Adobe Experience Cloudは顧客体験の向上を目的としたツールで、あらゆるマーケティングテクノロジーを集約した統合型プラットフォームです。広告配信やコンテンツ管理、アクセス解析などの領域別に9種類のAdobe製品がセットになっており、マーケティングの各プロセスに応じて必要な機能を使い分けられます。
Adobeには、PhotoshopやIllustratorなどの代表的なコンテンツ制作ツールがあります。しかし、素晴らしいツールを活用して魅力的なコンテンツを制作しても、マーケティング施策が不十分な状態では、適切な顧客体験につながりません。
Adobe Experience Cloudは、コンテンツごとに成果を検証し、最適化された顧客コミュニケーションを実現できるツールです。
本記事では、Adobe Experience Cloudに含まれている各製品の特徴や、企業の成功事例をご紹介します。
Adobe Creative Cloud アプリの基礎ガイド
このガイドでは基本概要からPhotoShopやIllustratorなど、主なアプリを中心に解説しており、目的に合わせたアプリやプランの選び方などが詳しく紹介されています。ぜひご覧ください。
- Adobe Creative Cloudの概要
- 料金プランとアプリの紹介
- Adobe Creative Cloudアプリのインストール方法
- 最適なプランの選び方
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Adobe Experience Cloud(旧Adobe Marketing Cloud)とは
製品名:Adobe Experience Cloud
用途:CXM(顧客体験管理)の実現
価格: 要問い合わせ
搭載製品:
- Adobe Advertising Cloud(広告配信最適化)
- Adobe Target(パーソナライゼーション)
- Adobe Audience Manager(CDP・DMP)
- Adobe Experience Manager(CMS)
- Adobe Analytics(アクセス解析)
- Adobe Campaign(オムニチャネルマーケティング)
- Adobe Commerce(eコマース)
- Adobe Marketo Engage(MA)
- Adobe Experience Platform Launch(タグ管理)
公式サイト: 顧客一人ひとりのニーズに応え、ビジネス成長を加速させる | Adobe Experience Cloud
Adobe Experience Cloudとは、広告配信やコンテンツ管理、アクセス解析など、あらゆるマーケティングテクノロジーを集約した統合型プラットフォームです。もともとはAdobe Marketing Cloudという名称でしたが、2017年にリブランディングが行われ、よりCXM(顧客体験管理)に特化したサービスとして生まれ変わりました。
マーケティング活動によってより良い顧客体験を実現するためには、コンテンツの提供が欠かせません。企業が顧客とコミュニケーションを行う場合、そこには常に何らかのコンテンツが存在しているからです。
AdobeにはExperience Cloudとは別に、PhotoshopやIllustratorをはじめとするCreative Cloudという製品群が存在します。それらのツールを活用して制作したコンテンツを、Experience Cloud・Creative Cloudを組み合わせることで、「マーケティング」と「クリエイティブ」とのシームレスな連携を行えるようになります。具体的には、クリエイティブ製品によって制作したコンテンツを適切に管理したうえで、タッチポイントに合わせた的確なコンテンツ配信が可能です。
Adobe Experience Cloudの製品一覧と特徴
Adobe Experience Cloudには、次の9種類の製品が搭載されています。このなかから、必要な製品のみを選択できます。
- Adobe Advertising Cloud(広告配信最適化)
- Adobe Target(パーソナライゼーション)
- Adobe Audience Manager(CDP・DMP)
- Adobe Experience Manager(CMS)
- Adobe Analytics(アクセス解析)
- Adobe Campaign(オムニチャネルマーケティング)
- Adobe Commerce(eコマース)
- Adobe Marketo Engage(MA)
- Adobe Experience Platform Launch(タグ管理)
各製品の特徴やメリットを見ていきましょう。
1. Adobe Advertising Cloud
Adobe Advertising Cloudは、Web広告におけるキャンペーンの計画や管理を行えるプラットフォームです。日本国内では「Advertising Cloud Search」と呼ばれるプラットフォームが提供されており、検索連動型広告の複数のチャネルを一元管理できます。
また、後述するAdobe Analyticsと連携できるのも特徴です。具体的には、Adobe Advertising Cloudによって広告効果を測定し、その情報をAdobe Analyticsに行動データとして反映させます。その後、分析したセグメント情報をAdobe Advertising Cloudと共有すれば、ユーザーの行動データに則ったターゲティングを行えるようになります。
2. Adobe Target
Adobe Targetは、マーケティングに関するあらゆるデータをもとにパーソナライズを実現できるプラットフォームです。ランディングページのA/Bテストを実施する際に役立ちます。
Adobe Targetには、広告ターゲティングによる表示の最適化とレコメンドという2種類の機能が搭載されています。ランディングページに含まれているタイトルやアイキャッチ、グローバルメニューといった要素を最大7か所まで変更可能で、複数ページを試験的に運用できます。
各ページのコンバージョン率やユーザーの行動パターンを比較することで、最もパフォーマンスの高いランディングページを把握できる仕組みです。効果的なA/BテストでLPO(ランディングページ最適化)を行いたい方に向いています。
3. Adobe Audience Manager
Adobe Audience Managerは、プライベートDMPの機能を持ったプラットフォームです。
プライベートDMP(Data Management Platform)とは、自社で保有する顧客の属性・行動履歴のデータを一元管理し、マーケティング施策に展開するための情報基盤です。マーケティング領域のなかでも、特にプライベートDMPの活用が進んでいるのは広告分野で、膨大なオーディエンスデータをもとに広告配信を最適化できます。
Adobe Audience Managerでは、Adobe Analyticsと連携することで、オンライン上のデータだけではなくオフラインデータまで統合できるのが利点です。また、「Marketplace」の機能を使えば、提携企業やデータプロバイダのデータも統合できるため、見込み客や顧客の心理・購買背景を正確に読み取れます。
4. Adobe Experience Manager
Adobe Experience Managerは、マルチチャネルのデジタルコンテンツを一元管理できるプラットフォームです。CMS(Webサイト管理)とDAM(デジタルアセット管理)、マルチデバイス配信の3つの環境が整備されています。
特徴的な機能のひとつに、「画像の自動タグ付け」があります。DAMの機能との連携により、CMSにアップロードした画像へ自動でタグが付与されます。DAMに保存してある複数のデジタルアセットをもとに、AIが内容を読み取り、アップロードした画像の内容に合わせて最適なタグを設定してくれるという仕組みです。
5. Adobe Analytics
Adobe Analyticsは、アクセス解析機能を搭載したプラットフォームです。Webサイトを訪問したユーザーの行動データを収集・分析したい場合に役立ちます。
アクセス解析ツールには、Adobe Analyticsのほかにも、無料で使えるGoogleアナリティクスがあります。Googleアナリティクスは、集客や行動といったジャンル別に簡易的なレポートを作成できるのが特徴です。
一方のAdobe Analyticsには、コホート分析やクロスデバイス分析など、より高度な分析機能が搭載されています。その分、実装するための難易度が高いため、簡易的なデータ集計のみをGoogleアナリティクスで行い、それを補完するためにAdobe Analyticsの分析機能を活用するのが最適です。
6. Adobe Campaign
Adobe Campaignは、オンラインとオフラインを問わず、あらゆるマーケティングキャンペーンを管理できるプラットフォームです。Adobe Campaignの最大の特徴は、カスタマージャーニー管理機能の活用により、個別の顧客に対して最適化されたマーケティングキャンペーンを実施できる点にあります。
Adobe Campaignで作成したカスタマージャーニーは、購買プロセスの各フェーズがアイコンによって可視化されており、一目で対象者の購買までの経路を把握できます。また、同じ画面内でその対象者へのアプローチ方法を決定できるため、作業効率の改善が見込めるでしょう。
7. Adobe Commerce
Adobe Commerceは、Eコマースの機能を持つプラットフォームです。ドラッグアンドドロップの簡単な操作のみでECサイトを構築できるほか、配送や在庫管理といったEコマースに必要な機能が搭載されています。
また、1つのアカウントだけで複数のECサイトをまとめて運用できるのも利点です。異なるECサイト同士で、商品情報や在庫情報などのデータを連動することで、より効率的な販売を行えます。
自由にカスタマイズできるオープンソース型なので、業績の拡大に合わせて柔軟に店舗の規模を変更できます。
8. Adobe Marketo Engage
Adobe Marketo Engageは、マーケティング活動をサポートしてくれるMA(マーケティングオートメーション)の一種です。MAに必要な顧客情報の収集やリードナーチャリングなどの機能のほか、モバイルやSNSといったチャネル別のマーケティング機能を搭載しています。
ほかにも「ウェブパーソナライゼーション」という機能を活用すると、見込み客の訪問履歴にもとづき、Webサイト上で個別に最適な情報提供を行えます。例えば、Webサイトを訪問した別々の見込み客に対して、ポップアップやバナー画像を出し分けるようなイメージです。
また、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業支援システム)など、幅広いシステムと連携できます。複数のシステムを連動させることで、マーケティング部門と営業部門のスムーズな連携へとつなげられるでしょう。
9. Adobe Experience Platform Launch
Adobe Experience Platform Launch
Adobe Experience Platform Launchは、「Dynamic Tag Management」の後継ツールとして開発されたタグマネージャー(タグ管理ツール)です。旧製品に比べて拡張性と操作性が大きく改善されています。
Adobe Experience Platform Launchを活用すれば、Webサイトやモバイルアプリに含まれるタグを一元管理し、簡単な操作でまとめて更新できます。また、管理画面上で広告やアクセス解析ツールなどのタグを登録できるため、Webサイトのソースコードを直接書き換える必要がありません。
タグマネージャーのなかでも、Adobe Experience Platform Launchは柔軟なルールを設計できるのが特徴です。具体的には、Adobeと連携できるさまざまなマーケテイング製品を組み合わせた発火設定を行えます。
Adobe Experience Cloudを導入した企業事例
さまざまなプラットフォームが統合されたAdobe Experience Cloud。導入事例を参考にすることで、効果的な活用が可能になります。ここでは、Adobe Experience Cloudに搭載されている各製品を、うまく組み合わせて活用した事例をご紹介します。
花王:製品カタログの制作プロセスを改善
大手消費財化学メーカーの花王は、工数がかかっている製品カタログの作成プロセスを見直すため、各部門が持つ製品情報を自動収集し、製品カタログに反映する仕組みを構築しました。
これまで花王では、Adobe Experience ManagerのCMSで製品カタログを作成していましたが、新製品が登場するたびに手作業で更新作業を行っていました。そこで、CMSとデジタルアセット管理機能を連動させることで、新製品のリリースに合わせて最新情報が自動更新される仕組みを構築しています。
それまで1か月半かかっていたカタログ更新作業は、早ければ数日で完了するほど、大幅な期間短縮に成功しています。結果、製品カタログの情報を拡充しやすくなり、新しい顧客体験を創造できるようになりました。
出典:各部門からの製品情報の収集を自動化。カタログ拡充などデータの積極活用を推進(花王株式会社)|Adobe
パソナテック:カスタマージャーニーの可視化でマッチング率上昇
IT系人材サービスを提供するパソナテック(現パソナ)は、MAツールのAdobe Marketo Engageによってカスタマージャーニーマップを作成し、マッチング率を飛躍的に向上させました。
パソナテックでは、新型コロナウイルスで急増したWebサイトへのアクセスを、うまく就業者数の増加に結び付けられない課題を抱えていました。そこで、マーケティングプロセスを俯瞰的に把握するため、Adobe Marketo Engageを導入してカスタマージャーニーマップを作成します。
また、広告効果測定ツールのADEBiS(アドエビス)と連携をはかった点も特徴的です。これにより、ユーザーと求人のマッチングを向上させると同時に、広告の貢献度評価を見直すことが可能になりました。広告配信の最適化や属性別のメール配信などにより、求職者と求人のマッチング率が従来の6倍に向上しています。
出典:たった1人からの挑戦。カスタマージャーニーの可視化で社内ムーブメントを起こす(株式会社パソナテック)|Adobe
ソフトブレーン:自社CRM・SFAとの連携でアポ獲得率を向上
SFAの「eセールスマネージャー」を提供しているソフトブレーンは、同社のSFAとAdobe Marketo Engageを連携させることで、アポ獲得率の大幅な向上に成功しました。
ソフトブレーンでは、従来利用していた簡易的なMAツールでは、ターゲティングやセグメンテーションが思うように最適化できていませんでした。ツールの用途が限られることで費用対効果が悪化する問題に悩まされていた同社は、本格的なMAツールであるAdobe Marketo Engageの導入を決意します。
Adobe Marketo Engageの導入後、既存のハウスリストの活性化やMAによる顧客情報の可視化を徹底します。さらに同社のSFAとの連携により、リード情報やスコア、商談内容といったデータの一元管理が可能になりました。その結果、前年比132%のアポ獲得率を達成しています。
出典:自社CRM/SFAツール「eセールスマネージャー」との連携でアポ商談率前年比132%達成。業務効率化も実現(ソフトブレーン株式会社)|Adobe
Adobe Experience CloudでCXMを最適化しよう
多種多様な商品やサービスが溢れる昨今、消費者には無限の選択肢があります。そのなかから自社の商品やサービスを選んでもらうためには、カスタマージャーニーの過程で得られる「心地よさ」や「感動」といった顧客体験の向上が不可欠です。顧客体験は、もはや付加価値ではなく、商品やサービスの一部であるといえるでしょう。
Adobe Experience Cloudは、CXM(顧客体験管理)を最適化させるための統合型プラットフォームです。9つの製品は単体でも十分に価値がありますが、組み合わせて活用することで、顧客体験の更なる向上が期待できます。Adobe Experience Cloudによりマーケティングの効率性を高めるとともに、CXMを最適化しましょう。