意外かもしれませんが、広告代理店のなかで、クライアントだけでなく自社のマーケティングにも力を注いでいる企業はあまり多くありません。クライアントのKPIには注目しますが、自分たちのセールスパイプラインやウェブサイトのコンバージョン率にはあまり関心がないという広告代理店がほとんどです。
いや、自分たちはそうではない。必要に応じて適切な規模のキャンペーンを行い、クライアントの数を増やすことを重視している、という方もいるでしょう。では、そのマーケティングキャンペーンの効果を毎月調査・分析し、何がうまく機能し、何が機能していないかを理解することの重要性はご存知でしょうか。今回はこれをテーマにお話ししたいと思います。
ですが、マーケティング指標にはさまざまな種類があり、どれが本当に必要なのか迷ってしまうこともあります。どのKPIを測定するかを決めるには、自社のビジネス目標について文書にまとめてみるのが一番の方法です。つまり、経営幹部とじっくり話し合って企業の全体的な目標を定め、マーケティングチームとしてその目標を達成するために、どう貢献するべきかを考える必要があります。
企業の全体目標を達成するために、ウェブサイトを利用してどのような成果を上げるべきかが決まれば、営業担当者や経営幹部に報告すべきKPIもおのずと決まってくるはずです。この記事では、キャンペーンやイニシアチブの全体的な成果を報告するために、トラッキングしたい10の重要な指標について概要を説明します。
1)ウェブサイトのトラフィック
これは説明するまでもないでしょう。ウェブサイト全体のトラフィックを、一定の期間ごとにトラッキングして比較します。業界の標準的な値とも比較してください。そうすれば、インターネット上での認知度を高めるために、自社のマーケティング活動が成果を上げているかどうかを大まかに知ることができます。トラフィックについて調べる場合は、次の3つの指標に特に注目してください。
セッション数
Googleアナリティクスでは、ユーザーが一定の時間ウェブサイトで操作を続けることを「セッション」と呼んでいます。このセッションをトラッキングすることは重要です。なぜなら、この指標を見れば、ウェブサイトが検索に対してどの程度のパフォーマンスを上げているかが一目でわかるからです。
ページビュー
ページビューだけで有益な情報が得られるわけではありませんが、毎月のページビューの合計数を測定し、月ごとに比較すれば、他の指標の結果を分析する際に必要となる情報を得ることができます。
たとえば、ウェブサイトで最も反応の良かったコンテンツを調べる際に、特定のページのページビュー数が、ウェブサイト全体のビュー数の合計に対して何パーセントだったかを確認するなどのように利用できます。
また、ページビューの数をセッション数と比較することにより、ユーザーがウェブサイトへ最初にアクセスした後、各コンテンツとどのように対話しているかを理解するのに役立ちます。これはコンテンツ制作者にとっては特に重要です。
バウンス率
ウェブサイトの訪問者のうち、最初にアクセスしたページで何も操作せず、そのままサイトを去ってしまった人の割合を言います。
バウンス率からは、訪問者のウェブサイトへの関心の高さを理解できるほか、訪問者がアクションを起こし、リードに転換するまでの流れを作りやすいように、ウェブサイトの構成を検討し直すべきか考える際の参考になります。
2)ウェブサイトのコンテンツ
ウェブサイトのトラフィックを調べて、全体的なパフォーマンスを大まかに理解したら、次はサイトの各コンテンツについて、どの種類のものが最も高い成果を上げているかを分析してください。
パフォーマンス上位のコンテンツ
ウェブサイトでパフォーマンスが最も高い10または15件のコンテンツに注目し、ウェサイト全体のビューの合計数に対するページビュー数の割合と一緒に報告します。この指標では、ユーザーにとってどのページが非常に興味深いかを知ることができます。そのため、コンバージョンパスを効果的に作成するためにも役立ちます。
最近では、Googleアナリティクスのレポートに「not provided」と表示され、ユーザーがどのキーワードで検索してウェブサイトを訪問してきたのか、知ることが難しくなっています。したがって、ユーザーにとってどの種類のコンテンツが興味深いかを、この指標から分析することは、以前よりも重要性を増していると思います。ホームページなどのトップページがおそらく上位に入るでしょうが、サブページやブログ記事のページでパフォーマンスが高くなることもあると思います。
パフォーマンス上位のブログ記事
ブログはマーケティングにおいて非常に重要な位置を占めるため、パフォーマンスの高いブログ記事を調べ、読者の多くが必要としているのはどの種類の記事か、また、この先どの語句をターゲットとしてキーワードを選ぶべきかを理解することが大切です。
ウェブサイト全体のトラフィックに対し、ブログがどのくらいの割合を占めているかも調べてください。個々の記事について割合を調査し、その割合をパフォーマンス上位の記事だけで合計すれば、インバウンドマーケティング活動であるブログの投稿が、検索のパフォーマンスに対してどの程度貢献しているかがわかります。
3)コンバージョン数
ウェブサイトの指標を測定し、トラッキングして報告することには、いくつか目的がありますが、そのひとつは、マーケティングで使用しているさまざまなチャネルが、企業全体のビジネス目標においてどの程度貢献しているかを調べることです。
コンバージョン数をトラッキングすると、訪問者がコンテンツとどのように対話しているか、また、どの対話によってコンバージョンを獲得し、ビジネス目標に貢献できているかを知ることができるます。したがって、次回マーケティング予算を各チャネルにどのように分配するべきかを決めるのに役立ちます。
コンバージョン数をトラッキングする際には、マクロコンバージョンとマイクロコンバージョンの両方に注目することが大切です。
マクロコンバージョン: フォームの送信など、企業全体の目標達成に直接貢献するコンバージョンです。
マイクロコンバージョン: ウェブサイトのユーザーがマクロコンバージョンに向けて次のステップに進んだことを示すコンバージョンです。ウェブページの滞在時間や、Google AdWordsのクリック、SNSでの対話などがこれに含まれます。
4)ソース
ウェブサイトの全体的なパフォーマンスを知り、コンテンツマーケティングの活動をどの方法で行った場合に最も効果が高くなるかが理解できたら、次はどのマーケティングチャネル(すなわちソース)によってトラフィックを多く獲得しているかを調べてください。
HubSpotの「Sources」レポートを見れば、セッションの合計数のうち、各ソースが何パーセントを占めているかを確認できます。Googleアナリティクスを使用する場合は、[Acquisition(集客)]>[Channel(チャネル)]の順に選択して表示されるレポートで、これを確認することができます。
オーガニック検索
オーガニック検索によるトラフィックを測定すると、コンテンツが検索エンジンに対してどのくらい効果的に最適化されているかがわかります。
SNS
SNSによるトラフィックを測定すると、どのSNSネットワークに投稿されたどのコンテンツでパフォーマンスが高くなっているかがわかります。ただし、トラフィックの数だけを調べるのではなく、各ネットワークで反応の大きかったコンテンツの種類についても調査し、それを基に次のコンテンツを作成するようにしてください。
ダイレクト
ブラウザーにURLを直接入力して、ウェブサイトを訪問した人の数を調べます。この指標は、ブランドとしての知名度を大まかに知るために便利です。
リファラル
リファラルによるトラフィック(別のサイトに張られたリンクをクリックして移動してきたトラフィック)の数を調べると、周りから有益だと思われている(リンクを張って紹介したいと思う)コンテンツがどれかを知ることができます。
Eメール
Eメールキャンペーンの指標は、このカテゴリとは別に詳しくトラッキングする必要がありますが、Eメールマーケティングによるトラフィックの割合を調べることにより、この施策に費やす時間が(効果に対して)長過ぎるか、あるいは短すぎるかを知ることができます。
有料検索
Google AdWordsを利用し、検索によるトラフィックを有料で獲得している場合は、この指標を使用して、Google AdWordsチャネルのROIを算出するとよいでしょう。顧客一人あたりの価値を分析している場合は、有料検索による訪問者数やコンバージョン数をトラッキングすることによって、広告費をどのように調整すべきかがわかると思います。
5)オーソリティの指標
Mozは素晴らしいと思います。特に、OpenSiteExplorerサービスは最高です。OpenSiteExplorerでは、指定したドメインやウェブページのオーソリティを、独自のアルゴリズムによって調べることができます。オーソリティは高ければ高いほど、検索エンジンによる順位が上がる可能性も高くなります。
ドメインのオーソリティでは、ウェブサイトが検索エンジンによって、情報源として高く評価されているかどうかを知ることができます。簡単に言えば、ウェブサイトの評判の高さを示す指標です。
ページのオーソリティでは、特定のページに対する評判や、検索によってページにアクセスした人に、必要とする情報を与えられているかを確認することができます。
ドメインやページ(主にはホームページ)のオーソリティをトラッキングし、前回と比較して大きな変化がないか調べてください。急激に変化することはないはずですが、数ポイント程度も上昇または下降した場合は、ウェブサイトに対して最近どのような変化を加えたか考えてみましょう。
ウェブサイトのホスティング会社を変えたり、スパムと間違えられそうなほど大量に被リンクを取得したりしていないか、他のサイトのコンテンツをコピーして掲載していないか、シンコンテンツやキーワードスタッフィングを疑われそうなコンテンツを何度も公開していないか、などを確認してください。これらはすべて(ほかにも多数考えられます)、ドメインやホームページのオーソリティを著しく低下させる要因となりますので、この指標に目を光らせてチェックすることが重要です。
6)Eメール
インバウンドマーケティングは、Eメールなしでは成り立ちません。インバウンドのオファーを作成し、それと引き換えにリードのコンタクト情報を集めたら、その先のマーケティング活動は、パーソナライズされたEメールを使用して行うことが非常に重要だからです。
リードがどの種類のEメールおよびEメールコンテンツを本当に必要としているのかを調べるには、次の指標のトラッキングおよび報告を行い、そのデータを基に戦略を調整する必要があります。
到達率
到達率をトラッキングすることは、Eメールリストの質を評価する目的において非常に有効です。古くて使えないアドレスが含まれていないか、購読者はメールを受信したいと本当に思っているか、などを確認することができます。到達率が高ければ、それだけリストの質も高いと考えることができます。
開封率
開封率をトラッキングすると、配信されるメールに対して興味を持っているオーディエンスの割合について、細かく調べることができます。また、件名が効果的かどうかを確認するためにも、開封率が非常に役に立ちます。件名は受信者にメールへの興味を持ってもらうための重要な要素ですので、開封率を使用して件名の効果を調べることが大切です。
クリックスルー率
クリックスルー率は、オーディエンスに適切なコンテンツを提供できているかを判断するための重要な指標です。ブログ記事やランディングページのクリックスルー率をトラッキングすることにより、どのコンテンツがオーディエンスの関心を集めているかが理解できるため、その先のコンテンツ戦略を決定するための、貴重な情報源とすることができます。
バウンス率
バウンスメールの数をトラッキングすると、配信しているEメールを、できるだけ多くの購読者の受信トレイに届けるために、何をすべきか考えるのに役立ちます。バウンス率が高い場合は、メールのテキストに赤や緑の色を多用していないか、あるいは件名や本文の冒頭部分にスパムと間違えられそうな文を入れていないかなどを確認してください。バウンス率は、Eメールのテンプレートやコンテンツの質を調べるための非常に有効な手段です。
チャーン率/購読解除率
購読の解除も、一定の数までなら仕方ないと思うべきですが、チャーン率を毎月モニタリングすると、購読者が本当に必要としているコンテンツを配信できているか調べるための参考になります。また、パフォーマンスが特に低かったEメールキャンペーンを特定できるため、Eメールマーケティングで何を避けるべきかを理解するためにも有効です。
7)キーワード
非常に大まかにではありますが、キーワードをトラッキングすると、ウェブサイトに訪問者がどのように到達したかを知ることができます。おそらくキーワードの調査の段階で、キーワードの難易度や、月ごとの検索ボリュームなどの指標を調査済みだと思いますので、これらについては、劇的な変化が起きたと思われる場合を除き、改めて調査し直す必要はありません。(キーワード調査の方法について知りたい方は、こちらのブログ記事をご覧ください)
ただし、ウェブサイトがどのキーワードによってオーガニックトラフィックを獲得しているか、また、キーワードの検索結果の順位に、ウェブサイトへのトラフィックに影響を与えるほどの変化が出ていないかを調べることは必要です。
獲得したオーガニックトラフィック
ウェブサイトがどのキーワードによって、オーガニックトラフィックを獲得しているかを調べる際、私たちは必ずSEMrushを使用します。このツールでは、キーワードの語句に対して検索結果の上位を獲得しているページと、その順位、およびページのURLを表示することができます。また、有料の広告キャンペーン(Google Adwords)を利用する場合は、キーワードのクリック単価も表示することができます。
また、特定のキーワードによるトラフィックが、ウェブサイトへの全トラフィックの何パーセントを占めているかもトラッキングできます。この情報はかなり貴重です。なぜなら、どのコンテンツがウェブサイトに多くの訪問者を集めているかを調べたり、そのコンテンツによって質の高いリードを獲得できるかどうかを判断したりするために有効だからです。
順位の変化
キーワードの順位の変化を毎月トラッキングすることも必要です。検索結果はパーソナライズされ、またロケーションベースで検索が行われることもあるため、キーワードの検索順位が必ずしも信頼できる指標とは言えませんが、これをトラッキングすることにより、特定のキーワードでウェブサイトがどの程度のパフォーマンスを上げているかを調べることができます。
順位向上のチャンス
現状では検索の上位に表示されていないけれども、少し努力することによって、順位が大幅に向上する可能性のあるキーワードを探すことができます。
8)ランディングページ
ランディングページもやはり、マーケティングキャンペーンには不可欠な要素です。訪問者にオファーを提供し、コンタクト情報を入手するための場所がランディングページです。ランディングページでは、オーディエンスが本当に必要としているオファーを提供しているかどうか、そして、効果的なランディングページを作成できているかどうかを、以下の指標を基に確認する必要があります。
ビュー数
ランディングページのビュー数をトラッキングすると、ペルソナから見たオファーの価値(期待度)を知ることができます。また、CTA(Call-To-Action)を効果的に作成できているかどうかも確認できます。
コンバージョン率/フォーム送信率
ランディングページのコンバージョン率をトラッキングすると、オファーの価値を評価することができます。また、ランディングページのデザインが効果的かどうかを検討するためにも非常に有効です。
コンバージョン率が低い場合は、ランディングページのすべての要素が簡潔にわかりやすく配置されているか、画像を表示しているか、ナビゲーションバーを表示から外しているか、などを確認してください。コンバージョン率はオファーの価値だけでなく、ランディングページのデザインにも大きく影響します。
A/Bテストの結果
CTAやランディングページをどのように変えれば効果が高くなるかを詳しく調べたい場合は、A/Bテストを行って結果をトラッキングしてください。A/Bテストを行うと、ウェブサイトに小さな変更を加えることによって、クリックスルー率にどのような変化が表れるかがわかります。したがって、CTAやランディングページを変更してビュー数やコンバージョン率を改善したい場合、各要素をどのように変えるべきかを調べるために、A/Bテストが非常に役に立ちます。A/Bテストの結果を細かくトラッキングして、この先のキャンペーンに活かしましょう。
9)時間
私たちは通常、お客さまにタイムシートを作成し、毎回必ずと言っていいほど非常に感謝していただいています。キャンペーンを開始する際には、それぞれの活動に対して時間をどのように割り振るのが最も良いかを、お客さまの目標やインフラに合わせて検討し、どの活動に何時間充てるかを定めたタイムシートを作成して説明します。
たとえば、特定のお客様に対して、コンテンツ作成とSEO対策に40%、SNSに25%、そしてプロジェクト管理に10%の時間を割くと決めて、それぞれの実際の時間数がどうなるかをシートにまとめます。
そして、キャンペーンの実施後には、どの活動に何時間かかったかをトラッキングし、どの程度計画どおりに進んだかを調べます。この方法で、時間がかかり過ぎた活動はなかったか、特定の活動において時間を効率的に使うことができたか、などを確認できます。
これと同じことを、広告代理店自身も行う必要があると思います。そうすれば、投資した時間に対してどの程度の結果が得られたかを理解するのに役立ちます。
10)SNS
広告代理店がお客様リストを増大させる目的において、SNSを利用したマーケティング活動が非常に効果的とは言えないかもしれません。ですが、オーディエンスがどのコンテンツを求めているかを判断するためには便利なツールだと思います。また、広告代理店の個性や企業文化を紹介するためにも、SNSは非常に有効です。
リーチ
オーディエンスがオンラインの(そしてシェアをしやすい)時間帯に投稿およびエンゲージをすることは、SNSでコンテンツのリーチを拡大するために非常に重要です。SNSでのリーチを毎月調査すると、時間帯とコンテンツを適切に選んで戦略的にSNSを利用できているか評価することができます。ただし、フォロワー数の増加にこだわるあまり、フォロワーの質をないがしろにしないよう注意が必要です。関連のないオーディエンスをいくら増やしても意味がありませんし、偽のSNSアカウントとつながる恐れもあります。
エンゲージメントアクション
SNSでのクリック、シェア、メンション、リツイート、ピンといった、エンゲージメントアクションの数をトラッキングすると、フォロワーが好むコンテンツの種類を調べることができます。
競合企業
競合企業のSNSアカウントを注意深く観察すると、自社の戦略が他社の一般的な戦略と比較してどこが一致し、どこが違っているかを、的確に調べることができます。
指標の測定計画の作成を早めに開始し、この記事で紹介した各種指標のなかで、どれを選んでトラッキングし、報告するかを正しく判断するようにしましょう。
トラッキングの必要なKPIを判断するだけでなく、社内の経営幹部が設定した目的を理解し、そのコンテキストに沿って報告を行うことも重要です。つまり、その目的に向けて何をどのくらいの数まで獲得すれば、キャンペーンを成功と見なせるかの目標を定める必要があります。
トラッキングも報告も簡単にはいきません。最も効果的な報告を作成するためには、広告代理店でが最も重要視するべきことを正確に理解し、その目標に応じて適切なKPIを選ぶ必要があります。企業全体の目標に合わせて最も必要とされるKPIを利用し、最高に素晴らしい報告を作成してください。
編集メモ:この記事は、2014年12月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Amahl Majackによる元の記事はこちらからご覧いただけます。