ビジネスにおける情報共有とは、各社員の業務に関する情報や知見、経験などを共有することです。個々が持つ知見をブラックボックス化させずに共有できれば業務の効率化や生産性の向上につながり、情報の行き違いなどのトラブルも防げるでしょう。
本記事では、ビジネスにおける情報共有の意味や目的、メリットを解説します。情報共有がうまくいかない原因や徹底する方法、効率化のためのポイントも解説しますので、社内における情報資産の活用にお役立てください。
ビジネスにおける情報共有の意味と目的
ビジネスにおける情報共有とは、各社員の知見や経験などの情報を蓄積し、企業全体で共有して利用できる状態にすることを意味します。その目的は、属人化の防止や業務の効率化、生産性の向上にあります。
共有対象となる情報には、次の種類があります。
- 議事録
- プロジェクトの進捗状況
- 営業資料
- 顧客情報
- 業務マニュアル
- ノウハウ
- 成功事例やトラブル事例
情報共有の効果を最大限享受するためには、「誰でも・いつでも・どこでも・同じもの」を利用できる状態にするのが理想的です。
ビジネスにおける情報共有のメリット
情報共有を実施するメリットは次の通りです。
- 業務を効率化でき生産性が向上する
- 属人化を防止できる
- 組織全体のスキルが上がる
- チームワークが向上する
- サービス品質が向上する
情報共有によって誰もが必要な情報にアクセスできるようになれば、属人化を解消でき業務効率化や生産性の向上も期待できます。また、社員全体のスキルの底上げにつながり、組織全体で業績アップを図ることも可能となるでしょう。
また、社内で起こりがちな情報の伝達ミスなどのトラブルが減り、コミュニケーションを円滑に取れるようになります。その結果、チームワークが向上し、社員教育にも良い影響が期待できるでしょう。
情報共有がうまくいかない原因
情報共有がうまくいかない原因に、次のような状態が挙げられます。
- 社内に情報共有のルールや環境が整っていない
- 社員が情報共有のメリットを理解していない
社内における情報共有を徹底するためにも、うまくいかない原因について理解を深めましょう。
情報共有するルールや環境が整っていない
情報共有を推進するには、次のポイントを明確化してルールや環境を整えることが大切です。
- 共有する情報の内容や種別
- 共有方法
- 共有のタイミング
- 共有対象となるメンバー
社内に厳しい上下関係があるなど、意見交換がしにくい職場環境は情報共有の妨げになります。失敗を許容できる風土や社員同士が交友しやすい環境が整えば、自ずと情報共有も推進されていくでしょう。
情報共有の優先度が低い
通常業務に追われて情報共有を先延ばしにすると、貴重な情報を活用できず、更に業務が滞る可能性が生じます。情報共有をタスク化し、通常業務とともに優先順位を決めておけば、正確かつ迅速な情報共有が可能となり、業務効率化や生産性の向上が見込めます。
また、情報ごとの順位付けも重要です。顧客情報や進捗状況、トラブル事例などの情報は優先的に処理するなど、情報の取扱いに関するルールを決めておけば、効率的に情報共有を進められるでしょう。
情報共有するメリットが理解されていない
情報共有を社内に浸透させるには、そのメリットを社員に理解してもらうことが大切です。情報共有が進めば社員の持つ情報量が増えるため、業務効率化やスキルアップも可能になります。
社員それぞれが情報共有の利点を理解できれば、共有の機会も増えるでしょう。些細な情報でも共有できるように、社員教育を通じて情報共有の効果や重要性の周知を進めることが大切です。
情報共有を徹底するための解決策
社内での情報共有を徹底させるには、次の方法を導入してみましょう。自社の状況に応じて、最適な方法を導入してください。
- 情報共有しやすい環境を作る
- 情報共有を進めるリーダーを決める
- 情報共有を実施する目的を明確にする
- 情報共有のルールを決める
- 情報共有ツールを取り入れる
情報共有しやすい環境を作る
情報共有は組織全体の協力が不可欠です。情報共有の重要性を伝えるほか、自由な意見交換の場を設けて、社員のコミュニケーションを促進できる環境を作りましょう。
業務上のミスやトラブルも共有すべき貴重な情報です。ネガティブな情報は、トラブル抑止やサービス改善に役立ちます。たとえミスが起こったとしても共有し、活用できる環境作りを目指しましょう。
情報共有を進めるリーダーを決める
リーダーの設置は、次のメリットをもたらします。
- 情報共有に関する相談先ができる
- リーダーが情報共有を進めることで情報共有しやすい風土が作られていく
- 部署間で情報共有する際に齟齬が生じにくくなる
リーダーには、主任などチームや部署を統括する社員が適しています。各チームや部署に、一人ずつ設置すると良いでしょう。
情報共有を実施する目的を明確にする
組織内で情報共有を徹底するためには、どのような目的で実施するのかを明確にして、社員に周知することが大切です。次のように、業務に関連する目的を伝えれば、社員の理解はより深まるでしょう。
- チーム全体の営業成績を上げるため
- 取引先や営業先とのトラブルを未然に防ぐため
- 業務手順や対応方法をチーム全体で統一するため
- サービスの質を高めて顧客満足度を上げるため
これらの目的は情報共有を実施するメリットに直結しています。
- 営業部のチーム全体で情報を共有すると、チーム全体の営業利益が上がり会社の利益向上に貢献できる
- 実際に起きたトラブル事例の共有によって類似する状況に対処でき、取引中止といった事態の防止につながる
- チーム全員で情報を共有し、業務手順や対応方法を統一できると属人化を解消できるため、個々の負担軽減や生産性の向上につながる
情報共有の認識を統一し、効果的な活動につなげましょう。
情報共有のルールを決める
円滑に情報共有を進めるには、ルールを決めておくと良いでしょう。ただし、ルールが細かすぎると情報共有の難易度が上がるため注意が必要です。次のように5W1Hなどのフレームワークに沿って、わかりやすいルールを設定しましょう。
- When(いつ):新規情報を得たとき、トラブルが起こったとき
- Where(どこで):社内共有ファイルや情報共有ツールを用いて
- Who(だれが):該当する社員が
- What(なにを):顧客情報・進捗情報・トラブルの詳細を共有する
- Why(なぜ):業務を効率化させるため、情報の行き違いによるトラブルを防ぐため
- How(どのように):社内共有ファイルや情報共有ツールに情報を記載して、リーダーに報告する
ただし、ルールを設定するだけでは意味を持ちません。ルールに沿って情報共有を実施してもらうために、社内での周知を徹底しましょう。
情報共有ツールを取り入れる
情報共有を効率よく実施するには、ツールの導入がおすすめです。チャット、タスク管理、カレンダーなどさまざまな種類があります。どのような目的から情報共有を検討しているのか、目的達成のためにはどのようなツールが適しているのかを明確にし、条件を満たすツールを導入しましょう。
情報共有の手順
情報共有を徹底するには「収集・整理・共有・活用」のプロセスを踏むことが大切です。ここからは、各プロセスについて解説します。
必要な情報を「収集」する
ビジネスにおける情報は紙の資料やデータ、社員の暗黙知などさまざまです。まずは、どこから情報を収集するのかを検討しましょう。集めた情報は、共有フォルダやドキュメント、エクセルのほか、情報共有ツールに集約させると管理や共有がしやすくなります。
ベテラン社員などが積み重ねた暗黙知は、マニュアルにはない独自のノウハウです。言語化して共有できれば、企業独自の強みになります。Web上から情報を収集する場合は、信頼できる情報であるかを必ず確認してください。
収集した情報を「整理」する
収集した情報を誰もがすばやく共有・活用できるように整理します。次のように、どのように整理すれば情報を活用しやすくなるのかを検討しましょう。
- カテゴリーに分ける(担当者、更新日、部署、プロジェクトなど)
- フォルダをツリー構造にする
- タグ検索できるようにタグ付けをする
整理した情報を「共有」する
整理した情報はメールやチャット、情報共有ツールなどで共有します。必要に応じて情報にアクセスできる環境を整えましょう。
共有時は情報の種類に応じて権限を設定するなど、情報漏洩への対策も講じることも大切です。
共有した情報を「活用」する
情報共有の最終プロセスは情報の活用です。情報の種類に応じて、次のように活用しましょう。
- 部署内で案件の進捗状況や顧客情報を共有し、担当者が不在でも別の社員が対応できるようにしておく
- 過去のトラブルと解決策をまとめておき、同様のトラブルが生じた際の参考にする
情報共有を効果的に実施するには、定期的に情報の内容や活用状況を見直して、より有益な内容に改善することが大切です。情報が活用できていない場合は、収集・整理・共有・活用のいずれかのプロセスに問題があると考えられます。各プロセスを見直し、改善を図りましょう。
また、情報共有を進めるためのフレームワークとしては、暗黙知を形式知に変換させる「SECIモデル」が有名です。こちらもあわせて参考にしてください。
情報共有を徹底して業務の効率化・生産性の向上を図ろう
ビジネスにおいて情報共有できる環境が整えば、情報の属人化を解消でき、業務の効率化・生産性の向上につながります。コミュニケーションも円滑になり、チームワークの向上も期待できるでしょう。
業務効率化が進めば、サービスや顧客に向き合う時間にあてられます。また、社員の有する過去の成功体験や暗黙知を共有できれば社員全体のスキルアップが図れ、見込み客への提案レベルも高まるでしょう。その結果、サービス品質や顧客へ提供価値の向上にもつながります。
効率よく情報共有を実施するにはツールの活用がおすすめです。情報共有を徹底して、組織力・企業力を高めましょう。