2019年9月、Forbesはその年の「全米で最も革新的なリーダー(Most Innovative Leaders)」を発表しました。ランキングに登場した100人のうち、女性は1人だけ。この結果に思わず目を疑った方も多いのではないでしょうか。2019年にもなって、有色人種の女性やLGBTQの女性は1人も選出されておらず、女性の合計数よりも「Stanley」という名前の男性の方が多くランクインしているのです。そのときの私の感情は、絶望という言葉では言い表せません。
つまるところ、私はこのランキングに限らず経営幹部の女性に対する世間一般の認識に失望しています。昨年女性のリーダーシップに関するワークショップを開催し、あらゆるジェンダーの参加者全員に尊敬する経営幹部をリストアップしてもらいました。参加者が作成したリストは、Forbesのランキングと恐ろしいほどよく似ていました。男性の名前は次々と挙がりましたが、女性幹部の名前はSheryl Sandberg(シェリル・サンドバーグ)氏以外になかなか出てきませんでした。
さらに、Ursula Burns氏(Xeroxの前CEO)、Ginni Rometty氏(IBMのCEO)、Sussan Wojcicki氏(YouTubeのCEO)といった女性を思いついた場合でも、その役職は答えられても、フルネームまで思い出せる参加者はほとんどいませんでした。要するに、あらゆるジェンダーの人々が「経営幹部といえば男性」と考えるように教育されてきたのです。その事実は女性のリーダーシップに対する考え方、支持、昇進に悪影響を及ぼしています。
この問題を解決するにはどうしたらよいのでしょうか? 私の同僚のAngela DeFrancoは、「あらゆるジェンダーの経営幹部が、自分の知り合いであるかのように女性経営幹部の名前を出せるようになるべきだ」と言っています。これは名案です。ここではジェンダーとリーダーシップに対する考え方を改革するために、どこでもだれでもすぐに始められる5つの方法をご紹介します。
1. プレゼンテーションで女性の言葉を引用する
企業のプレゼンテーションでは、ビル・ゲイツ氏、ジェフ・ベゾス氏、ウォーレン・バフェット氏の有名な言葉がよく引用されます。しかし、女性のリーダーからの引用はめったに見られません。ある同僚はこの風潮に気付き、解決を目指して#QuoteMoreWomenというだれでも使用できる無料のリソース(英語)を公開し、プレゼンテーションでさまざまな経営幹部の女性やその考え方を簡単に紹介できるようにしました。ジェンダーで偏ることなく、さまざまな人の引用をバランスよく取り入れることで、自社の発言の説得力を高めることができます。
2. フォロー中のユーザーを入念に見直す
Twitter、LinkedIn、Mediumフィードの内容によって、定期的に目にするコンテンツが決まります。そのためフォロー中のユーザーを見直して、ジェンダー、人種、社会経済的地位、地域、その他の面でよりいっそう多様な人々から学べる環境を整えることが大切です。
自分が見たり共有したりするコンテンツを多様化するだけでなく、閲覧する求人情報や参考にするリーダーも意識的に多様化し、今後に向けて採用候補者、講演者、経営幹部、SNSでつながりたい人たちの候補を集めておきましょう。
3. 画像を更新する
自社のウェブサイト、求人ページ、社内外の資料、Eメールテンプレート、マーケティング資料などに、女性はどのような形で登場していますか? 女性の写真を使用している場合でも、事務やサポート担当者といった一般職の女性(特にアメリカであれば白人)であることが多い傾向があります。
今後、写真撮影を行ったりキャンペーンに採用する画像を選んだりする際には、その画像を目にした顧客、採用候補者、従業員が自社におけるジェンダーとリーダーシップについてどう感じるかをよく考慮したうえで、被写体を選ぶようにしましょう。
4. Wikipediaの現状を変える
2016年の時点で、Wikipediaのエントリーのうち、女性が占める割合はわずか17%でした。世界中で検索されているWikipediaの影響力を考えると、女性の物語を伝え、有名な女性のプロフィールを紹介することは、長期的に世間の意識を改革するために絶対に不可欠なことです。尊敬する女性幹部を選び、そのプロフィールを紹介するために、Wikipediaの公開ガイドラインに従って記事を投稿してみましょう。
記事の投稿はハードルが高いと感じるのであれば、5分でよいので、知らない女性に関するWikipediaの記事を探して読んでみましょう。たとえば、ヨーロッパ・中東・アフリカ地域で初めて工学の学位を取得したAlice Perry氏、アフリカのイノベーションと成長を牽引する南アフリカ人のCEOであるPhuti Mahanyele氏、Tesla Motorsの現会長を務めるオーストラリア人のRobyn Denholm氏などがお勧めです。
5. 女性が発言する機会を設ける
ある調査では、女性は男性よりビジネスの場であまり話さず、話したとしても時間が短いという結果が出ています。Deborah Tannen教授はその原因として、女性が社会的な条件付けにより、公の場で「スペースを取りすぎる」ことを嫌うことを挙げています。たとえば、飛行機に乗ったとき肘かけに手を置いたり足を伸ばしたりする女性は少なく、できるだけ身を縮めて身体スペースを取らないようにする傾向にあります。これはビジネスの「会話のスペース(発言量)」でも同じで、その結果、職場では女性の発言が男性より少なくなっているというのです。
次回の会議、企業プレゼンテーション、取締役会、ミーティングでは、女性が公の場で口を挟まれずに発表、発言できるようにする方法を1つ見つけて実行してみてください。そうすれば、女性のアイデアが他者の耳に届き、称賛を得られる可能性が高まります。これは、女性が職場で成功するための足がかりとなる重要なステップです。
冒頭のランキングの結果に憤慨している人は大勢いるでしょう。私もその1人です。しかし、何年経っても、大きなカンファレンスや世界のランキングは女性のリーダーを「見つけられない」らしく、私たちは問題の核心を突くことができずにいます。経営幹部の女性が話題に上り、称賛を得て、昇進することが当たり前の世の中にならなければ、Forbesなどでのランキング、ビジネスでの評価、幹部人事などでジェンダーの平等が実現される日は来ないでしょう。