ERPは、うまく活用できればデータドリブンな経営情報の把握や意思決定に役立つツールです。しかし、ERPは種類が多いため、ツール選定のミスマッチや予算超過などの問題が起きやすいことに注意が必要です。実際に、ERP導入に失敗している企業は少なくありません。
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ERP導入の失敗には、いくつかのパターンがあるため、どのような理由で失敗したのか、また失敗を回避するにはどのような対策が必要かを失敗事例から学ぶことが大切です。本記事では、ERP導入の失敗事例や失敗に至る主な原因、円滑に導入するための対策を解説しています。
ERP導入の失敗事例
ERP導入の主な失敗事例は、次の通りです。
- 予算を超過し経営を圧迫
- 導入プロジェクトの遅延または中止
- ERP選定のミスマッチ
- 期待した効果が得られない
- ERPのデータをうまく活用できない
- 既存業務の改革がうまくいかない
ERPの導入事例についてはこちらで詳しく解説しています。
予算を超過し経営を圧迫
ERP導入には、想定外のコストがかかるケースがあります。ERPの導入には、ソフトウェアの購入費用、サーバの構築費用、データ移行費用などの初期費用のほか、保守・運用にかかる人件費やソフトウェアのバージョンアップ費用などのランニングコストが生じるからです。
そのため、予算の見積もりが甘いと後になってコストが膨らみ、経営を圧迫してしまう可能性もあります。計画的に導入・運用を行うには、中長期的な運営を見据えた予算組みが必要です。
導入プロジェクトの遅延または中止
ERP導入プロジェクトは、数年単位の長期になることが珍しくありません。また、ERP導入プロジェクトが予定通りに進まず、期間が大幅に延びてしまうケースも多く見受けられます。
プロジェクトが長期化すると、人員の入れ替わりなどで引き継ぎがうまく行われずに考慮漏れや不具合が生じて、導入直前に対応しなければならないリスクが高まります。こうしたトラブルが重なると、ERP導入プロジェクト自体が中止になる可能性もあるので、計画的に進めることが大切です。
ERP選定のミスマッチ
製品の選定は、ERP導入の成功の鍵を握るほどに重要です。しかし、機能が充実しているという理由やネームバリューで選定してしまい、思っていた効果が得られずに失敗する事例は後を絶ちません。
製品のミスマッチが起こると、機能の追加や業務プロセスの見直しが必要になり、さらに多くの時間やコストがかかってしまいます。ERPの乗り換えとなると、データ移行にともなうリスクも生じるでしょう。導入後の乗り換えには困難がともなうことを理解したうえで、中長期的な運用を見据えた慎重な選定が必要です。
期待した効果が得られない
多大な時間とコストをかけてERPを導入しても、期待した効果が得られない失敗事例もあります。ERPの導入には、経営陣から現場に至るまで、関係する部門が多岐にわたります。
現場の意見を過度に尊重すると、経営陣にとって扱いにくいシステムになるでしょう。一方で、経営陣の意見ばかりを反映すると、現場にとって使いにくいシステムが構築されてしまいます。そもそも経営陣と現場でERPの導入目的が一致しないままプロジェクトが進んでしまい、導入目的を達成できないケースもあります。
ERPのデータをうまく活用できない
ERP導入が成功しても、データをうまく活用できずに、従来の経営を継続してしまう失敗事例もあります。
社内の基幹業務の情報を一元管理できるERPを導入したとしても、データを活用できなければ、部門連携の促進や業務効率化といったERPのメリットを享受できず、時間とコストが無駄になってしまいます。
また、従来の業務システムからERPへの乗り換えにともない、各部門ではフォーマットやデータ入力の規則変更などの見直しが必要になることもあるでしょう。導入に精一杯で導入後のデータの整理ルールなどが策定されていない状態ではERPを活用しきれないため、注意が必要です。
既存業務の改革がうまくいかない
ERP導入にともない本来の業務を大きく変える必要があるケースでは、現場からの抵抗が生じて業務改革が進まずに導入が失敗する場合があります。
特に、現場がERP導入の目的を理解していないと、協力を得ることは難しいでしょう。経営層がトップダウンでERP導入を進める場合に起きやすい失敗です。
ERP導入失敗の主な原因
ERP導入失敗の主な原因は次の通りです。
- ERPを導入することが目的になってしまう
- 製品理解不足、人材不足
- ベンダーに任せきりにしてしまう
- 人を巻き込む力が弱くプロジェクトが進まない
- 部門間の連携不足
- これまでのやり方に固執してしまう
- 導入後の定期的な見直しを行わない
ERPを導入することが目的になってしまう
ERPの導入自体が目的ではゴールが明確にならず、導入が失敗に終わる可能性があります。
導入目的が不明確な状態でプロジェクトを進めていくと、要件定義などの判断が求められる場面で正しい判断ができません。その結果、ERPをどのように活用して良いかがわからず、業務改革や経営改革につながらない可能性があります。導入時にどの業務に活用していくかを検討せず、導入してからERPに業務を合わせようとしても困難な場合が多いでしょう。
製品理解不足、人材不足
ERP製品の理解不足や人材不足がERP導入の失敗原因になることもあります。
選定担当者の知識不足により、自社に合ったベンダーを選定できなかったり、業務プロセスとのマッチングを正しく判断できなかったりするケースが代表的です。結果的に、自社の業務にマッチしない製品を選定する可能性が高まります。
ベンダーに任せきりにしてしまう
ERP導入には、システムの機能と業務内容の適合部分と乖離部分の分析が重要です。
ERPのベンダーはERPに精通している一方で、実際にERPを使うのは自社の現場担当者です。ベンダーはシステムの機能については詳しくても、業務内容については詳しくないため、ベンダー任せにしてしまうと正確な分析はできません。
ベンダーに任せきりにすると、業務プロセスに合わない、使いにくいシステムを導入してしまう可能性が高まります。
人を巻き込む力が弱くプロジェクトが進まない
ERPの導入には全社的な変革をともないます。そのため、相応しい権限を持つ人や多くの人を巻き込める求心力の高い人をプロジェクトリーダーにする必要があります。
特に、大規模な変革には反発が生じやすいため、求心力が低い人をプロジェクトリーダーにすると、多くの人を巻き込めずに意思決定が遅延したり、一度決めた要件が覆ったりして、プロジェクトが迷走することも起こりえます。
部門間の連携不足
部門間の連携不足が失敗を引き起こす原因となることもあります。ERPを全社で導入する場合、営業部門と製造部門など、各部門間の連携が重要だからです。ERPの導入は部門間での利害が対立しやすいため、意見調整が大きな課題になります。
一方で、各部門が遠慮してしまい課題や要望が出てこない状態では、たとえERPを導入しても連携効果を活かしきれません。結果として、連携不足を招くでしょう。
これまでのやり方に固執してしまう
従来の業務のやり方に固執することが原因で、ERP導入が失敗するケースもあります。ERPの導入には、従来のやり方を変革していくことが重要です。
ERP導入は現行の業務を見直す絶好の機会と捉えることが大切です。導入する業務や目的を明確にしたうえで現場への理解を求め、現行の業務プロセスにシステムを合わせるのではなく、システムに業務を合わせられる体制を整えましょう。
導入後の定期的な見直しを行わない
ERPは導入して終わりではありません。導入後、定期的に見直しを行い運用を改善することで、より効果を引き出せるからです。
導入を成功させるには、ERPのデータをうまく活用する必要があります。導入目的を達成できているか、運用に問題はないかなどを定期的に確認し、ERPの運用を改善しましょう。
ERP導入の失敗を防ぐための対策
ERP導入失敗を防ぐ代表的な対策は次の通りです。
- 経営陣や推進力の高いリーダーを据えたプロジェクトチームを作る
- 自社の課題と導入目的を明確にする
- 適切なスケジュールを立て、予算を確保する
- 目的に合ったERP製品を選定する
- ERP導入と業務改革を合わせて実施する
- 現場へ浸透させる
- 定期的に改善する
ERPの導入については、こちらで詳しく解説しています。
経営陣や推進力の高いリーダーを据えたプロジェクトチームを作る
ERP導入の失敗を防ぐには、プロジェクトチームを作ることが重要です。プロジェクトリーダーには、プロジェクトを積極的に進められる推進力の高い人材を配置するのが望ましいでしょう。また、ERPは顧客管理から会計まで組織全体に関わるシステムであるため、経営陣と現場のメンバーで連携しながらプロジェクトを進める必要があります。
各部門をまとめるには、リーダーに加えて経営陣もプロジェクトを積極的に主導することが大切です。現場担当者も積極的に参加させることで、ERP導入が現場の業務効率のためという意識が高まります。
自社の課題と導入目的を明確にする
ERP導入にあたり、まずは自社の課題とERPの導入目的を明確にすることが重要です。課題と導入目的を明確にできれば、適切なERPを選定しやすくなるからです。
例えば、情報共有や操作性などシステムに起因する課題はERPの導入によって解決できます。しかし、業務フローが非効率であるなどの業務課題はERPの導入では解決しない可能性があります。自社で解決したい課題が、ERPの導入によって解決するのかを見極めましょう。
適切なスケジュールを立て、予算を確保する
ERPの導入には企業全体の業務変更がともないます。そのため、数年単位の長期化が見込まれ、導入コストも大きくなります。ERP導入失敗を防ぐには、適切なバッファを見込んだ無理のないスケジュールを立て、予算を確保することが重要です。
企業によっては、スケジュールや予算に制約がある場合もあるでしょう。その場合は、制約のなかで成果を最大化できるように、導入範囲を絞って明確にすることをおすすめします。
目的に合ったERP製品を選定する
ERP導入の失敗を防ぐには、複数のERP製品やベンダーを比較評価し、自社の導入目的に合ったP製品やベンダーを選定することが大切です。そのためにはERPを導入する目的が明確である必要があります。
ERPは導入して終わりではなく、長期間運用することになります。長期的に安心して任せられる製品やベンダーを選定することが重要です。
ERP導入と業務改革を合わせて実施する
ERPの導入には、業務改革を合わせて実施することが大切です。ERPの導入と業務改革を合わせて実施すると、機能のミスマッチを防止しやすくなるからです。ERPの標準機能に適合できる業務改革ができれば、業務効率化や部門間連携などのメリットが期待できます。
ERP導入の効果を最大化させるには、既存の業務プロセスもERPに合わせて変革することが重要です。後述するように、現場の理解を得たうえで業務改革に合わせて運用体制も整えておけば、導入後の混乱を防止できます。
現場へ浸透させる
ERPの導入には業務プロセスの変更を要するため、現場担当者に大きな負担がかかります。現場担当者にERPの導入による業務改革のメリットを伝えて理解してもらうことで、現場に浸透させやすくなります。
マニュアルの整備や研修などを実施し、現場担当者の負担を軽減させることも大切です。また、ERP導入のプロジェクトチームに現場担当者を参加させることも効果的です。
定期的に改善する
ERPの導入に際して、入念に準備をしていたとしても、実際に稼働してみるとさまざまな問題や不具合が浮き彫りになることが多くあります。ERPを効果的に活用するには、運用体制や導入効果を定期的に確認し、改善を行うことが重要です。改善を繰り返すことで、問題や不具合は少なくなっていくでしょう。
問題や不具合の解消後も、定期的にERPをうまく活用できているかを確認し、改善を続けることが大切です。
ERP導入の失敗から学んで対策を立てよう
ERPの導入失敗には、いくつかのパターンがあります。ERPの導入を成功させるには、失敗事例を参考に、失敗に至る主な原因や、具体的な対策を学ぶことが大切です。本記事でご紹介した失敗事例や代表的な原因・対策を参考に、自社に最適なERPの導入を進めてください。