B2BとB2C、この2者間のマーケティング手法にはどのような違いがあるのでしょう?
B2B(企業対企業)とB2C(企業対消費者)では、マーケティングの対象者が異なります。B2BとB2Cのマーケティング手法には多くの共通点があるものの、各コミュニケーションチャネルで行うターゲットへのアプローチには実は大きな違いがあります。
まず初めに、B2BとB2Cの違いをきちんと理解しておきましょう。
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B2Bとは?
B2Bとは「Business-to-Business(企業対企業)」の略語で、自社以外の企業を顧客とするビジネスを意味します。B2Bのマーケティング活動では、個人ではなく、相手が所属している組織のために購入を検討する顧客のニーズ、関心領域、課題を中心に進められることを念頭に置く必要があります。ここで、B2Bの具体的な例を挙げてみましょう。
- 人事部門を対象に人材募集ツールの販売を行う人材採用ソフトウェアサービス
- オフィス設計を専門としたインテリアデザイン事務所
- マーケティング部門を対象として、コンテンツ戦略、SEO(検索エンジン最適化)、ソーシャルメディア管理、リードジェネレーション(見込み客の購買意欲の醸成)、およびその他の関連ツールを販売するマーケティング ソフトウェア サービス(と言えばもうお分かりかもしれませんが、こちらです)
B2Cとは?
B2Cとは「Business-to-Consumer(企業対消費者)」の略語で、業務の一環として購入を行う顧客ではなく、一般消費者を顧客とするビジネスを意味します。B2Cのマーケティング活動は、日常生活の中で一般の人々が持つニーズ、関心領域、課題を中心に進められることを念頭に置く必要があります。ここで、B2Cの具体的な例を挙げてみましょう。
- 一般消費者を対象に歯ブラシ、歯磨き粉、うがい薬を販売するオーラルケア専門店
- 家族向け、学生向けなど、個人を対象に居住用物件を賃貸および販売する不動産会社
- 個人向け音楽配信サービスのプレミアムプラン契約を販売する音楽配信プラットフォーム
B2BとB2C双方の性質を持つ事業
当然ながら、B2BとB2Cの事業が重なる場合もあります。実際世の中には、B2BとB2Cを兼ねた事業を同時に展開している企業が多数存在します。
例えば、企業を対象にオフィス設計(B2Bサービス)を専門とするインテリアデザイン事務所を経営しながら、住宅購入者を対象に特定の部屋の設計ソリューション(B2Cサービス)を提供しているビジネスもあれば、個人を対象に歯ブラシ、歯磨き粉、うがい薬を販売(B2Cサービス)するオーラルケア専門店を経営しながら、歯科医院向けの製品を販売(B2Bサービス)しているビジネスもあります。
上記の例のように、B2B企業とB2C企業の違いが曖昧な場合は、両者のマーケティング戦略に注目してみるとよいでしょう。B2BとB2Cのマーケティング戦略はさまざまな面で違いがあります。
B2BマーケティングとB2Cマーケティングの違い
B2BマーケティングとB2Cマーケティングの主な違いは、対象とするオーディエンスとコミュニケーション手法にあります。B2Cマーケティングでは迅速なソリューションと楽しめるコンテンツに焦点が当てられますが、B2Bマーケティングでは信頼関係の構築と企業の顧客に満足いただける製品のROIの提供が重視されます。
ところでこの違いは、具体的にどのようなところにあるのでしょう? 以下の点を確認し、B2BマーケティングとB2Cマーケティングの明確に異なる目標を理解した上で、自社戦略の方向性を的確に判断しましょう。
B2Bマーケティング 推進のコツ
B2BマーケティングではROI(投資収益率)が重要
B2Bのオーディエンスは効率と専門知識を求める一方、B2Cのオーディエンスはお得感や娯楽感を求める傾向にあります。そのため当然ながらB2Bの購入プロセスは、論理的な思考と金銭的な刺激の影響を受けやすくなるでしょう。つまり製品のROI、そして購入から得られる営業上の利益が決め手となります。結局のところ、所属組織に代わって従業員が行う購入は、企業の利益につながる場合に限られるでしょう。
B2Bの顧客が求めるものは有益な情報
B2Bの顧客は意思決定能力の高さを評価され、職場で一目置かれる存在になりたいと思っていることも少なくありません。しかし、いざ決断力が求められる場面となると、検討中の製品について適切な知識が必要になります。そんなとき力を発揮してくれるのがB2Bコンテンツマーケティングです。B2Bのオーディエンスを後々悔いの残らない購入判断に導くには、多角的な視点で業界を俯瞰するために役立つ情報を提供し、専門知識を身に付けてもらう必要があるでしょう。
詳細情報を掲載したコンテンツが必要
B2Bの顧客は、営業チームやマーケティングチームが「自社のニーズを満たしてくれる」ことを想定しています。ここで、自社製品について掘り下げて考えてみてください。自社が提供できるビジネス上のメリットとはなんでしょう? 逆に、自社が提供できないビジネス上のメリットとはなんでしょう? また、自社製品の導入による効果を得るために、顧客が知っておくべき情報とはなんでしょう?
B2Bマーケティング担当者は複数の意思決定者への対応が必要
B2Bマーケティングでは、調達部門、会計部門、その他各部門の責任者に対して、購入の承認が求められることが多々あります。一個人であるB2Cの顧客は、当然ながら友人や家族の意見を元に、独自の判断ですぐに購入を決めることがほとんどです。それに対し、B2Bの顧客は業務の引き継ぎの度に、組織内の上位レベルへ意思決定を委ねなければなりません。つまり、B2Bマーケティングの対象は1人の個人ではなく、購入プロセスの過程において意思決定を行う全ての人に及びます。
B2Bの購買ライフサイクルはB2Cの意思決定プロセスよりはるかに長い
B2Bマーケティングでは、リードナーチャリング(見込み客の購買意欲醸成)の必要性が高く、顧客体験への細やかな配慮が求められます。B2Bの購入判断は企業の長期的な目標達成に向けて進められるため、企業における製品の評価プロセスは至って複雑になります。そのため企業を対象としたマーケティング活動では粘り強さを持ち、購買ライフサイクルのさまざまな段階に応じたコンテンツを制作することが重要でしょう。
B2Bの購入契約期間は数か月から数年までに及ぶ
B2Bの購入はベンダーとの継続的な関係を伴うことが多く、個人とは異なり、企業では製品が期待に沿わないからと言って簡単に処分してしまうわけにはいきません。それだけにクライアントにとって大きな決断となることを、B2Bのマーケティング担当者は念頭に置いておく必要があります。B2Bのオーディエンスに自社製品を利用し続けたいと思われるよう、長期にわたる計画を検討しましょう。さらに、次の点を考えてみてください。自社製品に搭載された各種機能の効果を確認できるのはいつでしょう? ユーザーのニーズは経時的にどのように変化していくのでしょう?
B2Cマーケティング推進のコツ
B2Cの消費者が自社ブランドをフォローしているからと言って、緊密な関係を求めているとは限らない
B2Bの顧客は、有益な情報を求め、ブランドと緊密な関係を構築できることを望んでいます。ところがB2Cとなると、ブランドへの関心はそれほどありません。もちろん、取引を行うお客さまという意味では、B2Cの購入者もB2Bの顧客と同様のブランドロイヤリティーを持っている場合もありまが、企業からB2Cの顧客へ注がれる熱意ほどのものではないでしょう。この点を考慮した上で、過去のB2Cの顧客に対してコンテンツをどれだけ提供すべきか慎重に判断しなければなりません。また、SNSで自社をフォローしていながらも、ブログ記事の読者登録をしていない顧客がいたとしても悩むこともありません。
マーケティング活動で業界用語は禁物
ここで「ブランドボイス」についてお話しましょう。B2Cマーケティングで扱う言葉はシンプルなほど効果的です。B2Cのコミュニティーでは、ブランドに対して強い親近感を与えられなければなりません。つまり、専門用語を控え、堅苦しさを抑えた姿勢が大切です。職場の同僚たちの間で交わされる業界用語は、企業の顧客には専門知識を示す良いチャンスかもしれませんが、こうした言葉遣いによって個人の顧客は興味をすっかり失ってしまう危険があります。実際、動画コンテンツで使われる言葉遣いには特に砕けた口調を好むと回答した消費者の割合は83%(英語)にも上ります。
B2Cの購入は感情に左右されやすい
B2Cの購入は全て、多かれ少なかれ感情的な決断(英語)に基づくと言えるでしょう。最近では、購入を判断する際に理性より感情に頼りがちな人が増えています。B2Bの顧客の場合、ビジネス上の影響を考慮しなければならないため、購買行動に感情を持ち込む余裕などほとんどありません。それに対し、B2Cの顧客は何かを購入する際に直感に頼る傾向が強く見られます。というのも購入に対する説明責任が問われることがないからです。そのためB2Cマーケティングでは、製品導入の成功事例を伝えるだけで、オーディエンスの購買意欲を高める上で十分な効果が期待できるでしょう。
「楽しさ」の要素が不可欠
B2Cの顧客は、自分の買い物をする際、勤務先の企業のためでなく自分自身の楽しみに集中するものです。もちろん生活の質を向上してくれる製品が欲しいと思うのは誰でも同じですが、平均的なB2Bのオーディエンスに比べると、B2Cのオーディエンスが追及するものは断然「楽しさ」でしょう。こうした背景を考慮しつつ、マーケティング活動を進める上で、企業を対象としたオーディエンスには専門知識の提供に焦点を当て、消費者のオーディエンスには「楽しませる」ことを心掛けるようにしましょう。
B2BとB2Cのマーケティング担当者はそれぞれ特有の問題を抱えている
B2Bのマーケティング担当者がしばしば直面する最大の問題は、コンテンツの内容が不十分な上に、コンテンツ制作に費やせる時間がないことです。これは、広告予算の増額や、商品の口コミを広げる手段の多様化を求めるB2Cのマーケティング担当者の抱える問題と異なる点です。当然この違いはマーケティング戦略の実践を大きく左右します。
マーケティング活動に携わる人が把握すべきことは、見込み客に効果的にリーチするには、B2BとB2Cのマーケティング手法の違いを有効に活用した戦略が必要だということです。とはいえ、B2BとB2Cには表面的な違いはあっても、本質的には全てのマーケティング活動は「P2P(Person-to-Person)」、つまり人間対人間の営みです。B2BとB2Cのどちらを担当するにせよ、このポイントを胸に刻んでおきましょう。