バーナム効果は、誰もが該当する事柄に対して「自分だけに当てはまる」と思い込む心理現象です。ビジネスでは、この効果を利用して、商品やサービスに対する関心を高め、購買行動を促進する手段としても使われます。
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本記事では、バーナム効果の具体例やビジネスでの活用方法、注意点についてわかりやすく解説します。ぜひ、参考にして仕事に活用してください。
バーナム効果とは
バーナム効果とは、一般的な内容を自分に当てはめる傾向のことを指します。
具体的には、曖昧で一般的な主張や特徴についての言葉を自分ごとと認識したり、自分の性格や経験に関連付けたりすることで、その情報が驚くほど正確であるかのように感じられる現象です。
バーナム効果という名前の由来は、興行師の P・T・バーナム氏による言葉"We've got something for everyone"(誰にでも当てはまる要点がある)です。アメリカの心理学者であるポール・ミール氏が、同氏の名前にちなんで名付けました。
バーナム効果について実験を行った、アメリカの心理学者、バートラム・フォア氏の名前から「フォアラー効果」ともいいます。
バーナム効果の例
ここからは、バーナム効果の具体的な例を見てみましょう。実生活のなかで、誰もが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
- 占い
- おみくじ
- 人間関係
いずれの事例でも「自分のことを言われている」と感じる心理が伺えます。
占い
占いは、顧客の手相や生年月日などを基に、個人の性格や運命を特定の方法で予測します。例えば、占い師に「不安を感じていますね?」と告げられたら、「あのことかな」と自分で今気になっていることと結びつけて考え、当たっていると感じることがあります。
占いの結果は、誰にでも当てはまる内容であることも多いのですが、バーナム効果が働いて「自分のことを言い当てられた」と感じてしまうのです。
おみくじ
おみくじは、偶然性に基づく結果にすぎないものの、受け取った人はそこに記されている文言を自分に当てはめて解釈し、当たると感じることがあります。
占いと同様、一般的なフレーズや誰にでも当てはまりそうな言葉であっても、バーナム効果によって、受け手の期待や希望に沿っているように感じられるのです。
例えば、大吉を引いてその日に幸運な出来事があった場合、おみくじの結果と結びつけて「おみくじが当たった!」と感じることがあります。これには確証バイアスも働いていて、「良いことが起きた」から「おみくじの大吉を信じる」というように、自分の信じたいものを結び付けて考えてしまいがちです。
人間関係
人間関係においても、他人の発言を自分に関連付けることで、バーナム効果が生じることがあります。
例えば、「真面目でしっかりしていますね」と言われた場合、多くの人に当てはまる内容であるにも関わらず、自分のことをわかってもらえていると錯覚して、相手を好意的に見るようになることがあります。
このようなケースは、ビジネスシーンでもよく起こる現象です。ビジネスでの活用例については、のちほど詳しく解説します。
バーナム効果に関連する用語
バーナム効果と関連性のある心理的な傾向として、次の2つが挙げられます。
- 確証バイアス
- プラセボ効果
どちらもバーナム効果とつながりがある言葉ですので、詳しく紹介します。
確証バイアス
確証バイアスとは、自身の考えや意見に合致する、都合の良い情報ばかりを集めて、自分の信じていることから外れる情報を無視したり、軽視したりする傾向のことです。
例えば、ある企業が新商品をリリースする際に、成功する確信を持っている場合、自社製品を支持する証拠を探す傾向にあります。否定的な情報や競合他社のデータを除外したり、肯定的なデータに重点を置いたりしてしまうので、注意が必要です。
確証バイアスとバーナム効果は、密接に関連しており、意思決定にも影響を及ぼす可能性があります。身近なところでは、血液型による性格診断がその一例です。血液型で性格を分類するのは、特に科学的な根拠があるわけではありませんが、日本では一般的です。
バーナム効果によって、誰にでも当てはまる内容を「自分はA型だから当てはまる」と考えてしまいます。それに加え、確証バイアスがかかり「A型は几帳面」という情報ばかりを集めてしまい、おおざっぱなA型の人がいたとしても、その情報を無視してしまうことがあります。
ビジネスシーンでは、偏った情報を集めるのではなく、客観的な視点を持ち、反対意見や否定的な情報はないか「自ら調べる」姿勢や対策が必要です。
プラセボ効果
プラセボ効果とは、本来は効能がない偽薬であっても、医師から薬として渡されると、効果があるものだと思い込み、服用後に症状が改善されたり、副作用が起きたりする事象を指します。プラセボ効果もバーナム効果も、思い込みからくる心理的な効果で、互いに影響し合うことがあります。
例えば、あるサプリメントが、特定の健康効果を提供すると宣伝されている場合を考えてみましょう。CMで経験談を語る人のストーリーが一般的な内容である場合、広告を見た人はバーナム効果によって「自分に当てはまる」と感じ、サプリメントの効果を期待します。
さらに、購入者が「効果がある」と信じてサプリメントを摂取する場合、プラセボ効果が働き、より大きな効果が現れる可能性があります。
このように、広告などでバーナム効果とプラセボ効果をかけ合わせることで、思い込みや期待感が現実に多大な影響を与える場合があるのです。
バーナム効果をビジネスで活用する方法
バーナム効果は、ビジネスの現場においてもよく使用されています。CMや広告でも頻繁に活用される手法ですので、ぜひ参考にしてください。
ここでは、3つの場面ごとに、バーナム効果の使い方を紹介します。
- 営業
- 広告・マーケティング
- 採用
営業
営業職が行うセールストークでも、バーナム効果は効力を発揮します。
例えば、自社が開発した業務改善ツールを提案する際、クライアントに「事務的な作業を自動化して、効率を上げたいと思っていませんか?」と尋ねたとしましょう。その結果、問われた相手は「そういえば、そうだな」と思い始めます。
実際、ほとんどの企業や組織は業務効率を上げたいと考えているため当てはまりやすいのですが、バーナム効果によって「この担当者は、自社の状況をわかってくれている」と感じやすくなります。
広告・マーケティング
広告や宣伝を展開したり、マーケティングを行ったりする際、キャッチコピーや説明文にバーナム効果を利用するのも効果的です。
例えば、美容サロンで30代の女性をターゲットにした広告では、「肌トラブルが気になり始めたあなたへ」と呼びかけます。受け手側に、自分の肌トラブルに関する不安を思い出させ、「自分のことだ」と認識してもらう効果があります。
さらに「このエステプログラムは、あなたのお肌の悩みに効果的な施術を提供します」と説明し、バーナム効果を利用して、美容サロンへの興味を引き出すことも可能です。
「あなた」と呼びかけるのもポイントで、広告を見た人が「自分に言われている」と感じやすくなります。
採用活動
バーナム効果の利用は、人事上の採用活動でも有益です。例えば、面接時に「あなたは今後のキャリアに不安を持っていませんか?」など、多くの求職者に当てはまりそうなことを言います。
それにより、応募者は「自分のことをわかってもらえている」と感じ、面接官に好意を持ち、本音を伝えやすくなるのです。
バーナム効果を活用するときの注意点
バーナム効果のビジネスへの活用は、非常に有効な手段ではありますが、注意すべき点もあります。ここでは、次の2点について解説します。
- 多用しない
- オーバーな表現はしない
それぞれの詳細を把握しましょう。
多用しない
悪用はもちろん厳禁ですが、悪用でなくとも、多用は望ましくありません。バーナム効果は、強力な心理効果の一つです。そのため、過度に使用すると逆効果になり、相手に不信感を抱かせてしまうこともあります。
多用することで「誰にでも当てはまることばかり述べている」と思われて、信頼を失わないよう、留意しましょう。
オーバーな表現はしない
あまりにオーバーな表現は、受け手側の信頼を損なう可能性があります。広告に関しては、景品表示法や薬機法などに抵触する恐れもあり、表現方法は慎重に検討しなくてはなりません。
法律に違反していなくても、顧客が実際の価値との乖離を感じると信頼が損なわれ、商品やサービスに対する興味が低下する場合もあるため、注意が必要です。
バーナム効果をビジネスに活かそう
バーナム効果の活用は、営業やマーケティングなどのビジネス活動において有効な手段です。多くの人に当てはまるような言葉を使い、顧客の心理的ニーズや欲求に合致するような内容を強調することで、商品やサービスへの関心を高められます。
ただし、誇大表現や多用によって信頼を失う恐れもあります。法令を遵守したうえで、表現方法に配慮して活用しましょう。