近年、多くの業界でチャットボットの導入が進んでいます。チャットボットには多様な用途があることから、自社でどのように活用すべきか迷っている事業者様も多いのではないでしょうか。
今回は、チャットボットが利用されているシーンと具体的な導入事例22選をまとめて紹介します。事例から学ぶ導入の成功ポイントも挙げていますので、ぜひ参考にしてください。
チャットボットが注目されている2つの理由
チャットボットはなぜ多くの業界で注目され、導入が進んでいるのでしょうか。チャットボットが注目されている主な理由は下記の2つです。
業務効率化・生産性アップを実現できるから
チャットボットを活用することにより、カスタマーサポートをはじめとする問い合わせ対応業務の工数を大幅に削減できる可能性があります。よくある質問をチャットボットに組み込み、無人で対応できるようにすれば、有人オペレーター数や稼働時間を抑制できるからです。また、チャットボットで質問を重ねてユーザーの課題を絞り込むなど、業務効率化や生産性アップを実現するための活用方法が想定されます。
チャットボット作成ツールが充実しつつあるから
チャットボットが注目されているもう1つの理由は、チャットボット導入のハードルが下がった点にあります。チャットボットが簡単に作成できるツールが数多く登場したことで、導入に伴うコストや工数を抑えてチャットボットを活用できるようになりました。従来のように外注でチャットボットを開発することなく、手軽に導入できるようになったことは、チャットボットの活用が進んでいる大きな要因といえます。
チャットボットが利用されているシーン8選
チャットボットには多様なシーンで活用されています。具体的な活用シーン8選を見ていきましょう。
企業ホームページ|問い合わせ対応の自動化
企業のホームページにチャットボットを搭載することで、企業宛の問い合わせ対応を自動化しているケースが多く見られます。すべての問い合わせに有人対応する必要がなくなることに加え、問い合わせをする側も手軽に疑問を解決しやすくなることから、社内外にメリットをもたらす活用方法です。
サービスサイト・LP|ユーザーニーズの確認
サービスサイトやLPにチャットボットを搭載し、サイトやページで説明している内容がユーザーニーズを満たしているか確認するために活用されています。たとえば「このページの説明は役立ちましたか?」といった質問を設けておくことで、ユーザーの満足度を計測可能です。また、問い合わせ内容によっては、ニーズにマッチした情報を提供できる可能性が高まります。
ECサイト|ニーズに応じた商品検索
ECサイトにチャットボットを搭載し、ユーザーのニーズにマッチした商品検索機能を実装する活用方法です。ユーザーに予算や用途などを入力してもらうことにより、おすすめの商品などを提示できます。
コールセンター|問い合わせの一次受け
コールセンターにて、問い合わせの一次受けとして活用されているケースもあります。よくある質問への回答など、問い合わせ内容が限られる場合にはコールセンターでの有人対応が不要になるシーンもあるでしょう。
地方自治体|情報伝達や各種申請
LINEの公式アカウントなどにチャットボットを組み込み、住民にとって有用な情報や災害など緊急時の情報伝達ツールとして活用されているケースも見られます。また、チャットボット経由で公的書類の申請などが可能な仕組みを採用している自治体も少なくありません。
学校・教育機関|質問の一次受付
学校や教育機関において、生徒への情報伝達や質問の一次受付としてチャットボットが利用されているケースも見られます。願書の受付期間など、問い合わせがとくに増える時期には職員があらゆる問い合わせや質問に応じる必要がなくなる点が大きなメリットです。
社内専用|情報伝達やツールの自動設定
社内専用ツールとしてチャットボットが活用されているケースもあります。たとえば、チャットボットを通じてカレンダーや会議室予約を自動設定したり、社内の情報伝達用ツールとして利用したりすることが想定されます。
メディア|読者の不明点や疑問点を解消
Webメディアにチャットボットを搭載することにより、記事などの不明点や質問への回答に活用しているケースも見られます。読者はその場で疑問を解消できるため、コンテンツへの理解度が高まるとともに、メディアの信頼性を向上させる効果も期待できるでしょう。
チャットボット導入事例22選
ここからは、チャットボットの具体的な導入事例を紹介していきます。導入シーンや活用方法、活用メリットを挙げていますので、チャットボット活用のヒントにしてください。
国内BtoB事例
BtoBサービスでチャットボットを導入することにより、問い合わせ工数の大幅な削減を実現している3例を紹介します。
1. Wiz
Webサイトのコンバージョン向上を実現するサービスを提供する企業における導入事例です。「C-bot」と名付けられたチャットボットが、顧客のコンバージョン向上をサポートしています。
- 導入シーン:Webサイト上に設置
- 主な活用方法:ユーザーの疑問点や問い合わせに自動で回答
- 活用メリット:成果報酬型のため、コンバージョンにつながった場合のみ課金される。
2. INVOY
クラウド請求書管理サービスにおけるチャットボット導入事例です。FAQページにチャットボットを搭載し、問い合わせ対応の工数削減を図っています。
- 導入シーン:FAQページに設置
- 主な活用方法:ユーザーの問い合わせ対応
- 活用メリット:スタッフによる問い合わせ対応の工数が約8割減少した。
3. IDEA
医療業界にてコンサルティング事業を手がける企業におけるチャットボット導入事例です。問い合わせ対応をチャットボットに置き換えることで、問い合わせ対応の工数削減に成功しています。
- 導入シーン:来院予約の自動受付
- 主な活用方法:予約システムとチャットボットを連携
- 活用メリット:問い合わせ工数が9割減となった。
国内BtoC事例
BtoCサービスにおいても、チャットボットが数多く活用されています。ユーザーの利便性向上やサービスの収益性改善など、用途や導入目的はさまざまです。
4. ヤマト運輸
宅配大手のヤマト運輸では、再配達の手配にチャットボットを導入しました。自動で再配達手続きが行われるなど、便利な仕様となっています。
- 導入シーン:LINEチャットボット
- 主な活用方法:再配達手配の自動化
- 活用メリット:配達スタッフ・お客様の双方の負担が軽減される。
5. UNIQLO
リーズナブルで機能的なアパレルを展開するUNIQLOでは、会社や製品に関する問い合わせをチャットボットで受け付けています。自動で回答できないものに関しては、チャット専用オペレーターが対応する仕組みです。
- 導入シーン:オンラインストア
- 主な活用方法:会社や商品に対する問い合わせ対応
- 活用メリット:24時間365日体制で自動応答が可能
6. SHIBUYA109
SHIBUYA109では、LINEを活用したチャットボットを導入しています。テナントのショップに関する最新情報の配信や、商品検索に活用できる点がメリットです。
- 導入シーン:LINE公式アカウント
- 主な活用方法:最新情報の配信・商品検索
- 活用メリット:各ショップの最新情報をいつでも得られる。
7. マネックス証券
ネット証券のマネックス証券では、AIを活用したチャットボットを導入しています。よくある質問をもとにした問い合わせ対応への自動回答のほか、キーワードに関連した情報を得られる機能が利用可能です。
- 導入シーン:Webサイト
- 主な活用方法:問い合わせへの自動対応・関連情報の提示
- 活用メリット:AIチャットボットによる柔軟な対応
8. JR西日本
JR西日本では、観光情報サイト内にチャットボットを導入することで遺失物の問い合わせ対応に活用しています。質問に答えていくことにより、JR側に遺失物があるかどうかが確認できる仕組みです。
- 導入シーン:観光情報サイト
- 主な活用方法:遺失物に関する問い合わせ対応
- 活用メリット:JRが遺失物を預かっているかチャット上で確認できる
9. ダイナーズクラブジャパン
クレジットカード会社のダイナーズクラブジャパンでは、提携レストランにLINE経由で予約できる仕組みを提供しています。キャンセル待ちの際には、LINEの通知によって即座に予約が取れる点がメリットです。
- 導入シーン:LINE公式アカウント
- 主な活用方法:提携飲食店への予約
- 活用メリット:LINEの通知機能を活用したリアルタイムの対応が可能
10. りんな
日本マイクロソフトが開発した元女子高生AI「りんな」は、チャットボットをエンタメ活用した好例です。テキストコミュニケーションのほか、音声によるコミュニケーションも実現しています。
- 導入シーン:LINE公式アカウント
- 主な活用方法:日常会話やラップなどエンターテインメント全般
- 活用メリット:AIチャットボット活用の認知拡大
11. LOHACO
中小事業者向け通販のアスクルが個人向けに展開するサービス「LOHACO」においては、お客様サポートページやLINE上でチャットボットを活用できます。選択肢によるオペレーションと文章によるコミュニケーションを織り交ぜ、ユーザーにとって適切な情報を提供している点が特徴です。
- 導入シーン:お客様サポートページ・LINE公式アカウント
- 主な活用方法:ユーザーからの問い合わせ対応
- 活用メリット:問い合わせ全体の3分の1をチャットボットでカバー
国内の社内活用事例
チャットボットは社内向けツールとしても活用されています。社内の問い合わせ対応を自動化することにより、業務効率化や生産性向上を実現した事例を見ていきましょう。
12. 日清製粉グループ
食品メーカー大手の日清製粉では、社内イントラに保存されているデータをチャットボットに読み込ませ、社内の問い合わせ対応に活用しています。複雑な書類に目を通すことなく知りたいことが把握できたり、パソコンの不具合など情報システムに関する問い合わせにも対応できたりする点がメリットです。
- 導入シーン:イントラネット
- 主な活用方法:社内問い合わせへの自動応答
- 活用メリット:担当者による問い合わせ対応の工数削減
国内メディア事例
Webメディアでチャットボットを活用している事例を紹介します。読者とのインタラクティブなやり取りを可能にした2例を見ていきましょう。
13. formLab
サイトに設置する問い合わせフォームを作成できるメディア「formLab」では、チャットボットを導入することでユーザーの不明点や疑問点の解決に役立てています。サイトへの設置方法やメディア内の不明点をその場ですぐに問い合わせられるため、ユーザーの利便性向上に寄与する便利なシステムです。
- 導入シーン:Webメディア
- 主な活用方法:記事に関する疑問点・不明点の解消
- 活用メリット:顧客体験の改善につながる。
14. INQ
ファイナンスメディア「INQ magazine」では、チャットボットを設置することでユーザーの疑問や問い合わせに対応しています。「創業融資診断」では、質問に対して選択肢から回答を選んでいくことにより、ユーザーに合った融資を提案してもらえる仕組みです。
- 導入シーン:Webメディア
- 主な活用方法:創業融資相談
- 活用メリット:ユーザーニーズの絞り込み
地方自治体など国内公的機関
チャットボットは地方自治体などの公的機関でも活用が広がっています。具体的な活用事例を見ていきましょう。
15. 千葉県市川市
千葉県市川市は、市のLINE公式アカウント上でチャットボットを活用できる仕組みを提供しています。住民票などの公的書類を申請できるなど、営業時間などの制限なく行政手続きが可能になった点が大きなメリットです。
- 導入シーン:LINE公式アカウント
- 主な活用方法:公的書類の申請
- 活用メリット:役所の営業時間に制約されない対応の実現
16. 駒澤大学
駒澤大学では、LINE上のチャットボットで学生からの問い合わせに対応しています。学内の制度や授業に関する質問などに自動返信でき、職員の負担軽減に寄与する仕組みです。
- 導入シーン:LINE公式アカウント
- 主な活用方法:学生からの問い合わせへの対応
- 活用メリット:職員の負担軽減
海外BtoB事例
チャットボットは海外でも盛んに活用されています。海外でのBtoBにおけるチャットボット活用事例を見ていきましょう。
17. Salesforce
顧客管理や営業支援を実現するSalesforceでは、ユーザーサポートにAIチャットボットを導入しています。ユーザーの疑問に素早く回答することにより、サービスの効果的な利用を促進する仕組みです。
- 導入シーン:ユーザーサポート
- 主な活用方法:AIチャットボットによるユーザーの疑問への回答
- 活用メリット:サービスの効果的な利用の促進
18. Statsbot
ビジネスチャットアプリSlackのサポートアプリであるStatbotにも、チャットボットが採用されています。SalesforceなどのデータをSlackのチャット上に自動配信し、リアルタイム性の高い対応に役立てられる仕組みです。
- 導入シーン:Slack
- 主な活用方法:Salesforceなどの外部ツールとの連携
- 活用メリット:情報の自動収集・チャットへの集約
19. Howdy
Slack上で提案や通知を受け取れるアプリ「Howdy」も、チャットボットの仕組みを活用しています。メッセージの自動返信や回答の収集が手軽に行える点がメリットです。
- 導入シーン:Slack
- 主な活用方法:メッセージの自動返信・回答の収集
- 活用メリット:タスク自動化による業務効率化
海外BtoC事例
続いて、海外BtoCにおけるチャットボット活用事例を紹介します。
20. Burberry
ハイブランドのBurberryでは、独自開発したチャットボットを活用しています。商品紹介や問い合わせ対応を自動化することにより、業務効率化と顧客満足度の向上に寄与する仕組みです。
- 導入シーン:オンラインショップ
- 主な活用方法:商品紹介・問い合わせ対応
- 活用メリット:業務効率化・顧客満足度の向上
21. TripAdvisor
ホテル比較検討サービスTripAdvisorでは、宿泊予定地や予算などの条件をチャットボットで入力すると候補となるホテルを提案してもらえる仕組みを実現しています。条件に合うホテルを探すユーザーの手間を軽減する仕組みといえるでしょう。
- 導入シーン:ホテル比較サービス
- 主な活用方法:条件に合うホテルの検索
- 活用メリット:ユーザー体験の向上
22. NIKE
大手スポーツブランドNIKEでは、スニーカーをカスタマイズするサービスにチャットボットを導入しています。好きな画像をアップロードすると、写真に含まれる色を分析した上でスニーカーのデザインに反映される仕組みです。
- 導入シーン:Webサイト
- 主な活用方法:スニーカーのカスタマイズ
- 活用メリット:ユーザーが求めるデザインを直感的に実現できる。
事例から学ぶ導入の成功ポイント
ここまでに紹介してきた事例から、チャットボットの導入を成功させるポイントを読み解いていきます。押さえておきたい主なポイントは次の5点です。
チャットボットの導入目的を明確にする
事例からもわかるとおり、チャットボットには多彩な活用方法があります。導入目的を明確にしておかなければ、重視すべき機能や運用設計が定まりません。まずは自社でチャットボットを導入する目的を十分に検討し、固めておくことが大切です。
チャットボットの利用シーンを決めておく
チャットボットの具体的な利用シーンを決めておくことも重要です。紹介した事例においても、特定の商品やサービスに関する疑問点や不明点に対応するケースもあれば、会社全体に関わる問い合わせに対応するケースもあります。利用シーンによって想定される質問の幅広さや深さが異なることから、導入に際して利用シーンを明確にイメージしておきましょう。
チャットボットの運用イメージを共有する
チャットボット導入後の運用イメージを社内で共有しておくことも大切なポイントといえます。対象となる商品やサービスの特性によっては、問い合わせが発生する時期によって回答内容が流動的になることもあるからです。こうしたケースでは、導入後も定期的にシナリオ設定を変更し、適切な回答ができるように調整していく必要があります。メンテナンスの工数によって運用コストも変動するため、チャットボットの運用イメージを関係部門間で共有しておくことが重要です。
導入に必要なリソースを確認しておく
多種多様な業界の企業がチャットボットを導入していることからもわかるとおり、チャットボットを導入する際にはシナリオなどの事前準備が欠かせません。回答の生成に必要なデータや運用に必要なスキルを確認した上で、自社のリソースで対応できるかどうかを把握しておく必要があります。
PDCAを回して改善を図る
チャットボットは最初からあらゆる問い合わせに対応できるとは限りません。まずはスモールスタートで検証を重ねつつ、少しずつ実装レベルを高めていくのが現実的です。導入当初からすべての問い合わせにチャットボットのみで対応しようとするなど、導入のハードルを上げすぎないことをおすすめします。必要に応じて有人オペレーターへの切り替えも視野に入れるなど、現実的な対応を想定しておくことが大切です。
チャットボットの導入事例から得た学びを自社に活かそう
チャットボットには多様な用途が想定されるため、活用方法は組織ごとにまちまちです。自社の導入目的を明確にするとともに、さまざまな導入事例からヒントを得ていくことをおすすめします。今回紹介した導入事例をもとに、チャットボット活用のイメージを膨らませてください。