アップセルとクロスセルは、いずれも顧客単価を高め、LTVを向上させる施策です。ただし、提案する際は、自社の利益のみを追求するのではなく、顧客ニーズを理解したうえで最適な手法・タイミングで実施する必要があります。そのためには、アップセルとクロスセルの違いを理解することが欠かせません。
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本記事では、アップセル・クロスセルの意味とそれぞれの違いを解説します。アップセルとクロスセルを成功させるポイントや行うメリットもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
アップセル・クロスセルの意味
アップセルとクロスセルを使い分けたり、組み合わせたりするには、その意味を理解しておくことが大切です。まずはそれぞれの概要を詳しく解説します。
アップセルとは
アップセルとは、顧客に対しより高価値で高単価の商品・サービスを提案し、顧客単価を高める営業手法です。
アップセルが成功すれば、顧客数を増やすことなく総売上を伸ばせます。人口減少にともない新規顧客を創出する難易度が上がっている現在において、効果的な営業手法です。
また、SaaS系などのサブスクリプションサービスでは月単位・年単位で決まった料金が発生するため、アップセルにより顧客単価を高め、LTVを上昇させる重要性が特に高くなります。
クロスセルとは
クロスセルとは、顧客が既に利用している、または興味を持っている商品・サービスに関連する他の商品・サービスを提案して購入してもらうことで、顧客単価を高める営業手法です。
例えば、パソコンを所有、または購入を検討している顧客に、マウスやキーボードなどの周辺機器を提案するケースがあげられます。
アップセルと同様に、顧客数を増やすことなく効率的に総売上を伸ばせる手法です。
アップセル・クロスセルの違い
アップセルとクロスセルの違いを、実施手法、提案方法、タイミングの3つの項目に分けて解説します。
実施手法の違い
アップセルとクロスセルは、いずれも同一の顧客を対象に商品・サービスを提案して顧客単価を高める点で共通しています。
しかし、アップセルはより高価値・高単価の商品を購入してもらい、単一商品の収益最大化を目指すのに対し、クロスセルは関連する商品・サービスをプラスして収益を増やす点で違います。
アップセルとクロスセルの実施手法の違いを、BtoB、BtoCの具体例を交えながら解説します。
アップセルの手法
アップセルのBtoBとBtoCにおける具体例は、次の通りです。
【BtoB】
- SaaS系サービスで、必要最小限の機能を付与したプランからより多機能なプランへのアップグレード
- システムの利用可能人数が50人のプランから100人のプランにアップグレード
- カスタマーサポートなどのオプションを追加費用で提供
- クラウドサービスの、基本ストレージプランから大容量ストレージプランへのアップグレード
- コンサルティングサービスで、サポート内容をより充実させたハイグレードプランの提案
- オフィスのインテリアデザインで、より快適性や機能性を重視したオフィス家具の提案
【BtoC】
- ドリンクのサイズを+30円でMサイズへ変更
- 年会費無料のクレジットカードからサポート体制が充実し、ポイント還元率の高い年会費のかかるプランへ変更
- サブスクリプションサービスで、より高機能で内容が充実した上位プランへの移行
クロスセルの手法
クロスセルのBtoBとBtoCにおける具体例は、次の通りです。
【BtoB】
- 契約中のシステムと連携可能なシステムを提案
- 名刺やポスターのデザイン制作依頼を受けた際に、ホームページ制作を提案
- 印刷サービスの提供にあわせて、配布やデザインの制作、プロモーションなどを提案
【BtoC】
- ECサイトのレコメンド機能で、購入した商品を関連する商品を提案
- スマートフォンと一緒にケースや保護フィルムを提案
- パソコンの購入にあわせて、マウスやキーボードを提案
提案方法の違い
アップセルとクロスセルは、効果的な提案方法が異なります。それぞれの提案方法を詳しく解説します。
アップセルの提案方法
アップセルを効果的に行うには、アップグレードした商品・サービスのメリットを顧客に提示し、値段の上昇幅よりも享受できる価値の高さを感じてもらうことが重要です。「お得に購入できる」と感じてもらえれば、成功確度が高まります。効果的な実施方法・提案方法の具体例は、次の通りです。
- アップグレード版の購入割引やキャンペーン
- 限定サービスの提供や特典
- 期間や内容を含めた保証サービスの提示
- カスタマイズ・パーソナライズ化されたオプションの提案
アップセル時のメリットの訴求方法の具体例は次の通りです。
- 時間的コストの削減につながる
- サービスの利用可能範囲が広がり、カスタマイズ性が高まる
- 操作性が向上する
- 長期的な運用コストを削減できる
顧客ニーズや状況を詳しく把握し、具体的に何に対して、顧客は価値やメリットを感じるのかを深堀りしましょう。
クロスセルの提案方法
クロスセルを行う際は、既存の商品やサービスにプラスして新たに別の商品・サービスを導入、購入することで、顧客にどのようなメリットがあるのかを明確にすることが重要です。「セットで購入する方が効果的である」「いずれ必要になる」と顧客に価値を感じてもらえれば、導入、購入されやすくなります。クロスセルの効果的な提案例は次の通りです。
- セット購入による割引や特典を用意する
- 現在使っている商品やサービスに組み合わせることで、より便利になったり、補完できたりする商品・サービスを提案する
具体的には、メディア運用の発注企業に、SNS運用もあわせて提案するケースが該当します。メディア運用とあわせてSNS運用を行うことで、ユーザー数の増加が見込めるメリットをアピールできます。
アップセルと同様にクロスセルを行う際も、顧客ニーズや状況を詳しく把握して、真に価値を感じてもらえる提案を心がけることが大切です。
タイミングの違い
アップセルとクロスセルは、効果的な実施のタイミングも違います。適切なタイミングで提案できれば、顧客の購買意欲が醸成され、自社の商品・サービスを選んでもらえるきっかけになります。アップセルとクロスセルを実施する適切なタイミングを理解しておきましょう。
アップセルのタイミング
アップセルの適切なタイミングは、顧客が既存の商品やサービスを活用したうえで、より高価値・高単価のものを検討し始めるときです。
例えば、顧客が無料トライアルで商品・サービスを利用して、その良さを実感している段階です。ある程度の使用感を把握できる無料期間を経て、顧客の満足度が高まっていれば、機能性やカスタマイズ性に優れた有料プランへのアップセルは成功しやすくなります。
また、取引中の案件で顧客が求める成果を出せた場合も、アップセルを訴求するタイミングです。これまでの実績から顧客からの信頼感が高まっている状態のため、発注数を増やしてもらう提案が通りやすくなります。
クロスセルのタイミング
クロスセルの適切なタイミングは、顧客が新しい商品・サービスの購入を決断したときです。「より便利になる商品・サービスはないか」「必要になるものはないか」などを、顧客視点に立って考えてみましょう。
例えば、SEOコンサルティングを実施している企業に対し、SNSコンサルティングプランを提案して、集客効果の向上を訴求できます。
また、アップセルと同様に、顧客の商品やサービスの活用が進んでいるときも有効です。既に利用している商品・サービスと組み合わせると、より顧客満足度が高まる商品・サービスがあるかを熟考し、顧客に提案してみましょう。
いずれのケースでも、顧客にとって必要なものであれば、追加購入に至る可能性が高まります。
成功に導くためのポイントの違い
アップセルとクロスセルは、顧客情報を分析して、商品・サービスの付加価値を高めながらメリットを訴求する点で共通するものの、先述の通り実施手法や提案方法、提案のタイミングが違います。提案を成功させるポイントも異なるため、それぞれ解説します。
アップセル成功のポイント
アップセルを成功させるには、どのようにすれば顧客がより高価値・高単価の商品やサービスを利用したくなるかを考えて、商品設計するのが重要です。顧客が既に利用している商品・サービスをベースに、さらに高機能、もしくは付加価値のあるものを提供しましょう。
例えば、無料プランと有料プランで利用可能なデータ容量に差をつける、上位プランではカスタマーサポートを充実させるなどの商品設計をして、顧客の購買意欲を醸成します。
クロスセル成功のポイント
クロスセルを成功させるには、顧客が既に利用、もしくは購入を検討している商品やサービスとの関連性が高い商品・サービスのラインナップを充実させることです。全く関連性のない商品やサービスを提案しても、セットで購入してもらえる可能性は低くなるからです。
商品設計では顧客視点に立ち、メインで販売したい商品・サービスの特徴をベースに、何を追加で導入すれば相互補完性が高まるかを検討します。ついで買いやセット買いを促すのがクロスセルの成功のポイントです。
アップセル・クロスセルを行うメリット
アップセル・クロスセルを行う主なメリットは次の2つです。
- 顧客への提供価値を高められる
- ROI(投資対効果)を高められる
顧客への提供価値を高められる
アップセル・クロスセルを行うメリットは、顧客にとって価値の高い商品・サービスをより多く提案できる点です。顧客が真に必要とするものをアップセル・クロスセルで提案できれば、顧客満足度や顧客ロイヤルティが高まるきっかけとなり、顧客と長期的に良好な関係を築けます。
顧客への提供価値を最大化すればLTVが高まり、結果的に自社の売上向上につながります。
ROI(投資対効果)を高められる
アップセルやクロスセルを行うことで、既存顧客からの収益を効率的に高められる事もメリットです。
マーケティングでは、「1:5の法則」と呼ばれる法則があり、新規顧客に販売するコストは既存顧客の5倍かかるとされています。アップセル・クロスセルにより既存顧客に対して効果的にアプローチできれば、ROI(投資対効果)も高められます。
アップセル・クロスセルのポイント
アップセル・クロスセルを取り入れる際のポイントは次の2つです。
- 顧客への理解を深める
- 押し売りにならないようにする
実際に取り入れる際の参考にしてください。
顧客への理解を深める
アップセル・クロスセルの提案は、顧客のニーズを満たす適切なタイミングで実施する必要があります。そのためには、顧客への理解を深めることが重要です。例えば、次の情報を参考にして顧客の課題やニーズの理解に努めましょう。
- 顧客の属性(性別・年齢・職業など)
- 顧客の購買履歴・閲覧履歴
- Webサイトの閲覧履歴
- 商品・サービスの使用頻度
- アンケートや問い合わせ内容
- セミナーやキャンペーンの反応
押し売りにならないようにする
アップセルやクロスセルを実施したいあまり、無理な押し売りになってしまわないように注意が必要です。顧客からの信頼が失われ、関係性が損なわれる可能性があるからです。
押し売りにならないためにも、顧客情報の分析を基に顧客の抱える課題やニーズを把握し、その解決策としてアップセル・クロスセルを提案しましょう。
アップセルとクロスセルの違いを理解し、顧客に提案しよう
アップセルとクロスセルはいずれも、顧客単価を高められる営業手法です。しかし、実施手法や提供方法、最適なタイミング、成功に導くためのポイントが違います。両者を組み合わせて提案すれば、顧客への提供価値を最大化でき、結果的にROI(投資対効果)も向上させられます。
アップセルとクロスセルは、あくまでも顧客へのサービス提供価値を高めることを前提に行います。売上アップのために商品やサービスを押し売りするのではなく、より快適に利用してもらうための施策であることに留意しましょう。両者の違いを理解したうえで、顧客ニーズを満たせるアップセル・クロスセルを提案しましょう。
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