードナーチャリング(有望な見込み客への醸成)
  3. リードクオリフィケーション(購買意欲の醸成された有望見込み客の発見)
  4. リードマネジメント(3つの施策の効果を測定・分析)

WebサイトやSNSを通じて自社の存在を知ったユーザーとの接点ごとに、マーケティングオートメーションの役割を整理しましょう。

マーケティングオートメーション(MA)とは?2
 

有望見込み客を獲得する「リードジェネレーション」

リードジェネレーションとは、リードを獲得するための一連の施策を指します。

マーケティングオートメーションは、WebサイトやSNS、Web広告などのフォームと連携させることで、自社と接点を持ったユーザーを最初から管理することができます。

マーケティングオートメーションと顧客とのやりとりの情報を集約して管理するCRMを連携させれば、入り口から出口まで顧客の一元的な管理と分析が可能になります。HubSpot CRMについては 「多様な業務に効果を発揮する無料のCRM」 で詳しく説明しているので、参考にしてください。

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有望見込み客を醸成する「リードナーチャリング」

ナーチャリングとは「醸成」という意味です。自社とコミュニケーションを開始した有望見込み客に対して、有益な情報を伝えたり、問題解決に役立つ提案をすることで、有望見込み客の購買意欲を少しずつ高めていきます。

この段階で、マーケティングオートメーションは大きな力になります。なぜなら、どれだけ有望見込み顧客がいても、一人一人の状況に応じたコミュニケーションや提案ができるからです。

有望見込み客が関心を持ちそうなコンテンツの選別、動画やウェビナーなどさまざまな施策提案を手動で行うと膨大な労力が必要となります。マーケティングオートメーションでは、あらかじめ設計されたシナリオに沿って、Webサイト上での行動履歴から、すべて自動で行ってくれます。

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購買意欲が高まった顧客を見つけ出す「リードクオリフィケーション

リードナーチャリングのプロセスでコミュニケーションを重ねて問題の解決策を見つけられた有望見込み客は、販売プロセスへと誘導します。営業担当者が商談で成約まで進めるように、購買意欲の醸成された有望見込み客を見つけ出すのがマーケティングオートメーションの役割です。

リードクオリフィケーションとは、有望見込み客の「購買意欲を確認する」「購買意欲の高まりを数値化し分類する」ことを指します。購買意欲の高まりを数値化することをスコアリングと呼びます。あらかじめWebサイトのこのページを見たら〇点加算、ウェビナーに参加したら〇点加算といった形で設計します。

スコアリング設計はシナリオ設計と並んで、マーケティングオートメーションのカギとなる部分です。
 

個々の施策の効果を測定・分析する「リードマネジメント」

リードジェネレーション、リードナーチャリング、リードクオリフィケーションの3つの役割を統合するのがリードマネジメントです。 個々のマーケティング施策の効果を測定し、分析するのがリードマネジメントの役割です。

マーケティングオートメーションにはレポート・分析機能が充実しています。各段階の定量的な評価を踏まえて、全体的なマーケティング施策の評価が行えます。
 

BtoBとBtoCでは異なる、マーケティングオートメーションの役割

これまで見てきた「購買意欲の高い見込み客を営業に受け渡す」というマーケティング戦略は、主にBtoBビジネスで取られています。

BtoBビジネスで扱う商品やサービスは、大型で高額、購入決定までに検討する時間もかかります。そのためBtoBビジネスでは、WebサイトやWeb広告、またオフラインでの展示会やセミナーなどを通じて有望見込み顧客を広く創出し、信頼関係を深めながら購買意欲を醸成するマーケティング戦略が取られます。マーケティングオートメーションは戦略を効率的に推し進める上で、重要な役割を果たします。

マーケティングオートメーションが力を発揮できるのはBtoBばかりではありません。オンラインショッピングの割合が急速に増えつつあるBtoCビジネスでも、重要な役割を担っています。
 

BtoC編「顧客との信頼関係を深め、コンバージョン(CVR)を最大化する」

BtoCでのマーケティングオートメーションの中心的な役割は、顧客との信頼関係を深め、登録や購入といったコンバージョン(CVR)を最大化することにあります。

BtoBに比べ、BtoCの顧客はあらゆるニーズを持っており、また様々な経路から自社商品にたどりつきます。BtoCに求められるマーケティングオートメーションの役割は以下の3点にまとめることができます。

  • 膨大な顧客情報を管理するCRMと連動し、顧客一人一人に適切なメッセージを送ること
  • 様々な流入経路からの顧客に対応すること
  • 顧客の多彩な行動に合わせて、複数のシナリオを用意すること

顧客は一方的に流される商品情報だけでなく、複数のWebサイトを訪れ、価格を比較し、SNSでクチコミも確認してから購入を決めます。またオフラインから得た情報もオンラインと連動させつつ活用します。

そのためWebサイトの閲覧履歴やWeb広告のクリック率、興味のある商品や購入歴などの顧客情報をCRMで管理し、マーケティングオートメーションと連携させることで、顧客の好みや関心にジャストフィットした施策を取ることができます。
 

マーケティングオートメーション導入の成功事例5選

国内大手、スタートアップ~外資系SaaS企業までマーケティングオートメーションの成功事例を紹介します。
 

BtoC事例 キリンオンラインショップ DRINX

キリンオンラインショップ DRINXは、国内屈指の飲料事業メーカーであるキリンホールディングス傘下のECサイトです。

DRINXでは顧客へのサービス開発などを優先したため、顧客向けのメール配信などはアウトソーシングで実施していました。配信用のメールの作成は自社の事業部が行い、メール配信先のリストはシステム会社が担当、メール配信作業はさらに別のコールセンターというシステムを取った結果、

「だれが/何を/いつ/どれだけ配信したか」という情報の一元管理はできていませんでした。

そこでマーケティングオートメーションを導入して情報を一元管理することで、顧客のWebサイト閲覧情報も把握でき、顧客とのコミュニケーションも行えるようになりました。
 

BtoB事例  近畿日本ツーリスト

近畿日本ツーリストの法人事業部では、従来1,000人の営業担当者が電話や直接訪問などの手段で営業活動を行っていました。法人案件は1件ごとのカスタマイズが必要で、営業プロセスの効率化を求める声が担当部門から上がっていました。顧客からの申し込みもオンライン件数が増えたこともあり、同社はマーケティングオートメーションの導入に踏み切りました。

導入後は、スコアリング機能を活用し、営業が優先的に面談すべき見込み客を選別できるようになったことで、効率化を達成しています。
 

HubSpotマーケティングオートメーション導入事例

HubSpotが提供するMarketing Hubの導入企業の中から、マーケティングオートメーションを活用し、大きな成功を収めた日本企業2社とアメリカの1社を紹介します。
 

BtoB事例  ビジネスエンジニアリング株式会社

ビジネスエンジニアリング社は、生産管理パッケージの開発、販売を手掛ける企業です。従来はセミナーの実施や展示会への出展を中心に、新規顧客を開拓してきました。しかしアナログ手法に行き詰まりを感じ、HubSpotを活用したインバウンドマーケティングをスタートさせました。

ビジネスエンジニアリング社は、マーケティングオートメーションを基盤として無駄のないマーケティングを行いたいと考えました。そのためHubSpot代理店のサポートを受けつつ、インバウンドマーケティングにシフトしていきます。結果、従来の資料をダウンロードコンテンツにすることで工数を減らしつつ、Webサイトを充実させることに成功しました。有望見込み客創出数を80%増加させるなど、導入1年余りで確実な成果を上げることに成功しています。
 

BtoB事例  株式会社ブイキューブ

ビジュアルコミュニケーションサービスを手掛けるV-CUBEは、従来セミナー、展示会、SEO、SEMなどを通じて幅広く見込み客を獲得していました。

ところが実際に商談へ転換できていたのは「問い合わせ」を通じてコンタクトしてきた見込み客だけでした。そのため、問い合わせ件数が減少すると、営業活動も頭打ちになってしまいます。

マーケティング施策の方向転換の必要を感じたV-CUBE社は、マーケティングオートメーション機能を持つプラットフォームを探すようになりました。最初に使っていたマーケティングオートメーションツールはペルソナやカスタマージャーニーを元にした施策を導入しようとした場合、設定が煩雑になるというデメリットがありました。そこで見込み客のカスタマージャーニーに沿った施策が設定できるHubSpotのMarketing Hubを導入したのです。

Marketing Hubの導入以降は、ブログ、ダウンロードコンテンツの作成に取りかかり、2年かけてコンテンツを充実させました。結果、Webサイト訪問者数2倍、リード数2倍を達成しました。
 

BtoB SaaS事例  HATCH

HATCH社は2011年オランダで設立され、ロシアやバンコク、台湾など世界中に拠点を持つSaaS企業です。IntelやBOSEなどのブランドの製品ページからシームレスであらゆるデジタルタッチポイントで購入できるサービスを提供しています。

HubSpotを導入する以前は、分析ツールやマーケティングツールなど、用途に応じてさまざまなツールを使い分けていました。しかし、オールインワンであらゆる施策を一括管理できるMarketing Hubを導入することで、マーケティングとセールスを一元管理できるようになりました。

マーケティングオートメーションは、Marketing Hub Proの機能のひとつです。Hatch社は、マーケティングオートメーションを利用してリードナーチャリングの施策を行った結果、購買意欲が高く、商談化できる有望見込み客の数が300%増加しました。
 

マーケティングオートメーション導入の5つのポイント

マーケティングオートメーション導入の5つのポイント1

成功事例で紹介した企業のように、マーケティングオートメーションを活用して自社の業績を向上させるために、導入前に押さえておきたい5つのポイントを挙げます。

  1. 導入目的の明確化
  2. 定量的な目標設定と目標達成に向けた戦略策定
  3. 顧客のペルソナ作成
  4. カスタマージャーニーに沿ったコンテンツ準備
  5. 自社に合ったマーケティングオートメーションツール選定
     

1. 導入目的の明確化

自社は何のためにマーケティングオートメーションを導入するのでしょうか? 「便利そうだから」などのあいまいな理由で導入すると、導入して良かったのか、失敗だったのかを客観的に判断することはできません。

目的の明確化は以下の手順に沿って行います。

  1. 自社の現状を振り返り、問題と課題を明確化します。
  2. その問題や課題をマーケティングオートメーションはどのように解決できるでしょうか?

さらにこの目的はマーケティング部だけでなく営業部も共有できるかどうかを確認します。
 

2. 定量的な目標設定と目標達成に向けた戦略策定

目的を踏まえた具体的な目標を設定します。この段階では、実際にマーケティングキャンペーンを行う場合のように定量的な数値目標までは必要ありません。しかし、導入して成功したか、うまくいっていないかの目安になるような、具体的な目標を考えます。

目標を達成できるような戦略を考えます。仮に導入の目的が「顧客とOne to Oneのコミュニケーションを行う」となったとします。そこから具体的な目標を「メルマガの開封率を〇%上げる」としたとします。目標を達成するために、「見込み客が求めるコンテンツをふやす」といった戦略を立てます。

このように事前に「目的→目標→戦略」を立案することで、マーケティングオートメーション導入後の運用イメージを具体的に持つことができます。
 

3. 顧客のペルソナを作成すること

自社が求める理想の顧客像が「ペルソナ」です。ペルソナを名前と顔を持った具体的な人物として作成することを通して、顧客や顧客が抱える問題について深く理解できるようになります。

ペルソナを作成するときは、マーケティング部だけでなく他部署も一緒になって一緒に検討します。顧客にインタビューやアンケート、年齢や役職などの情報を取得などを活用して思い込みによるペルソナにならないように気を付けます。

ペルソナの具体的な作成法とテンプレートを 「バイヤーペルソナの作り方と無料テンプレート」 で提供しています。ペルソナについて知りたい方は参考にしてください。
 

4. カスタマージャーニーを作成し、カスタマージャーニーに沿ったコンテンツを用意すること

カスタマージャーニーとは、見込み客が商品やサービスを知ってから購入を決断するまでのプロセスを「ジャーニー=旅」になぞらえたものです。

見込み客は商品知識がまったくない状態から、「認知段階」「検討段階」「決断段階」というタッチポイントを経て進んでいきます。その進行状況を「ジャーニー=旅」になぞらえたものがカスタマージャーニーです。

カスタマージャーニーを視覚化したものは、カスタマージャーニーマップと呼ばれ、目的やターゲットに合わせたさまざまなマップがあります。

マーケティングオートメーション導入の5つのポイント2

カスタマージャーニーの各段階にある見込み客に対して、適切なコンテンツを企画します。それぞれの段階にある見込み客の興味や関心を引き、ユーザーニーズを満たすコンテンツを幅広く作成します。
 

5. 自社に合ったマーケティングオートメーションツールを選ぶこと

マーケティングオートメーションツールを提供する企業は、日本でも2021年現在HubSpotを含め10社以上に上っています。事前にサポートが受けられるかどうかを確認し、手厚い支援体制が得られるところを選ぶようにしてください。サポートを受けながら、社内の運用スキルを高めていくことが必要です。

マーケティングオートメーションツールの選定については、 「 【徹底比較】マーケティングオートメーションツールおすすめ10選!ツール選択の重要ポイントも紹介 (hubspot.jp)」の記事も参考にしてください。

 

マーケティングオートメーション導入の注意点

マーケティングオートメーション導入の注意点1

マーケティングオートメーションの導入を検討する際に、以下の3点を理解しておく必要があります。

  1. すべて自動化してくれるわけではない
  2. 活用するにはコンテンツが重要
  3. マーケティング部と営業部の連携が必須
     

すべて自動化してくれるわけではない

マーケティングオートメーションは、顧客データの抽出から配信ツール設定、開封判断からスコアリングまで自動で行ってくれるツールです。しかしマーケティングオートメーションを動かすためには、シナリオとスコアリングを設計しなければなりません。

シナリオの作成については「マーケティングオートメーションのシナリオ設計方法5つのポイント」で説明していますので参考にしてください。

施策立案も、全体がうまくいっているかの判断も、マーケティング担当者の役割です。

そのために測定可能な定量的なゴールの「KGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定し」「数値を分析し」、「数値を元にPDCAサイクルを回す」のも人の手で行う必要があります。

導入前には専任担当者を設け、協力体制を構築します。 運用未経験者が専任担当になる場合は丁寧にサポートをしてくれるソフトウェアを選びましょう。
 

マーケティングオートメーションを活用するには、コンテンツが重要

Webサイトに来訪者を惹きつけるためにも、有望見込み客の購買意欲を醸成するためにも、コンテンツは欠かせません。コンテンツにはブログ記事や動画、ホワイトペーパー、eBookなどさまざまな種類があり、施策やターゲットに合わせて企画します。

コンテンツはすべて一から作らなければならないとは限りません。セミナー資料や過去のコンテンツのリニューアル、アウトソーシングすることも可能です。

コンテンツが少ない場合は、マーケティングオートメーションを充分に活用しきれないため、まずは良質なコンテンツをストックするところから始めましょう。
 

マーケティング部と営業部の連携が必須

マーケティングオートメーションは、獲得した有望見込み客の購買意欲を高めます。さらに、有望見込み客の中から優先順位をつけ、質の高い有望見込み客を営業担当者に引き渡すところまでを行います。

営業担当者は質の高い有望見込み客と商談を行います。営業担当者が十分な情報をマーケティングオートメーションやCRM、マーケティング部から得ていると、有望見込み客のニーズに深いところから応える提案ができます。

マーケティング部と営業部が連携しつつ分業体制を敷くことで、成約に至るプロセスが明確になります。入り口から出口までの施策全体を分析・評価し、PDCAを回して次の施策に活用することも、マーケティング部と営業部が連携して行います。
 

マーケティングオートメーションを活用し、One to One マーケティングを実現しよう

本記事では実際にマーケティングオートメーションを導入している企業の事例を紹介しました。紹介した企業の従業員数は、14人から3万人までさまざまです。共通しているのは、自社でマーケティングオートメーションを使って「何を行うか」という目標を明確に持っていることです。

マーケティングオートメーションを導入することで、手動でのメール作成や配信リスト抽出などの工数が大幅に省略できます。その時間を、見込み客を惹きつけるコンテンツの作成、見込み客が求める製品の開発、一連の施策の効果を検討する時間に当てることができます。

一般的に高額だと考えられているマーケティングオートメーションですが、HubSpotの Marketing Hub は、無料で利用できる機能があります。うまく使えるか心配な方は、導入支援やカスタマーサポートを受けながら慣れていくこともできます。まずは小さくスタートさせて、メールを使ったコミュニケーションで効果を上げるところから始めてみてはいかがでしょうか。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

マーケティングオートメーション基礎ガイド

 マーケティングオートメーション基礎ガイド

元記事発行日: 2021年7月06日、最終更新日: 2023年8月10日

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