マーケティングファネルは、顧客の購買行動と、その過程における心理状況をとらえるうえで役立つフレームワークです。しかし、マーケティングに活用できるフレームワークには数多くの種類があるため、ほかのフレームワークとの違いがわからないという方もいるでしょう。
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マーケティングファネルの最大の特徴は、顧客の購買行動をいくつかのステップに分解し、見込み客がどの段階で離脱しているかを分析できることです。ボトルネックを数値で客観的に把握できるため、マーケティング戦略の効果的な改善が期待できます。
この記事では、マーケティングファネルの基礎知識や活用方法をわかりやすく解説します。マーケティング活動の課題抽出にお悩みの方は、ぜひご覧ください。
マーケティングファネルとは?
マーケティングファネルとは、顧客の購買行動のプロセスを表すフレームワークの一つです。ファネル=漏斗(じょうご)という意味を持ち、「気づき」「情報検索」などの行動をとった見込み客の人数の推移を表しています。
顧客の購買行動のプロセスをわかりやすく図で表しながら、顧客がどの段階で離脱しているかを分析できるのがマーケティングファネルの特徴です。
上から順に「認知⇒興味・関心⇒比較・検討⇒行動」の4つで構成される型がよく見られるマーケティングファネルの図です。
上の図は認知から行動までで完了していますが、行動(購入)後までを含めた下のようなマーケティングファネルもあります。
行動(購入)後までを含めたマーケティングファネルでは、コンバージョン(購入)のあとに、ロイヤルティ(ファン・リピーター)、アドボカシー(支持者・推薦者)という2つのフェーズが加わっています。詳しくは、マーケティングファネルの種類をご覧ください。
マーケティングファネルの重要性
マーケティングファネルが重要とされる理由は、消費者の購買プロセスごとにアプローチの変化が必須となることが前提にあるからです。
購買プロセスの各段階には、それぞれ異なったニーズが存在するため、常に一定のアプローチでは消費者を引きつけることはできません。
例えば、消費者が自社製品の存在を知ったばかりの段階にあると仮定します。自社製品について深く知らない消費者に対して、製品のメリットや魅力ばかりを全面的に押し付けるような広告を発信しても、期待した成果にはつながりません。消費者はまだ自社製品を知ったばかりで、購入決定の前に情報検索や比較検討などを行いたいと考えるためです。
ファネルの各段階における消費者のニーズと自社のアプローチにミスマッチがあると、商品やサービスの魅力が伝わりません。むしろ相手に嫌悪感を与えてしまう可能性もあるでしょう。そのため、マーケティングファネルの各段階にいる消費者ニーズを理解することが重要になってきます。
カスタマージャーニーとの違い
マーケティングファネルと類似する概念にカスタマージャーニーがあげられます。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知し、購入からリピートの意思を決定するまでの体験を「旅」に例えて表したものです。
どちらも顧客の購買行動をとらえるために用いられるものですが、それぞれ注目している点が異なります。
カスタマージャーニーは、各段階における顧客の心理・行動を「流れ」として可視化したものです。対して、マーケティングファネルは、購買行動の各ステップにおける人数の推移を表しています。
マーケティングファネルの5つのステージ
ここからは、マーケティングファネルの5つのステージについて解説します。
- 気づき
- 情報検索・比較検討
- コンバージョン
- ロイヤルティ
- アドボカシー
それぞれのステップにおける、見込み客の心理状態を想像しながら読み進めてみてください。
気づき(課題の発見)
「気づき(課題の発見)」は、消費者自身が何らかの課題に気づくステップです。
例えば、時間がないことで悩んでいる消費者が、家事を自動化する家電製品に興味を持ったとします。これは消費者が自らの課題に気づいた段階です。しかし、消費者自身が自らのニーズを明確化できていない場合もあるので注意しましょう。
消費者が自ら課題に気づくだけでなく、企業側から働きかけることで気づきを提供できます。家電メーカーであれば、自社製品の具体的な活用シーンを冊子にまとめて配布するなどの方法があります。家事代行業者なら、実際にサービスを利用したことがある顧客の声をまとめた事例集を作成しても良いでしょう。
このように、消費者に「気づき」となる情報を提供することで、自らのニーズが明確になります。その結果、商品やサービスの情報検索・比較検討といった次のステップに移ってもらうことが可能です。
情報検索・比較検討
「情報検索・比較検討」は、ユーザーが課題を解決するために情報を検索し、複数の選択肢から比較検討を進めるステージです。
インターネットの普及にともない、消費者は口コミやレビューなどを簡単に検索できる時代になりました。しかし、「情報検索/比較検討」の段階にいる消費者は、あくまで「自分に最適な商品を探している」のであり、「自社が提供する商品を探している」わけではありません。そのため、競合他社と自社の商品を客観的に比較したうえで、真摯な情報提供を心がける必要があります。
自社商品の特徴をわかりやすく伝えるだけでなく、競合他社の商品や別の選択肢も提示することで、消費者が客観的に判断できるようになります。
そのうえで、消費者に選ばれるように商品やサービスの価値を高めることが重要です。
コンバージョン(購入)
消費者のニーズと自社の商材がマッチすると、購入(コンバージョン)へとつながります。ただし、消費者の購買意欲が高まっていたとしても、直前になって何らかの理由で離脱してしまう可能性があるため、注意が必要です。
購入前段階まで到達したユーザーがコンバージョンにつながらない場合は、ユーザーの意欲を保ち続けるための施策が必要となります。
例えば、ユーザーがサービスの購入を行う際、Webサイトのフォーム入力を手間に感じて離脱するなどの理由が考えられます。入力フォームの離脱を防ぐためには、EFOの施策が有効です。
購入へのモチベーションが下がってしまう要因は、思わぬところに隠れているものです。消費者が購入に至るまで、意欲を低下させないような工夫を行いましょう。
ロイヤルティ
ロイヤルティとは、消費者が企業やブランド、商品に対して抱く「愛着」や「忠誠」を意味する言葉です。
消費者の購買行動は、商品の購入だけでプロセスが終了するものではありません。仮に、消費者が購入した商品やサービスに対して、期待したような満足感が得られなかった場合、リピート購入につなげることは難しくなります。
提供した商品が消費者の希望に適っている場合や、充実したアフターサービスで満足度を高められている場合には、顧客ロイヤルティの向上が図れます。
商品・サービスの購入をゴールにするのではなく、顧客ロイヤルティを高めることをゴールに据えることを意識してみましょう。そのうえで、マーケティングや営業、カスタマーサポートの施策を講じることで、中長期的に売上が安定します。
アドボカシー
アドボカシーとは「支持」を表す言葉です。ロイヤルティと似ていますが、アドボカシーは明確に支持を表し、具体的な行動につながる特徴があります。
特定の企業やブランドなどに支持を表明する顧客は、リピーターとして長期的な関係を結べるようになります。さらに、口コミや商品レビュー、SNSなどによって自分の体験を他者と共有しようとする顧客もいます。
こうした顧客は単なるリピーターにとどまらず、「自社のファンになった」と言い換えても良いでしょう。
このような口コミや評判による情報拡散は「バイラルマーケティング」と呼ばれ、顧客との関係性を構築する最良の手段とされています。
マーケティングファネルの種類
マーケティングファネルには、いくつかの種類があります。目的や事業の特徴に合わせてマーケティングファネルを使い分けることで、施策のボトルネックが発見しやすくなるでしょう。
ここでは、次の3種類を紹介します。
- パーチェスファネル
- インフルエンスファネル
- ダブルファネル
パーチェスファネル
パーチェスファネルは、「AIDMA(アイドマ)」の法則を基にした、マーケティングファネルの基本となるモデルです。
AIDMAとパーチェスファネルは、それぞれ次のような流れになっています。
【AIDMA(アイドマ)の法則】
- Attention(注意)
- Interest(興味)
- Desire(欲求)
- Memory(記憶)
- Action(行動)
【パーチェスファネルのプロセス】
- 認知
- 興味・関心
- 比較・検討
- 購入
いずれも、顧客が商品・サービスを認知してから購入に至るまでの行動や心理状況を表していますが、AIDMAは一連の購買行動を可視化することが主な目的です。対してパーチェスファネルは、顧客の購買行動をステップで区切り、それぞれの行動をとった見込み客の数の推移を確認するためのものです。
AIDMAは購買行動を理解するためのフレームワークで、パーチェスファネルはマーケティング活動のボトルネックを発見するためのフレームワークといえるでしょう。
インフルエンスファネル
インフルエンスファネルは、顧客が口コミやレビューをWeb上で気軽に発信できるようになったことを受けて生まれたフレームワークです。「継続」「紹介」「発信(拡散)」の3階層で構成されており、顧客が商品・サービスを購入後に、知人や友人に紹介し、さらにSNSやWeb上で口コミが広がっていく様子を表しています。パーチェスファネルは、徐々に数が減っていく逆三角形なのに対して、インフルエンスファネルは、紹介から口コミが広がっていく三角形になっています。
インフルエンスファネルの概念を理解しておくことで、好意的な口コミの拡散を促す施策の立案につながります。
ダブルファネル
ダブルファネルとは、パーチェスファネルとインフルエンスファネルを組み合わせたものです。商品・サービスを購入した顧客がブランドのファンになり、レビューや口コミがWeb上に広がっていくことで、新しい顧客を作り出していく一連の流れを表しています。
購入までの流れと、購入後に情報が広がっていく流れを組み合わせて可視化することで、全体的なマーケティング戦略の最適化につながります。
マーケティングファネルの活用方法
マーケティングファネルの特徴は、各段階における見込み客や顧客の数の推移を表している点にあります。そのため、問題のあるフェーズを把握でき、マーケティング施策を見直すきっかけになります。
例えば、次のような課題の解決に有効です。
- 認知段階で見込み顧客を創出できていない
- 比較検討段階で多くの見込み顧客がいるが、購入段階に進む顧客が少ない
- 購入段階で多くの顧客がいるが、リピーターが少ない
それぞれのプロセスにおけるボトルネックを認識し、適切な施策を講じることで改善につなげられるでしょう。
「マーケティングファネルは古い」といわれる理由
「マーケティングファネルはもう古い」という声もありますが、その背景には、消費者の購買行動や価値観の多様化などがあります。
マーケティングファネルは、「単一の商品に興味を持った消費者は、その商品情報を調べ、その商品の購入へと至る」という直線的な考え方を基に作られています。しかし、インターネットやスマートフォン、SNSなどが浸透した現代の消費者の購買行動は、そうした安直なものではありません。
情報収集の行動様式が変わり、購買行動が多様化するなか、マーケティングファネルという画一的なモデルが通用しづらくなってきている事実があります。
また、価値観が多様化した現在、商品やサービスに求める価値が購入者ごとに変化しやすくなった点も、マーケティングファネルが古いといわれる理由の一つです。同じ購入層のなかでも、一方は価格の安さを重視し、他方は商品の性能や機能性を第一に考えるケースは珍しくありません。
その結果、ターゲットを画一的にとらえるマーケティングファネルでは、それぞれのターゲットの要望に対応しづらく、対象ユーザーをより細かく分類する必要性が生まれています。
マーケティングファネルは、BtoBにおいて今でも有効な手段といわれています。しかし、BtoCの場合は特にマッチしづらい傾向があります。マーケティングファネルだけでなく、多角的な視点で顧客の心理をとらえる必要があるでしょう。
ファネルに代わる新たなフレームワーク「フライホイール」
前章で「マーケティングファネルが古い」といわれる理由を取り上げました。しかし、マーケティングファネルが時代遅れになろうとも、消費者の行動や心理を理解するために重要なモデルであることには変わりありません。では、多様化する消費者の購買行動や価値観の変化にはどう対応すれば良いのでしょうか。
HubSpotでは、マーケティングファネルに代わる「 フライホイール」という新しいモデルを提唱しています。フライホイールとは、購買をゴールとする漏斗型の形状ではなく、顧客を中心として円形にカスタマーサービスやマーケティングを展開しようとする考え方のことです。
上図のように、マーケティングやカスタマーサービス、営業といった社内の各部門が顧客を取り囲んでいます。フライホイールは、顧客へ価値を提供する各部門が手を取り合い、興味・関心の提供から信頼関係の構築、顧客のファン化までの施策を一丸となって行うモデルであることが大きな特徴です。
マーケティングファネルのように購買活動を主眼に置く方法とは異なり、顧客を中心としてサイクルを回転させることでLTV(顧客生涯価値)が高まり、その結果、自社の持続的な成長につながる状態を目指します。
フライホイールの考え方を取り入れることで、顧客と良好な関係を築きながら企業の成長・発展へとつなげられるでしょう。
顧客の変化に合わせて自社の戦略も進化させよう
マーケティングファネルの概念を理解することで、顧客の状況に合わせたアプローチができるようになります。マーケティングファネルは古いといった声もありますが、顧客の心理・行動を読み解くことはいつの時代でも重要です。
当社HubSpotが提唱するフライホイールもぜひ参考にしていただき、顧客の満足度を高めていきましょう。