アップセルとは、顧客に対して現在利用しているものよりも上位の商品・サービスを提案して、顧客単価を高める手法です。アップセルを成功させるには、顧客のニーズを理解したうえで、上位の商品・サービスのベネフィットを示すことが重要です。
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本記事では、アップセルの基礎知識や取り組む必要性、目的、実現のためのポイントや注意点をわかりやすく解説します。混同されやすい「クロスセル」との違いも解説しますので、アップセルの基本を理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
アップセルとは?

まずは、アップセルの意味や取り組む必要性、目的、クロスセルとの違いを解説します。
アップセルの意味
アップセルとは、顧客に対して上位の商品・サービスを提案して、顧客単価を上げる営業手法です。当社HubSpotのサービスで例えると、Marketing HubのエントリーモデルであるStarterプランの契約を、上位モデルのProfessionalプランに切り替えることを勧めるのがアップセルです。
アップセルは、売り上げを伸ばす手法として業界を問わず行われています。その背景には、サブスクリプション型のビジネスの浸透や、人口減少にともなう新規顧客創出の難易度が上がっていることなどがあります。アップセルを成功させることができれば、他社との新規顧客の奪い合いを避けることができ、安定して売り上げアップを目指せるでしょう。
アップセルに取り組む必要性と目的
アップセルに取り組む目的や必要性として、次のようなことがあげられます。
- 顧客が取引終了までにもたらしてくれる生涯顧客単価(LTV)を向上させる
- 顧客ニーズにフィットした提案を行うことで顧客満足度を高められる
- 新規顧客の創出のリソースを削減して業務を効率化させる
なかでもLTV(顧客生涯価値)の向上は特に重要です。
「1:5の法則」といわれるように、新規顧客に販売するコストは既存顧客の5倍必要だといわれています。LTVを向上させるためには、企業が顧客と良好な関係を築いて、ニーズにフィットしたアップセルの提案を実施していく必要があるでしょう。
クロスセルとの違い
クロスセルも顧客単価を上げるための手法ですが、アップセルが上位の商品・サービスを提案するのに対して、クロスセルは別の関連商品の利用や購入の提案を行う点が異なります。
HubSpotのサービスで例えると、「Marketing Hubの使い心地を気に入り、Sales Hubも契約した」というケースがクロスセルです。
クロスセルもアップセルと同様に、コストをかけずに既存顧客による売り上げアップを目指せるのがメリットです。
アップセルを実現させるポイント
ここからは、次のアップセルを実現させるポイントを解説します。
- 顧客のロイヤルティを高める
- 顧客情報を分析する
- 商品・サービスの付加価値を高める
- メリット・ベネフィットを示す
- 適切なタイミングで提案する
1. 顧客のロイヤルティを高める
顧客ロイヤルティを高めた状態でアップセルの提案を行えば、商品の押し売りにならず満足度の高い取引が行えます。顧客のロイヤルティとは、顧客が商品・サービスまたはブランドに信頼や愛着を感じている状態のことです。
顧客ロイヤルティを高める施策の一例には、次のようなものがあります。
- 商品の使い心地や要望などのアンケート調査
- お役立ち情報や最新情報などのSNS発信
- 商品の使い方や機能を紹介するメールマガジン
顧客ロイヤルティを高めるには、現在の商品・サービスでしっかりと価値を感じてもらうことが重要です。そのうえで、さらに顧客を満足させる機能やサービスを考えましょう。
2. 顧客情報を分析する
アップセルを実現するには、顧客が「何を求め何に困っているか」というニーズを捉えることが重要です。やみくもにアップセルを提案すると、商品の押し売りになってしまいます。
顧客分析は次の情報をもとに行いましょう。
- 顧客の属性(性別・年齢・職業など)
- 顧客の購買履歴
- サイト内の行動履歴
- アンケートや問い合わせ内容
- セミナーやキャンペーンの反応
次に、分析結果に応じたアップセルのシミュレーションを行います。顧客にアプローチするところをイメージして、社員同士でアップセルの提案を練習しましょう。シミュレーションを行うことで、アプローチ方法のタイミングをブラッシュアップできます。
3. 商品・サービスの付加価値を高める
アップセルを成功させるには、上位の商品・サービスの付加価値を高める必要があります。そのためには、まず現状の商品・サービスの状態を理解することが重要です。
次のような状況では、アップセルの実現が難しくなるでしょう。
- 上位の商品・サービスと現状のものを比較しても目立った変化がない
- 現状のプランで十分に満足できる内容になっている
顧客ニーズに沿った付加価値を提供するには、顧客属性や購買履歴などをもとにした顧客分析が重要です。客観的な事実をもとに、商品・サービスを改善しましょう。
4. メリット・ベネフィットを示す
商品・サービスの付加価値を高めたうえで、その付加価値が顧客にどのようなメリット・ベネフィットをもたらすのかを示すことも重要です。
例えば、CRM(顧客管理ツール)を提供する企業の場合は、次のようなメリット・ベネフィットが考えられます。
- メリット:予測リードスコアリングが利用できるようになるため、見込み顧客の客観的なデータを取得できる
- ベネフィット:データをもとに優先順位を付けてマーケティングができる
上位の商品・サービスの特徴により「顧客の生活がどのように変化するのか」「どんな利益をもたらすのか」を示しましょう。ほかにも、限定割引や上位商品の購入をした人向けの特典などを用意すると、アップセルにつなげやすくなります。
5. 適切なタイミングで提案する
アップセルは、顧客が購入を決断するタイミングで提案すると効果的です。購入を決断する直前が、最も商品・サービスに対する興味が高まるためです。
ほかにも、トライアル期間の終了時やプランの更新時なども、アップセルを提案するタイミングとして適しているでしょう。また、顧客と関わるなかで、顧客が抱えている悩みや課題を確認した時に、その課題を解決する方法としてアップセルを提案してみるのもおすすめです。
ただし、上位の商品・サービスが現状のものと比較して価格の差以上に魅力的であることが前提です。
アップセルにおける注意点

顧客満足度の高いアップセルを成功させるため、次のような点に注意しましょう。
アフターフォローを行う
アップセルを成功させるには、日頃からアフターフォローを怠らないことが大切です。アフターフォローは、顧客ロイヤルティや関係を築く重要な活動であるためです。
次のようなアフターフォローは欠かさず実施しましょう。
- 購入後の使用状況を確認する
- 不具合が発生していないかなどを確認する
- 相談や質問はないか確認する
アフターフォローには、顧客のニーズを深く知ることができるというメリットもあります。アップセルにつなげるヒントも得られるでしょう。
また、アップセル後もアフターフォローを継続すれば、さらに上位の商品・サービスの利用や、関連商品の購入を検討してもらえる可能性があります。
顧客視点に立ち押し売りしない
商品・サービスの無理な押し売りは、顧客の離脱につながる可能性もあります。アップセルの提案が売り手の都合にならないように注意しましょう。
顧客が何を求めていて、どのような課題を解決したいのかを適切にとらえ、ニーズを踏まえたうえでアップセルを提案することが大切です。
顧客のニーズに合った価値を提案してアップセルにつなげよう
アップセルにおいて重要なことは、顧客の利用状況やニーズを分析することです。また、日頃のアフターフォローも欠かせません。そのうえで上位の商品・サービスを利用するベネフィットを提示すれば、顧客と企業の双方が納得のいくアップセルが実現できるでしょう。

