ガントチャートとは、プロジェクトの進捗管理に用いられるツールの一種です。
プロジェクトでは複数のメンバーがさまざまなタスクを担当するため、どのタスクがどこまで進んでいるかが見えにくいもの。そこで活用したいのがガントチャートです。ガントチャートでプロジェクトを「見える化」することで進捗管理が容易になり、作業に遅れが生じた場合もいち早く気づくことができます。
ガントチャートには、うまく活用するためのコツがあります。本記事ではガントチャートの基礎からメリット、具体的な活用方法や注意点などを解説します。プロジェクトマネジメントにガントチャートの導入を検討中の方はぜひご覧ください。
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ガントチャートとは?
ガントチャート(Gantt chart)とはプロジェクト管理手法の一つで、プロジェクトや生産の工程管理に用いられる「表」を指します。縦軸にタスクが並び、各タスクの横軸には棒グラフで作業の進捗状況が示されます。
多くのプロジェクトは複数のタスクによって構成されています。タスクはそれぞれ関係性を持っており、タスクAが完了しなければ、タスクBに着手できない場合があります。
このように複数のタスクが関係し合うプロジェクトでは、ガントチャートのようにビジュアルを用いてタスクと進捗状況を可視化することで、ひと目で進捗が把握できます。
ガントチャートは米国の機械工学者であるヘンリー・ローレンス・ガント氏が考案したことに由来しています。1920年代以降ガントチャートはフーバーダム建設など、さまざまな大型公共事業で活用されてきました。100年以上経った現在でもプロジェクトマネジメントの重要なツールの一つとして、世界中で活用されています。
ガントチャートを導入する目的
ガントチャートをプロジェクト管理に導入する目的は、主に2つ挙げられます。
プロジェクトで必要なタスクを可視化するため
一つのプロジェクトは複数のタスクによって構成されています。プロジェクトに必要なタスクを洗い出し、開始日・終了予定日を時系列に沿って記載することで、だれが、いつまでに、なにをすべきかがひと目でわかるようになります。
チーム内で情報を共有するため
ガントチャートはプロジェクトメンバー内で情報共有する際にも役立ちます。各タスクに担当者名を記載すれば個々の進捗状況が把握できるため、もし作業遅れが発生している場合は、必要に応じて他のメンバーがサポートするなどのリカバリーが可能です。
ガントチャートとWBSとの違い
ガントチャートと混同されがちな管理手法にWBSがあります。WBSとは「Work Breakdown Structure」の略で、プロジェクトのタスクを細分化して表にした手法のことを指します。
WBSでは、親タスクを立て、そこから子タスクに細分化していきます。たとえばWebサイト作成のプロジェクトで「トップページを作成する」という親タスクがあれば、「UI設計」「ボタン作成1」「ボタン作成2」などが子タスクになります。
そして、子タスクそれぞれに担当者・開始日・終了予定日を設定します。ツールによっては開始日と終了日を設定すると自動的に所要日数が表示されるものもあります。
一方ガントチャートは、プロジェクトの進捗状況を可視化するためのスケジュール表のことです。横軸に棒グラフを示すことで、ひと目で全体の進捗状況がわかることが特徴です。
両者の違いとしては、WBSはタスクに担当者と期日を記載したリストで、ガントチャートはWBSを基にグラフ化したリストのことです。ガントチャートを作成するためにはWBSによってタスクを洗い出す必要があるため、両者には深い関係があります。
ガントチャートを使う4つのメリット・効果
プロジェクトの責任者であるプロジェクトリーダーは、期日までの完遂を目指し、遅れが出ないように日々進捗状況を管理しなければなりません。ガントチャートはそのような場面で効果を発揮します。ここではガントチャートを使う4つのメリットと効果をそれぞれ解説します。
1. プロジェクトで今、何をしているのかを視覚化できる
ガントチャートではプロジェクトに関連するすべてのタスクが可視化されるため、プロジェクトメンバーは自分が担当する作業内容、開始日・終了日を把握できます。
さらに、自分が行うタスクがプロジェクト全体の中でどのような役割を担っているかを把握できるため、目的意識の醸成にも役立ちます。
2. プロジェクトの進捗状況を計測できる
ガントチャートではタスクごとに進捗状況を更新していくため、プロジェクト全体の進捗状況が一目瞭然です。
特に複数のタスクを必要とするプロジェクトでは、各タスクが複雑に絡み合っているケースが多く、一つのタスクが遅れることで、それ以降のタスクに影響を及ぼす場合があります。
また、何らかの理由でタスクの進捗に遅れが生じた場合に他メンバーを追加でアサインするなど、リカバリー策を取ることもできます。
3. 特定の部署、人材への過負荷を回避できる
社内の複数部門を横断するなど、大掛かりなプロジェクトを進行する場合などは、タスク難易度と人員リソース配分が上手くいかず、一部の部署や人材に負荷がかかる場合があります。
ガントチャートを利用することで、各担当者の進捗状況やタスク量が可視化されるので、業務の偏りを防ぐことができます。
4. タスクの依存関係を把握できる
プロジェクトのタスクが増えるほど、作業Aが終わらなければ、作業Bはできないというように、タスク間の関連度合いが増していきます。一つのタスクの遅れが波及して、全体の遅れにつながることもあります。タスク間の依存関係を把握することで、状況の立て直しを図ることができます。
ガントチャート作成の基本的な流れ
ガントチャート自体は、Excelやスプレッドシートがあればすぐに作成できますが、テンプレートをそのまま使用するのではなく、自社のプロジェクトに応じて設計し直す必要があります。ここではガントチャート作成の基本的な流れを解説します。
プロジェクトの目的・目標を明確にする
ガントチャートを作成する際は、はじめにプロジェクトの目的・目標を明確にしていきます。具体的には以下の3つの手順で進めます。
- プロジェクトの要求者と打ち合わせをしながら、何が求められているか要件を定義する
- 要求者の求めるものを受けて、プロジェクトの目的・目標を明確化する
- スコープ(プロジェクトが対象とする範囲)を明確にする
プロジェクトの成否は、これらの3つにかかっているといっても過言ではありません。ガントチャートは目的・ゴールから逆算をしてタスク毎にスケジュールを立てていくため、そもそもの要件定義やゴール設定を誤ってしまえば、途中からやり直しが発生してしまい、無駄な労力がかかってしまいます。
中でも3点目のスコープは、やること・やらないことを線引きすることでプロジェクトの範囲を明確化する重要な役割を持ちます。
ガントチャートの作成手順
プロジェクトの目的・目標が明確になったあとは、実際にガントチャートを作成していきます。基本的な作成手順は次の5つのステップに分かれます。
- プロジェクトを親タスクに分類し、タスク同士の前後関係を踏まえ、先に着手するものから縦軸の上から順に記載する
- 親タスクを子タスクに細分化し、タスク同士の前後関係を踏まえ、先に着手するものから上から順に記載する
- タスクごとに担当者を振り分け、担当者名を記載する
- タスクごとに開始日、終了日、所要期間を記載する
- 横軸に日付を設定する
数か月∼年間に渡るプロジェクトであれば週単位、数週間~1か月程度の短期プロジェクトであれば日単位で記載する
ガントチャートを使い計画的にプロジェクトを進めるコツ
ガントチャートの作成自体は比較的かんたんにできるものの、作成後に活用されず、放置されてしまうことも少なくありません。
ここではガントチャートを用いて計画的にプロジェクトを進めるコツを紹介します。
実績とマイルストーンによる進捗管理
ガントチャートに進捗状況を管理する列を作り、タスクの進捗状況を「◯◯%」と記入していきます。各タスクが計画通りに進行しているかどうか、全体で共有できます。
また進捗管理では、他のタスクへの引継ぎ日やテストなどの重要な期日を「マイルストーン」として、ガントチャートの日程に記号を使って印を付けます。マイルストーンの期日を視覚化することによって、締め切り意識を持ちながらタスクを進めることが可能です。
プロジェクトに遅れが生じたときの対処法
新規プロジェクトなどの場合は、想定外の事態が生じることも多いでしょう。もしタスクの進捗状況に遅れが発生した場合は、以下の手順で対処を進めます。
- 当初の計画と比べてどのくらいの遅れが発生しているかを明確化する
- 進捗遅れが発生した要因を特定する
- 計画の遅れを挽回できる対策を検討する
- 計画の変更が必要な場合は計画を変更する
ガントチャートで気をつけるべきポイント
最後に、ガントチャートを利用する際の注意点を解説します。ガントチャートの利点をうまく活かして、プロジェクトを成功に導きましょう。
タスクを詰め込み過ぎない(無理のない計画を立てる)
プロジェクトには想定外の事態がつきものです。そのため、余裕を持って計画を立てることが大切です。あらかじめ予備日を設けるなど、多少計画が遅れても挽回できるようにしておきましょう。
進捗状況の管理をツールやメンバーに依存しすぎない
ガントチャートの進捗管理は基本的に管理者またはプロジェクトリーダーが直接行うようにしましょう。
進捗管理をメンバーに委ねてしまうと、入力忘れなどによって正しく進捗が把握できなくなります。また、人によって進捗状況の判断基準が曖昧になるといった事態も考えられます。
ガントチャートに頼りすぎず、主体性を持って柔軟に進捗を管理する姿勢も大切です。
ガントチャートでプロジェクトをコントロールしよう
ガントチャートは今から100年以上も前に考案された管理手法ですが、現在もこうして使われ続けているのは、それだけ時間・タスク管理手法として認められてきたからでしょう。
初めのうちは取り扱いに戸惑うこともありますが、まずは活用してみることで、プロジェクトの生産性向上に役立つことが実感できるはずです。
ガントチャートをはじめ、日常業務にツールや工夫を取り入れることで、業務生産性に大きな差が出てきます。納期に遅れない、タスクに抜け漏れがないことはもちろんのこと、余裕を持ったスケジュールで作業を進めれば、おのずと仕事のクオリティも上がり、顧客満足度の向上にもつながります。
プロジェクトの規模が大きくなるほど、タスクや関わる人の数が膨大になります。その中でもプロジェクトを成功に導き、チーム一体となって大きな成果を上げるために、ぜひガントチャートを活用してみてはいかがでしょうか。