「ノーコード」と「ローコード」は、いずれも高度なプログラミングを必要としないシステムやアプリケーションの開発手法で、IT人材の不足やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進に役立つ手段として注目されています。

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本記事では、ノーコードとローコードの違いやツール選定のコツ、導入のポイントを具体的に紹介します。
ノーコードやローコードが注目される背景
近年、企業におけるDXへの取り組みは着実に広がっており、2023年にIPA 独立行政法人 情報処理推進機構が行った調査では、DXに着手している企業が全体の約74%に達しました。特に大企業では9割以上がDXに取り組んでいる状況です。
一方で、従業員100人以下の企業では、DXに着手している企業の割合が約45%に留まりました。DXに取り組んでいない企業が抱える理由として「メリットの不明確さ」に加えて、「知識・情報の不足」と「人材不足」があげられています。
これらの課題の解決策として注目されているのが、高度なプログラミング知識不要でシステムやアプリケーションを開発できる「ノーコード」や「ローコード」と呼ばれる開発手法です。
専門知識を持たない非エンジニアであっても開発が可能になるため、知識や人材の不足といったボトルネックの解消につながります。
ノーコードとローコードの違い
ノーコードとローコードの違いをまとめると、次のようになります。
ノーコードは、プログラムのソースコードを記述することなくシステムやアプリケーションを開発する手法です。日報管理システムや顧客データベース、アンケートフォーム、シンプルなWebサイトなど、定型的な業務を担うアプリケーションの開発に向いています。
直感的な操作で誰でも簡単にシステム開発が可能ですが、カスタマイズに制限があることが多く、特定の業界のみで必要とされる特殊な業務や複雑な業務を担うシステムの開発は困難といえます。
一方のローコードは、「少ない(Low)コード」という意味の通り、コード量を大きく減らした開発アプローチです。ノーコードと同様に専用のツールを使ってシステムを開発し、部分的にコードを記述することでカスタマイズできるのが特徴です。
複雑な処理の実装や外部システムとのAPI連携、細かなUI/UXの調整、既存システムへの機能追加など、高度なカスタマイズが可能となります。ただし、この自由度を活かすためには、プラットフォームの仕様を理解し、カスタマイズできるITの専門知識が必要です。
部門や業務単位のシンプルなシステム開発にはノーコード、柔軟性と拡張性を重視するならローコードがおすすめです。
ノーコード・ローコードに関連する知識として、オリジナルのシステムをプログラミングによってゼロから開発することを「プロコード(スクラッチ開発)」と呼びます。
ノーコード・ローコード開発のメリット
ここでは、ノーコード・ローコード開発のメリットを、共通するメリットとノーコード・ローコード独自のメリットに分けて解説します。
共通するメリット
メリット①:開発スピードの向上
ノーコード・ローコード開発は、専用のツールを活用してシステム開発を行うため、一般的な開発手法に比べて開発スピードが向上します。商品開発にノーコード・ローコードを活用すると、試作品(プロトタイプ)の迅速な構築が可能となり、関係者による認識合わせに役立ちます。市場からのフィードバックも早期に獲得できるため、競合他社に先駆けた商品・サービスの提供も期待できるでしょう。
メリット②:開発コストの削減
IT人材の人件費や外注費は、DXを推進する企業にとって大きなコストです。ノーコード・ローコードのツールによる内製化を実現することで、これらのコストを大きく削減できるでしょう。また、開発期間が短くなることで、プロジェクト全体に必要な人件費や外注費の削減にもつながります。
メリット③:外部システムとの連携
ノーコード・ローコード開発のツールはAPI接続機能を備えているケースが多く、ERP(企業資源計画)やCRM(顧客関係管理)ツールなどの外部システムと連携できます。システム同士の連携によってデータのやり取りがスムーズになり、部門間の連携強化につながります。
ノーコード独自のメリット
メリット①:プログラミング知識が不要
ノーコードは名前が示す通り、基本的にコーディング(ソースコードの記述)を必要としません。プログラミングの知識を持たない非エンジニアであっても、簡単なパソコン操作でシステムやアプリケーションの開発が可能です。
メリット②:現場主導の業務改善が可能
システムやアプリケーションの開発は、「ヒアリング → 要件選定 → 開発 → テスト →リリース」という流れで進むのが一般的で、リリースまでに数か月かかるケースも少なくありません。その点、ノーコード・ローコード開発は、部門や個人単位でプロセスを完結させることができるため、現場主導のスピーディーな業務改善が可能です。業務内容を熟知している各部門で開発を行うことで、実用的なシステムを開発できる点も大きなメリットといえます。
ローコード独自のメリット
メリット①:開発の自由度・拡張性が高い
ローコードは、ノーコードの手軽さとスクラッチ開発の柔軟性のバランスが取れた開発手法といえます。ノーコードと同様に専用のツールで基本的な開発を行うことでスピードを確保しつつ、必要に応じたカスタマイズで高度な機能を実装できます。
複雑な業務や細かなUI/UX調整、独自のワークフロー設計など、ノーコードでは実現困難な要件にも対応可能です。
メリット②:業務の属人化防止につながる
ソースコードを記述する一般的な開発手法では、「作成者にしか理解できないコード」が問題になることがあります。業務が属人化することで、保守管理や引き継ぎに支障が出ることも考えられるでしょう。ローコード開発の場合は共通のツールを用いて開発を行うため、難解なコードの使用を防ぐことができます。
ノーコード・ローコード開発の注意点
ノーコード・ローコード開発に取り組む際は、次のような注意点を押さえておきましょう。
共通する注意点
注意点①:プラットフォームへの依存リスク
ノーコード・ローコードは、専用のツールを使用して開発を行うため、運用が特定のプラットフォームへ依存する「ベンダーロックイン」のリスクに注意する必要があります。急な仕様変更や価格改定が発生する可能性があるだけでなく、万が一、サービス提供が終了してしまった場合には、運用をほかのシステムに移行しなければなりません。
注意点②:セキュリティ体制
ノーコード・ローコードは、現場主導の開発が可能になる一方で、セキュリティリスクも生じやすいといえます。
セキュリティに関する知識が不足した状態で部門単位のシステム運用が行われることで、アクセス権限の設定ミスやデータの暗号化の不備、脆弱性のあるアプリケーション作成などが起こる可能性があります。
また、IT部門の管理外でツールが導入・利用されると、問題が生じた場合の迅速な対応も困難になります。
組織的な対策としては、利用ガイドラインの策定や定期的なセキュリティ教育、開発アプリケーションの監査体制の構築などがあげられます。
ノーコード特有の注意点
注意点①:機能やデザインの制約
ノーコードで開発できるシステムやアプリケーションの仕様はツールに依存するため、カスタマイズの自由度に制限があります。そのため、ノーコードは複雑な業務に関するシステム開発には適していません。
注意点②:大規模・複雑な開発には不向き
ノーコードツールの多くは、小〜中規模のアプリケーション開発を想定して設計されています。数千人規模のユーザーが同時利用するエンタープライズシステムや、大量のトランザクション処理を伴う基幹系システムに対しては、性能の面で限界があるといえるでしょう。
ローコード特有の注意点
注意点①:一定レベルの専門知識が必要
ローコードはソースコードの記述を最小限に抑えられる開発手法ですが、システムやアプリケーションのカスタマイズには一定レベルの専門知識が必要です。
特に、JavaScript・Python・SQLなどの知識が求められるケースも多く、非エンジニアにとってはハードルが高い場合があります。社内に専門知識を持った人材がいない場合は、ローコード開発ツールのメリットを活かすことが難しくなるでしょう。
注意点②:スクラッチ開発ほどの自由度はない
ローコード開発は、ノーコード開発に比べて柔軟性は高いものの、スクラッチ開発ほどの自由度はない点に注意が必要です。開発するシステムやアプリケーションの仕様によっては、スクラッチ開発のほうが適している場合もあります。
ノーコード・ローコード開発ツールの選び方
ノーコード・ローコードの開発ツールを選ぶ際は、次のようなポイントを押さえておきましょう。
- 開発目的・要件に合っているか
- 必要な機能は搭載されているか
- 直感的な操作が可能か
- セキュリティ要件を満たしているか
- 既存システムと連携できるか
- 費用対効果は見合っているか
- サポート体制は十分か
開発目的・要件は明確か
ツールの選定時には、次の項目を明確にしておきましょう。
- なぜ開発するのか(Why)
- 何を作るのか(What)
- 誰が使うのか(Who)
- どう運用するのか(How)
例えば、営業部門の案件管理の効率化が目的なら、手作業による工数の多さや情報共有の遅れ、進捗状況の確認といった課題を洗い出し、それに合ったシステムの機能を特定します。
必要なアカウント数やデータ容量なども要件定義の段階で明確にしておくと、自社に合ったツールを選びやすくなります。
必要な機能は搭載されているか
候補となっているツールを比較する際は、求めている機能が標準搭載されているかどうかを確認しましょう。場合によってはオプションの契約が必要となるため、想定よりもコストが増えてしまう可能性もあります。現在の要件だけでなく、将来的な組織や売上の拡大を踏まえたシステムの拡張性も考慮するのがポイントです。
直感的な操作が可能か
ノーコード・ローコードツールは、専門知識がなくても直感的に操作できるものであることが大切です。多くのベンダーが無料トライアルやデモ環境を提供しているため、実際の操作感を確認しておくと良いでしょう。現場でツールを使用するメンバーにデモへ参加してもらい、フィードバックをもらうと実用的なツールを選びやすくなります。
セキュリティ要件を満たしているか
ノーコード・ローコードツールには、経営に関するデータや顧客の個人情報などの機密情報を保存することがあるため、ツールを選定する際は各ツールのセキュリティ体制の確認が欠かせません。
自社のセキュリティポリシーに対応可能かどうかもチェックを行い、開発者がアプリケーション側で設定すべきセキュリティ項目についても事前に把握しておきましょう。
既存システムと連携できるか
企業の情報システムは、通常、複数のシステムが連携して稼働しています。新たに開発するアプリケーションも、既存のERP・CRM・SFA・会計システムなどとの連携が前提となる場合が多いでしょう。どの外部システムとの連携に対応しているかどうかはツールによって異なるため、選定時に確認が必要です。
費用対効果は見合っているか
コスト評価では、初期費用とランニングコストを総合的に判断します。使いたい機能によってはオプションの契約が必要になるため注意が必要です。導入・運用にかかる人件費も考慮しましょう。
サポート体制は十分か
十分なサポート体制が整っているかどうかも、ノーコード・ローコードツールを選定するポイントのひとつです。導入時には特に疑問が生じやすいため、専任の担当者が運用開始まで伴走してくれるベンダーを選ぶと良いでしょう。有償サポートと無償サポートの範囲も確認が必要です。
代表的なノーコード・ローコード開発ツール
ノーコードツールの例:
- kintone(キントーン):サイボウズ社の業務改善プラットフォーム。データベース構築から業務フロー管理まで幅広くカバー。
- Bubble(バブル):高機能なWebアプリケーション開発が可能。ECサイトやSNSまで構築できる拡張性が特徴。
- Adalo(アダロ):モバイルアプリ開発に特化。iOS・Android両対応のネイティブアプリを作成可能。
ローコードツールの例:
- OutSystems(アウトシステムズ):エンタープライズ向けの本格的なアプリケーション開発に対応。大規模システムも構築可能。
- Mendix(メンディックス):開発からデプロイまでのライフサイクル全体をサポート。チーム開発にも強い。
- Microsoft Power Apps:Office 365やDynamics 365とスムーズに連携が可能。既存のMicrosoft環境がある企業には特に有効。
ノーコード・ローコードの特徴を踏まえて適切な方法を選ぼう
ノーコード・ローコード開発には、それぞれメリットとデメリットがあります。ノーコードツールは専門知識不要でシステムをスピーディーに開発できる一方で、大規模開発や細かいカスタマイズには対応できない可能性があります。複数のノーコードツールを比較して自社のニーズに合ったものを選定しましょう。自社でプログラミングが可能であれば、ローコードツールも含めた導入の検討もおすすめです。
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