ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、日本語では「企業資源計画」と訳されます。従来、部門別に管理していた人事管理・財務管理などの基幹業務を一元管理して最適化することで、経営に活かす考え方です。一般的には、企業の資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理するシステムを指します。
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ERPの導入は、業務効率化やデータドリブンな経営の意思決定に効果的です。近年多くの企業で導入されていますが、実際の市場規模はどのくらいかご存知でしょうか。本記事では、日本や世界におけるERP市場規模や、市場が成長している理由を解説します。
ERPの市場規模
ERP市場は年々拡大を続けています。ここでは、世界と日本国内のERP市場規模をそれぞれ紹介します。ERPの主な機能や導入のメリットを知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
世界のERP市場規模
大手テクノロジー市場調査会社である、Apps Run The Worldのデータによると、2023年の世界のERP市場は1,242億ドルでした。さらに2028年にかけて1,482億ドルに達し、年平均での成長率は3.6%になると予測されています。
このことから、ERP市場は世界的に拡大中の市場といえます。
参考:Top 10 ERP Software Vendors, Market Size and Market Forecast 2023-2028|Apps Run The World(英語)
日本のERP市場規模
出典:ITR「ITR Market View:ERP市場2024」ERP市場規模推移および予測:提供形態別(2021~2027年度予測)
日本のERP市場規模も、年々増加傾向にあります。株式会社アイ・ティ・アールが発表した「ITR Market View:ERP市場2024」によると、ERP市場の2022年度の売上金額は前年度比11.6%増加し、2023年度は前年度比17.5%増加の見込みです。
また、同調査の「ERP市場規模推移および予測」では、2027年度にはERPの市場が3,000億円を上回ると試算されています。提供形態は、SaaSがパッケージ製品の3倍以上の売上を占めるとの予測です。要因としては、リモートワークが増えたことや、ベンダーがSaaSの販売に力を入れていることなどが考えられます。
クラウド型のERPについては、こちらの記事も参考にしてください。
日本のERP市場規模が大きくなっている理由
日本国内のERP市場規模が拡大している理由は、主に次の3つが考えられます。
- 電子帳簿保存法・インボイス制度の施行
- リモートワークの増加
- レガシーシステムのコスト増大
電子帳簿保存法・インボイス制度の施行
電子帳簿保存法とインボイス制度の施行により、多くの企業で、従来の会計システムを見直す必要が生じました。それぞれが与えた影響を解説します。
電子帳簿保存法の影響
2022年1月1日施行の電子帳簿保存法では、取引の電子データ保存について大幅な見直しが行われました。ERPの導入が促進された背景としては、主に次の2点が関係しています。
- 電子取引した税務に関する書類(請求書・領収書など)について、電子データ保存が原則義務化
- 会計システムや紙で作成した帳簿の電子データ保存が可能に
改正により書類や帳簿の保存方法が変わり、新たな対応も必要になりました。そこで役に立つのがERPです。ERPでは会計システムや人事システムなどの各業務システムのデータを一元管理できます。帳票類のフォーマットも統一されるため、電子帳簿保存法に対応しやすく、ERPの導入の流れが加速したと考えられます。
インボイス制度の影響
2023年10月1日から開始したインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、登録事業者は買い手から求められた際のインボイス発行が必須となりました。既存の会計システムではインボイスに対応できず、システム構築が必要となるケースもあります。
さらに、専用のフォーマットが必要なため、帳票を新たに作り直す手間もかかります。最新のERPでは、インボイスに対応している製品も多くあるため、容易にインボイス制度の要件に沿った適格請求書の発行が可能です。これらのことがERP市場の拡大につながったといえます。
リモートワークの増加
リモートワークの普及も、ERP市場が拡大した要因のひとつです。クラウド型のERPは、インターネット環境があれば社外からでもアクセスでき、リモートワークに適しています。
リモートワークの推進にともなって環境整備を行った企業も多く、ERPの普及につながったと考えられます。
レガシーシステムのコスト増大
レガシーシステムとは、古くなったITシステムのことです。経済産業省の「DXレポート」では、レガシーシステムを放置していると、2025年以降、日本国内にて最大で年間12兆円の経済損失が出る可能性があると試算されています。
その原因のひとつが、既存システムの効率の悪さです。レガシーシステムは、部門ごとに独立したシステムが構築されている企業も多く、横断的にデータを検索したり連携したりすることに難点があります。
また、自社での独自カスタマイズによってシステムが複雑化しているケースもあり、専門の担当者がいなくなると改修しづらい点も課題です。システムを維持するための人材確保や保守・運用コストが余計に必要です。ERPの導入でレガシーシステムを統合・整理することで、生産性の向上が期待できます。
レガシーシステムの刷新という課題の解決にERPが効果的だったことに加え、中小企業でも導入しやすい低コストのERP製品が増えつつあることも、市場拡大を後押しする要素のひとつと考えられます。
ERPの市場規模を踏まえて自社システムの転換を検討しよう
ERPは、データの一元管理による業務効率化やコスト削減だけでなく、内部統制の強化や経営意思決定のスピード向上など、多くのメリットをもたらすツールとして、世界中で需要が高まっています。特に日本では、電子帳簿保存法やインボイス制度などの法律の改正や、リモートワークの増加といった環境の変化もERPの市場拡大に大きな影響を与えています。
また、保守や運用費用の削減のためには、レガシーシステムからの転換も必要です。ERP市場の動向を理解し、適切なシステムへの転換を進めましょう。
導入に際しては、既存システムとの連携やデータ移行の方法も確認しておくとスムーズです。例えばHubSpot向けのERPアプリなら、HubSpotと連携し、各データの同期が可能です。どちらかのシステムに入力したデータが自動的にもう一方のアプリに反映されるなどの機能があるため、HubSpotをすでに導入している企業におすすめです。