現代ではAIの発展が著しく、医療や教育、マーケティングなどさまざまな分野で用いられています。企業経営も例外ではなく、迅速な経営判断や高度なデータ分析・活用をサポートするものとしてERPとAIの融合の実用化が進められています。
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本記事では、ERPとAIの関係やERPに搭載されているAI技術について解説します。また、AI搭載のERPでできることや導入メリット、具体的な活用例などもご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
ERPとAIの関係とは?
ERP(Enterprise Resources Planning:企業資源計画)とは、経営資源を一元管理し、財務・会計・人事・生産・製造などの基幹業務を統合的に管理・最適化すること、またはそれを可能にするシステムです。
一方、AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、学習をベースに人の考え方を再現するように設計されたプログラムです。データの分析、判断、音声認識、自然言語処理などを行えます。
企業の扱うデータが大規模になっている現代において、「ERPに蓄積されたデータをAIに学習させれば、経営判断や業務処理をより強力にサポートしてくるのではないか」という考えが生まれました。
従来、ERPは企業内の情報を一元管理してデータ活用を促進するシステムでした。ここにAIを融合させることで、より高度なデータ分析が可能となるほか、タスクの自動化や標準化による業務効率の向上が実現します。
AIによる高度な処理により、従来のERPでは困難だった業務への対応など、データ活用の可能性が広がっています。
ERPに搭載されているAI技術
ERPに搭載されているAI技術は、機械学習・ディープラーニング・生成AIの3つに大きく分類できます。それぞれの定義や具体例をご紹介します。
機械学習
機械学習とは、機械(コンピューター)がデータを基に自動で学習し、パターン認識やデータの予測などを行うことです。人間がプログラムするのではなく、アルゴリズムに大量のデータを解析させて、新たなデータへの対応力の向上を目的としています。学習方法は、次の3種類です。
- 教師あり学習:正解データ付きのモデルで学習する
- 教師なし学習:正解データがない状態で規則やパターンを特定する
- 強化学習:システム自身が試行錯誤しながら最適な行動を学習する
機械学習では、画像認識や自然言語処理、回帰分析、分類などが可能になります。従来の統計学の手法では特定できなかった規則やルールを明らかにし、高い精度のモデルを構築できる点が特長です。
機械学習で質の高いアウトプットを得るには、高い精度のデータを用いる必要があります。作業者自身がデータの性質を正しく理解したうえで、最適な分析手法を選択することが重要です。
ディープラーニング
ディープラーニングは、機械学習の一分野であり、多層構造のニューラルネットワークを用いてコンピューターに自動で大量のデータを学習させて、規則やルールを特定する技術です。深層学習やDL(Deep Learningの頭文字を取ったもの)とも呼ばれます。
ディープラーニングは、医療領域や流通、製造などのさまざまな領域で用いられています。コンピューターが自動でデータを学習し、分類や認識の基準を自らで特定する点が機械学習との違いです。
代表的なアルゴリズムには、画像認識に適した畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、時系列に沿って変化するデータを扱いやすい再帰型ニューラルネットワーク(RNN)などがあります。
生成AI
生成AI(Generative AI)とは、ユーザーから入力されたデータをベースにテキストや音声、画像、動画などの新たなコンテンツを自動生成する技術です。
大規模なデータセットから学習し、特定の文脈に応じた応答や創造的な作品を生み出せる点が特長です。例えば、Chat GPTやGeminiなどの自然言語処理モデルは、質問に対して的確な回答をアウトプットできます。また、Stable DiffusionやDALL-Eでは、テキストを基に画像を生成できます。
データ分析の効率化や予測などを目的に使用されていた従来のAIと異なり、生成AIでは創造的なコンテンツの創出が可能なため、ビジネス領域を中心に幅広い分野で活用が進んでいます。
AI搭載のERPでできること・メリット
AI搭載のERPでできること・メリットには、次の3点があげられます。
- 大量のデータから予測ができる
- 人間では気づきにくい問題点を検出できる
- 戦略的な意思決定ができる
大量のデータから予測ができる
AIを搭載したERPを活用すれば、大量のデータから将来値を予測して業務改善に役立てることができます。
例えば、AIを活用して過去の販売データに関する購入日時・気温・天気・季節などの項目を分析して店舗ごとの在庫管理を最適化したり、発注を増やしたりするなどの対応が可能です。
人力で膨大なデータから規則を特定するのは時間と労力がかかるため難しいでしょう。しかし、ERPにAIが搭載されていれば迅速にデータを分析でき、業務の効率化や予測精度を向上させられます。
人間では気づきにくい問題点を検出できる
AI搭載のERPを活用すれば、人間では気がつきにくい問題点を検出できます。
例えば、製造業では、ERPに蓄積された過去の稼働データやメンテナンス履歴をAIに分析させることで、故障リスクの高い機器や異常な動きを早期に検出可能です。
問題点を検出できれば、ダウンタイムにより業務が停滞するリスクを低減でき、多額の修理コストがかかる事態を未然に防ぐことができるでしょう。
戦略的な意思決定ができる
AIが、戦略的な意思決定に役立つヒントをくれるのもメリットの一つです。リアルタイムでデータ分析と提案を行えるので、現場はその情報を基に迅速な意思決定を行えます。
例えば、在庫不足が生じた場合に、他店舗の在庫状況や納品状況を分析して、最適な提案をするといった迅速な対処が可能です。複数の事象が絡んで問題が起きた場合にも、何から対処すべきかを提案してくれるので、即座に対応できるでしょう。
人による判断も可能ですが、AIを活用すれば複雑に絡み合う要素を総合的に判断して、戦略的な意思決定を迅速に行えます。
AIを搭載したERPの具体的な活用例
ここからは、AIを搭載したERPの具体的な活用例として、「財務処理の効率化」「トレンドや需要の予測」の2つをご紹介します。
財務処理の効率化
光学文字認識機能(OCR)のあるAIが搭載されたERPの活用により財務処理の効率化が可能です。光学文字認識機能とは、画像データのテキスト部分を認識し、文字データに変換する技術です。
OCRによって、紙の請求書をスキャニングし、サプライヤー名や購入した資材、その他関連するコストなどの主要データを特定できます。さらに、AIによりこれらのデータをERPで保管されている他の情報と連携させつつ、勘定照合や不正パターンの識別を行えるため、財務処理の効率化が可能です。
トレンドや需要の予測
AIを用いることで、大量のデータから機械学習やディープラーニングを行い、トレンドや需要を予測することができます。
例えば、過去のデータを基にして顧客データや売上データ、トレンドの推移、需要予測、リスク分析などを行えます。これらの情報は、市場の変動や顧客・取引先企業の要求を予測した経営戦略の策定に役立てることが可能です。
AIを搭載したERPを導入する際の注意点
AIを搭載したERPを導入する際、次の点に注意が必要です。
- AIが必ずしも正しい答えを出すとは限らない
- 費用対効果を検討する
- 管理体制・運用体制の構築が重要となる
AIが必ずしも正しい答えを出すとは限らない
AIが出す答えが必ずしも正しいとは限らない点には注意しなければなりません。
AIは、過去に学んだことを繰り返し行う際は高い精度を発揮します。しかし、未知のタスクはエラーや誤作動を起こす可能性があるからです。
学習精度を高めるためには、質の良い学習データを大量に用意する、学習期間を設けるなどの対策が求められます。AIを活用しつつも、その欠点を理解し、最終的な判断は人間が行うことが重要です。
費用対効果を検討する
ERPの導入コストは、オンプレミス型とクラウド型のどちらを選ぶかによって大きく変わるため、費用対効果を検討することも必要です。
自社にサーバーを構築するオンプレミス型は、導入費用が高額になる傾向があり、メンテナンスを行うための人材確保も必要です。クラウド型は、オンプレミス型に比べて初期費用は抑えられるものの、ランニングコストとして月額利用料がかかります。オプションでサポートを付ける場合は、その費用についても考慮する必要があります。
AI搭載のERPの導入にあたっては、自社の予算と導入後の運営体制を考慮したうえで、費用対効果を検討することが大切です。国や自治体が企業のDXを推進するための補助金やサポートを提供しているケースがあるので、適宜活用すると良いでしょう。
管理体制・運用体制の構築が重要となる
導入したERPを最大限活用するには、管理体制や運用体制を整える必要があります。なぜなら、現場からの理解が得られなければ、運用が定着しないからです。
特に、ERPの導入により既存業務から大きな変更が生じる場合は注意が必要です。なぜ、AI搭載タイプのERPを導入するのかを社内に周知したうえで、AIの活用方法や業務の進め方などを教育し、管理・運用体制の構築を進めましょう。
AI搭載のERPでデータ活用の幅を広げよう
企業の扱うデータが大規模になっている現代では、AI搭載のERPを活用する機運が高まりつつあります。
AI搭載のERPを活用すれば、より大量のデータを学習させて業務に役立てたり、人間が検出できない問題点を検出したりすることが可能です。具体的には、財務処理を光学文字認識機能を用いて効率化する、データを学習させて需要予測に役立てるなどの活用事例があります。
ただし、AIは発展途上であり、不向きな作業もあります。また、システムを有効活用するには管理体制・運用体制を整えておくことが重要です。これらの注意点を理解したうえで、AI搭載のERPを導入してデータ活用の幅を広げましょう。