Generative AI(ジェネレーティブAI)とも呼ばれる「生成AI」は、最新のAI技術の一種で、業務効率化や生産性向上を目的としたビジネスシーンでの活用が期待されています。近年、大きな話題を集めた「ChatGPT」も生成AIの一種です。
生成AIは、学習モデルと出力できるコンテンツが、従来型AIと大きく異なります。
本記事では、生成AIと従来型AIの違いや具体的な活用方法を紹介します。生成AI・従来型AIを問わず、AIをビジネスに活用する場合に必ず押さえておきたい注意点も解説しますので、ぜひご覧ください。
生成aiをコンテンツ制作に活用するための
入門ガイド
生成AIと従来型AIの違いがわかる2つの比較ポイント
生成AIは、人間の指示に従って、機械が独自のコンテンツを生み出す技術です。一方、従来型AI(識別系AI)は、情報の整理や分類に強みを持ち、生成AIのようにコンテンツを生成する仕組みにはなっていません。
生成AIと従来型AIの違いは2つのポイントに分けられます。
<学習モデル・視点>
- 従来型AI:主に情報の整理・分類・検索手法を学習する
- 生成AI:データ同士の関係性や法則性を読み解く
<出力されるコンテンツ>
- 従来型AI:数値やテキストなどの構造化データ
- 生成AI:画像や動画などの非構造化データ
それぞれの違いをもう少し詳しく見ていきましょう。
学習モデル・視点
従来型AIと生成AIは、いずれも機械学習モデルがベースになっていますが、学習の視点が大きく異なります。
機械学習モデルとは、何らかの入力データを受け取り、その内部に存在する事象やパターンを読み取ったうえで出力を行う仕組みのことです。事前に正解情報を与えて正解判定を学習させる「教師あり学習」や、大量のデータを機械自らが学習する「ディープラーニング」などの種類があります。
従来型AIの学習内容は、情報の整理・分類・検索手法が中心です。一方の生成AIは、データ同士の関係性や、複数の情報に共通した法則性を読み解くという特徴があります。
出力される生成物
情報の整理・分類・検索に学習の重きを置く従来型AIは、数値やデータベース上のテキストをはじめとする構造化データの出力を得意とします。
この仕組みを活用すれば、入力データの正誤チェックや基準値判定、定型作業の自動化などが可能です。また、情報の特定や予測も、従来型AIの対応領域に含まれます。
一方の生成AIは、従来型AIが得意とする構造化データに加えて、非構造化データの入力にも対応しているのが特徴です。データ同士の関係性や法則性をもとに、テキストや画像、動画、音声などの新たなコンテンツを創造します。
また、コンテンツを生成するために特別な知識や大きな労力を必要としないことも、生成AIの特徴です。
例えば、テキスト生成サービスの代表格である「ChatGPT」は、テキストボックスに質問を入力するだけで、自然文での回答が表示されます。画像生成サービスで有名な「Stable Diffusion」も、生成したい画像のイメージをテキストで伝えるだけで済みます。
生成AIと従来型AIの利用シーンの違い
生成AIと従来型AIは、仕組みそのものが異なるため、どちらか一方が優れているわけではありません。そのため、それぞれの強みを理解し、場面に合わせて使い分けることが大切です。
ここでは、生成AIと従来型AIの具体的な利用シーンを紹介します。
従来型AIの主な利用シーン
従来型AIの主な利用シーンは、次の通りです。
- 経費計算やデータ入力などの定型業務の自動化
- 手書き書類のデータ化
- 売上・需要予測
- 製造物のキズや異物混入などの異常検知
- リアルタイムでの通話音声のテキスト化
- 会議や商談などにおけるリアルタイムでの自動翻訳
- 顔認証を用いたドアの施錠や本人確認
従来型AIは、文章や画像などの認識、未来の予測、機械制御などを得意としていることがわかるでしょう。生成AIのようにアイデアを創出できるわけではありませんが、ヒューマンエラーの防止や作業の時間短縮、人手不足の解消などに効果を発揮します。
生成AIの主な利用シーン
生成AIの主な利用シーンは、次の通りです。
- 営業メールや広告などの文面作成
- プレゼン資料の作成
- チャットボットのシナリオ作成
- 簡易的なコーディングやプログラミング
- コンテンツに含める画像や動画の生成
- 論文やビジネス文書の要約
- テキスト指示によるデータ分析の自動化
- 写真集やLINEスタンプの販売
新しいコンテンツを生み出せる生成AIは、特に制作業務と好相性です。生成したコンテンツから新たな着想を得たり、生成されたコンテンツをアレンジして使用したりと、AIによるサポートで制作業務を効率化できます。
ただし、2023年時点の技術では、イメージした通りのコンテンツや、誤りのない情報が生成されるとは限りません。情報の信ぴょう性は慎重に確認する必要があり、エビデンスチェックも必要です。また、可読性に欠ける文章を書き直すなどの対応が必要になることもあるでしょう。
生成AIの活用事例は、こちらの記事にまとめてあります。
従来型AI・生成AIの共通課題
AIは優れた技術ですが、責任の所在が不明瞭になりやすいという課題が存在します。AIが導き出した結果によって第三者が損害を被った場合、責任を取るべき対象が曖昧になりがちです。このような問題が起きるのは、AIに関する法整備が技術の進歩に追い付いていないためです。
また、AI技術やAIサービスの悪用により、企業自身が損害を被る、あるいは従業員が何らかの被害に遭ってしまう可能性も考えられるでしょう。最近では、AIによる偽情報の拡散やフィッシング詐欺、AIを活用した企業に対するサイバー攻撃などが問題視されています。
また、生成AIの場合は、企業イメージの悪化や著作権問題にも配慮する必要があります。
例えば、テキスト生成AIサービスを使って作成したコンテンツに誤った情報が含まれていた場合、ユーザーからの信頼性が低下することがあります。また、商用利用可能な画像生成サービスで作成したコンテンツが、学習元となったイラストと酷似していることがあるかもしれません。このようなケースでは、学習元となったイラストの製作者から抗議を受ける可能性もあります。
組織でAIを活用する際は、このような課題があることを認識し、組織全体でAIに対するリテラシーの向上に努める必要があります。AIサービスを利用する際の明確なガイドラインを設ける方法も有効です。
生成AIと従来型AIの違いをもとにAIへの理解を深めよう
生成AIは従来型AIとは異なり、学習データをもとに新たなコンテンツを生み出せます。この仕組みを利用すれば、従来型AIでは対応が難しかったクリエイティブな業務も、AIが代行できます。それにより、業務効率化や生産性向上が実現可能です。
テキストや画像だけでなく、プレゼン資料の作成やデータの分析結果の可視化など、数多くの生成AIサービスが生まれることでビジネスの効率性が高まるでしょう。将来的に大きな発展が予測される分野と考えられるため、いまのうちに生成AIをビジネスシーンに取り入れてみるのも一案です。
ただし、いまだAIに関する法律やルールが整っていないことから、セキュリティや権利関係の問題には特に注意が必要です。しっかりと社内ルールを整えたうえで、少しずつ生成AIの活用範囲を広げてみてはいかがでしょうか。