「今やっている業務は、本当に意味があるのか?」日々課題を感じているものの、具体的な解決策がわからず、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
経営者としても、業務プロセスに問題があるのはわかってはいるものの、会社のオペレーションにメスを入れるとなると、なかなか着手できないものです。
今回は、そんな業務プロセスを改善するための「業務分析」手法を解説します。具体的な進め方や活用できるフレームワークなど、ぜひ参考にしてみてください。
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変化し続ける現代では、定期的な「業務分析」が必要
業務分析とは、「日々行なっている業務を見直し、目的に沿って改善する行為」のことです。たとえば、現在の業務プロセスがどうなっているのかを細かいタスク単位で洗い出した上で、各指標に沿って改善点を発見するなど、さまざまなメソッドがあります。
業務分析というと社内のみの問題と認識しがちですが、業務効率化を通じて、より顧客に向き合えるリソースを増やすことを念頭に進めるべきです。そうすれば最終的に、企業としての収益向上にも貢献できるはずです。
企業活動や、それを取り巻く市場環境は日々変化しています。常に変化しているからこそ、業務が100%理想的な状態で維持されることもありません。何かしらの問題点や改善策があるからこそ、業務プロセスを可視化するための業務分析が必要なのです。
業務プロセスの可視化を行う3つのメリット
業務分析を進める上で、まず着手したいのが業務プロセスの可視化です。なぜ業務プロセスの可視化が必要なのか、理由は3つあります。
問題が把握しやすくなる
業務プロセスを可視化すると、業務を進める上でどこに問題があるか把握しやすくなります。
どこに無駄な作業があるのか、誰にどのような業務が集中しているかがわかるため、改善策も講じやすくなります。
属人化を回避できる
業務プロセスの可視化は、属人化の回避にもつながります。
業務の属人化が進むと、担当者が異動したり退職するとなった時に、新たに引き継ぐ人は「どのような業務が行われていたか」のリサーチから始める必要があります。そのような事態を未然に防止するためにも、あらかじめ業務プロセスを可視化しておく必要があるでしょう。
定量的な判断がしやすくなる
業務プロセスが可視化されると、該当業務に関わる意思決定を、定量的に行いやすくなります。
たとえば、ある業務でミスが続いている場合、業務プロセスが可視化されていないと、人が不足していることに起因したものなのか、それとも業務プロセスの設計自体が煩雑なのかが定量的に判断しにくいです。
定量的な判断を下すためにも、業務プロセスの可視化は必要な作業だといえます。
分析を始める前にインプットしておくべき情報は?
一般的に業務分析では、業務で扱うさまざまな書類や管理ツールなどをインプットとして収集・チェックします。そして、その内容を整理・分析した上で、業務を最適化するための施策をアウトプットします。
ここではまず、業務分析の第一ステップとして、業務プロセスの可視化を進めるために必要なインプット例を6つご紹介します。
1. オペレーションマニュアル
業務を進めるためには、何かしらのオペレーションマニュアルがある可能性があります。具体的なオペレーションマニュアルを確認することで、どんな業務がどのタイミングで行なわれているかなどをチェックできます。
2. 業務分担表
どのような体制で、 誰がどのような業務を担当しているかをチェックできるのが、業務分担表です。用意されていない場合は、各々の担当者の役割がわかるくらいまで、細かく分けて作成するようにしましょう。
3. 業務フロー図
どんな業務が、どんな工程で進められていくかを可視化するものが業務フロー図です。自部署内で完結するものなのか、他部署も含めたプロセスになっているのかなど、業務の流れを可視化しています。
4. 業務量調査票
業務量の計測には、何点かアプローチ方法があります。たとえば営業のようなフロントオフィス系業務であれば対応顧客数などの指標があり、一方で人事のようなバックオフィス系業務であれば、システム入力データ数などがあげられます。
業務量を調査する際のポイントは、部署全体だけではなく「人単位」でも可視化することです。人単位で可視化すれば、どこにどんな負荷があるのかを発見する糸口をつかめます。
5. 業務日報
従業員による日々の業務日報も、具体的な業務内容の可視化に役立ちます。マニュアル上で定義されているオペレーションと実際のオペレーションの乖離や、そもそもマニュアル化されていない業務を見つけるきっかけになるかもしれません。
6. アンケート・ヒアリング調査
既存の業務でできたアウトプットだけでなく、アンケートやヒアリング調査を行うことで、業務上のどこに問題点があるかをあぶりだしていくのも有効です。従業員だからこそ感じる不満や不安を探るのに適しています。
業務分析に活用できるフレームワーク3選
次に、業務分析を進めるための具体的なフレームを3つご紹介します。
1. BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記)
BPMN(Business Process Modeling Notation)とは、業務プロセスを図式化する表記法です。
多くの業務プロセスは部門間をまたがっていることが多く、複雑な構造になっています。それらを標準化・簡略表示化して、メンバーを問わず理解できるようにするのが、BPMNの役割です。具体的には、プロセスやタスクを示すオブジェクトを組み合わせていくことで、業務を流れ図式として理解しやすい形にまとめます。
また、BPMNで一度業務を可視化すると、後から手を加えやすいというメリットもあります。一度組み立てた業務プロセスに、新たな業務やタスクを追加したい場合に有効だといえます。
2. バリューチェーン分析
各業務を一連の流れとして把握する際に使えるのがバリューチェーン分析です。各業務を機能ごとに細分化して、どこでどんな業務が行われ、どうやって後続業務につながっていくのかをプロセスとしてまとめ、業務改善のために分析を進めます。
バリューチェーン分析によって、どの業務でどのようなアウトプットがなされ、またどのような課題が発生しているかを、プロセスの中で確認しやすくなります。問題の把握と対策を講ずる際に有効だと言えるでしょう。
3. MECE
MECE(Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive、読み方:ミーシー)とは、「モレなく、ダブりなく」ものごとを整理できているか判断するメソッドです。
業務を設計する上で重要なのは、MECEに設計できているかどうかです。MECEでない業務は、重複が発生しているため、違う担当者で同じ作業を進めムダが生じます。
業務分析を進める上では、この「MECEか否か」を確認するようにしましょう。
業務分析を効率的に進めるための5ステップ
業務分析の進め方について、ここでは5つのステップに分けてご紹介します。
1. 業務分析の目的を明確化
まずは業務分析を進める目的を明確にします。目的なきアクションは、効果検証を行えないためNGです。
業務分析を進めることで、どのような組織課題を明確にしたいかなど、方針を決めましょう。
2. 業務分析のための情報収集プランを策定
目的が明確になったら、次に業務分析を進めるための情報収集プランを策定しましょう。
オペレーションマニュアルや業務分担表、業務フロー図など、業務に関わるさまざまな情報・データをどのように収集するか。また他部署に関わるオペレーションは、誰がどんな形でチェックするのか洗い出します。
業務分析を進める上で、インプット情報は非常に重要です。だからこそ、必要な情報を揃えるためのプランをしっかりと練りましょう。
3. 情報収集の実施
情報収集プランが策定できたら、実際に情報を集めます。
業務に関わるデータの中には、データではなく紙で管理されているものも多いでしょう。特にマニュアル類がPDFなどで電子化されているケースも多く、会社のロッカーにある大きなファイルでまとまっているケースも多いです。
必要に応じて、それらの情報を収集するだけではなく、データ化まで行うといった対応も必要になるかもしれません。
4. フレームワークやツールを活用して分析
必要な情報が収集できたら、先ほどご紹介した各種フレームワークを使って業務分析を進めていきます。
具体的なフレームワークの活用方法については、こちらの記事を合わせてご覧ください。
5. アウトプットとしてまとめる
分析作業が完了したら、最後に業務改善施策として報告書や改善プラン提案書としてまとめます。
上長が理解しやすいのはもちろん、実際に業務を行う現場メンバーがしっかりと理解でき、納得できるような改善策としてまとめるのがポイントです。
業務の可視化に使えるツール9選
業務の可視化で使えるツールといえばZoomやSlackといった、全部署横断で使えるツールがあります。しかしここでは違った角度で、以下のカテゴリに特化したツールを順番に見ていきましょう。
- マーケティング
- 営業
- カスタマーサポート
- バックオフィス
マーケティング向けツール
1. SATORI
純国産のMAツール「SATORI」は、メールアドレスが不明などの匿名の見込み客に対しても、広告やプッシュ通知、ポップアップなどでの見込み客管理ができます。
導入企業例:アデランス、ユニ・チャーム、エムエム総研など
2. b→dash
「b→dash」には、One to Oneマーケティングを進める上でさまざまな機能が搭載されています。テンプレート数も多いので、ノンコードツールとしてプログラミングが苦手な人でも扱いやすい仕様となっています。
導入企業例:岡三オンライン証券、エン婚活エージェント、楽天野球団など
営業向けツール
3. JUST.SFA
純国産のSFAツール「JUST.SFA」は、見やすいUIで営業活動に必要なさまざまな機能を実装しています。特にデータをグラフとして表示するBI的な機能は、年齢層を問わず直感的な理解をサポートするでしょう。
導入企業例:ドリームベッド、住友林業レジデンシャル、ユニマット スタッフカンパニーなど
4. Sansan
法人向けの名刺管理ツールとして市場を切り開いてきたのが「Sansan」です。名刺情報の一元化はもちろん、さまざまな顧客情報と連携させることでCRMツールとしても活用できます。
導入企業例:JTBコミュニケーションデザイン、うるる、三菱UFJリースなど
カスタマーサポート向けツール
5. Zendesk
カスタマーサポートプラットフォームの「Zendesk」は、電話からメールまでのマルチチャネルにわたる問い合わせを、一元管理できるツールです。また管理のUIも工夫されており、例えばメールでの問い合わせは「チケット」という概念で管理され、一意の番号が割り振られるので、対応漏れのリスクを大きく下げられます。
導入企業例:日本ユニシス、ゴディバジャパン、ベアーズ
6. HelpScout
カスタマーサポートチームで共有できるメール管理ソフト「HelpScout」は、世界140ヶ国以上に展開されているグローバルサービス。複数のWebサイト、Webページからの問い合わせの一括管理が可能です。
導入企業例:Mixmax、AngelList、Basecampなど
バックオフィス向けツール
7. Smart HR
クラウド人事労務ソフトの「SmartHR」は、従業員の個人情報を本人に直接入力してもらったり、帳票などさまざまな書類を自動的に作成してくれるなど、人事労務のみならず、全社的なバックオフィスをサポートするツールです。
導入企業例:テレビ朝日、メルカリ、三菱重工など
8. freee
「freee」を使用して、日々の経理データを簡単に入力することで、確定申告書類の作成がスムーズに進み、自宅から申告書を提出できます。また、毎月の運用でしっかりとデータが入力されていれば、経営状況もリアルタイムに把握できます。
導入企業例:ひかり税理士法人、ラクスル、アトラエなど
フロントオフィス全般で使えるツール
9. HubSpot CRM
「HubSpot CRM」は、見込み客や顧客を管理できるCRMツールとして、無料でありながら多様な機能を提供。顧客情報の収集から管理、社内の情報共有までワンストップで実現します。フロントオフィス業務全般に対応しています。
導入企業例:Sansan、イベントレジスト、SUBARUなど
業務分析は、社員だけでなく「顧客のために行う」ことを忘れずに
ここまで見てきた通り、業務分析によって業務を可視化するとさまざまなメリットがあります。
しかし、もちろん注意点もありますので、実施する際は事前に理解しておきましょう。
進め方でもお伝えした通り、多くの企業で業務分析、ないしは業務改善そのものの目的がしっかりと明確化されないまま進んでしまっているようです。目的が明確にないまま進めてしまうと効果検証ができません。
どの部門でどの程度業務改善をしたいなど企業によって異なると思いますが、冒頭でもお伝えした通り、業務改善は、基本的には顧客に届けられる価値を高めるために実施することを忘れないようにしましょう。
顧客体験を向上するための業務改善を実施するには、現場の意見に耳を傾けるのも不可欠です。現場なき業務改善は持続性がなく、新たなる業務遂行上の課題を作ってしまいかねません。あくまで現場を改善するという視点で、分析を進めましょう。
そうして現場に寄り添い、業務を改善したその先には、顧客体験をより良くできる可能性があり、最終的には企業の収益向上に繋がるでしょう。
本記事で紹介したフレームワークやツールを活用しながら、十分な時間をかけて業務分析を進めましょう。