AIエージェントとは、ユーザーが設定した目標に沿って、AIが自律的にタスクを実行するツールのことです。プログラム通りにタスクを実行する従来のAIとは異なり、AIエージェントは目標を達成するために必要な最適化された行動を自ら判断して実行します。そのため、人間が介入せずにタスクを実行できるのがメリットです。


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本記事では、ビジネスシーンや行政におけるAIエージェントの活用事例を7つ紹介します。具体的な事例とともに導入時のポイントも解説しますので、ぜひ参考にしてください。
AIエージェントの活用事例
ここでは、ビジネスシーンや行政におけるAIエージェントの活用事例を7つ紹介します。実例を参考にしながら、自社でAIエージェントを導入する際の適用範囲や手法を検討してください。
- トヨタ自動車株式会社
- 株式会社ARISE analytics
- NEXT
- Lush
- 損保保険ジャパン株式会社
- 富士通株式会社
- 千葉県千葉市
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、AIエージェントに関する独自システムの開発を進めています。
同社は、ベテランエンジニアの定年による大量退職や開発項目の急速な増加といった課題を抱えていました。社内のノウハウを効率良く蓄積・共有し、新型車の開発スピードを向上させるのが、AIエージェントを開発する主な目的です。
自動車の設計データを基盤とした新たなシステムの名称は「O-Beya(大部屋)」で、この仕組みが導入されることで、エンジニアがいつでもAIに相談できる環境が実現しています。
例えば、新車開発にあたって振動や燃費に関する質問を行うと、AIが社内データベースから適切な回答や資料を提示する仕組みです。従来は関連資料やデータの種別が多く、情報収集に多大な時間を要していましたが、AIエージェントを導入することで工数の削減が期待されています。
参考:トヨタ自動車、エンジニアの知見を AI エージェントで継承へ ー 競争力強化に向け革新的な取り組みを開始
株式会社ARISE analytics
株式会社ARISE analyticsは、KDDI株式会社が保有する位置情報や画像データなどを活用し、マーケティングやカスタマーサポートの改革支援などを提供する企業です。
同社では、採用活動の課題を解消するためにAIエージェントを導入しています。人材紹介会社以外の採用チャネルを有効活用し、限られたリソースで採用活動を最適化するために、採用活動の効率化に特化したツールを選択しています。
導入したツールは、ターゲットの抽出やスコアリング、求人サイトなどに掲載する文面の作成といった機能を搭載しているのが特徴です。さらにスカウト精度の改善機能を活用することで、候補者を効率良くリストアップできるため、企業から候補者にアプローチするプッシュ型の採用活動にも効果を発揮しています。
参考:『リクルタAI』で採用難易度の高いビジネスコンサルタントの採用に成功
NEXT
NEXTは、イギリスを拠点にアパレルの小売業を展開するグローバル企業です。イギリス・アイルランドで450以上の実店舗を展開するだけでなく、150以上のグローバルフランチャイズストア、さらにはEコマースプラットフォームも展開しています。
同社は以前、内製のCRM(顧客関係管理)ツールによってCX(カスタマーエクスペリエンス)の強化に取り組んでいましたが、時代や顧客行動の変化に対応するために、AIを活用したCXオペレーションの改革を決めました。
1,000万人を超える世界中のユーザーから問い合わせが寄せられる同社にとって、多言語対応でグローバル展開が可能なCXソリューションは不可欠です。複数のチャネルに対応できるプラットフォームを導入し、音声以外のすべてのチャネルを統合。リアルタイムでチャットボットも接続した結果、全チャネル平均で問い合わせにかかる処理時間を15%短縮できました。さらに、月間チケット(問い合わせ)処理件数の初回応答解決率は9割を超えています。
AIエージェントの導入目的をCXの改革に絞り、グローバルかつマルチチャネル対応のAIエージェントを選んだことが成果につながった事例といえるでしょう。
参考:グローバル小売業のNEXTは、Zendesk AIの導入によりCX業務の効率向上とコスト節減に成功
Lush
Lushは、1995年にイギリスのドーセットで創業したコスメブランドです。同社は、カスタマーサポートを効率化するために、AIエージェント搭載型のコールセンターシステムを導入しました。
システム導入以前は、特にクリスマスシーズンに問い合わせが集中し、カスタマーサポート担当者に大きな負担が発生していました。そこで、顧客からの問い合わせを1つのプラットフォームに集約。シームレスかつ高品質なサービスを提供することを目的としてコールセンターシステムを導入しました。
AIエージェントの機能が備わったシステムを導入することで、顧客から寄せられた質問やクレームへの対応、割り引きの案内、寄付の受付といった作業を自動的に処理することが可能です。また、業務データにもとづいたレポートが自動生成されるので、分析結果をもとにしたオペレーションの改善・最適化にも効果を発揮しています。
参考:Zendesk AIの活用により、エシカルな価値感とポジティブな生き方を具現化するLush
損害保険ジャパン株式会社
損害保険ジャパン株式会社は、企業向け火災保険の事業において、非効率な業務フローに課題を抱えていました。各種書類を作成するためには、その度に代理店の担当者が、膨大な項目が記載されている固定資産台帳を確認・転記する必要があり、手間と時間がかかっていたといいます。
そこで同社は、情報の整理やテキストの生成に強みを持つAIエージェントの導入を決めます。書類作成に必要な情報を固定資産台帳から自動的に抽出し、転記できるシステムによって、95%の精度で自動化に成功しました。その結果、資料の前処理や転記にかかる工数の大幅な削減につながっています。
参考:AI inside、損保ジャパンの火災保険における業務効率化をAIエージェント「Heylix」で支援
富士通株式会社
富士通株式会社では、問い合わせ件数の増加やサポート対象範囲の拡大に対応できるカスタマーサポート体制の構築に課題を抱えていました。
そこで、同社が注目したのが、AIエージェントの機能を備えたコールセンターシステムです。AIエージェントの機能を活用することで、システム内に蓄積された問い合わせ履歴やナレッジベースを参考に、顧客からの問い合わせに対してAIが自律的に応答できます。
チャットボットは以前から導入していたといいますが、新しいシステムでは、より少ない手順で回答を導けるようになっています。具体的には、8回ほどのやり取りが必要だった作業が1回で済むようになり、問い合わせ対応の迅速化や顧客満足度の向上につながっています。
参考:富士通がセールスフォースの自律型AIエージェント「Agentforce」の本番運用で得た気づき | TECH+(テックプラス)
千葉県千葉市
千葉県千葉市では、2024年から推進している「スマートシティ実証事業」において、職員の負担を軽減するためのAIエージェントを導入しました。
同自治体では、繁忙期になると区役所総合窓口の滞留や、多様な手続きによる職員の負担増加といった課題が発生していました。将来的に、窓口の省人化や無人化、言語・障害の有無を問わずに利用できるコミュニケーションやオンライン相談を実現するために、AIエージェントの導入を決めます。
具体的には、AIエージェント機能が搭載されたタブレットを、住民が使用する待合スペースと窓口コンシェルジュの持ち歩き用にそれぞれ導入しました。その結果、住民の質問に対する迅速な回答や的確な調査が可能になり、満足度向上につながっています。
参考:【働く人をアシストするAIエージェント】QURIOS AGENTが千葉市スマートシティ実証事業に導入 | 株式会社ワントゥーテンのプレスリリース
事例から見るAIエージェントの活用ポイント
前述した事例を参考にすると、AIエージェントを活用する際のポイントがいくつか見えてきます。
- 目的や役割を明確にする
- あらかじめ必要なデータを準備する
- AIを利用する際のリスクを理解する
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
目的や役割を明確にする
AIエージェントには、さまざまな活用手段があるため、最適な場面で活用するにはまず目的や役割を明確にすることが重要です。全体のビジネスプロセスからボトルネックを特定し、それを解消するためにAIエージェントの導入を検討するのが理想的といえるでしょう。
例えば、マーケティングでは、戦略立案に必要なリサーチや分析といった業務をAIが自律的に実行してくれます。ほかにも、カスタマーサポートではチャット上で顧客からの問い合わせに対応したり、経理では自動的にデータを収集して帳票を作成したりといった活用が進んでいます。
目的や役割が明確になることで、必要な製品や機能が明らかになり、課題解決に近付きやすくなります。また、実現したい内容によっては、AIエージェントではなく、生成AIサービスやAIが組み込まれたプラットフォームを活用することで解決する可能性もあります。
あらかじめ必要なデータを準備する
自律的に意思決定を行えるのがAIエージェントの特徴ですが、根拠となるデータがなければAIは作業を進められません。そのため、AIエージェントを導入する前に必要なデータをそろえる必要があります。
マーケティングでAIエージェントを活用する場合は、市場調査のリサーチ結果や分析結果、見込み客・顧客に関する情報、WebサイトやECサイトから取得したアクセスデータなどが必要です。AIは、それらのデータを自ら学習して目標を達成します。
用意するデータの量が少なかったり、データ群に偏りがあったりすると、AIの出力結果に誤りが生じる可能性も考えられるでしょう。そのため、量だけではなく質にも着目してデータを収集することが大切です。
AIを利用する際のリスクを理解する
AIを用いた商品やサービスには、次のようなリスクがあります。
- 出力される情報の誤り(ハルシネーション)
- 学習データからの情報漏洩
- 著作権侵害
- プロンプトインジェクション
AIが誤情報を出力する「ハルシネーション」は、AIの活用における代表的なリスクです。「AIは間違えることがある」と認識したうえで、最終的なチェックは人間が行いましょう。また、AIに入力した学習データに顧客の個人情報や社内の機密情報が含まれていると、データを出力する際にその情報が一般公開され、情報漏洩へと発展する恐れがあるため注意が必要です。
生成AIが出力したテキストや画像が、ほかの著作物と似ているという理由で著作権侵害にあたるケースも考えられます。さらに、AIに不正な指示を与えてデータ窃取や誤動作を引き起こす攻撃、いわゆる「プロンプトインジェクション」にも注意しなければなりません。
このような特徴を踏まえたうえで、事前に対策を行うことがリスクコントロールにつながります。
例えば、情報漏洩のリスクに備えるには、AIの学習時に機密情報の入力を避けたり、入力規制やルールを設けたりといった対策が求められます。また、チャットボットのようなサービスから情報漏洩の懸念がある場合は、データの暗号化や認証プロセスなど、堅牢なセキュリティ体制を構築する必要があります。
AIエージェントの活用事例を参考にしながら導入を検討しよう
AIエージェントは、自律的なシステムによって自ら適切な行動を判断し、自動的に作業を行うのが特徴です。高精度なチャットボットの開発や質の高い需要予測など、ビジネスへの活用も広がっています。
しかし、AIエージェントは新しいシステムで活用事例も少なく、隠れたリスクがあることも否めません。そのため、導入には慎重な判断が求められます。また、運用を適切に行うには専門知識も必要です。
まずはAIに関する基本的な知識を身につけて、実際に使ってみましょう。