ウェブサイトにアクセスしたものの、読み込みが遅くてなかなかページが開かない。皆さんも毎日のように経験していることと思います。数秒経っても読み込みが終わらなければ、そのページを諦め、別のページを探しに検索結果に戻ってしまうでしょう。ウェブサイトの読み込みに時間がかかると、直帰率が上がり、SEO(検索エンジン最適化)の成果が思うように現れなくなりますが、打開策がないわけではありません。コンテンツ配信ネットワーク(CDN)を利用することで、表示速度の問題を未然に防止できます。
CDNはウェブサイトの静的コンテンツを世界各地のサーバーに保存しておき、訪問者がウェブサイトにアクセスすると、訪問者に最も近いサーバーからファイルをレンダリングします。その結果、ウェブサイトのフロントエンドのJavaScript、画像、動画の読み込みが格段にスピードアップするというわけです。
ほとんどのCMSソフトウェアのプラットフォームには、こうしたプロセスに対応するCDNが搭載されています。しかし、WordPressのようなプラットフォームを使用している場合は、ウェブサイトの高速化を可能にするCDNサービスを利用する必要があります。
この記事では、考慮すべきCDNの主な機能を説明してから、WordPressに最適な無料のCDNサービスを紹介します(以下でご紹介する各サービスのリンク先は一部を除いて英語ページです)。
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WordPressで重要なCDN機能
無料のCDNを利用する際は、WordPressサイトを高速化する基本機能を備え、かつ有料パッケージへのアップグレードが必要ないものを選ぶべきです。具体的には次の機能が重要になります。
- 世界規模のサーバーネットワーク:コンテンツ配信ネットワークの一番のメリットは、ウェブサイトの静的ファイルがエンドユーザーに近いサーバーに保存されることです。CDNのサーバーネットワークが世界規模でなければ、この目的は果たされません。
- キャッシュ機能:ウェブサイトの自動キャッシュ機能はほとんどのCDNサービスに搭載されています。この機能によって、ウェブサイトのコピーがエンドユーザーのブラウザーに一時的に保存されるため、エンドユーザーが訪問するたびにウェブサイトの読み込み速度が上がります。キャッシュのための専用プラグインをお探しの場合は、WordPressキャッシュ用プラグインについてまとめた記事(英語)をご覧ください。
- 画像と動画の最適化:CDNサービスには、画像と動画の最適化機能も欠かせません。ウェブサイトの読み込み時間が短縮され、埋め込みコンテンツをエンドユーザーにスピーディーに配信できます。
- CSS(カスケーディング スタイル シート)、JavaScript、HTMLコードのミニフィケーション:ウェブサイト内であまり使用していない不要なコードを最小限に抑えられることもCDN選定における重要な機能です。
有料のCDNサービスでは、さらにモバイルページの高速化や高度なアナリティクス(分析)などの機能を利用できます。しかし、特にブログを立ち上げたばかりでコストを抑えたいブロガーなど、有料のCDNサービスを購入できないケースもあるでしょう。
そうしたときに役立つのが無料のCDNサービスです。WordPressサイトの高速化を可能にする無料のサービスが数多く提供されています。
WordPressに最適な無料のCDNサービス
- Cloudflare CDN
- Jetpack Site Accelerator
- SmartVideo
- W3 Total Cache
- LiteSpeed Cache
- Shift8 CDN
- Optimole
- commonWP
- Amazon AWS CDN
- Google Cloud CDN
1. Cloudflare CDN
Cloudflareは、WordPressサイトで簡単に利用できる無料のCDNサービスです。Cloudflareの自動プラットフォーム最適化(APO)機能を使うと、世界規模のサーバーネットワークを通じてウェブサイトがエンドユーザーに配信されるため、訪問時の読み込み時間が短縮されます。
ウェブサイトは自動的にキャッシュされますが、ウェブサイトの画像やテキストなどのコンテンツを更新すると、キャッシュされたバージョンは削除されます。この使いやすいWordPressプラグインは、WordPressダッシュボードから直接管理できます。設定のカスタマイズが必要なく簡単にアクティベートしたい場合は、ワンクリックでデフォルト設定を適用するだけで、プラグインの利用を開始できます。
また、ウェブサイトの訪問者数、節約した帯域幅、このサービスによってブロックされた脅威の数などのパフォーマンス指標も確認できます。
このCDNサービスが適しているケース:長期間にわたるウェブサイトの運営経験があり、オンラインストアまたはブログがすでに軌道に乗っているため、将来的にCloudflareの有料プランにアップグレードすることでメリットを得られると考えられる場合。また、CloudflareのCDNはセキュリティー侵害の防止に力を入れていることから、ユーザーの個人情報を取り扱う場合にも検討したいCDNです。
2. Jetpack Site Accelerator
Jetpack(英語)は、セキュリティー、バックアップ、速度に関する機能を提供するWordPressプラグインです。ウェブサイトの読み込み時間を短縮する「Site Accelerator」というCDNサービスも提供しています。
Jetpackでは、ウェブサイトの定期的なバックアップ、複製、移行に加え、画像の自動最適化、CSSファイルやJavaScriptファイルの世界規模のサーバーネットワークへの保存、サーバー上での動画コンテンツのホスティングといった機能を無料で利用できます。このため、皆さんの動画コンテンツがYouTubeのおすすめ動画や広告の陰に隠れてしまうこともありません。
このプラグインの弱点は、キャッシュ機能が搭載されていないことです。Jetpackでは、ウェブサイトファイルのキャッシュについて、特にWP Super Cacheプラグイン(英語)の利用を推奨しています。
全体としては、とにかく使いやすいサービスです。有効にするには、Jetpackダッシュボードにアクセスして[設定]>[パフォーマンス]の順にクリックし、[サイトアクセラレーターを有効化]オプションをオンにします。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイトの運営を始めたばかりで、小規模または成長段階のウェブサイトを展開している場合。JetPackを使うと、自動的に複数のWordPressのホスティング サービス プロバイダーが利用できるため、新しいウェブサイトを立ち上げて間もない皆さんにとって使いやすいサービスと言えます。
3. SmartVideo
Swarmifyが手掛けるSmartVideoは、YouTubeの埋め込みコードを使用しなくても、ウェブサイトに動画を埋め込める無料のCDNサービスです。このCDNは、動画に特化している点が他と異なります。そのため、コンテンツクリエーターやVlog配信者、教育関係の皆さんは、まずこのCDNを検討するとよいでしょう。
SmartVideoのCDNでは、ユーザーがバッファーなしで動画を再生できることに加え、YouTubeやVimeoの埋め込みコードをSmartVideo動画に変換したり、動画プレーヤーにブランドロゴを追加したり色を変更したりできます。また、WordPressのネイティブ ブロック エディターであるGutenbergをはじめ、Divi、Elementor、Beaver Builderなどの各種WordPressページビルダーに対応しています。
このプラグインは動画コンテンツに特化しているため、追加機能は充実していません。キャッシュ、画像最適化、JavaScriptとCSSの圧縮については、他のプラグインを使用する必要があります。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイトの運営を始めたばかり、またはウェブサイト運営が軌道に乗っていて、主に動画コンテンツ(チュートリアル、講座、旅行記、Vlogなど)を公開している場合。動画コンテンツが含まれているとウェブサイトの表示速度が大幅に低下することがありますが、SmartVideoの軽量な動画プレーヤーなら心配は要りません。また、広告やおすすめの動画など、訪問者の関心をそらしてしまうようなコンテンツが表示されないのも便利なポイントです。
4. W3 Total Cache
W3 Total Cacheはキャッシュ用プラグインですが、CDNサービスも提供しています。このプラグインでは、メディアライブラリーのファイルやテーマファイルと連携できるため、そうしたファイルをW3 Total Cacheのグローバルサーバーの1つから読み込むことができます。
このプラグインは、Accelerated Mobile Pages(AMP)やセキュア ソケット レイヤー(SSL)により暗号化されたウェブサイトをサポートしています。ローカルディスク、Redis、Memcached、APC、APCu、eAccelerator、XCache、WinCacheなど、幅広いキャッシュ方法を利用できます。サポートチームによる対応も迅速です。新機能を提案したり、解決すべき問題を報告したりすると、1~3日以内に回答が得られます。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイトの運営を始めたばかり、またはウェブサイト運営が軌道に乗っていて、広範なカスタマイズオプションが備わったオールインワン型ソリューションを求めている場合。W3 Total CacheはCDNを主体とするサービスではないものの、コードの圧縮オプションや大規模なキャッシュなど、さまざまな方法でウェブサイトの高速化を実現します。
5. LiteSpeed Cache
LiteSpeed Cacheもウェブサイト向けの無料のCDNサービスです。画像の最適化、ページの自動キャッシュ、CSS、JavaScript、HTMLコードのミニフィケーション機能を備え、ウェブサイトの読み込み速度を向上させます。
さらに、独自のサーバーネットワークを利用して、CSSおよびJavaScriptの非同期読み込みや、画像およびiframeの遅延読み込みを行うことで、重要なコードのみをエンドユーザー側にレンダリングすることができます。
このCDNサービスが適しているケース:WordPressでマルチサイトまたはオンラインストアを順調に運用している場合。このプラグインは、広く利用されているeコマースプラグイン「WooCommerce」と互換性があります。一部のキャッシュプラグインは他のプラグインの機能に干渉するため、このWordPressプラグインのインストールに際しては注意が必要です。
6. Shift8 CDN
Shift8 CDNは、独自の世界規模のサーバーネットワークを利用してウェブサイトのファイルを配信するCDNプラグインです。利用開始のプロセスが複雑(Shift8 CDNへのサインアップ(英語)とWordPressでのプラグインのインストールの両方が必要なため)という一面はあるものの、サーバーの場所が公開されているため、今回ご紹介する中でも特におすすめのオプションの1つです。
Shift8 CDNは絶えず新しいエンドポイントを追加しているため、ウェブサイトのリーチが広がります。ウェブサイトの画像、動画、フォントファイル、コードなどの静的アセットは全て、独自のサーバーネットワークに保存されます。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイト運営が軌道に乗っていて、WordPressのトラフィック量や訪問者の流入元を把握している場合。サーバーの設置場所が公開されているため、サーバーに近い訪問者がシームレスにウェブサイトを利用できるという安心感が持てます。
7. Optimole
Optimoleは、あらゆるデバイスでそれぞれに適した高画質な画像を簡単に提供できるプラグインであり、ウェブサイトの読み込み速度を向上させるよう設計されています。多くの場合、画像や動画が最適化されていないと、ページの読み込みに時間がかかります。Optimoleならこのプロセスを完全に自動化できるため、憶測に頼ることなく最適化を実現できます。
Optimoleは厳密にはCDNではありませんが、AWS CloudFront CDNへの無料アクセスを提供しています。つまり、1つのサービスで2つのソリューションを利用できるということです。無料版でも有料版でも、世界各地に設置されたCouldFrontのサーバーを利用できます。
画像の最適化に強いツールですが、サイバー攻撃やDDoS(分散型サービス妨害)攻撃を防ぐ機能はありません。セキュリティーが心配な場合は、別のサービスで補うことを検討した方がよいでしょう。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイトに大量の画像を使っている場合や、CDNと画像最適化が集約されたサービスを求めている場合。大きな画像は、ウェブサイトの読み込み時間に深刻な影響を及ぼします。Optimoleはこのプロセスを自動化して、読み込み時間の問題を解消します。
8. commonWP
commonWPは、無料のパブリックCDNであるJsDelivr(英語)を使った、オープンソースのCSSおよびJavaScriptファイル向けのWordPressプラグインです。このプラグインは、オープンソースファイルを中心にWordPressサイトで使用されるファイルを集め、それを1か所から配信することで、読み込み速度を向上させます。つまり、すでにファイルがブラウザーにキャッシュされている場合に同じファイルを繰り返しダウンロードする必要がないということです。
このプラグインには、ユーザーが変更できる設定はありません。ただし、開発担当者はニーズに合わせて一部の設定を調整できます。プラグインをインストールして有効化するだけで、バックグラウンドでキャッシュに必要な情報が入力されます。
JsDelivrを使用しているため、帯域幅の制限がない、セキュリティーが強化される、世界各地に数百のポイント オブ プレゼンスが配置されているというメリットがあります。また、有効なICPライセンスが取得されているため、中国でもウェブサイトを運用できます。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイトの運営を始めたばかりで、限られた予算内でシンプルながら安全性が確保されたCDNサービスを求めている場合。
9. Amazon AWS CDN
WPAdminにより構築されたAmazon AWS CDNは、ウェブサイトのファイルをAmazonのAWS CloudFrontネットワークに保存するCDNプラグインです。Amazonは世界各地に200を超えるサーバーを有し、エンドユーザーがどこからアクセスしても、静的コンテンツがスピーディーに提供されます。
プラグインは無料でダウンロードできますが、AWSサービスの利用料金がかかります。まずは使ってみて検討したいという方のために、CloudFrontにはじっくり試せる12か月間の無料版が用意されています。1か月当たりHTTPまたはHTTPSリクエストを最大200万件、CloudFront関数を最大200万件実行できます。
このプラグインでは、AWS CloudFrontネットワークにシームレスに接続できます。必要なのはAWSアカウントへのサインアップだけです。サインアップしたら、このプラグインを使ってCloudFrontのアクティベーションを管理できます。ただし、使い方が分かりにくいという弱点があります。AWSの使用経験がない場合には、Amazonとプラグインの両方のCloudFrontマニュアルをよく読む必要があるでしょう。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイト運営が軌道に乗っていて、ある程度のAWS使用経験がある場合、またはAWSプラットフォームについて学ぶことが苦でない場合。
10. Google Cloud CDN
GoogleのCloud CDNを使うと、Googleの大規模なインフラストラクチャーのメリットを活かすことができます。Cloud CDNは、キャッシュシステムとグローバルネットワークによって、さまざまなデバイスを利用する訪問者にスピーディーにコンテンツを配信し、高速化を実現します。
このGoogle のサービスは完全無料ではありませんが、300ドル分の無料クレジットが付いた90日間の無料トライアルを提供しており、20個の製品を無料で利用することもできます。また、従量課金プランもあります。ただし、このプランの場合、トラフィック量が多いウェブサイトでは料金がかさむ可能性があります。最適なプランの選択で迷ったときのために、費用を試算できる便利な計算ツールも用意されています。さらに、このCDNには無料のSSL証明書も付属しています。
Google Cloud CDNの弱点は、初心者にとって使い方が難しいところです。すでにCloudプラットフォームを利用している場合は簡単にセットアップできます。しかしこれから利用を開始する場合は、必要な操作がいくつか増え、3つのWordPressホスティングオプションからいずれかを選ばなくてはなりません。例えばブログなら、Compute Engineを使うとセットアップが一番簡単でおすすめです。
このCDNサービスが適しているケース:ウェブサイト運営がすでに軌道に乗っていて速度を向上したい場合や、Google Cloud Platformに馴染みがある場合。また、無料サービスから有料サービスへの移行を検討中で、そのための予算が確保されている場合にも適しています。
CDNを使ってウェブサイトを高速化しましょう
ウェブサイトの表示速度は非常に重要です。Google などの検索エンジンでは、読み込み時間が検索結果での表示順位に影響します。また、読み込みに時間がかかるためにユーザーが直帰しているのであれば、それはユーザーエクスペリエンスが思わしくないことの表れとも言えます。CDNを利用することで、ウェブサイトの静的ファイルをスピーディーに配信し、ページの読み込み時間を短くし、検索結果ページでの上位表示を目指すことができます。
編集メモ:この記事は、2019年10月に投稿した内容を包括性の観点から加筆・訂正したものです。