さまざまなデータを複合的に分析できるBI(ビジネスインテリジェンス)ツール。そんなBIツールには、有料のものと無料のものが存在します。
BIツールを選ぶ際、どのような機能があり、自社にどのようなメリットをもたらすのかという点が分からないまま高額なツールを導入するのはリスクがあります。まずは無料ツールで実際に複数の機能を試してみることで、必要な機能と不要な機能の判別ができるでしょう。
本記事では、無料BIツールを含めたおすすめ製品を13種類ご紹介します。各ツールの特徴をまとめた一覧表も用意しましたので、自社にピッタリなツールを選ぶための参考にしてください。
ダッシュボードの基礎&各種BIツールのご紹介
ダッシュボードとは何か、活用のメリット・デメリット、データを可視化することでのマーケティング活動の向上についてなど、ダッシュボードの基本を体系的に学ぶことができます。
- ダッシュボードの基礎
- ダッシュボードを活用すべき理由
- BIツールの選び方
- 各種BIツールのご紹介
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無料BIツールのメリット・デメリット
まずは無料BIツールのメリットとデメリットを比較しましょう。
無料BIツールのメリット |
|
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無料BIツールのデメリット |
|
それぞれのメリットとデメリットについて解説します。
無料BIツールのメリット
無料BIツールの最大のメリットは、BIツールの標準的な機能を手軽に試せる点です。
ほとんどの無料BIツールには、ダッシュボード機能や自動レポーティング機能が搭載されているため、有料ツールを契約する前に試験的な運用を行えます。
ある程度の期間、無料BIツールを使用していると、必要な機能と不要な機能を選別できます。「無料BIツールの機能で十分」という場合はそのまま無料BIツールの利用を継続し、不足する機能があれば有料ツールに切り替えると良いでしょう。
上司や別の部署の担当者にBIツールの導入を提案する場合には、無料ツールを実際に使用したうえで有用性をアピールすると効果的です。
無料BIツールのデメリット
無料BIツールは、OLAP(複数次元データのリアルタイム分析機能)やデータマイニングといった機能が制限されていることがあります。また無料プランを展開しているような場合は、使える期間が制限されていることもあるため、注意が必要です。
ツールによっては、「ソースコードの知識が求められる」「ユーザーサポートを受けられない」などの制限もあるため、導入前に確認しておきましょう。
有料BIツールは初期設定やAPI連携が簡単にでき、充実したサポートが用意されている場合が多いので、初めから有料BIツールを導入するのも1つの手段です。
無料BIツールを選ぶうえで重要なポイント
BIツールを選ぶ前に以下のポイントを押さえましょう。
【導入する目的を明確にする】
「導入したものの誰もツールを使おうとしない」ということがないよう、事前に目的を明確にしておくことが大切です。経営陣や現場担当者にヒアリングしたうえで、「部門間のデータを統合しマネージャーが現場を把握しやすくする」といったように具体的な目的を定めましょう。
【自社に合う導入形態のツールを選ぶ】
無料BIツールには、ソフトをダウンロードして使用する「オンプレミス型」とWeb上で利用できる「クラウド型」、オンライン上に無償公開されている「オープンソース型」の3種類があります。それぞれの特徴をよく理解して適切なタイプを選び分けることが重要です。
-
オンプレミス型:運営管理に手間がかかるが、自社サーバーに依拠したセキュリティを構築できる。
-
クラウド型:カスタマイズ性に欠けるが、簡単に導入・運用ができる。
-
オープンソース型:高度なプログラミング技術を求められるが、カスタマイズ性に優れる。
【無料版】おすすめのBIツール7選
ここではおすすめの無料BIツールを7つ紹介します。
名称 |
有料版 |
主な機能 |
導入形態 |
---|---|---|---|
Google データポータル |
なし |
自動レポーティング |
クラウド |
Microsoft Power BI |
あり |
自動レポーティング |
オンプレミス |
Qlick Sense |
あり |
自動レポーティング |
オンプレミス |
Zoho Analytics |
あり |
自動レポーティング |
オンプレミス |
Pentaho |
あり |
自動レポーティング |
オープンソース |
Metabase |
あり |
ダッシュボード |
オープンソース |
Grafana |
あり |
ダッシュボード |
オープンソース |
*有料版でのみ使用可能
Google データポータル
Google が提供する完全無料のBIツールです。データの集計結果を画面に表示させる「ダッシュボード機能」や、分析結果から見やすいレポートを生成できる「自動レポーティング」など、BIツールの基本的な機能が使えます。
Google アカウント一つでさまざまなGoogle サービスと連携できるのも特徴です。Google アナリティクスやスプレッドシート、MySQLなど、その数は約400種類にもおよびます。Google ドライブを活用すると、ドライブ上に出力したレポートを保存し他者と共有できます。
有料版 |
なし |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
クラウド |
Google データポータルについては、以下の記事で詳しく解説しています。より具体的な機能や使い方を知りたい方は、以下のリンクより確認してみてください。
Microsoft Power BI(パワービーアイ)
Power BIは、Microsoft(マイクロソフト)が提供するBIツールです。同社製のExcelやDynamicsと互換性が高く、簡単な手順でデータを集計・分析できます。ほかにもSalesForce(セールスフォース)をはじめとする数百種類のツールと連携可能です。
操作感はExcelに近く、関数を使ったデータ分析にも対応しています。プランを変更するだけで簡単に機能が豊富な有料版に移行できるのも魅力です。作成したレポートは、日々集計するデータに基づいて自動的に最新の状態に更新されるので、運用にほとんど手間がかかりません。
有料版 |
Power BI Pro:月1,090円/ユーザー |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
*有料版でのみ使用可能
Qlick Sense(クリックセンス)
Qlick Senseでは分析軸を簡単に変更できるため、従来のBIツールにありがちな「分析の観点を変更しづらくインサイトを発見できない」という問題が解消されました。たとえば売上データを分析する際、「都道府県別」や「製品別」といった分析軸を自由な順序で切り替えられます。これによりデータ同士の関連性を一目で把握できます。
無料期間が長いのもメリットで、申し込みから30日間であれば、Businessプランの機能が使い放題となります。シンプルかつ直感的な操作に対応しているため、専門的な技術を持たない方でも利用できます。
有料版 |
Businessプラン:月30ドル(約3,400円) |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
Zoho Analytics
Zoho Analyticsは、クラウド版であれば15日間無料で利用できます。オンプレミス版は、パーソナルプランを選ぶことで永久無料となります。完全無料のオンプレミス(パーソナルプラン)でも、250種類以上のデータ連携やレポーティング、予測分析といった多彩な機能を活用できるのがメリットです。
Zohoは企業のデジタル化につながる幅広い製品を展開しているため、シリーズ連携に強いという特徴があります。同ブランド製品である「Zoho CRM」や「Zoho Marketing Automation」を利用している方は、Zoho Analyticsと連携させて効率的にデータ分析を行いましょう。
有料版 |
【オンプレミス版】 【クラウド版】 |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
Pentaho(ペンタホ)
高度なシミュレーション機能が搭載されたオープンソース型のBIツールです。AI・機械学習の技術を採用しており、クラスタリングや主成分分析、ランダムフォレスト等の多彩なシミュレーション結果を表示できます。
無料で利用できる「コミュニティ・エディション」と、有料版の「エンタープライズ・エディション」が用意されています。無料版でも自動レポーティングやダッシュボードなど基本的な機能を使えますが、カスタマーサポートが必要な場合は有料版がおすすめです。
有料版 |
エンタープライズ・エディション:価格は要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オープンソース |
Metabase
Javaで開発されたオープンソース型のBIツールです。ダッシュボード表示機能やOLAP分析といった基本的な機能は無料で利用できます。SAMLやJWTを活用したシングルサインオンや監査機能など、より高度な機能を使いたい場合は有料版に申し込みましょう。
一般的なオープンソースBIは導入にソースコードの知識が必要ですが、Metabaseは「jarファイル」をダウンロードして起動するだけですぐにスタートできます。簡単に導入できるのは大きなメリットだと言えるでしょう。
有料版 |
あり:価格は要問い合わせ |
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主な機能 |
ダッシュボード |
導入形態 |
オープンソース |
Grafana(英語)
14日間の無料トライアルが用意されたBIツールです。無料期間中は、「Cloud Proプラン」の機能をコストなしで利用できます。MySQLやPostgreSQLをはじめとする30種類以上のデータソースと連携できるのが特徴です。
LDAPとActiveDirectoryと連携することでユーザー認証が可能になります。ユーザーやグループごとに閲覧・編集権限を与え、ツールのセキュリティを高めたいときに便利です。
有料版 |
Cloud Proプラン:月49ドル(約5,600円)+使用量 Cloud Advancedプラン:要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
ダッシュボード |
導入形態 |
オープンソース |
【有料版】おすすめのBIツール6選
無料BIツールを試してみて、「機能が足りない」と感じる場合は、より高機能な有料BIツールを検討してみましょう。ここでは以下6種類の有料BIツールを紹介します。
名称 |
料金プラン |
主な機能 |
導入形態 |
---|---|---|---|
Tableau |
Viewer:年22,000円 |
自動レポーティング |
オンプレミス |
LaKeel BI |
要問い合わせ |
自動レポーティング |
オンプレミス |
Domo |
要問い合わせ |
自動レポーティング |
クラウド |
Sisense |
要問い合わせ |
自動レポーティング |
オンプレミス |
Yellowfin |
要問い合わせ |
自動レポーティング |
オンプレミス |
Actionista! |
要問い合わせ |
自動レポーティング |
クラウド |
Tableau(タブロー)
簡単な操作性に定評がある有料BIツールです。マウス操作だけでレポートを作成できるほか、あらゆる角度から抽出したデータを素早くダッシュボード化します。専門的な技術を持たない方でも安心して利用できるのが魅力です。
ダッシュボードにはフィルタリングやハイライトといった機能があり、目的の情報を検索しながら自分好みのフォーマットに変更できます。円グラフや棒グラフ、散布図など20種類以上のチャートタイプが用意されており、より自由度の高いデータ分析を実現します。
料金プラン |
【オンプレミス版】 【クラウド版】 |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
LaKeel BI(ラキール)
経営分析や人事定量分析など、業務ごとに役立つ多彩なテンプレートが用意されています。必要なデータをセットするだけで簡単に分析を開始できるのがメリットで、初めてBIツールを使う方でも安心して利用できます。
UIも初心者向けに工夫されています。たとえばレポートを作成するときは、ドラッグ&ドロップのみの操作で済みます。作成したレポートはWebブラウザで閲覧できるだけではなく、ExcelやPDF形式で出力できるので、メールでの送信や商談時の提案など汎用性に優れるのが特徴です。
料金プラン |
要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
Domo(ドーモ)
CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)など多数のツールからデータを抽出したい場合には、Domoがおすすめです。Domoは500以上のデータソースと連携し、あらゆるデータを一つのダッシュボードに集約できます。
作成できるグラフは「カード」という独自の名称が付いています。一つのカードを作成した後は、さらにそこから複数のカードへと分類表示できるため、多角的な分析に効果的です。作成したカードが自動的にモバイル用に最適化されるのも便利です。
料金プラン |
要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
クラウド |
Sisense(サイセンス)
膨大な量のデータ分析を想定したイスラエル発の有料BIツールです。
大量のデータを保有する大企業では、BIシステムを使うために、データを整形するためのETLと、その情報を保管するDWH(データウェアハウス)が必要ですが、本製品にはその両方が組み込まれています。ETLやDWHの導入・開発費用を抑えられるのがメリットです。
独自の「In-Chipエンジン」を搭載している点も特徴。CPU処理を最適化することで、大量のデータ収集・分析作業を高速化できます。
料金プラン |
要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
Yellowfin
異常値の検出や分析機能に優れた有料BIツールです。定点観測のデータに異常値が見つかった場合、アラート機能で通知してくれます。異常値の要因を分析したいときは、インサイト機能が自動で検証を行ってくれるので、知識や経験が不足する現場の担当者でも簡単にデータを活用できます。
細かい設定ができるセキュリティを採用しているのも特徴です。レポートの作成権限やダッシュボードの使用権限など、業務ごとに細かく権限を設定できます。
料金プラン |
要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
オンプレミス |
Actionista!(アクショニスタ)
マニュアル不要で誰でも簡単にデータ分析ができる有料BIツールです。「専門知識を持たない担当者が自らデータ分析を行う」ことをコンセプトにしている通り、Webブラウザが使える環境であれば、ドラッグ&ドロップで直感的な操作を行えます。
日本語に対応していないBIツールが多いなかで、Actionista!はシステム表記やサポートに至るまですべて日本語に対応しています。一つのライセンスを保有しているだけで全社員が利用できるため、予算管理を行いやすいのがメリットです。
料金プラン |
要問い合わせ |
---|---|
主な機能 |
自動レポーティング |
導入形態 |
クラウド |
無料BIツールで本当に必要な機能を検証しよう
BIツールは有料のものと無料のものに分かれます。無料のツールでもダッシュボード表示やレポート作成といった基本的な機能は備わっているため、導入前に必要な機能を確認したい場合は無料BIツールが役立ちます。
ただし、注意点があります。将来的に有料BIツールに切り替える可能性がある場合、無料版と有料版で別々のツールを選んでしまうと、データ移行に手間がかかります。膨大なデータを扱う大企業は、特にこのようなケースに陥りやすいと言えます。有料版に切り替える可能性がある場合、まずは有料ツールを選別したうえで、同じツールの無料プランから使うようにするとスムーズなデータ移行が可能になります。
無料BIツールを本格導入する前に、有料版への切り替えについても検討しておきましょう。