ペルソナは、理想の顧客を象徴する架空の人物像のことです。理想の顧客像をできる限り具体的に設定することで、チームメンバー間でターゲットユーザーに対して共通認識を持つことができます。
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本ガイドを使いペルソナを作成すると、顧客像を可視化でき、コンテンツの作成の必要なマーケティグ活動、対話の相手を深く知る必要のある営業活動の相手を明確にし、すべての活動をより効率的に行うことが可能になります。
ペルソナは、マーケティングだけで活用するものではありません。製品開発や営業活動など、事業部を超えて利用するべきものです。では、ペルソナをどのように作成すればよいでしょうか。
本記事では、ペルソナの基本概念や具体例をご紹介しながら、実際の業務に活かせるペルソナの作り方を解説します。
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ペルソナとは何か?
「ペルソナ」という用語はマーケティングの領域を中心に広く使われるようになりました。ペルソナは、もともと心理学用語として使われていた言葉で、使用する場面によって考え方が少し変わります。まずは、本来のペルソナの意味、マーケティングで使われるペルソナの意味をそれぞれ理解しましょう。
本来のペルソナの意味
ペルソナとは、一言で表すと「人格」のことです。実際に辞書で引いてみると、「人」や「人格」を表す言葉として解説されています。
もともとは、ラテン語の「persona」が由来で、ギリシアの古典劇で「仮面」の意味で使われていました。その後、20世紀初頭にスイスの心理学者であるユングが「ペルソナ」とは「人間の外的側面」を表すと唱えたことをきっかけに、心理学用語として広まりました。
つまり、起源である「仮面」のように、「周りに見せる自分」の姿が、本来のペルソナの意味となります。
マーケティングにおけるぺルソナの意味
マーケティングで使われる「ペルソナ」は、商品やサービスのターゲットとなる層を想定したユーザー像のことを指します。デモグラフィック情報(年齢、性別、居住地域、収入、職業、学歴などの特徴)と心理学的傾向(何を好み、何を理想としているかなど)を組み合わせ、詳細なリサーチに基づいて作成します。
心理学用語を援用することで、「理想的な顧客」を「人格を持った人間」として、具体的に理解しようとした結果、マーケティングの領域でペルソナという言葉が広く浸透しました。
このペルソナに基づき、ユーザー像の思考や行動の傾向を分析し、最適な施策を考案するマーケティング活動を「ペルソナマーケティング」と呼びます。
ターゲットの違い
ペルソナと混同されがちな用語として「ターゲット」があります。ターゲットとは、一般的には「的」や「対象」といった意味を持ち、マーケティングでは「想定顧客層」の意味で使われます。
ターゲットは目標とする「顧客の集団(セグメント)」を指し、ペルソナはサービスの中心となる「顧客像」を意味するという点で大きな違いがあります。
ペルソナとターゲットの違いは、こちらの記事で詳しく解説しています。
マーケティングでペルソナ設定が重要な理由
ペルソナは、顧客(および見込み客)について深く理解するために作成します。
顧客への理解が深まると、コンテンツやメッセージの作成、製品開発、顧客のニーズに応えるサービス、応対、グループ分けを、顧客の視点で行えるようになります。
- ターゲットとする顧客が何を求め、何を知りたいと思っているか
- 理想的な顧客に多いのはどのような経歴か
そういった情報を細かく調べた上でペルソナを作成することが、顧客を共感させるポイントを把握するための鍵となります。
このように強力な存在となるペルソナを作成するには、市場調査を行ったり、顧客にアンケートやインタビューをお願いしたりして情報を集める必要があります。
1つか2つだけペルソナを作成する企業もあれば、10から20ほど作成する企業もありますが、初めてペルソナを作成するのであれば、最初は数を少なく作成し、必要に応じて増やしていくとよいでしょう。
理想の「ペルソナ」だけでなく「ネガティブなペルソナ」を作成することも
ペルソナは理想の顧客像ですが、ネガティブな、あるいは「避けるべき」ペルソナという、顧客にしたくない人物像を作成することもあります。
ネガティブなペルソナには、たとえば自社の製品やサービスに関してあまりにも高度な知識を持っている専門家や、リサーチの結果や専門知識について書かれたコンテンツにのみエンゲージする学生、あるいは購入金額が低い、他社に乗り換える可能性が高い、再購入の可能性が低いなどから獲得にコストがかかり過ぎる見込み客などが考えられます。
ネガティブなペルソナを作成することで、リーチすべきでない人を明確化・可視化が可能になります。
マーケティングでのペルソナ活用法
マーケティングの場面で最も多いのは、ターゲットオーディエンスにアピールするコンテンツやメッセージを作成するためにペルソナを活用するというものです。
また、オーディエンスをセグメント化し、それぞれのターゲットを定めてパーソナライズするためにも利用します(参照記事はこちら:パーソナライズの心理学:カスタマイズされたユーザーエクスペリエンスが求められる理由)。
例えば、データベースに含まれるすべての人に同じメールを送ってリードナーチャリングを試みるのではなく、顧客をペルソナでセグメント化し、各ペルソナに関して理解している内容に基づき最適化されたメッセージを送ることができます。
また、ペルソナを顧客のライフサイクルステージと合わせて(購買サイクルのどの時点にいるかを)考えれば、目的のはっきりとしたコンテンツを計画し、作成することが可能になります。これについて詳しく知りたい方は、HubSpotによるコンテンツマッピングテンプレートをダウンロードしてください。
さらに、ネガティブなペルソナを作成すると、すべてのコンタクトの中から「想定顧客層に属さない人物像」を抽出することができ、リード当たりのコストや顧客当たりのコストを抑え、生産性を上げることが可能になります。
さて、それではペルソナの作成方法について説明を始めましょう。
ペルソナの作成方法
ペルソナ作成のカギは、顧客に関連する詳細な情報を収集することです。現実を反映してペルソナを作成するために、リサーチやアンケートを実施したり、ターゲットオーディエンスにインタビューを行ったりします。対象者には、顧客や見込み客のほかに、コンタクトデータベースには存在しないがターゲットオーディエンスになり得る人などを含めます。
ペルソナ作成に必要な情報を集める方法
具体的には、以下の方法でペルソナの作成に必要な情報を集めることができます。
- コンタクトデータベースを調べ、リードや顧客がどれくらいの割合でコンテンツにアクセスし利用しているかについて傾向を分析する
- ウェブサイトに設置しているフォームの中に、必要な情報を得るための質問を加える 例:会社の規模別にペルソナを作成する場合、会社の規模について質問するフィールドをフォームに作成する
- リードや顧客に深く関わっているセールスチームに、リードや顧客のグループ分けについてアドバイスを依頼する
- 顧客と対面や電話でインタビューを行い、製品やサービスについてフィードバックをもらう
特に顧客に直接インタビューすることは、ペルソナ作成にとって非常に重要です。さらに詳しく説明します。
ペルソナ作成におけるインタビューのポイント
インタビューの対象者
ペルソナを作成する際、以下のグループから対象者を探すことができます。
- 顧客:既存顧客は自社の製品を購入し、すでに良好な関係性を築けていることから、対象者を最も効率的に集めることができます。顧客の中から、少なくとも数人がターゲットペルソナのモデルになります。
- 見込み客:製品を購入したことのない人や、自社についてまだあまり知らない人も対象者に含めてバランスを取るようにしてください。見込み客やリードはコンタクトデータベースに登録されているため、依頼するのも簡単です。ランディングページのフォームやウェブサイト分析から入手した見込み客やリードの情報をすべて利用し、ターゲットのペルソナにふさわしい人を判断してください。
- 紹介:新しい市場をターゲットとしている会社や、リードや顧客がまだいない会社では特に、ペルソナを作成するためのインタビュー対象者を、知り合いの誰かから紹介してもらうと良い場合があります。同僚、顧客、ソーシャルメディアのコンタクトといったネットワークを利用してインタビュー対象者を探し、紹介してもらいましょう。
- その他のネットワーク:会社とはまったく関係のないネットワークからインタビューの対象者を探すという方法もあります。クラウドソーシングサービスを利用すれば、対象者を明示してぴったりなインタビュイーの募集ができます。テストの方法を自由に決めることはできませんが、テストの対象者を短時間で集められるので非常に便利です。
インタビュー対象者の人数
インタビューすべき人数は場合によって異なります。最初は作成するペルソナごとに3~5人の人にインタビューをしてください。顧客・見込み客・自社について知らない人など、いくつか分類したカテゴリごとに3~5人の対象者を集めましょう。
インタビューはペルソナについて十分に理解したと思ったら終了してかまいません。終了の目安は、質問に対する回答を正確に予測できるようになってきたタイミングです。
インタビューの質問例
【職場】
- 職場での役割や役職について教えてください
- 報酬はどのように決定しますか?
- 職場での一日の様子について聞かせてください
- 業務にどのようなスキルが必要ですか?
- どのような知識が必要で、何のツールを使用しますか?
- 直属の上司について、また部下について教えてください
【勤務先】
- 勤務先の業種を教えてください
- 勤務先の規模を教えてください(売上高、社員数など)
【目標】
- 社内で担当している業務について聞かせてください
- どのような結果が出れば、目標を達成したと言えますか?
【悩み】
- 社内で最も負担に感じていることは何ですか?
【情報収集】
- 業務に必要な情報をどこから入手していますか?
- どのような刊行物やブログを読みますか?
- 参加している団体や、使用しているソーシャルネットワークを教えてください
【個人的な経歴】
- 差し支えなければ、年齢、既婚・未婚、子の有無など(デモグラフィック情報)を聞かせてください
- 最終学歴、学校名、学部・学科名など学歴について教えてください
- 職歴について教えてください
【購買行動】
- 購入の検討中に、業者とどのような方法(メール、電話、面会)で連絡を取りたいですか?
- メーカーや製品について知りたいとき、インターネットを利用しますか?利用する場合、どの方法で情報を検索しますか?
- 最近何か購入しましたか?購入の検討を始めた理由、商品の評価、比較方法、最終的にその商品を選んだ理由などについて聞かせてください。
ペルソナについて収集した情報を整理する際には、HubSpotのペルソナテンプレートを無料でダウンロードが役立ちます。下図のようなテンプレートにインタビューで収集した情報を記入していくことで、ペルソナの設計ができます。無料でお使いいただけますので、ぜひご活用ください。
ペルソナを作成する際のポイント・注意点
ペルソナを作成する際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
自社の都合の良いペルソナを作らない
ペルソナの設計はあくまで実態に即して作成することが大前提です。「こういうお客さんに届けたい」「きっとこんな顧客層だろう」など、憶測だけでペルソナを作ると、本来のターゲット層からズレてしまう可能性があります。
前章で紹介したように、コンタクトデータベースを活用したり、インタビュー(アンケート)を実施したりするなど、実際に利用している顧客、あるいは利用を検討している見込み客を理解したうえで作成してください。
また、地域の人口などを調査する際にも、人口動態調査といった正確な統計データを使いましょう。
定期的にアップデートする
ペルソナは、市場や顧客のライフスタイルの変化などによっても刻々と変わるものです。はじめに作ったペルソナのまま運用し続けていると、気付かないうちに市場の動向とズレていく可能性があります。
ペルソナを適切に活用するためには、市場の変化を機敏に察知し、定期的にアップデートすることが大事です。例えば、1年に1回は再設計する、3か月に1回は定期チェックを行うなど、スケジュールを決めておくと良いでしょう。
適切な数だけ作成する
ペルソナの設計は複数作るのがベストですが、闇雲に数多く作れば良いわけではありません。ペルソナを増やし過ぎると、方向性の判断に迷う、管理がしづらくなるといったデメリットがあります。
初回は3~5人程度に留めるなど、必要最小限のペルソナから始めてみましょう。
カスタマージャーニーを作成する
ペルソナ設計と同様に、顧客分析をする手法の一つとしてカスタマージャーニーの作成が取り入れられています。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品・サービスの認知から購買に至るまでのプロセスを、旅になぞらえて分析するフレームワークのことです。設計したペルソナが、どの認知から購買に至る各フェーズでどんな行動や心理状態にいるのかを分析することで、フェーズごとの施策までを考えることができます。
適切にペルソナを設計してマーケティングに活用しよう
ペルソナを利用すれば、顧客ニーズに合ったコンテンツやランディングページを作成することができます。また、ペルソナを利用して、ターゲットを絞って広告を配信することもできます。このほかにもペルソナを活用したマーケティングは、さまざまな場面で力を発揮します。
しかし、その前提となるのは、ペルソナが実在の顧客を正確に反映したものであるということです。ペルソナを作成するとき、情報が少なかったり、アクセス解析などのデータに頼るだけでは、どうしても仮定に頼りがちになります。
正確なペルソナを作成するためには、情報の収集とならんで、顧客の実際の声を聞くことは欠かせません。ぜひ定期的なインタビューを行い、顧客に質問を投げかけ、「なぜ?」と尋ねてみてください。
ペルソナについて収集した情報を整理する際には、HubSpotのペルソナテンプレートを無料でダウンロードが役立ちます。ペルソナ設計の際にぜひご活用ください。