東洋ビジネスエンジニアリング株式会社(以下、東洋ビジネスエンジニアリング)では、これまで、セミナーの実施や、展示会への出展により新規顧客を獲得していました。
しかし、製品が一般に広く普及していくに従い、アナログ的なやり方では、以前のようなパフォーマンスを出すことが難しくなりました。
そうした状態を脱するために、ハブスポットを利用したインバウンドマーケティングをスタート。
以前は1週間必要だったウェブの修正などが1時間で完了するほど作業時間が大幅に削減できた上に、特定セグメント(特定顧客層)向けメールの回帰率が40%ほどに上昇。ハブスポット導入から1年数ヶ月で大きな効果を出しています。
従来の方法では、新規客を獲得することが困難に
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、1996年に「mcframe」の初版をリリースして以来、日本のものづくり業界向けに生産管理パッケージの開発、販売を行ってきました。
「mcframe」は、電子部品や精密機器といった組立加工系や医薬品・化粧品といったプロセス系、販社・通販といった流通サービス系業界にいたるまで、560社2000サイト以上の幅広い業界で利用されています。
東洋ビジネスエンジニアリングマーケティング企画本部、マーケティング部で部長を務める山下 武志氏(山下氏)はハブスポット導入の経緯を以下のように語ります。
(左:山下氏 右:服部氏)
「新規顧客のデータ獲得のために、これまではセミナーや展示会への出展を実施。数年前までは、そうしたいわゆるアナログ的な活動で、新たな案件に繋がるリードを取得できていました。
しかし、時代とともに自社製品の市場はコモディティ化が進み、徐々に従来のやり方では望む成果を挙げにくくなってきていました。そこで、新しい可能性を広げるために時勢に合わせたマーケティング手法の必要性を強く感じるようになったんです。
デジタル時代のマーケティングとは何かを模索し始めたのが、2014年ごろ。当時から、収集したリード(潜在顧客の情報)をデータベースで管理するということは行っていたので、それをどのように発展させるかというところから構想を始めました。」
ちょうどその頃、日本に“マーケティングオートメーション(マーケティング活動における、定型的業務の自動化)” という概念が入ってきました。
“マーケティングオートメーション”の基本思想には、見込み客獲得後の行動を情報として集め、それを発展・育成させていくというものがあります。
以前から、社内でGoogleアナリスティクスのデータやメールに対する顧客の反応を分析して、何か活用できないかと議論をしてきたという経緯がありました。
当初、山下氏は “マーケティングオートメーション”を基盤として、無駄のないマーケティングを実施したいと考えたそうです。
「そのタイミングで、当時日本のハブスポット代理店として最も大きかったマーケティングエンジンの方が書いているブログを読んだり、アメリカなどの海外サイトで発信されている情報を見つけたりして、ウェブでのマーケティングを再設計するなら、マーケティングオートメーションだけではなく、“インバウンドマーケティングの考え方”を取り入れる必要性を感じました」
そうして東洋ビジネスエンジアリングは、自社マーケティングをインバウンドマーケティングへとシフトしていくことになります。
これまで、セミナーや展示会で新規顧客を集めていましたが、それだけで効果を出すことが難しくなり、ウェブマーケティングの必要性を強く感じました。
マーケティング企画本部 マーケティング部 部長 山下 武志 氏
ハブスポット代理店とともに、導入前の青図を描き手順を掴む
新たにウェブでの集客手法に取り組むにあたり、山下氏を始めウェブ担当メンバーは各社のマーケティングツールをチェックしたとのこと。
「ウェブマーケティングの仕組みづくりのプロジェクトは、16年4月からスタート。ウェブサイトやメールなど、いろいろと変更したり新規に作成したりしなければならないものがあったので、全部ワンストップでできるものを探して、複数のウェブマーケティングツールを見させていただきました。結果、あらゆる機能を装備しているのがハブスポットでした」
まだ目立つ事例もない状況でしたが多くの企業が直面するような社内的障壁は、ハブスポットを導入するにあたってなかったそう。
「“よそがやっているから、うちもやろう”という入り方をしていないので、最初はコンセプトだけをまとめて、どんどん(ハブスポットを使うための準備を)進めていきました。もともとリードデータが3万5千件くらいあったんですよ。
けれど、それを使いきれてなかった。ですから、まず最初にハブスポットを使ってそのデータを動かして、そこからHubSpotの機能やデータの動きを理解して、次のアイデアにとりかかる……という進め方のイメージは早い段階からありました」
まず、山下氏は既存のデータを利用し、メール配信でコンバージョン(新規案件に繋げるための動作)させていくという流れを作りました。肩肘張らずに、ハブスポットをスムーズに使っていくことを意識していたそうです。
「ハブスポットの正規代理店である株式会社24-7さん(以下、24-7)に、まずは、私たちと一緒にハブスポット導入前の青図を描いてほしいとお願いしました。
戦略策定フェーズという名前で、おおよそどのような情報管理をするのか、ペルソナ(想定顧客像)とか、ジャーニー(顧客が商品発注に至るまでの手順)の設定とか。そうした作業により、デジタルで行う集客やマーケティングオートメーションの方法については、結構早いうちに掴めましたね」
それだけではなく、以下のような大まかなマーケティングの流れを作成し、チーム内での共有や自社内での共有に用いて活動の流れを可能な限りわかりやすく可視化したとのことです。
結果として、弊社では導入前から、正規代理店の支援を受け、ウェブ担当者の理解を深めた結果、社内体制を変更することなく、ハブスポットを取り入れることができました。
ハブスポット代理店のサポートにより、
早い段階でインバウンドマーケティングの概要が掴めました。
新規作成にかかる工数の大幅削減。既存データの活用で、クリック率が70%に上昇
ハブスポットを2016年9月に導入し、社内のウェブ担当メンバーが3ヶ月かけてハブスポットの使い方を習熟。12月に自社製品ブランドのリニューアル版のリリースに併せてウェブサイトを全面改訂したことで、マーケティング手法を改めてのリスタートを切ることになりました。
「24-7さんに、うちには、コンテンツを新規に作るパワーがないことを伝えると、“既にあるもので大丈夫です”と言っていただいて。とにかく“オファー(ダウンロード型コンテンツ)が大事”と繰り返しアドバイスをもらっていました。
そこで、これまで紙で出していた資料などをPDFにして、オファーとして流すことにしたんです。すると、少しずつ流入が増えて、コンバージョン率が上昇してきました。」
インバウンドマーケティングを実施するにあたり、コンテンツ制作を行うことの難しさを感じていました。しかし、実際には、既に持っているデータやトラフィック(アクセス数など)を活用することで、手間をかけることなく、成果に繋げることができました。
「12月に自社ブランドの再編をして、翌年2月にプライベートイベントを行いました。そこで、1600人くらいのお客さんが登録してくれました。
せっかく、ハブスポットを入れたのだから、サンクスメールで主要な資料をダウンロードしてもらおうと設定したら、クリック率が70%まで上昇。
そこで味を占めて(笑)、セミナーのために作成した素材をどんどんオファーに転換しメールで流すようになると、すごく流入が増えていったんです。」
また、実際にランディングページなどWebサイトの作成を担当するマーケティング部の服部 剛士氏(服部氏)は以下のように述べました。
「最初は、ハブスポットの使い方に多少の戸惑いがあったものの、すぐに何となく修正の方法が理解できました。ハブスポットを導入する前に使っていたツールでは、ランディングページを作ろうと思っても、外注さんとのやり取りや修正などを行うと1週間必要でした。
ですが、ハブスポットで構築を行なったことにより、同等の修正を自分自身1人でコーディングを行わずに1時間でできるようになり、この圧倒的な時間の短縮はとても大きな収穫でした。」
(実際のランディングページの編集画面)
また、同社内でメルマガ配信などを担当する柏木 ひろみ氏(柏木氏)も以下のように述べます。
「以前、使っていたツールは、1日中設定をいじってみても、レイアウトがずれてしまったりしてうまく扱えませんでした。けれど、ハブスポットに変えてから、感覚的には、一瞬で作業ができるようになったんです。
24-7さんが、ワイヤーフレーム(構成図)のようなものを組んでいただいていたので、それをベースにメールのテンプレートを作り、そこから自分でテンプレートをカスタマイズしてメルマガを出しています。」
(実際のEメール編集画面)
総合メルマガというタイトルで、トップにその回のメインテーマを置き、次にセミナー情報など広報的な内容を掲載。1ヶ月に1本程度の頻度で送信しているそう。
以前利用していたマーケティングツールは、機能や構築時の設定の関係でHTMLメールの作成が難しく、テキストメールの送信しかできませんでした。
ハブスポット導入後、HTMLメールが簡単に作成できるようになり、デザインやコンテンツのバリエーションが大きく増加したそうです。
しかし、簡単に編集ができるとはいえ、メール送信の際には、簡単な修正や改善にとどめて、細部にこだわりすぎないようにしているとのことです。
結果、以前は1%前後だったメールマガジンのクリック率が2%弱に。クリック数は、2倍以上に上昇。さらに、顧客層を区切るとメールの回帰率が40%前後まで伸び、クリック率もアップしました。
また、以前はダイレクトメール型の一斉メールでキャンペーンの告知などを行っていましたが、現在は私信メールで誘導を実施するよう、メールの使い方も変化してきています。
今後は、ハブスポットに周辺サービスを付加して、マーケティング関連の業務のデジタル化を進行させるつもりです。
「ウェブサイトに動画を貼ってより直感的にコンテンツをご理解頂くことなどで、リードを獲得するためのパフォーマンスを更に上げていきたいですね。リード獲得数もHubSpot導入で80%上昇しました。
今後は、それだけではなく、アンケートなどまだデジタル化しきれていない情報を活用して、もっとお客さまを理解できるよう、ハブスポットと連携をしているSurvey Monkey(アンケートツール)なども活用していきたい。とはいえ、あまり手間を掛けすぎないということを最低限のルールにはしています。」
どうしてもセールス担当者は、自分の売るべき商品にのみ意識を集中してしまいがちです。しかし、山下氏は事業の展開領域を広く見据えてマーケティングを行う必要性を感じています。
ハブスポットを使えば、東洋ビジネスエンジニアリングが取り組んでいるほかの事業のマーケティングについても力を発揮することができることを確信。デジタルでの集客活動に力を入れながら、従来の展示会やセミナーも活用していくことを考えています。
「BtoBの企業は、デジタルだけ、アナログだけで結果を出すことは難しい。“ウェブでの集客”と“セミナーや展示会での集客”、一方が優れていて、もう一方が劣っているということではありません。私たちは、両方を組み合わせていくことが大切だということを体感しているんです。
対面で名刺交換をした方に、ウェブツールを使って接触し引き込んでいく。アナログではできないことを補完してくれるのが、ハブスポットです。デジタルとアナログマーケティング、両方を組み合わせた結果、短期間で効果を出すことができました。今後もそれぞれの良さをうまく活かしていきたいですね。」
ウェブマーケティングと従来型の営業活動を組み合わせ、
もっと大きな事業領域でハブスポットを活用していきたい。
(左:柏木氏 中央:山下氏 右:服部氏)
東洋ビジネスエンジニアリング株式会社は、製造業のお客様を中心に、企業の情報システム企画、コンサルティング、構築、導入、運用保守までをサポート、トータルに経営革新を支援します。また、自社開発製品である、生産管理、販売管理、原価管理、経営管理のパッケージシステム「mcframe」の開発やコンサルティングなどを行う企業です。