価格は、顧客体験を左右する重要な要素です。

HubSpot最高経営責任者(CEO)兼共同創業者のブライアン・ハリガンは、よく「何を売るかではない、どのように売るかだ」と言っています。

SaaS企業が成長を目指すうえで、製品が重要であるのはもちろんですが、しかし現在、企業が成功するか否かのカギを握るのは顧客体験です。製品は、その体験の一部でしかありません。購入者は、不満を覚えるとそれを口に出し、あっさりと他社製品に乗り換え、その企業を信頼しなくなります。一方で、購入者の満足度が高ければ、購入者はマーケティング、営業、カスタマーサービスの担当者よりも高い影響力を発揮してくれます。こうした購入者の声は、大きな説得力を持つものです。そして、顧客の満足度を向上するためには、顧客体験から摩擦を取り除くことが不可欠です。

HubSpotの価格モデルは決して「破綻」したわけではありませんが、多少のほころびが生じていました。ここ数年で、価格モデルによってフライホイールに摩擦が起こり始めていのです。複数の製品やプラン、そして追加機能から成るサブスクリプションモデルを提供するHubSpotのような会社では、お客様がどのように製品を組み合わせて使用しても、一貫性が保たれるような価格体系になっていなければなりません。これまでHubSpotの価格モデルは問題なく機能してはいましたが、ひときわ優れていると言えるものではありませんでした。

そのままの価格モデルで従来のやり方を継続しても、それなりに成果を上げることはできたでしょう。しかし、HubSpotはスマートな成長を遂げるために価格体系を抜本的に見直すことに決めました。

HubSpotの年次イベント「INBOUND」が2020年も開催され(今年は7万人以上のお客様にご登録いただきました)、そこで「コンタクトの価格体系」を全面的に見直すことを発表しました。顧客体験にとってきわめて重要であるにもかかわらず、HubSpotの成長に対応できていない仕組みだったからです。過去にもコンタクト数に応じた価格体系の微調整は行ってきましたが、これほど大規模な変更は初めてです。

これまでは、HubSpot製品に登録したコンタクトの総数で料金が決まる仕組みとなっており、それぞれのコンタクトに対してマーケティングを行ったかどうかは考慮されていませんでした。しかし10月21日以降は、お客様が「マーケティングコンタクト」か「マーケティング対象外のコンタクト」かを指定できるようになり、Eメールや広告によるマーケティング活動に使用するコンタクトのみお支払いの対象となっています。

とてもシンプルな価格体系のため、お客様にもご満足いただけるのではないかと願っています。しかし、この決断に至るまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。そこで、決断に至った3つの重要な理由をご紹介します。

1. 会社の成長に合わせて価格体系も変更していく必要がある。

会社の規模が大きくなり、新しい製品、機能、サービスが生み出されるようになると、既存の価格戦略では顧客に価値をもたらさなくなってしまうということはよく起こります。最初に市場に進出したときには年間契約プランが適切だったとしても、今では年間契約ではなく月額プランの方が顧客のニーズに合っているかもしれません。

これまで、製品やサービスの進化に価格体系を適応させられないまま長い年月が経過し、ある日突然、価格体系を大幅に変更して不整合を正そうとする会社を数多く見てきました。そうした変更は、顧客との関係の悪化を招きます。

HubSpotを例にご説明しましょう。当社は創業以来、大きく変化してきました。2006年、HubSpotは現在のMarketing Hubにあたる1つの製品だけを販売していました(当時は単にそれを「HubSpot」と呼んでいました)。しかしその後、HubSpot CRMや、Sales Hub、Service Hub、CMS Hubといった製品の提供を開始します。

物事が複雑になってきたのは、その頃です。Marketing Hubの料金は、コンタクトを含む基本料金と、データベースサイズ(データベースに登録されたコンタクトの数)に応じて決まる仕組みとなっていました。その価格体系が、お客様がHubSpot製品から得られる価値に見合っていると考えたからです。

しかし、複数の製品をリリースし、製品間で連携が行われるようになると、価格体系に問題が生じてきました。HubSpot CRMは無料で、Sales Hubはユーザー単位の料金です。製品間で価格設定の考え方が異なっていただけではありません。営業活動によって新たなコンタクトが生じると、そのコンタクトがマーケティングに活用されているかどうかにかかわらず、Marketing Hubのサブスクリプション料金が引き上げられ、結果として、お客様に摩擦と混乱が生じてしまっていました。HubSpotの従来の価格体系は複数の製品を扱うことを前提としておらず、新たな段階へと成長したときに、新しい戦略が必要であることが明らかになりました。

2. 価格体系は顧客と会社の双方にとってメリットのあるものでなければならない。

優れた顧客体験とはどのようなものでしょうか。購入のしやすさや、期待に応える製品であることも大切ですが、価格も顧客体験を左右する重要な要素です。顧客は、製品やサービスの価値を正しく反映した価格であると思っているでしょうか。必要以上にお金を搾り取ろうとされていると感じてはいないでしょうか。

HubSpotは「お客様の視点で課題を解決する」をモットーにしています。すべてこの精神に基づき、戦略的な意思決定を行うときには「お客様にとっての価値」を指針としています。

価格改定の第2の理由であり、教訓でもあるのが「価格体系は顧客と会社の両方にとってメリットのあるものでなければならず、決して顧客から搾取するものであってはならない」ということです。

価格設定の軸となっていた「コンタクト数」は、複数の製品を扱うようになってからというもの、お客様の成功を正しく反映するものではなくなりました。一部のお客様は、HubSpotプラットフォームで成功を収めた代償として費用を請求されているように感じ、価格に納得していませんでした。複数のHubSpot製品を使いたいと思っても、コンタクトデータベースの関連費用がかさむため、二の足を踏んでいるお客様もいらっしゃいました。お客様の多くは、定期的に手作業でデータベースのメンテナンスを行い、コンタクトを削除していました。これによってHubSpot契約の費用は抑えられたものの、それに割く人件費を考えると結局のところ高くついていました。機会費用も生じていました。削除したコンタクトが将来再びプロスペクトになったとしても、削除前にCRMに保存されていた履歴データを使うことはできません。当社としては耳の痛いフィードバックでしたが、鋭いご指摘でした。

コンタクト数に基づく価格体系を最初から見直す際に目標に掲げたのは、お客様にとっての価値を公正かつ正確に表すと同時に、「お客様は統合プラットフォームを使用したときに最大の成果を得られる」というHubSpotのビジョンを反映したモデルを作成することでした。お客様にとって成功の指標となるのは、データベースを単にどれだけ拡大できたかではなく、育成する価値のあるリードがデータベース内にどれだけ存在しているかです。そこで、「マーケティングコンタクト」と「マーケティング対象外のコンタクト」を区別し、お客様がアプローチするマーケティングコンタクト分のみ請求対象にするという方法が生み出されました。

3. 徐々に改善するより一気に変革を起こした方が効果的である。

価格体系を大きく変更するのは、実に困難です。その変更によって短期的に大きく収益が落ち込むことも珍しくなく、また、元の価格体系に戻せば顧客に混乱や打撃を与えることになります。

これが、今回の変更が困難であった2つの大きな理由です。価格体系のベースにある基本的な考え方を再考する必要があっただけでなく、財務的な影響も軽減できるようにしなければなりませんでした。現実に、価格体系に関して否定的なフィードバックが届き始めた当初、当社には大幅な変更を実施する余裕がありませんでした。

しかし、価格体系がもとで摩擦が生じていると認識したとき、多くの場合、摩擦を解消するには抜本的な変更を行うしかありません。当社が価格体系を変更したのは、今回が初めてではありません。これまでにも適宜変更を行ってきました。たとえば、当初はコンタクトの料金がMarketing Hub本体価格に含まれていたのを、製品の基本料金から分離させ、必要に応じて追加でコンタクトを購入する料金体系に変更しました。また、コンタクト数に応じたティアに基づく料金や、コンタクト数が増えるほど割安になる料金体系も導入しました。

こうした変更により、状況は少し改善しました。しかし、これは対症療法でしかなく、根本的な解決には至っていませんでした。そこで今回、マーケティングコンタクトを採用し、お客様にコンタクトを選別していただくことで、当社のコンタクト数に基づく価格モデルが大きく変わりました。これまでの段階的な変更とは比較にならない大きな変化です。HubSpotのお客様は、必要なコンタクトが発生したときにだけ料金を支払えばよいのです。

HubSpotが導入した「マーケティングコンタクト」とは

マーケティングコンタクトの価格体系では、Eメールや広告によるマーケティング活動に使用するコンタクトのみがお支払いの対象となります。積極的にマーケティングを行わないコンタクト(Eメール配信を解除したコンタクトやEメールが配信エラーになったコンタクトなど)も、「マーケティング対象外のコンタクト」として100万件まで無料で保存することができます。

さらに、これまではStarterプランのみでしたが、ProfessionalプランおよびEnterpriseプランにもこの価格体系を導入します。コンタクト数が増えるほど、コンタクトの単価が低減し、お客様がスケールメリットを得られる仕組みになっています。

マーケティングコンタクトの機能では、次のことが可能です。

  • 簡単な判定フローで配信エラーや配信解除のコンタクトをすべて洗い出し、数クリックでマーケティング対象外のコンタクトに指定できるため、すばやくマーケティングコンタクトを特定することができます。
  • マーケティング対象外のコンタクトを100万件まで無料でデータベースに保存できるため、会社のすべてのコンタクトを1つのシステムで効率よく管理できます。

コンタクト数の上限を気にすることなく、何よりも大切な優れた顧客体験を提供することに集中できます。また、コンタクト数に応じた価格体系では、コンタクト数が増えるにつれてコスト効率が高まるため、企業の成長に対する見返りが得られます。

マーケティングコンタクトのシステムを導入することで、お客様にコンタクトを選別していただけるようになります。HubSpotはマーケティング、営業、カスタマーサービスのデータベースに隔たりがなく、一貫した顧客対応を行うことが可能な統合プラットフォームであり、その価値を今まで以上にお客様に体現していただきたいという想いがこのマーケティングコンタクトに反映されています。

お使いのHubSpot製品をさらにお客様側でコントロールしていただけるようになったことで、これまで以上にお客様の思いのままHubSpot製品やサービスをご活用していただけるでしょう。そして、HubSpotの成功がお客様の成功を導けるように再調整することで、お客様とHubSpotが共にスマートな成長を遂げることができると信じています。

マーケティングコンタクトの機能は現在、既存/新規を問わず、すべてのお客様にご利用いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。

元記事発行日: 2020年11月18日、最終更新日: 2020年11月24日