社内の会議や資料で「KPI」や「KGI」という単語をよく見聞きするものの、正確な定義は実はよくわからないと感じている方は多いのではないでしょうか。実際、この記事も、「KPI」「KPIとは」で検索されている方々に多く読まれています。
KGIとは「企業の最終目標」を指標にしたものであり、KGIを達成するための中間指標となるのが「KPI」です。KGI達成のためには、社員一人ひとりが定義を正しく理解し、同じ目線をもって業務に取り組む必要があります。
ここでは、KPI・KGIの定義を、設定方法具体例を交えて解説します。
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KPI(重要業績評価指標)とは?
KPIとは、「Key Performance Indicators」の略で「重要業績評価指標」ともいいます。企業や組織の最終目標を達成するための中間目標ともいえるもので、目標達成度合いを評価します。
たとえば、「営業の売り上げを前月よりも25%向上させる」という目標を設定したとします。その場合、目標を達成するには、契約数をどれだけ増やす必要があるのか、顧客単価をどれだけ増やしたらいいのかなどを検討します。
仮に、前月に50件獲得していた契約数を70件に増やして売り上げの25%向上を目指すのであれば、何件の商談が必要なのか、その商談件数を実現するには見込みが何件必要なのかなど、より具体的に行動できる数字に落とし込む必要があります。
KPIが定量的で、個々人で捉え方にばらつきが出にくく目線を合わせやすいかたちで設定されると、チーム全体が同じゴールを向くことができ、着実に最終目標に進んでいけるのです。
KPIを設定する4つのメリット
KPIを適切に設定することで、組織やメンバーにはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。
1.個人の目標が明確になる
組織 KPIは最終的に個人のKPIに落とし込まれます。すると、メンバー1人ひとりの目標が明確になり、マンパワーの向上や強いメンバーの育成につながります。
2.目指すべき方向が明確になることで推進力が生まれる
チーム全体のKPIを設定すると、チームが向かうべき方向性が明確になり、メンバーの迷いがなくなってより業務が推進されやすくなります。メンバー全員が「このKPIを達成するために」という視点を持ちやすくなることで、結果的に目標達成する可能性も高くなるでしょう。
3.評価基準が明確なためPDCAを回しやすい
具体的な中間目標としてKPIを設定すれば、短期的なサイクルでPDCAをまわすことができます。KPIの設定が抽象的になると、最終目標に近づいているか評価が困難になるため、具体的な数値を設定するといいでしょう。
KPIとKGI・KFS・OKRとの違いを押さえよう
一般的に、KPIはKGI・KFS・OKRといった言葉と一緒に使用されることが多くみられます。
ここで、これらの言葉の意味を整理しておきましょう。
KGIとの違い
KGIとはKey Goal Indicatorの略で、日本語では「経営目標達成指数」といいます。KGIは、企業の取り組みやマーケティングに対する最終目標であり「何をもってゴールとするか?」という指標です。
年間目標などの「営業利益150%アップ」といった数値目標がKGIです。KGI(最終目標)から逆算してKPI(中間目標)を設定するため、KGIとKPIはセットで考えると良いでしょう。
KFSとの違い
KFSとは、Key Factor Successの略で、「事業成功のための要因」を指します。KPIが具体的な数値指標になっているのに対し、KFSはもっと抽象的で広い意味で使われています。たとえば、営業利益を上げるために必要なのは、商談件数を増やすことなのか、もしくはサービス単価を上げることなのか等を検討して、目標達成のために必要な要素をKFSとして設定します。
OKRとの違い
OKRとは、Objective and Key Resultsの略で、「目標と主要な結果」を意味します。高い目標を達成するためのフレームワークとして注目され、Googleやメルカリなど多数の大手企業でも活用されています。
KPIは100%達成できる目標を設定しますが、OKRは高い目標を掲げ、60〜70%達成できるように設定します。これは、あえて達成を目的にせず、自由な発想を促したり、やる気につなげたりするためです。
KPIが「営業利益150%達成のためにリード先を月100件増やす」といった具体的な目標であるのに対し、OKRは「新規ファンを獲得しながら、リード先を月100件増やす」という形式で、個人の野心的な目標と具体的な指標を設定します。
会社のビジョンに合わせながら、あえて高い目標設定を行い、挑戦に重きをおいているのです。
KPI設定に役立つ「SMART」の視点を取り入れる
KPIを設定する際は、「SMARTの法則」を意識してみるとよいでしょう。
- Specific 具体的であるもの
- Measurable 測定可能なもの
- Achievable 達成可能なもの
- Relevant 経営目標と適合するもの
- Time-bound 期限を定めたもの
これら5つのポイントを意識して目標設定すれば、具体的で達成可能なKPIを設定することができます。
1.Specific 具体的であるもの
目標は具体的に提示するようにしましょう。「売り上げアップ」と一言でいっても、「リピート客を増やすのか」「利益率をあげるのか」「顧客単価をあげるのか」など、そのアプローチはさまざまです。
部下に「売り上げ10%アップを目指してがんばろう」と伝えても、部下は「具体的に何をしたらいいのだろう?」と思うかもしれません。しかし、「リピート率をあげるためにがんばろう」と伝えると、お客さまがもう一回買いたくなるための方法を考えるようになるでしょう。
このように目標を具体的にすると、やるべきことも明確になるのです。
2.Measurable 測定可能なもの
KPIはかならず測定可能なものを設定しましょう。顧客満足度をあげることが目標だったとしても、満足度は数値化ができません。数値化できなければ、自分たちが行った行動がどれだけ顧客満足度につながったのかも評価しようがないのです。
顧客満足度をみたい場合は、リピート率・解約率などでも評価できます。このように、数値化できる指標をもって、KPIを設定しましょう。
3.Achievable 達成可能なもの
KPIは達成可能な数値を設定する必要があります。さらに、評価しやすく、本人のモチベーション向上につながるレベルに設定することも大切です。
月に10件の新規契約をとってくる社員に、「今月は50件目標だ」と伝えてしまったがために、疲弊したりモチベーションが下がってしまっては意味がありません。また急に大きすぎる目標を設定すると、どうすれば目標が達成できるのかイメージしにくくなってしまうでしょう。
4.Relevant 経営目標と適合するもの
KPIは書き出したKFSをもとに、KGIと関連性のあるものを選びましょう。KGIが「営業利益前年比150%アップ」なのに対して、KPIに「デザインを強化する」という目標を設定した場合、関連性が見えません。
もちろんデザインも売り上げアップのための大事な要素ですが、ここで設定しているKGIとのつながりが不明確だと評価が難しくなります。
5. Time-bound 期限を定めたもの
設定したKPIには必ず期限を設定しましょう。期限を設けると期間内の進捗が評価しやすくなります。また期限があることで、各々の自覚にもつながり、具体的な行動へとつながります。
SMARTの法則に関しては、以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひ御覧ください。
適切なKPIを設定する3つのステップ
ここでは、 KPIを具体的に設定するための手順を説明します。
Step 1:KGIの設定
KPIはKGIを達成するための中間目標のため、まずはKGIの設定を行います。KGIも具体的な数値を出すため、小売ビジネスなら「営業利益前年比150%アップ」「新規出店50店舗」といったKGIを設定しましょう。
Step 2:プロセスを洗い出しKFSを設定
設定したKGIを達成するために何をすべきか?を書き出します。たとえば「営業利益前年比150%アップ」がKGIだとすると、ECサイトの閲覧数を増やす、リピートを増やす、利益率をあげるなどがKFSをして考えられます。
KGIを達成するための要因と考えられるものを、思いつくだけ書き出しましょう。
Step3:KPIを設定
考えられたKFSから、KPIを設定していきましょう。「新規顧客のリピート率を5%から8%にあげる」「ECサイトの閲覧数を月1万PVから2万PVにする」といった具体的な数値目標を設定しましょう。
KPI設定でやりがちなミスと注意点
KPIの設定の方法によっては、企業にとってマイナスに働くことがあります。
そのため、KPI設定で起こりやすいミスと、注意点について解説します。
目先の売り上げのために顧客満足度を下げてしまう
目先の数字に重きをおきすぎて、顧客満足度を下げるケースがあります。よくあるのが、「営業利益前年比150%アップ」というKGIに対して「顧客単価を10%アップする」というKPIを設定した結果、本来お客さまが求めていない商品まで売ろうとしてしまうケースです。
仮にその場で売れたとしても、お客さまの中で「売りつけられた」という印象が残ってしまうと、リピート率の低下につながる恐れがあります。そうなると、一次的に「顧客単価10%アップ」というKPIが達成できても、今後のリピートの売り上げに悪影響を及ぼすかもしれません。長期的な経営を考えるとデメリットの方が大きくなるでしょう。
顧客単価を上げるというKPIは重要ですが、お客さまの満足度を重視する視点が欠かせません。
数字だけにコミットしないような設定にする
KPIは、あくまでもKGIを達成するためにあるもので、KPIの達成がゴールではないことを教育する必要があります。
ひょっとすると、社内に「数字さえ達成したらいい」と考える社員が現れるかもしれません。たとえば「営業利益前年比150%アップ」というKGIに対して、「新規訪問件数月60件」というKPIを設定したとします。
その時に「どんな相手でもいいから、とにかく60件訪問したらいい」と解釈してしまうと、見込み客ではない顧客に時間を割いてしまう可能性もあります。そうなるとKGI達成には至りません。
KGI達成につながるKPI設定が組織を成功に導く
現場でKPIを活用し、チームの最終目標を達成するイメージは掴めたでしょうか。営業、ECサイト運営、生産など、現場は違っても目指すべきKGIから逆算して、KKPIを設定することが重要です。
そして、一人ひとりが目標意識をもち、具体的なアクションを起こせれば、強いチームとなり、着実に成果につながっていきます。チームが同じ方向を向きながら、顧客に提供する価値を最大化し、最終目標であるKGIを達成しましょう。