スモールビジネスのブランディングの仕事を引き受けることは、エージェンシーやフリーランサーにとって、大きなチャンスになる可能性があります。大企業のような過度なプレッシャーや制限がなく、新しいアイデアをクリエイティブに試してみることができるからです。
大企業では、複数の意思決定者から詳細な仕様やガイドラインが提示され、既存のブランドイメージを守るよう指示されることが多いのに対し、小規模な企業では多くの場合、新しい方向性を提案すれば喜んで聞いてもらえるうえ、気に入ってもらえればすぐに採用されたりもします。
ですから、驚くほど素晴らしいブランディングが行われやすいのは、むしろスモールビジネスではないかと私は思います。そのことを実証するために、この記事ではスモールビジネスについて、15のブランディング例をご紹介します。皆さんのプロジェクトの参考にしていただければ嬉しいです。
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海外のスモールビジネスのブランディング15例
1)Elo Soap
ギリシャにある石鹸メーカーの老舗、Eloはギリシャの神話をイメージしたオリーブオイルの石鹸をシリーズで販売するために、パッケージデザインを一新することになり、Smirap Designsのデザイナー、Mike Karolos氏を訪ねて、ギリシャの観光客向けギフトショップに並ぶ数々の商品の中で、ひときわ目を惹くデザインを作って欲しいと依頼しました。
Karolos氏はThe Dielineとのインタビューの中で次のように話しています。「目指したのは、ユニークで目を惹く新しいデザインでした。ギリシャでは、ギリシャ神話をテーマとした土産品が非常に多いのですが、シグネチャースタイルのイラストを使用することで、使い古されたテーマを新しい観点で表現することができました。その結果、同じく神話をテーマとしたパッケージでありながら、モダンで新鮮なデザインが完成したのです。」
2)AND UNION
AND UNIONというドイツのブリュワリーが製造するクラフトビールの缶は、ミニマルなデザインと、意外性を突く手の込んだテクスチャーのバランスが絶妙な一品です。AND UNIONは、「缶に入れられるのは安物のビール」という考えを根本から覆すことを目標に、このデザインを社内のチームで作成しました。
「缶ビールに対する偏見が完全になくなったわけではありません。私たちより早くから、このことを消費者に伝えるべく、素晴らしい貢献をしてきたクラフトブリュワーは大勢います。ですから、私たちも少しお役に立ちたいと考えたのです。」と共同創設者のRui Esteves氏は言います。
「ビールを飲みほしたあと、捨てるのがもったいないと思うような缶を作りたいと思いました。おかげで、うちのキッチンには相当な数の空き缶がたまっています。これほど美しいデザインを、リサイクル用のごみ箱に入れるのは気が引けますからね」
画像出典:The Dieline
3)Folklorious
この秀逸なブランドイメージを、オンラインでアクセサリーを販売するFolkloriousという名のブティックのために作成したのは、バルセロナを拠点に活動するデザイナー、Quim Marin氏です。Marin氏は古典的なアートワークやイラストデザイン、あるいは、フォトグラフィーにモダンなグラフィック要素とタイポグラフィーを取り入れることで、多彩な要素を持つ、実にユニークかつスタイリッシュなブランドアイデンティティーを創り上げました。
4)EAT MY SHORTS!
EAT MY SHORTS!はアメリカのテレビ アニメ シリーズ「ザ・シンプソンズ」の主人公のセリフです。これをブランド名にしたのが、ファッションデザイナーのMalena Blas氏による、ユニセックスのアパレルラインです。Malena氏はメキシコシティを拠点とするデザイナー、Tomás Salazar氏と協力し、コンテンポラリーなブランドアイデンティティおよびパッケージソリューションを創り上げました。
同社のシャツには男性用も女性用もなく、パステルカラーのメタリックなポーチに入って販売されています。また、ブランドのプロモーション資料には、トレンディーな綿菓子風の色彩が、いたるとことろに取り入れられています。
5)Zonzo Estate
ワイナリー、レストラン、結婚式場を経営するZonzo Estateは、オーストラリアのデザイン会社、Swear Wordsによって、エネルギッシュで洗練されたブランドへと新たに生まれ変わりました。
Zonzo Estateが都会から遠く離れた場所にあることを考えると、この新しいデザインのモダンさは驚くほどです。Zonzo Estateのリブランディングは、英文字が浮遊するイメージでデザインされたロゴを中心に行われました。このロゴを金箔で印字すれば高級感が漂い、またメニューの表紙にアウトラインで印刷すれば、フレッシュではつらつとして見えます。
画像出典:Swear Words
6)Qoñi
Qoñiはペルーの職人たちによる小さなコミュニティです。Qoñiのブランディングは、Leo Burnettのカナダ支社のデザイン部門であるLeo Burnett Designがすべて担当しました。
Leo Burnettのウェブサイトには、「私たちはQoñiの名前、ワードマーク、ブランドストーリー、ルックブック、プロモーション資料、商品のタグなどをすべて作成し、Qoñiのブランドアイデンティティを創り上げました」とあります。「Qoñiとはペルーの言葉で暖かさを意味します。Qoñiの暖かいアルパカ製品シリーズにぴったりの名前だと思います」
画像出典:Leo Burnett Design
7)Lune Croissanterie
Luneは素晴らしくおいしいペイストリーの製造に真剣に、そして科学的に取り組んでいる未来派のベーカリーです。それを象徴するのが、メルボルンのエージェンシーであるA Friend of Mineがブランディングした宇宙船のロゴです。宇宙船の後尾部がクロワッサンという、ベーカリーとサイエンスを上手に組み合わせた面白いデザインになっています。
A Friend of Mineの担当者は次のように言います。「Lune(三日月形)にヒントを得て、クロワッサンやペイストリーを入れるパッケージボックスには、銀河をイメージした「ハイパードライブ」な長細い穴をあけています。この穴で商品の熱を逃がすことができます。プリント部分は、宇宙っぽくキラキラ光る色にしました。また、Luneで親しまれているロケットのモチーフも、テールの部分はやはりクロワッサンでなければと思い、デザインを変更しました。
画像出典:A Friend of Mine
8)Tenth Muse Botanical Fragrance
Studio MPLSによるブランディングのおかげで、ボタニカルフレグランスのスタートアップ企業であるTenth Museのブランドアイデンティティは、ビクトリア朝の雰囲気を醸しつつも、モダンで、かつ実に魅力的です。Tenth Museは香りが長持ちするナチュラルな原材料からパーソナライズされた香水を製造しています。同社のパッケージやプロモーション素材は、「陰謀とミステリーを秘めた、鮮明で美しいデザイン」に仕上がっています。
画像出典:Studio MPLS
9)Bombay Electric
Bombay Electricはムンバイにある高級ファッション セレクト ストアです。同社のブランディングは、パリを拠点に活躍するデザイナーのMichael Thorsby氏によって、鮮やかで万華鏡のようなイメージに一新されました。
Michael氏はこのプロジェクトについて、自身のポートフォリオウェブサイトで次のように述べています。「Bombay Electricに新しいイメージをプラスするために、カラーと鮮やかさを前面に出すというアプローチを考えました。かなりミニマルなタイポグラフィーとグリッドに囲まれて、強烈な色のグラデーションが、ぼやけた抽象写真のように彩られています。アン・ベロニカ・ジャンセンの作品のようなイメージも含まれると思います」
画像出典:Michael Thorsby
10)Glorioso Super Nutrients
植物の種の袋を思い出させるこのパッケージは、スペインでスーパーフードを販売するGlorioso Super Nutrientsのものです。シンプルでありながら非常に新鮮で、それぞれに商品をイメージした抽象的なサークルのモチーフがデザインされています。
Gloriosoのブランドアイデンティティーは、カラフルにデザインされた名刺を含め、バルセロナに拠点を置くエージェンシー、Requenaが開発したものです。このサークルのモチーフは、ブランドのウェブサイトやその他のプロモーション資料に一貫して使用されています。
11)Notel
この明らかに「異色」のホテルがブランディングで要求したのは、「力強いイメージ」でした。そして、その要求に確実に応えたのが、Self Titledです。Notelは屋上に駐車した6台のAir Streamトレーラーで構成されています。そのアートディレクターとして、また、強烈なブランドコンセプトを開発するために、Self Titledと手を組んだのでした。
Self Titledはウェブサイトで次のように言います。「Notelという社名とロゴは、ホテルではないという意図を明確に表しています(ただし、NOというロゴのOに入った斜線は、微妙な肯定の表れだったりもします)。Self-titledはNotelがメルボルンの良さを引き出しつつも、ハイカルチャーとローカルチヤーの両方を変えようとしているのを見て、このブランドの存在意義を、メルボルンを発信すると同時に再構成すること、と考えました。
光を反射する建物のイメージや、文字を切り取ったロゴ、豊富なコンテンツを階層構造で紹介するウェブサイトデザインにも、そのことが表現されています」
画像出典:Self Titled
12)Marte Estudio
古典的なアート、鮮やかな色彩、現代的なデザイン要素などが1つにまとまってブランドを形成しているのは、メキシコのヘアー&メークアップスタジオ、Marte Estudioです。デザインを手がけたエージェンシーはBienalで、多彩な店舗スペースやプロモーション資料は、Marte EstudioのクリエーターであるMariana Abraham氏の大胆で力強い個性を表現して作られています。
画像出典:Bienal
13)Robinson's
自動車の修理会社であれば、ブランディングはそれほど重要でないと思うかもしれません。ですが、Parallaxのブランディングにより、Robinson'sの自動車修理センターのロゴは滑らかでレトロな、とても良い雰囲気です。また、ミニマルなブランディング資料もステキで、オフィスの家具もそれらに上手くマッチしています。
画像出典:Parallax
14) Sneaky Veg
Mandy Mazliah氏は、ヘルシーな食事を習慣とする家族の様子を紹介するために、Sneaky Vegというブログを立ち上げました。このブログに注目を集めるために、気の利いたブランディングが必要だと考えた彼女は、デザイナーであるVicki Turner氏に依頼して、これらのデザインを作成してもらいました。
Turner氏は自身のウェブサイトで次のように語っています。「Sneaky Vegの目的は、フルーツと野菜の健康的なレシピをこっそり(Sneaky)取り入れ、元気な子供に美味しく食べてもらうことです。私はその想いを上手く表現するブランドアイデンティティの作成を依頼されました」
画像出典:Vicki Turner
15)Doctor Manzana
Doctor Manzanaはスペインのバルセロナにある、スマートフォンやタブレットのテクニカル サポート ショップです。もっと多くのオーディエンスに、自社のサービスや製品に興味を持ってもらうにはどうすればよいか考え、新しいブランドアイデンティティを作成しようとMasquespacio Designのスタッフを訪ねました。
Masquespacioの担当者はウェブサイトで次のように説明します。「ファッション通やハイテクマニアなど、さまざまなタイプのカスタマーを惹きつけようとデザインしたブランドです。豊富な種類の色彩を使用し、スマートフォンの画面を見る54度という角度を一貫して取り入れて作成しました」
画像出典:Masquespacio Design
編集メモ:この記事は、2017年2月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Karla Cookによる元の記事はこちらからご覧いただけます。