kintoneのワークフロー(プロセス管理)は、社内の申請・承認業務を可視化し、システム内で一元管理ができる機能です。社内で申請手段や承認フローが統一化されておらず、業務効率が低下している場合などに役立ちます。
ワークフローには、差し戻し・却下が発生する申請や、複数の承認者が存在する申請といった具合に、さまざまなパターンが存在します。そのため、パターンごとのワークフローの作り方を押さえておくことが重要です。kintoneのワークフローは、こうした条件で分岐する複雑なプロセスでも、簡単に設定できるのが特徴です。
本記事では、ワークフロー機能の役割やメリットを紹介したうえで、具体的な設定方法を解説します。承認者が複数の場合や、条件ごとにフローが分岐する場合など、パターン別に図解でわかりやすく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
kintoneのワークフロー(プロセス管理)機能とは
kintoneのワークフロー(プロセス管理)とは、Excelやメール、チャットなどで行われる社内の承認業務を一元化するための機能です。kintoneで作成する業務アプリにおいて、「現在どのような状態で、誰が、次に何をしなければならないか」を可視化できます。
新たにアプリを入れる必要はなく、各アプリの一般設定より実装が可能です。実装が完了すると、自身で設定した「申請する」「承認する」などのボタンがレコードの画面上に表示され、「ステータスの履歴」より下図のようにステータスが確認できるようになります。
kintoneのワークフローには、確認漏れの防止や作業効率化につながる、さまざまな機能が備わっています。例えば、モバイル通知や押印不要のワンクリック承認、申請履歴などの機能が代表的です。
経費精算やプロジェクト管理、労務などの幅広い業務に対応できるのも特徴です。ワークフロー機能を上手く活用すれば、申請業務の大幅な効率化につながるでしょう。
kintoneのワークフロー機能を活用するメリット
kintoneのワークフロー機能を活用するメリットは次の通りです。
- 申請手段の一元化による業務効率化
- モバイル通知で確認漏れのリスクを軽減
- さまざまな承認フローに対応可能
具体的な費用対効果をイメージするためにも、これらのメリットを押さえておきましょう。
1. 申請手段の一元化による業務効率化
申請・承認の手段は企業によって異なります。紙やExcel、メール、チャット、オンラインフォームなど多様な手段があり、企業内で方法が統一されていないケースも珍しくありません。適切な手段が確立されておらず、承認フローが煩雑化している場合、スムーズな業務を阻害する要因となります。
kintoneのワークフロー機能を利用することで、多様な申請手段をひとつのシステムに集約できます。申請者や承認者は複数のプラットフォームにアクセスする必要がなく、結果として工程が簡素化されるでしょう。過去に不備があった申請内容を、システム内から容易に検索できるのもポイントです。
2. モバイル通知で確認漏れのリスクを軽減
kintoneのワークフロー機能は、申請されたタイミングで承認者のスマートフォンに通知が届きます。これにより、承認時の確認漏れのリスクを抑えられます。
また、kintoneではレコードごとにコメントを書き込めるのも特徴です。承認作業が遅れている、または忘れている可能性がある人に、メンション付きでメッセージを送信できます。メーラーやチャットツールなどを開く必要がなく、現在のステータスの確認から通知・催促まで、ワンストップで実行できるのが強みです。
3. さまざまな承認フローに対応可能
多様な承認フローのパターンに対応できるのも、kintoneのワークフロー機能のメリットです。
例えば、次のような設定ができます。
- 差し戻しや却下が発生する申請
- 複数の承認者が存在する申請
- 条件によってフローが分岐する申請
このように多様な承認フローに対応できるのは、「ステータス」や「プロセス」などの項目で柔軟な設定を行えるためです。
ステータスの項目は、「申請中・差し戻し・却下」といった任意入力が可能で、項目数を自由に増やせます。プロセスの項目では、実行者となるメンバーやグループ、トリガーの条件などを細かく設定できるのがポイントです。
自社のルールを自由に反映できるのは、kintoneならではの大きな利点です。
kintoneのワークフローの作り方
ここでは、前述した3つの承認フローごとに、ワークフローの作り方を解説します。
- 差し戻しや却下が発生する申請
- 複数の承認者が存在する申請
- 条件によってフローが分岐する申請
いずれのパターンにしても、まずは業務アプリをいちから作成する必要があります。業務アプリの詳細な作成方法はこちらの記事で解説していますので、ワークフロー作成に移る前にご覧ください。
差し戻しや却下が発生する申請
見積書の承認や経費申請など、差し戻しや却下が生じる一般的な承認フローです。承認フローの代表的なパターンなので、構造がシンプルな分、短時間で作成できます。また、ほかの承認フローはこのパターンを応用するため、基礎知識として理解しておくと良いでしょう。
具体的な手順は次の通りです。
- プロセス管理の設定画面にアクセス
- 必要なステータスを記入
- プロセスの設計
1. プロセス管理の設定画面にアクセス
案件管理や日報など、アプリの種類はどれでも構いませんので、まずは既存の業務アプリの管理画面にアクセスしましょう。画面右側の設定マークのドロップダウンを開き、[一般設定 > プロセス管理]の順にクリックします。
プロセス管理画面が開くので、画面上部にある[プロセス管理を有効にする]にチェックを入れます。
2. 必要なステータスを記入
2つ目の項目「ステータス」の設定を行います。
項目名は任意ですが、今回は差し戻しや却下が発生する申請フローを作成するため、「差し戻し」と「却下」の項目は必ず記載してください。項目の左側の矢印を押すと配置変更、右側のプラスやマイナスのマークを押すと追加・削除が可能です。
3. プロセスの設計
3番目の項目「プロセス」を設定します。
まずは、左側の項目「アクション実行前のステータス」のなかにあるプラスマークを押し、項目を追加します。追加するのは、「申請中・差し戻し」の2項目のみで構いません。
ステータスのドロップダウンをクリックし、「申請中」や「差し戻し」の項目を選択します。次のような形で、先ほど設定したステータス名と表記を合わせてください。
続いて、作業者のドロップダウンをクリックし、ステータスごとの申請者や承認者を指定します。
最後に、画面右側のアクション名と実行後のステータスを設定します。設定方法は任意ですが、一例として「申請前」のステータスは、次のようにアクション名を「申請する」、実行後のステータスを「申請中」に設定すると良いでしょう。
これはつまり、「申請する」というアクションが実行されたとき、次段階の「申請中」というフローへと自動的に移行する仕組みです。同じように今度は「申請中」のアクションを設定しますが、次のような3段構成にしましょう。
このような設定にすると、以下の処理が自動的に実行されます。
- 申請が承認された場合は次段階の「承認済み」のフローに移行
- 差し戻しされた場合は「差し戻し」のフローに移行
- 申請が却下された場合は「却下」のフローに移行
承認・差し戻し・却下の各アクションに従ってステータスが自動的に更新されるため、ステータスの更新漏れがなくなります。
「差し戻し」のステータスでは、次のようなアクションを設定します。
最後に、画面右下の[保存]をクリックすると作業は完了です。
複数の承認者が存在する申請
複数人の承認者のいずれか、または全員が承認すると完結する承認フローです。例えば、複数の部長がいる場合に、そのうちの誰かが承認する、あるいは部長全員が承認すると進行するフローを作成します。
具体的な手順は次の通りです。
- 承認者グループを作成
- プロセス管理の設定画面でステータスを設定
- 承認者の設定
1. 承認者グループを作成
複数いる承認者を単一のグループに整理します。ポータルのトップページから設定マークをクリックし、[cybozu.com共通管理]を選択しましょう。
[グループ(ロール)> 追加]の順にクリックします。
任意のグループ名を記入し、[保存]をクリックします。
追加したグループの隣にある設定マークをクリックし、[メンバーの変更]を選択しましょう。
左側の特定の人物を選択し、中央の[追加]ボタンをクリックすると、グループにメンバーを追加できます。追加後は画面下部の[保存]をクリックします。
2. プロセス管理の設定画面でステータスを設定
先ほどと同じように、業務アプリのプロセス管理の設定画面にアクセスし、ワークフローを作成しましょう。[プロセス管理を有効にする]にチェックを入れたうえで、ステータスを設定してください。
3. 承認者の設定
先ほどと設定が異なるのは、「作業者」の項目です。
まずは作業者のドロップダウンをクリックし、次のなかから適切なものを選択します。
- 次のユーザーから作業者を選択:
特定の承認者が承認した場合のみ次のフローに移行 - 次のユーザー全員:
グループ内の承認者全員が承認してはじめて次のフローに移行 - 次のユーザーのうち1人:
グループ内の承認者のうち、1人でも承認すれば次のフローに移行
仮に「次のユーザー全員」の設定を行う場合、作業者の項目から[次のユーザー全員]を選択したうえで、人物マークをクリックします。
[グループ]のタブを選択すると、先ほど追加したグループが表示されます。そのグループを選択した状態で[追加]をクリックしましょう。
これで、グループ全員の承認が必要な設定が完了しました。
あとは、先ほどと同様、アクション名や実行後のステータスなどを設定してください。
条件によってフローが分岐する申請
承認フローによっては、条件によって進路が分岐するケースもあります。例えば発注書の承認時、高額な費用の場合は部長が承認、低額の場合は課長が承認といったイメージです。
具体的な設定手順は次の通りです。
- プロセス管理の設定画面でステータスを設定
- プロセスの設計
1. プロセス管理の設定画面でステータスを設定
プロセス管理の設定画面にアクセスし、[プロセス管理を有効にする]にチェックを入れ、ステータスの項目に進みましょう。今回は次のように、フローが分岐するステータスを設定します。
2. プロセスの設計
プロセスの項目内にある「アクションが実行できる条件」という項目で、フローの分岐条件を設定します。
例えば、仕入価格が100万円以上の場合は部長が承認、100万円未満の場合は課長が承認するとします。この場合は、まず「申請前」のステータスで、「アクションが実行できる条件」の項目に次のような設定を行いましょう。
「単価」「≧(以上)」「1,000,000」
「単価」「≦(以下)」「999,999」
さらにその右側の「アクション名」と「実行後のステータス」の項目は、金額によって部長と課長にルートが分岐するように設定します。
次に、「部長承認待ち」のステータスには部長を、「課長承認待ち」のステータスには課長を、作業者として指定します。
「部長承認待ち」と「課長承認待ち」のそれぞれのフローには、次のような形で「アクション名」と「実行後のステータス」を設定しましょう。
最後に[保存]をクリックして設定は完了です。
なお、「アクションが実行できる条件」で、こちらの内側の「+」ボタンから追加することで、複数条件の設定も可能です。すべての条件を満たすか(AND)、いずれかの条件を満たすか(OR)も選択できます。
例えば、「単価が1,000,000円以上で、かつ確度がAの場合」には次のように設定します。
- 「単価」「≧(以上)」「1,000,000」
- 「確度」「次のいずれかを含む」「A」
- ◎すべての条件を満たす
kintoneのワークフロー機能を適切に運用するコツ
kintoneのワークフロー機能を効果的に活用するためにも、運用のコツを理解することが大切です。以下を参考に、必要に応じて設定を加えてみてください。
アプリの一覧画面にステータスと作業者の情報を追加する
ここまでにお伝えした設定を行っただけでは、業務アプリの一覧画面に承認フローのステータスが表示されません。この状態では、承認フローの進捗が一目で把握できないため、確認漏れのリスクが高まります。
そこで、一覧画面にステータスと作業者の情報を追加する設定を行いましょう。
業務アプリの管理画面にアクセスし、設定マークのドロップダウンから[アプリ設定(一覧)]をクリックします。
「案件一覧」の項目にある[編集]をクリックします。
左側にある「ステータス」と「作業者」のフィールドを、ドラッグ&ドロップで任意の箇所に配置します。
画面右下の[保存]をクリックし、移行した画面で[アプリを更新]をクリックしましょう。
業務アプリの一覧画面にステータスと作業者の項目が追加されます。
一覧画面よりレコードの詳細画面にアクセスしてみましょう。
レコードの詳細画面にアクセスすると、画面上部に「申請する」と「現在の作業者を変更」という項目が現れていることがわかります。それぞれのドロップダウンをクリックすると、申請や承認、作業者の変更が可能です。
ステータス更新時の通知設定を行う
kintoneのワークフロー機能では、申請ステータスが更新された際に通知を送れます。
業務アプリの管理画面にアクセスし、設定マークのドロップダウンから[通知 > アプリの条件通知]をクリックしましょう。
申請者や承認者に通知を送る場合は、「作業者」の[ステータスの更新]にチェックが入っていれば問題ありません。
作業者以外のユーザーに通知を送る場合は、まず人物マークをクリックします。
通知を送りたいユーザーを選択し、[追加]をクリックします。
一覧画面にユーザーが追加されるので、[ステータスの更新]にチェックを入れましょう。
最後に、画面右下の[保存]をクリックすれば設定は完了です。
モバイル通知を利用して確認漏れを防ぐ
申請が行われた際は、ポータルや通知ページからでもステータスの更新情報を確認できますが、ポータルや通知ページへのアクセスが必要なため、承認者が見落とす可能性も考えられます。
このような場合に便利なのがモバイル通知です。
kintoneのモバイルアプリをインストールすると、モバイル通知で最新情報を取得できます。未読件数がアプリマーク上に表示されるため、確認漏れのリスクが軽減されます。申請が行われた際も、モバイル通知が届くので安心です。
kintoneのワークフロー機能で効率的な承認業務を実現しよう
経費精算や発注業務などで発生する承認フローは、紙やメール、チャットなどの多様なツールを駆使して実行できますが、手段が多様化するほど業務が煩雑化し、効率性を損なう可能性があります。
kintoneのワークフロー機能は、このような複数の承認手段を一元管理するのに向いています。承認フローを一元管理して可視化することで、業務効率化や確認漏れのリスク軽減といったメリットが生まれるでしょう。また、さまざまな承認フローに対応できるのも利点です。
今回紹介した手順をもとに、さっそくワークフロー機能を試してみてください。