ハロー効果とは、「対象を評価する際、顕著な特徴に印象が引きずられることで、対象の評価が歪んでしまう心理現象」を指します。人事評価や営業活動、マーケティングといったビジネスの現場でも起こる現象であり、マイナスに働くこともあれば、プラスに作用させることも可能です。
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本記事では、ハロー効果の基本やビジネスにおける活用例を紹介します。ぜひ、日々の業務に活かしてください。
ハロー効果とは
ハロー効果は、ある対象を評価する際に、一部の目立つ特徴に引っ張られて、他の部分も同じような評価を下してしまう現象です。心理学者のエドワード・ソーンダイク氏によって、名付けられました。
例えば、「有名大学の出身だから仕事ができる人だ」と、学歴で職務への有能性を判断してしまうこともあるでしょう。実際には、有名大学を卒業していることと仕事の評価は別であるにも関わらず、このように評価を歪めてしまうのがハロー効果です。
ハロー効果は、固定観念や先入観などによって認識を歪めた判断をしてしまう、認知バイアスの一種といわれています。そのため、先入観が強い人ほど、ハロー効果に惑わされる可能性が高いです。
ハロー効果の語源は「halo」で、仏や菩薩、聖人などの頭上に描かれる後光・後輪を意味します。強い光が背後から当たると対象物が見えにくくなることが由来であり、「光背効果」や「後光効果」とも呼ばれます。
ハロー効果の種類
ハロー効果には、「ポジティブ・ハロー効果」と「ネガティブ・ハロー効果」の2つがあります。ひとつずつ解説します。
ポジティブ・ハロー効果
ポジティブ・ハロー効果は、ひとつの肯定的な特徴や評価が、全体の印象に良い影響を与える現象です。
例えば、「一流大学を出ているから優秀だろう」「ブランドの評判が高いから、その企業が手がける製品は良いものに違いない」「笑顔が素敵だから良い人そう」といった評価を指します。
ポジティブな要素が全体の評価を引き上げることがあるため、広告やマーケティング戦略において活用されることもあります。
ネガティブ・ハロー効果
ネガティブ・ハロー効果は、ひとつの否定的な特徴や評価が、全体の印象に悪い影響を与える現象です。例えば、「学歴が低いから仕事ができなさそう」「あまり笑わないので、気難しい人かもしれない」などの評価を示します。
このように、ネガティブな要素がポジティブな要素を覆い隠し、会社全体や個人の評価を低下させてしまうケースがあります。
ハロー効果と関連する心理学用語との違い
ここでは、ハロー効果と関係の深い、2つの心理学用語との違いを解説します。
- ホーン効果
- ピグマリオン効果
順番に理解しましょう。
ホーン効果との違い
ハロー効果が「一部の特徴によって全体の評価を歪めること」なのに対し、ホーン効果は「一部の否定的な特徴が、全体の評価を歪めること」を指します。
つまり、ホーン効果はハロー効果のひとつであり、ネガティブ・ハロー効果と同じ意味です。ハロー効果とホーン効果を対比させて、ハロー効果をポジティブ・ハロー効果、ホーン効果をネガティブ・ハロー効果と表す場合もあります。
なお、ホーン効果のホーンとは「horn(角)」を意味しており、悪魔の角効果とも呼ばれます。
ピグマリオン効果との違い
ハロー効果は「評価者が、相手の一部の特徴に引っ張られて全体の評価をしてしまうこと」なのに対し、ピグマリオン効果は「評価される人が、評価者の期待に引っ張られて好結果を出す現象」を指します。
ピグマリオン効果の具体例としては、部下に対して「あなたは非常に優秀な人材です」と期待感を示すと、当人は上司の期待に応えようと、高い成果を出そうとするケースが挙げられます。
反対に同程度の能力を持つ人でも、上司から期待されていないと感じる場合、自信を失いやすくなり、結果的に成果にもつながりません。
つまり、両者は影響を受ける人が異なるのです。ハロー効果は「評価者」が影響を受け、ピグマリオン効果は「被評価者」が影響を受けます。
ビジネスにおけるハロー効果の活用例
続いて、ビジネスにおけるハロー効果の具体的な活用例を、マーケティング・営業・採用面接の3つのシーンに分けて紹介します。
マーケティング
マーケティングでは、ハロー効果を利用した戦略が多く用いられています。マーケティングでの代表的な活用方法は、次の通りです。
- モデルの起用
- 提携企業のロゴの掲載
- 口コミの掲載
それぞれの有効性やメリットを把握しましょう。
モデルの起用
商品やサービスの広告において、魅力的なモデルを起用することで、商品全体の印象を良くする効果があります。
例えば、コスメティクス会社が新商品の広告キャンペーンを展開する際、好感度の高いモデルを起用し、笑顔と素敵な雰囲気を強調した広告を制作します。モデルの良いイメージに引っ張られるため、商品がより魅力的に感じられ、消費者はその商品を購入したくなるのです。
提携企業のロゴの掲載
企業のWebサイトで、提携先として大手企業の名前やロゴを掲載する場合があります。「大企業と提携している会社である」という安心感を、ユーザーから引き出すことが目的です。
こちらもハロー効果を狙った手法で、世間的にあまり名前の知られていない中小企業などで、特に効果を発揮します。
口コミの掲載
飲食店や美容系サロンなどのBtoCビジネスでは、口コミを参考にする利用者が多くいます。「高評価の店舗は良いに違いない」と思い込むのも、ハロー効果のひとつです。
SNSのハッシュタグ投稿や、公式サイトへの口コミ投稿フォーム設置など、ユーザーが口コミを気軽に発信できるような仕組みを整えるのも良いでしょう。
ただし、高評価口コミの投稿で割引を行うような手法は、消費者庁のガイドライン違反※に該当するため注意が必要です。
※ステルスマーケティングを不当表示とする、景品表示法 第5条第3号に抵触します。
営業
営業担当者の外見や言動が魅力的で好印象であると、顧客はその会社や商品に対する信頼感が高まり、取引成立の可能性が上がります。
例えば、営業担当者が清潔でシワのないシャツとスーツを着用して、自信を持って商品の特長を説明した場合を想像しましょう。堂々とした態度と清潔感のあるたたずまいから、顧客はプロフェッショナルな印象を抱き、会社に対しても信頼を寄せやすくなります。
ほんのわずかな心がけで、相手に与える印象が大きく変わるので、まずは身だしなみから整えましょう。
採用面接
面接官が応募者の第一印象で好感を持つと、その候補者は、他の面でもポジティブな評価を受けやすくなります。
例えば、明るい表情で自信を持って話す応募者がいれば、面接官はハロー効果によって他の能力についても高評価を下しやすく、仕事もできるだろうと思いがちです。
ひとつの長所や短所が全体の印象にも影響する場合があるため、人材を採用する企業側は「バイアスがかかっていないか」を意識して、候補者を選ぶことが大切です。
ハロー効果をビジネスに活用しよう
ビジネスにおいて、ハロー効果を理解し活用することは、優位性を持つこととなり得ます。
マーケティングや広告、営業などの分野では、顧客やパートナーとの良好な関係を築くために、ハロー効果を活かした戦略を展開することが有効です。採用面接や人事評価においては、先入観や固定観念にとらわれていないか留意し、公平かつ客観的な評価を行うことも大切です。
ハロー効果の有効性を踏まえたうえで、適切に、日々の業務で活用しましょう。