顧客から支持を得て事業を継続していくために、「改善」は重要なプロセスです。また、改善は主観や過去の経験に基づいて取り組みがちですが、効率的に行うためには客観的なデータや正確な分析が重要であることはいうまでもありません。
そこで、効果を発揮する手法がPDCAです。
本記事では、PDCAのプロセスや企業の導入事例、失敗しないためのポイントを紹介します。実際の業務でどのように活用できるか、導入する際の参考にしてみてください。
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PDCAとは?
まずは、PDCAの基本的な意味から確認しましょう。
PDCAとは、「Plan(計画)」→「Do(実行)」→「Check(評価)」→「Action(改善)」の頭文字を取った言葉です。計画を実行後、結果を検証するプロセスを継続して行うことで、品質を向上させるマネジメント手法のひとつとして知られています。1950年代に、品質管理の父として知られるデミング博士(W.E.Deming)によって提唱されました。
Plan、Do、Check、Actionの各プロセスでやるべきことは、以下の通りです。
Plan(計画)
・目標を設定した上で、仮説に基づき目標実現のために必要な行動の計画を立案します。
Do(実行)
・立案した計画をもとに、施策を実行します。
Check(評価・分析)
・計画通りに施策を実行できたかどうかを評価します。客観的なデータに基づき、解決すべき課題を発見します。
Action(改善)
・評価で明らかになった課題を解決するための対策を検討します。
またPDCAは、循環する輪のように継続することから「PDCAサイクル」とも呼ばれます。
「ビジネスは科学よりも正確」というデミング博士の言葉にあるように、ビジネスにおいて計画を立案、実行し、そこから得たデータに基づき改善し続けることは、企業が生き残るためには非常に重要です。
PDCAを導入する3つのメリット
品質を向上するためには、数値による可視化と分析は欠かせません。PDCAを導入することによって、目標、行動、成果、課題が可視化されます。結果として改善が早く効率的に行われるため、より良い結果を出しやすくなります。
以下では、PDCAを導入するメリットを詳しく見ていきましょう。
メリット1:目標の可視化
PDCAサイクルを回すためには、まず達成すべき目標を決めてから、それを実現するために行うべき施策を計画・実行していきます。これにより、チーム・組織できちんとゴール(目標)の可視化や共有化が行えます。
メリット2:円滑な実行
明確な目標に合わせて必要だと思われる施策を計画・実行するため、無駄なくスムーズに施策が実行できます。「今はOMOが話題だからうちでもやってみよう」などトレンドを追ってやみくもに取り組むのではなく、ぶれずに目標達成に必要な施策を精査して実行できます。
メリット3:課題の可視化
PDCAでは、実行した施策の結果を振り返り、課題や改善策を検討します。そのため「計画と結果でどれくらいの差があったのか」「(計画どおりの/計画とは違う)結果になった要因は何か」を考えることになり、課題の可視化につながります。
PDCAを活用したB2B企業の取り組み事例
基本的なプロセスを理解したところで、実際に企業がどのようにPDCAを活用して改善を行っているのかを見ていきましょう。今回取り上げた3社は、いずれもPDCAサイクルを社内で仕組み化したことで、無理なく、効率的に改善が行われています。
【事例1】トヨタ自動車
トヨタ自動車が行っている改善プロセスは、「トヨタ生産方式」として世界中に知られています。これは生産計画どおりに必要な部品を必要な数量生産する「ジャストインタイム」と、不良発生時に生産ラインが自動停止する「自働化」が軸になっているのが特徴です。無駄なく異常管理ができるシステムを作り上げたことで、生産性を向上し続けています。
【事例2】無印良品
無印良品で行った改善のなかでも代表的な例は「 MUJI GRAM 」です。これは同社の業務マニュアルのことで、勤務年数が少ないアルバイトスタッフでもスムーズに業務を行えるように、また自然と改善提案が行えるように工夫されています。
まず同社では、店舗で決められた業務をどのスタッフでも同じように行うため、ルールや業務ノウハウを「MUJI GRAM」として業務マニュアル化しました。
マニュアルを参照することで、ベテランスタッフも新人スタッフも同じ品質で接客対応をはじめ各業務を行えるようになりました。さらにスタッフからの改善提案を募集して、毎月約20ページを改訂することで、効率的に店舗改善を実現しました。
【事例3】ソフトバンク
ソフトバンクでは、短期間で高い成果を出す手法としてパラレルで施策を実施する「超高速PDCA」を実施しています。
一般的なPDCAと異なる点は、あらかじめ大目標と小目標を立てておき、それを実現するために考えられる複数の施策を並行して実施するところです。得られた結果を客観的数値で検証した上で、最も成果を上げた施策に集中することで、高速に改善を行っていくのが特徴です。
PDCAサイクルのよくある3つの失敗パターン
ここまではPDCAによって得られるメリットや効果を紹介してきましたが、取り組み方を誤ると、期待した成果が得られなくなるため注意が必要です。
ここではPDCAに取り組む上で留意したい、陥りがちな3つの失敗パターンを紹介します。
【失敗パターン1】過去のプランをベースにしてしまう
PDCAは継続して行うことが特徴ですが、それゆえに前例踏襲に振れすぎてしまうというデメリットがあります。「以前この計画で成功した」という成功体験に引きずられて正しい判断ができなくなり、結果として成果を上げるのに必要以上に時間がかかってしまう場合があります。
【失敗パターン2】設定が曖昧になる
通常業務を行いながらPDCAの計画や評価、改善提案を行うのはスタッフにとってかなりの負担です。そのためトップダウンでPDCAを実施するよう指示を受けたものの、形だけの目標設定、計画、評価となってしまい、期待した成果が出せなくなる場合があります。
特に現場スタッフがPDCAの目的を明確に理解しないまま導入してしまうと、はじめの段階でピントのずれた目標ができ上がってしまう可能性があります。目標が不明確だと、その後に続く計画、実行、評価までもが不明確になってしまうのです。
【失敗パターン3】PDCAサイクルを回すことが目的になってしまう
PDCAは、本来効率的に目標を達成するための手段のひとつです。しかしPDCAを重視するあまり、「PDCAサイクルを回すこと」そのものが目的になってしまう場合があります。
効果的にPDCAを回すためのポイント
前項で紹介したよくある失敗を参考に、PDCAを効果的に回すためのポイントを考えてみましょう。
目標の数値化
設定が曖昧になると、計画に基づいた実行や評価・検証も不明瞭になります。結果的に期待するような改善効果は得られないでしょう。そのため目標を定量的に示すなど明確にするのがポイントです。
遂行可能な計画を立てる
明確な計画を立てた後は、計画どおりに実行します。計画どおりに実行できないと、正しく評価できないためPDCAサイクルを正しく回せなくなります。それを避けるためにも、無理な計画を立てず、遂行可能な計画を立案することが大切です。
定期的に評価を実施
業務に追われると、どうしても実行フェーズに重点がいきがちです。しかし評価は重要なプロセスのため欠かすことができません。
そこで定期的に評価を実施するようにしましょう。仕組み化してしまうのも効果的で、「毎月15日にミーティングを実施して評価する」など、あらかじめ評価をスケジュールに組み込むのもおすすめの方法です。
PDCAと「OODA」の違いとは?
OODAという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
PDCAに代わる品質マネジメント手法として注目されているのがOODA(ウーダ)です。これは、「観察(Observe)」→「状況理解(Orient)」→「決定(Decide)」→「行動(Act)」の頭文字を取った言葉です。
PDCAが計画から評価までウォーターフォールのように上流から順番に実行するのに対し、OODAは状況を把握してから意思決定を行い実行へと移ることが特徴で、変化に柔軟に対応することが可能です。
またPDCAが一方向でサイクルを回していくのに対し、OODAでは必要に合わせて他の段階に戻るなど自由度が高いのが特徴です。
OODAは変化のスピードが早い今の時代に適したマネジメント手法といえますが、必ずしもPDCAよりも優れているというわけではありません。状況に応じて適切な手法を選択するようにしましょう。
ビジネスを成功させるために「改善」は欠かせない
PDCAは、品質を向上するためのマネジメント手法です。PDCAに基づいて計画策定、実行、評価、改善のプロセスを循環させることで、経験が少ない人でも効率的に改善を行うことが可能です。
PDCAの目的を正しく理解して、正しいプロセスで実行することが改善の近道です。OODAのように今の時代に合わせた手法も上手に組み合わせつつ、自社に合った方法を発見しましょう。