パレートの法則とは?基礎知識から使い方の注意点を紹介

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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売上の大部分を生み出しているのは、一部の商品やサービス、一部の顧客であるといった傾向は「パレートの法則」と呼ばれ、「全体の大部分(80%)は一部の要素(20%)が生み出す」というものです。

パレートの法則とは?基礎知識から使い方の注意点を紹介

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パレートの法則に基づいて計画を立てれば、全体にインパクトを与えるプランが立てやすくなるうえ、どの顧客に注目すれば良いか、ターゲットも絞りやすくなります。

一方、使い方を間違えると見当違いの結論を引き出すことにもなりかねません。

本記事では基礎知識からロングテールビジネスまで幅広く説明します。

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    パレートの法則の基本と背景

    最初にパレートの法則の基本と、この法則が出てきた背景を紹介します。
     

    パレートの法則とは?

    パレートの法則とは「結果の80%は、全体を構成するうちの20%の要素によって生み出されている」というものです。

    この法則は社会現象など、さまざまな事象にあてはまると考えられています。特にビジネスシーンでは、80%に影響を与える20%の要素を見つけ出すためのフレームワークとして利用されています。
     

    パレートの法則の歴史

    パレートの法則は、19世紀末にイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートによって見出されました。

    パレートは、19世紀の欧州の一部の地域・国の所得と資産の分布を調査し、社会全体の所得の80%は、20%の高額所得者が所有していると提唱しました。
     

    世界を代表する企業とパレートの法則

    1963年、IBMはコンピューターを使う時間の80%が、全機能の約20%に集中しているのに気づき、20%の機能に絞って、ユーザーが使いやすくなるように改善しました。結果、性能は大きく向上しました。
     

    ビジネスシーンにおけるパレートの法則

    ビジネスシーンにおけるパレートの法則

    パレートの法則に基づいて計画を立てれば、全体にインパクトを与えるプランが立てやすくなるうえ、どの顧客に注目すれば良いか、ターゲットも絞りやすくなります。

    パレートの法則をビジネスフレームワークとして活用するメリットを、以下の2点にまとめました。

    • 注目すべき対象が明確になる
    • 仮説・施策立案に活用できる
       

    注目すべき対象が明確になる

    パレートの法則に基づけば、売上・利益の柱や課題の原因が見極められます。

    パレートの法則はさまざまなシーンで注目すべき対象を明確にします。

    • どの製品が売上に貢献しているのか?
    • どの顧客が売上に貢献しているのか?
    • どのWebコンテンツが多くのリードを生み出しているのか?
    • どのキーワードが多くのトラフィックを生み出しているのか?
    • システムのどの部分がトラブルを引き起こしているのか?
       

    アクションプランが立てやすくなる

    パレートの法則に基づけば、対象を絞り込めるため、アクションプランが立てやすくなります。

    実際に数値を分析してみると、必ずしも80:20にはならないことも多くみられますが、実際には数値に絶対的な意味はなく、重要なのは「上位の少数の要素が結果の大部分を占める」という点です。

    パレートの法則は「選択と集中」を裏づける経験則であるため、実際にその課題で通用するかどうかはわかりません。そのため仮説として施策化し、仮説検証しながら進めます。
     

    パレート図を作成してみよう

    パレート図は顧客や製品の売上を整理してグラフ化したものです。

    最初に数量の多い項目や要素順に並べ、累計や構成比も算出します。

    パレート図を作成してみよう1

    表の各項目の値と累計構成比を抽出し、グラフにします。項目の値は棒グラフで、累計構成比は折れ線グラフで表します。

    上記の「金額」と「累計売上比率」を元に作成したのが以下のグラフです。

    パレート図を作成してみよう2

    グラフから貢献度の大きさや重要度を分析します。このグラフから、売上の大部分を占めている上位4社がわかります。
     

    マーケティング施策での活用例

    マーケティング施策での活用例

    マーケティング施策を検討する際には、自社の強みや自社を取り巻く環境の分析も求められるでしょう。

    マーケティング施策にパレートの法則を活用した例を紹介します。
     

    活用例1 市場や顧客にリソースを最適化する

    パレートの法則に基づくと、売上の80%は、顧客の購入金額上位20%が生み出しています。この購入金額顧客の20%に焦点を当てた事業計画の作成によって、より少ないリソースで大きなインパクトが与えられます。

    企業では成長のカギとなる見込み客の創出に多くのリソースを投入しています。しかし見込み客を創出し、顧客に醸成するためには、多くの費用と時間がかかります。

    利益の大多数を生み出す既存顧客の維持と、顧客生涯価値に焦点をあてた施策へのリソースの再配分を検討しましょう。
     

    活用例2 社内の不均衡を解消する

    パレートの法則に基づくと、以下のような社内の不均衡も明らかになります。

    • 20%の従業員が業務全体の80%を担っている
    • 20%の従業員が80%の問題の要因となっている

    多くの業務を担っている従業員を把握したうえで、評価が適正か見直します。

    問題の要因となっている従業員に対しては、業務内容や配属先が適正か見極め、不均衡の解消に努めましょう。
     

    営業での活用例

    パレートの法則の営業での活用例を紹介します。
     

    パレートの法則によって顧客を予測する

    新製品・サービスを計画する場合、「80%の営業収益は購入金額上位20%の顧客から生まれる」という仮説に基づき、購買分布を予測します。購入金額上位20%の顧客とはどのような顧客なのか、セグメントを確定し、ペルソナを分析します。

    ペルソナについては以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

    2割の顧客とより強固な関係を築く

    パレート図を作成し、売上の核となる20%の顧客を見極めます。20%の顧客と、より強固な信頼関係を築くための手法を検討します。ここでは代表的な2つの手法を紹介します。

    • カスタマーサービスをマルチチャネルで提供する
    • ロイヤルティプログラムを用意する
       

    カスタマーサービスをマルチチャネルで提供する

    顧客がカスタマーサービスを求めている時に、電話やWebサイト、チャットボット、SNSなど、顧客が求めるチャネルで対応できるようにします。特に顧客がサポートを必要としている場合の迅速な対応は、より良い顧客体験につながります。チャットボットなどのAIを利用すれば、小規模のチームでも対応が可能です。
     

    ロイヤルティプログラムを用意する

    長期間にわたるリピート購入顧客に対しては、顧客が自社により一層の愛着を持ってくれるようなロイヤルティプログラムを用意しましょう。ロイヤルティプログラムは特別価格での提供やギフトばかりでなく、紹介による特典なども活用できます。
     

    Web広告での活用例

    Web広告でもパレートの法則は活用できます。80:20という数字にはこだわらず、全体にインパクトを与える少数の要素に注目しましょう。
     

    活用例1 多くのトラフィックを生むキーワードを割り出す

    キーワード、コピー、ディスプレイ広告など、自社にとって大きな利益を生み出す広告を徹底して分析しましょう。
     

    活用例2 効果を上げているキーワードを他の広告にも活用する

    多くの広告で「5%のキーワードが95%のトラフィックを生む」といっても過言ではないほど、キーワードの最適化は重要です。そのキーワードを他の広告にも活用しましょう。
     

    パレートの法則の活用で注意すべき点

    パレートの法則の活用で注意すべき点1

    パレートの法則は、使い方を間違えると見当違いの結論を引き出すことにもなりかねません。ここでは気を付けるべき2つの点を説明します。

    • ロングテールのビジネスを理解する
    • 20%しか結果に貢献しない80%の存在は不要ではない
       

    ロングテールのビジネスを理解する

    パレートの法則によって、売上全体に対する貢献度が低い要素が明らかになりますが、貢献度が低くても、長期にわたって利益を生み出すロングテールの要素を無視してはいけません。

    パレート図によって、貢献度が低い商品が明らかになります。貢献度の低い商品が自社にどのように貢献しているかの分析も必要です。

    パレートの法則の活用で注意すべき点2

    実店舗では、売場面積が限られているため、どうしても人気商品中心の品ぞろえが重要になります。

    一方、近年ではAmazonなどの通販や、音楽配信ビジネスなどで、ロングテールの商品を低コストで販売するビジネスも増えています。ダイレクトマーケティングや広告の分野で、大きな成果を生まない80%に注目するロングテールの考え方が注目されています。

    長期を見据えた販売戦略を立てることが重要だといえるでしょう。
     

    20%しか結果に貢献しない80%の存在は不要ではない

    パレートの法則で売上への貢献度が低いとされた要素であっても、売上以外の要素で企業に貢献している場合もあります。機械的に切り捨てるのではなく、各要素を丁寧に分析する必要があります。

    例えば、書店で売上の80%を上げているのが20%の本であったとしても、残る80%の本を置かなくなったら書店の売上自体が低下します。

    重要なのは書店を訪れる顧客のニーズを把握することです。実店舗を訪れる顧客は、本そのものよりも、本がたくさんある落ち着いた雰囲気を求めているのかもしれません。
     

    パレートの法則を学べるおすすめの参考書籍

    パレートの法則をビジネスフレームワークとして、必要に応じて活用できるようになりましょう。理解を深める参考書籍を紹介します。
     

    参考書籍1 『新版 人生を変える80対20の法則』 リチャード・コッチ

    幅広い事例を元にパレートの法則の基本を学ぶことができる。タイトルから「人生訓」のように思われるかもしれないが、ビジネスの参考になる。
     

    参考書籍2 『80対20の法則を覆すロングテールの法則』 菅谷 義博

    ロングテールの法則を学ぶことで、より深くパレートの法則を理解することができる。
     

    参考書籍3 『ビジュアルビジネス・フレームワーク』 掘 公俊

    パレートの法則だけでなく、重要なビジネスフレームワークが数多く説明されています。さまざまなフレームワークを比較しながら、現状の課題に活用できるフレームワークを学ぶことができます。
     

    パレートの法則で自社の最重要事業や最重要顧客を把握・分析しよう

    パレートの法則は、ビジネスの上での「選択と集中」を検討する際に役に立つ法則です。パレートの法則のフレームワークを活用することで、リソースの最適化や、課題解決の迅速化につながるでしょう。

    成功している世界中の企業の多くがパレートの法則を活用しています。ただ、パレートの法則は、使い方を間違えると見当違いの結論を引き出すことにもなりかねません。売上への貢献度が低いとされた要素であっても、売上以外の要素で企業に貢献している場合もあります。機械的に切り捨てるのではなく、各要素を丁寧に分析する必要があります。

    仮説の立案を助けるパレートの法則をテスト・検証と合わせて活用してみてはいかがでしょうか。

    マーケティング用語については以下の記事でも詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

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