Excelを使いこなすのは簡単ではありません。ビジネスパーソンであれば誰もが一度はエラーに遭遇していると思います。誤ってデータを消してしまう、数値の入力を誤るなど小さなミス1つでシート全体の動作がおかしくなってしまう場合も。
本記事では、厄介なエクセルのエラー解決に役立つヒントをご紹介します。
【初心者向け】Excelでの表作成や関数が学べる基礎ガイド
基本的な操作方法から、表やグラフ、利用頻度の高い関数の活用方法を初心者でもわかりやすいよう解説。
- シートの操作方法
- 関数の使い方
- ピボットテーブルの活用方法
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Excelのエラーを減らすためのベストプラクティス
エラーの説明と解決方法の説明に入る前に、おすすめのテクニックをいくつかご紹介します。
以下の原則を守れば、エラーを未然に防いで仕事を快適に進めることができるでしょう。
・数式の先頭に必ず等号(=)を付ける
Excelで数式を使う際は先頭に等号(=)を付けましょう。全角だと反応しないため、必ず半角にします。
・乗算にはXではなく*(アスタリスク)記号を使用する
乗算にはアスタリスク記号を使用します。「×(かける)」でも反応します。
・丸かっこは必ず左右ペアで使う
丸かっこが片方しかないと反応しません。とくに、関数の中に関数を組み込む際は閉じ忘れやすいので注意しましょう。
・数式内の文字列は引用符(””)で囲む
文字列を入力する場合は引用符(””)で囲います(例:”HubSpot”)。セル番号の場合は不要です。引用符は全角だと反応しないため、必ず半角で使用します。
業務効率化を上げるためにも、これらの原則を守ってエラーを未然に防ぎましょう。
Excelでよく起こるエラーまとめ
Excelで起こるエラーは、大きく分けて下記の11種類です。
- #VALUE!
- #NAME?
- #####
- #DIV/0!
- #REF!
- #NULL!
- #N/A
- #NUM!
- #GETTING_DATA
- #SPILL!
- #CALC!
これらのエラーを順番に説明します。
#VALUE!
数値を入力するべき数式に、スペースや文字などのテキスト情報が入力されると、#VALUE!エラーが表示されます。下記の例では、数学の点数と国語の点数に「点」というテキスト情報が入力されているため、「合計」に#VALUE!エラーが表示されています。
#VALUE!の解決方法
#VALUE!エラーを解決するには、数式を見直して、数値だけが入力されているか確認してください。それでもエラーが発生する場合は、空のセルがないか、セルの参照先の数式が正しいか、特殊文字を使用してないかを確認してください。
上記の例では、点数の「点」というテキストを削除すると、合計値が表示されるようになります。
#NAME?
#NAME?エラーは、下記の場合に表示されます。
- 実行する数式中の関数名が間違っている
- 数式に入力された値そのものが計算できない
例えば、下記の例では、合計値を計算するSUM関数のMが抜けているため、#NAME?エラーが表示されています。
また、下記のように、関数名が正しくても数式に入力された値が正しくない場合にも#NAME?エラーが表示されます。
#NAME?の解決方法
#NAME?エラーを解決するには、実行する関数名が正しいか、数式内の要素が間違っていないかを確認してください。「挿入」タブの「関数」から使用する関数を挿入すると、関数名のスペルミスを防げます。
#####
#####エラーは、列の幅が足りず、入力した値を表示できない場合に表示されます。
#####の解決方法
列ヘッダーの右枠線をクリックし、列幅を広げてください。列ヘッダーの右枠線をダブルクリックすると、対象列で最も広い幅を必要とするセルに合わせて自動で列幅が調整されます。
#DIV/0!
#DIV/0!エラーは、たとえば「1/0」のように、数値が0または空のセルで除算されている場合に表示されます。電卓で計算する場合と同じように、Excelでもゼロ除算はできません。
#DIV/0!の解決方法
セルの番地を指定している場合は、まず除数(割る方の数)のセルの入力漏れがないか確認しましょう。ここが0以外の数値になっていれば解決します。
#REF!
#REF!エラーは、存在しないセルを参照する数式を実行したときに表示されます。例えば、E2セルに「=B2+C2」と数式が入っている時にB列を削除すると、B列(数学の点数)が参照できなくなるため#REF!エラーが返されます。
ここでB列を削除すると、#REF!エラーが表示されます。
#REF!の解決方法
コピーした値をセルに上書き貼り付けする場合やセルを削除する場合に、対象セルを参照している数式がないかどうか確認してください。
誤ってセルを上書き、削除してしまった場合は、「元に戻す」ボタンをクリックするか、Windowsでは「Ctrl+Zキー」、Macでは「Command+Zキー」を押して元に戻しましょう。
#NULL!
#NULL!エラーは、以下の2つが主な原因です。
- 論理積演算子を使用した際に2つの範囲に重なりがない
- 範囲演算子が正しくない
論理積演算子のエラーの場合、SUMやAVERAGEなどの関数を入力し、範囲を半角スペースで区切って2つ以上入力すると、重なり合ったセル同士を計算できます。この重なりがない場合に計算ができず、エラーが起きます。
範囲演算子のエラーの場合、範囲を表す演算子(セミコロン)や複数の範囲を表す演算子(カンマ)が抜けている場合にエラーが起きます。
#NULL!の解決方法
下記のような数式の構文が正しいことを確認してください。
・論理積演算子のエラー
選択範囲が重なり合うように設定してください。
・範囲演算子のエラー
離れた2つのセルを参照する場合は「,(カンマ)」で区切って入力してください。また、連続したセル範囲を参照する場合は最初のセルと最後のセルを「:(コロン)」で区切ります。
#N/A
#N/Aエラーは、数式で参照している数値が存在しないことを表します。
数式で使用している数値や行を間違って削除しているか、削除済みのシートや未保存のシートを参照している可能性があります。
#N/Aの解決方法
#N/Aエラーが出ている数式で参照されているシートや行が削除されていないか、間違ったシートや行を指定していないか調べてください。
#NUM!
#NUM!エラーは数式に無効な数値が含まれていると表示されます。例えば、データの中から、指定した順位番目に大きな値を返すLARGE関数で、範囲以上の取り出したい順位を指定した場合に#NUM!エラーが表示されます。
下記の例は、D2~D11の中から14番目に大きい値を取り出す数式ですが、D2~D11の値は全部で10個しかないため、#NUM!エラーになります。
#NUM!の解決方法
#NUM!エラーの解決方法は、数式で指定する数値を有効な値にすることです。上記の例では、10以下の数値を指定すれば#NUM!エラーは表示されません。
#GETTING_DATA
#GETTING_DATAエラーは、時間のかかる計算処理を実行しているときに表示されます。キューブ関数の実行中など、データの取得に時間がかかっている状態を表します。
#GETTING_DATAの解決方法
基本的には待っていれば自動で処理が終了するため、自然にエラーが解決します。
#SPILL!
#SPILL!エラーは、スピルにより入力された範囲に、余計なデータが入っているために起きるエラーです。スピル機能とは、数式を入力したセルだけでなく、隣接するセルにまで結果が表示される機能のことです。
例えば、下記のように、D2セルに数学の点数と国語の点数の合計値を求める数式を入力した場合、自動でD3~D11セルまで合計値を入力してくれます。
このスピル機能により、補完されるD3~D11の部分に余計なデータが入っていると、#SPILL!エラーになります。
#SPILL!の解決方法
スピル機能により補完される部分のセルを、空白にすることで解決できます。
#CALC!
#CALC!エラーは、配列数式で空の配列が返された場合に表示されます。配列数式とは、SUM(C3:C8*D3:D8)など、複数の値を指定し一気に計算する数式のことです。
下記の例では、FILTER関数を用いてB2~B11に範囲にある値が100より大きい値を抜き出そうとしていますが、100より大きい値が存在しないため、#CALC!エラーが表示されます。
#CALC!の解決方法
配列にデータが返されるように、元のデータや数式を記述することで解決できます。
エラーの原因をエラーインジケーターでチェックする方法
エラーが発生しているセルの左上には、緑色の三角形が表示されます。これが、エラーインジケーターです。
エラーインジケーターをクリックすると、エラーチェックオプションが表示されます。発生したエラーの原因は、エラーチェックオプションからでも確認可能です。
発生しているエラーが複数あり、それらをすべて無視する場合、一つずつではなく一括無視もできます。
(1)「ファイル」タブから「オプション」、次に「数式」の順にクリックします。
(2)数式タブのなかから「バックグラウンドでエラーチェックを行う」のチェックを外し、右下の「OK」ボタンをクリックしたら設定は完了です。
エラー値が表示されているセルを一括して見付ける方法
シート内に発生しているエラーはエラーインジケーターの有無で見付けられますが、数が多いと作業量が増えて大変です。
Excelには、条件を指定して該当するセルがある箇所まで飛ぶ機能があります。これにより、エラーが発生しているセルをスムーズに見つけられます。
(1)「ホーム」タブから「検索と選択(虫眼鏡マーク)」次に「条件を選択してジャンプ」の順にクリックします。
(2)数式項目のなかから「エラー値」にチェックを入れて、右下の「OK」ボタンをクリックしたら設定は完了です。
複数のエラー値が選択された状態になるため、文字色やセルの色を変更すれば、エラーのある箇所がわかりやすくなります。
IFERROR関数でエラー値をほかの値に置き換える方法
IFERROR関数を使用することで、シート内で発生しているエラー値を任意の値やテキストに置き換えられます。
IFERROR関数は「=IFERROR(数式,エラーの場合の値)」と入力して使用します。
(1)以下は、商品の数量と単価から合計金額を算出する表です。合計金額の部分を「=IFERROR(,”チェック”)」と入力します。
(2)数式が成立しない6行目の合計金額が「チェック」と表示されました。同様の方法で、ほかの数値や文字の表示も可能です。
Excelのエラーに焦らないよう、事前の理解を
本記事で解説したエラーの解決方法は、一度覚えてしまえば、今後同じエラーが起きたときにも対処できるようになります。
エラーの解決方法を知ることは業務効率化に繋がり、本来注力すべき業務やクライアントとのコミュニケーションに時間を割くことができます。
まずは現在起きているエラーの解決方法を知り、今後別のエラーが出た場合は、本記事の内容に立ち戻り都度覚えていきましょう。