ナレッジベースの基礎知識と構築方法|社内導入にツールは必要?

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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日々の活動を通じて蓄積されたナレッジ(知識)は、企業にとって重要な資産です。しかし、ナレッジが属人化し、共有されないまま忘れ去られてしまうケースも少なくありません。ナレッジが適切に共有されないと、業務の属人化や非効率な人材育成、サービス品質のバラつきなどの原因になります。

ナレッジベースの基礎知識と構築方法|社内導入にツールは必要?

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その解決策になるのが、ナレッジベースの導入です。ナレッジベースを活用し、社内で情報の管理・共有を行うことで、個々のスキルに依存しない業務体制を構築できます。顧客対応の品質も改善され、満足度の向上も実現できるでしょう。

この記事では、ナレッジベースの基礎知識から具体的な構築方法、注意点などをわかりやすく解説します。

ナレッジベースとは?

ナレッジベースとは?

ナレッジベースとは、社員が個々で得た業務のノウハウや知識、経験などをデータベース化したものです。データベース化により、必要な情報の検索・参照が可能になり、組織での効率的な情報共有が実現します。
 

なぜナレッジベースが必要なのか?

近年の労働市場では、人材の流動性が高まっています。そのため、情報管理が属人化しないよう、ナレッジベースを活用する必要が出てきているという背景があります。

また、変化が激しい現代においては、情報の鮮度も重要です。最新の情報を一か所に集約し、いつでもアクセスできる環境を整えることで業務の属人化を防ぎ、労働の生産性を高めることができます。

近年はIT技術の発達により、ナレッジをデータベース化しやすくなり、導入の追い風となっています。
 

ナレッジマネジメントとナレッジベースの違い

ナレッジマネジメントとは、企業が持つあらゆる情報を効率的に活用するための管理活動のことです。それに対して、ナレッジベースは、知識やノウハウを一か所に集めたデータベースを意味します。
 

ナレッジベースの目的

ナレッジベースの目的は、社内の情報を管理・共有し、業務効率化やサービス品質向上につなげることです。

ナレッジベースがない状態では、社員が独自にナレッジを扱い、個人の裁量により管理されます。そのような状態では情報の管理が個人に依存してしまい、組織レベルでの情報共有がスムーズにいかない場合が出てきます。

ナレッジベースは、企業に蓄積されたナレッジを一か所にまとめて管理する役割を担います。
 

ナレッジベースを導入するメリット

ナレッジベースを導入するメリット

ナレッジベースを導入することで、次の3つのメリットが得られます。

  • 業務効率化・生産性向上
  • 社内コミュニケーションの円滑化
  • 顧客対応の向上
     

業務効率化・生産性向上

ナレッジベースを導入するメリットの一つは、業務効率や生産性が向上することです。

ナレッジベースにより情報へのアクセスが最適化されれば、情報を素早く見つけられるようになり、問題や疑問を解決する時間を短くすることが可能です。さらに、情報の伝達ミスや資料の紛失が減少し、次のように、業務に必要な情報が的確に共有されるようになります。

  • (例)営業活動やカスタマーサポートなどの、過去の事例の参照が効率的にできるようになる
  • (例)文書や業務フローなどの常用するものをナレッジベースに蓄積することで、毎回作成する手間が省ける

また、過去のナレッジを効率よく参照できるため、人材育成にかける時間やコストの削減にもつながります。属人的な情報の管理がなくなることで、業務の標準化も可能です。
 

社内コミュニケーションの円滑化

ナレッジベースを導入することで、社内のコミュニケーションが円滑になります。情報共有の効率化により、コミュニケーションへの障壁が少なくなるからです。他部署との情報共有が容易になり、部署を超えた連携強化が期待できます。
 

顧客対応の向上

ナレッジベースを導入することで、過去の事例を参考にして、顧客のリクエストに迅速に対応できるようになります。その結果、顧客対応(カスタマーサポート)の質が向上します。

例えば、過去の問い合わせ内容とその解決策を、容易に検索・参照できることによって、経験が浅いオペレータでも適切な案内が可能になります。ナレッジベースの情報を対応品質の改善につなげれば、顧客満足度の向上も同時に実現できます。
 

ナレッジベースの活用事例

ここでは、ナレッジベースの活用方法として、次の3つの事例を紹介します。

  • 後任への業務引き継ぎ
  • 新入社員の教育
  • FAQや社内wikiの作成
  • 営業部門でのナレッジベース構築
     

後任への業務引き継ぎ

業務内容に関するナレッジベースを構築することで、引き継ぎが容易になり、仮に引き継ぎが行われないまま退職者が出ても、ノウハウが失われることがなくなります

退職者が出た場合の業務引き継ぎは、前任者が独自に作ったマニュアルを参照する方法や口頭での指示、実際の仕事を見て修得するなど、属人性の高い方法で行われることが多いでしょう。前任者が休むと引き継ぎが止まってしまうだけでなく、人によって仕事のルールが異なるなどの問題が生じ、引き継ぎをされる側が混乱することもあります。

特に、その業務についてほかにナレッジを持っている人がいない状態で、前任者が引き継ぎをすることなく退職してしまい、大きな混乱が起きるケースは深刻な問題になりかねません。

ノウハウの属人化を防ぎ、企業の資産を守るうえでもナレッジベースは有効といえます。
 

新入社員の教育

ナレッジベースは新入社員の教育にも活用できます。新入社員を教育する人事部や所得部署の上司、先輩社員がナレッジベースを参照しながら新人教育を実施することで、方向性が統一された指導が可能になります。指導の準備にかかる負担軽減や時間短縮の効果も期待できるでしょう。

新入社員は、ナレッジベースにアクセスして自発的に会社や業務についての知識を深められます。実際の業務に就いてから、必要に応じて新人研修に関する情報を参照することも可能です。
 

FAQや社内wikiの作成

企業のWebサイトなどに設置されているFAQも、ナレッジベースの一種です。FAQとは、顧客からのよくある質問と回答をセットにしたもので、ユーザーはカスタマーサポートに問い合わせをしなくても、FAQで自ら情報を検索することで回答が得られます。

その結果、個別の問い合わせが減り、カスタマーサポートの担当者のリソースを有効活用できます。また、社内向けのFAQサイトを構築する方法も良いでしょう。カスタマーサポートの担当者が参照できるようにすると、迅速かつ的確な対応が可能になり、サービス品質の改善にもつながります。

「社内wiki」と呼ばれる、社内の情報がまとめられた会社専用のウィキペディアの設置もおすすめです。社内wikiは、社内の業務に関する情報をまとめる際にも活用できます。
 

営業部門でのナレッジベース構築

次のような営業に関するナレッジベースを構築することで、成果の向上が期待できます。

  • 商品情報
  • 提案内容のテンプレート
  • 営業資料
  • 顧客情報
  • 商談プロセス
  • 競業他社の情報

会社によっては営業に関する業務を、顧客との最初の接触から受注まで1人の社員で行われ、アプローチ方法や商談の進捗などが社員間で共有されにくいことがあります。また、営業のノウハウやコツは言語化しづらく、共有しているつもりでも正しく伝わらないことがあるでしょう。

さらに、リモートワークの導入など働き方の多様化により、社員間のコミュニケーションが減少し、普段の何気ない会話でナレッジを共有する機会が減っています。ナレッジが十分に共有されていないと顧客に最適な提案ができず、機会損失を引き起こす可能性もあります。

ナレッジベースの導入で、属人的で言語化しづらい営業のナレッジが可視化・共有されます。アプローチ方法や商談の進め方といったノウハウの共有に加えて、失注の原因を分析する際などもデータをもとに的確に行うことが可能です。その結果、部署全体のスキルが底上げされるでしょう。
 

社内のナレッジベースを構築する方法

社内のナレッジベースを構築する方法

ナレッジベースを構築する方法には、「現在利用しているツールを活用する方法」と「新しくナレッジベースツールを導入する方法」の2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
 

現在利用しているITツールやソフトウェアを活用する

すでに会社で使用しているExcelやWord、Googleドキュメント、スプレッドシートなどのツールは、ナレッジベースの構築にも活用できます。

共有したいナレッジをツールに保存し、社内で共有できるように管理すれば、新たなツールを導入する手間や費用がかかりません。社員がすでに使用しているため、使い方の指導も不要です。

一方で、ナレッジベース専用のツールではないため、検索性が悪く、情報の流出・紛失などの心配がある点には注意が必要です。構築や更新に手間がかかる可能性もあります。

現在利用しているITツールやソフトウェアを活用する場合は、ツール間で連携が可能かどうか確認し、適切な機能の組み合わせについてもシミュレーションしたうえで導入しましょう。
 

新しくナレッジベースツールを導入する

ナレッジベース構築にかかる時間や労力を削減したいなら、ナレッジマネジメントに特化したツールの導入がおすすめです。

多くのツールは初期費用や月額費用がかかりますが、使い勝手やセキュリティ強度など、ナレッジマネジメントの専用ツールならではのメリットがあります。アップグレードやサポートを受けられるという利点もあり、長期的に見れば費用対効果が高い施策になるでしょう。

ナレッジマネジメントツールには、次の5種類があります。

  • データベース型:情報を蓄積し、データの抽出や組み合わせが可能
  • データマイニング型:膨大なデータからAIや統計的方法で分析し、蓄積したデータから新たなナレッジを引き出し、経営戦略や営業支援に役立てることが可能
  • ヘルプデスク型:社内ナレッジや顧客問い合わせ内容をFAQとして共有し、一問一答形式で情報にアクセスが可能
  • 社内wiki型:社内ナレッジを自由にまとめて共有でき、横断的かつ瞬時に検索が可能
  • グループウェア型:ファイル共有やスケジュール管理、コミュニケーションが可能

 

ナレッジベース導入のポイント

ナレッジベースを導入する際は、データを蓄積・更新するプロセスの検討や改善が重要です。具体的には、次のようなポイントを意識しましょう。

  • 社員が継続的にナレッジを共有するための運用の仕組みを導入時から整えておく
  • 具体的な業務プロセスに、ナレッジベースへの情報管理・共有化を落とし込む
  • 段階を踏み、現場の声を聞きながらシステムを組み込む
  • 定期的にプロセスやデータの見直しを行う

段階的にナレッジを増やし、育てる意識を持つことで、スムーズな導入が可能になります。導入後も、定期的に情報の追加や修正を行いましょう。
 

ナレッジベース導入時の注意点

ナレッジベース導入時には、次の3点に注意する必要があります。

  • マニュアルが複雑すぎないか
  • 運用ルールと責任者が決まっているか
  • ナレッジベースを導入する必要性を社内で周知しているか
     

機能やマニュアルが複雑すぎないか

複雑すぎるマニュアルはやがて参照されなくなり、ナレッジベースも定着しづらくなるでしょう。

運用マニュアルを作成する際は、文章フォーマットやディレクトリ構成ルールなど、最低限のルールに絞るのがポイントです。情報のアップデートも迅速に行い、リアルタイムで参照できるようナレッジベースにアップロードし、社内で共有します。
 

運用ルールと責任者が決まっているか

情報共有と検索がしやすいナレッジベースを構築するためには、運用ルールと責任者を決める必要があります。専任の担当を複数人決めておき、社内の問い合わせを受ける体制を整えましょう。そのうえで、目的に沿って、管理・共有すべき情報を定めていきます。
 

ナレッジベースを導入する必要性が社内で周知されているか

ナレッジベースを導入しても、社員が必要性を理解しておらず、活用されないことがあります。

社内にナレッジベースを定着させるために、導入する目的と意図を明確化し、経営課題解決のための手段として利用することを周知しましょう。ナレッジベースの活用が、社員自身の業務効率化にもつながることを理解してもらうのがポイントです。
 

ツールを上手に活用することでナレッジベースの導入はうまくいく

社内に蓄積されているさまざまなデータをナレッジベース化することで、業務改善や生産性の向上だけでなく、顧客対応の向上も期待できます。既存のツールを使っての構築も可能ですが、長期的な費用対効果を考えると専用ツールの利用がおすすめです。

導入時には、運用体制や仕組み、マニュアルなどについても検討し、どのように運用していくかも考えることが大切です。

自社の課題を明確にしたうえで、ナレッジベースの導入を検討しましょう。

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トピック: 属人化

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