ドメインが異なる複数のウェブサイトを運営している企業は、ユーザーがそれぞれのウェブサイトを行き来したときにトラッキングできるよう、「クロスドメイン計測」を設定しておく必要があります。
クロスドメイン計測を設定しておかないと、複数ウェブサイトを運営していても別サイト扱いとなるので、本来は興味をもって閲覧を続けてくれているユーザーも離脱したと捉えてしまいます。
反対に、最初に設定しておけば、ユーザーのエンゲージメントを正しく測定しGA4の分析を存分に活かせるようになります。
本記事では、GA4におけるクロスドメイン計測の正しい設定方法と手順について、わかりやすく説明します。
GA4とクロスドメイン計測の仕組み
クロスドメイン計測とは、自社が運営する複数のウェブサイトをユーザーが行き来した際に、同一ユーザーとして認識できるようにする計測方法です。
自社が運営するウェブサイトだとしても、ドメインが違えば別サイトと同じ扱いとなるため、ユーザーが遷移しても離脱扱いとなってしまいます。クロスドメイン計測を設定しておけば、同じウェブサイトの別ページへ遷移したのと同じ計測が行われます。
ユーザーのアクセス状況を追跡するためには、Cookieと呼ばれるアクセス情報(アクセス日時、回数、行動履歴など)を一時的に記憶しておくファイルを使用します。GA4の前身であるUAでは、別ドメインへユーザーが遷移したときにCookieを引き継げるよう設定する必要がありましたが、GA4では簡単な設定で同一ユーザーとして認識できるようになります。
参考:Google アナリティクスヘルプ「[GA4]ウェブサイトでの Cookie の使用」
GA4とは
そもそもGA4とは、2020年に新たに正式リリースされたGoogle アナリティクスのプロパティです。
プロパティとはアクセス計測のルールを定めたもので、従来のUAとはまったく違う考え方で設計されています。約3年間の共用期間を経て、UAは2023年7月にサポート終了となりました。
UAからGA4への移行により、アナリティクスとしてシームレスな比較ができないというデメリットがありますが、それを押してもGA4へのアップデートに至ったのはユーザーの行動をより正確に捉えるためとされています。
従来のUAではセッション単位の計測が行われていましたが、スマートフォンの普及によってユーザーの行動は多様化し、本当はエンゲージメントが続いているのにセッションが切れて行動を追えないといった状態になっていました。
GA4ではユーザー単位での計測を行い、異なるドメインのWebサイト・アプリをまたがって行き来するユーザーの行動なども把握できるようになっています。
GA4のクロスドメインの設定方法
ここでは、GA4のクロスドメインの設定方法を解説します。
設定を行う際には編集権限が必要
Google アナリティクスでは「管理者」「編集者」「アナリスト」「閲覧者」の4つのアクセス権限があります。
GA4でクロスドメインを設定する際には、「管理者」か「編集者」の権限が必要です。「アナリスト」または「閲覧者」の場合は、設定ができないのでご注意ください。
参考:Google アナリティクスヘルプ「アクセス権とデータ制限の管理」
GA4管理画面での設定方法
GA4の管理画面でクロスドメインを設定する手順は次の通りです。
- GA4の管理画面を開いて「データストリーム」を選択
- 対象のストリームを選択
- 下から3番目にある「タグ設定を行う」を選択
- 「ドメインの設定」を選択
- 「条件を追加」をクリックし、「マッチタイプ」と「ドメイン」を入力して「保存」を押して完了
2つ目以降も「条件を追加」から同様に設定できます。
参考:Google アナリティクスヘルプ「GA4クロスドメイン測定のセットアップ」
設定後の動作確認方法
クロスドメイン計測が完了したら、正常に計測できるか確認します。
実際にどちらかのサイトからクロスドメイン計測設定をしたサイトへ遷移してみて、URLの末尾に「URL+?_gl=」のパラメータが付与されているかを確認してください。
パラメータが付与されていたら、正常に計測できています。
別ドメイン側のクロスドメイン設定
すでにサイトA側のGA4でサイトBのクロスドメイン設定をしている場合、改めてサイトB側でも設定が必要でしょうか。
従来のUAでは必要でしたが、GA4では片方だけ設定すればあとは双方向でクロスドメイン計測が有効化されます。
クロスドメイン設定をした場合のレポートの見方
クロスドメイン計測を設定すると、レポートを確認する際に1点注意があります。
レポートからページごとのアクセス数を確認したいとき、下図のように「ページとスクリーン」を見るでしょう。
ここではドメイン以下のページURLごとにアクセス数が表示され、トップページは「/」で表示されます。
クロスドメイン計測を設定した状態だと、すべてのトップページを合わせた数値が表示されてしまいます。
それぞれのトップページの数値を分けて表示するには、「ページパスとスクリーンクラス」と書いてある右の+マークから「ホスト名」のセカンダリディメンションを追加します。
なおディメンションとは、数値を分析するための軸のことです。この場合は、もともとURLを軸にアクセス数を表示していたところに、新たにホスト名を軸に追加する形になります。
GA4の分析では、ディメンションが重要な役割を果たします。ディメンションについて詳しくは以下コラムをご覧ください。
クロスドメイン計測が行われていない場合のチェック
クロスドメイン計測を設定して、もし計測が行われていない場合、以下のようになっていないかチェックしてみてください。
設定を間違えている
まずはGA4での設定が正しく完了しているか確認します。具体的に、ドメインの文字列が正しく記入しているかなどをチェックしましょう。
リダイレクトが設定されている
特定のページにアクセスしたユーザーを別のページに遷移させる「リダイレクト」を設定していると、クロスドメイン計測がうまく作動しないことがあります。
リダイレクトはドメインを移行したときなどに設定することがあるので、必要のないリダイレクト処理がされていないかチェックします。専門的な処理になるので、担当の制作会社か、社内でも詳しい人物に確認をお願いしましょう。
GETパラメータが無効になっている
GETパラメータとは、クロスドメイン計測の設定「URL+?_gl=」でもついてくる「?」以降のパラメータです。
パラメータをつけることで任意の計測を可能にしますが、外部サービスを利用している場合、パラメータが無効にされている場合があります。外部サービスの提供会社へ確認するようにしましょう。
その他GA4初期に行っておきたい設定
クロスドメイン設定はGA4設定初期にやっておきたいですが、他にもやっておくと良い設定がいくつかあります。
データ保持期間を14か月に変更
GA4ではデータの保持期間がデフォルトで2か月に設定されています。
GA4の標準レポートではデータの保持期間に関係なくデータを見られますが、より詳細なデータを見られる探索レポートに影響するため、延長しておきましょう。
[管理]→[データ設定]→[データ保持]と進み、イベントデータの保持のプルダウンから14か月を選択して保存することで設定は完了します。
Google シグナルのデータ収集を有効化
Google シグナルを有効化するとユーザーの行動をより正確にトラッキングできるようになり、例えば端末を変えても認識できるようになります。
[管理]→[データ設定]→[データ収集]と進み、[Google シグナルによるデータ収集を有効にする]をオンにすることで設定は完了します。
内部のIPアドレスを除外
頻繁にアクセスするプロジェクトメンバーのIPアドレスを計測から除外することで、より正確なデータが得られるようになります。
設定するには、以下の流れで行います。
- [管理]→[データストリーム]と進み、設定中のデータストリームを選択。
- [タグ設定を行う]を選択し、[もっと見る]で展開してから[内部トラフィックの定義]を選択。
- [作成]を選択し、ルールと除外するIPアドレスを記入して[条件を追加]で設定完了。
これらGA4の初期設定については、以下のコラムにて詳しく解説しています。
クロスドメイントラッキングして更なる改善点を可視化しよう
UAでは、既存のトラッキングコードを書き換える必要がありましたが、GA4では管理画面から簡単にクロスドメイン設定が可能になりました。
GA4でクロスドメイントラッキングすると、複数ドメインを横断するユーザーの動きがわかるようになるため、より高度な分析が可能です。詳細な計測ができるようになると、これまで発見できなかった改善点が可視化されるため、必ず設定しておきましょう。