ライフスタイルの多様化に対応して、企業と消費者との間に複数の接点が求められています。「SNSをよく利用する」「ニュースアプリで日々の出来事を把握する」など、様々な消費者行動に合わせた接点がないと、販売機会を逃してしまいます。
SNS、メールマガジン、ネット広告、自社サイト、ECサイト、店舗、TV、新聞、ダイレクトメール等、消費者に訴求するあらゆるチャネルの中で、 複数のチャネルを活用するマーケティングをマルチチャネルマーケティングと呼びます。
単に複数のチャネルを用いるだけでは売上アップなどの成果につながりません。各チャネルが連携してそれぞれの役割を果たすことにより成果を出すことができます。何より、それぞれのチャネルをうまく連携することで、顧客体験をより向上させられます。
本記事では、自社でマルチチャネルの活用を検討されている担当者に知ってほしい基礎知識を解説します。
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マルチチャネルとは?
消費者のライフスタイルの多様化により、商品やサービスの情報を伝える際には、消費者ごとに合わせた媒体の活用が注目されています。媒体それぞれはチャネルと呼ばれており、 複数のチャネルを利用したマーケティング手法をマルチチャネルマーケティングと呼びます 。例えば、下記のようなチャネルがあります。
区分 |
チャネルの事例 |
販売 |
店舗、ECサイト、テレビ通販、カタログ通販 |
広告 |
ネット広告、ダイレクトメール、アプリ、TV、新聞、雑誌、看板 |
コミュニケーション |
SNS、チャットボット、メールマガジン、ウェビナー、自社サイト、電話、訪問 |
例えば、販売のマルチチャネル化により、消費者は購買スタイルに合わせて「店舗」「ECサイト」を選択できます。企業側は消費者に複数の購入方法を提供することにより、販売機会を広げられます。
なお、複数のチャネル間でデータ連携を行い、消費者に利便性を提供する形態をクロスチャネルと呼びます。例えば、クーポンやポイントを「店舗」と「ECサイト」のどちらでも利用できる仕組みです。
クロスチャネルをさらに一歩進めて、各チャネルが提供するサービスまで連携する形態をオムニチャネルと呼びます。例えば、購入したい商品の在庫が店舗になくECサイトにある場合、顧客は店舗で決済を行って、ECサイトの在庫から自宅に発送される仕組みです。
将来のビジネス拡大やサービスの充実化の基礎作りとして、マルチチャネルを運用し、そのノウハウを蓄積することが大切です 。マルチチャネルの運用ノウハウが溜まった時には、さらに高い付加価値を消費者に提供できるよう、データ連携、サービス連携を進めて、全てが統合され、シームレスな顧客体験を提供できるオムニチャネルとしての運用を目指しましょう。
マルチチャネルの仕組み
前章で記載した販売、広告、コミュニケーションのどの区分においても、マルチチャネルは、消費者の属性や行動にマッチした複数チャネルから構成されます。
なお、チャネルの数だけ運用に必要な費用も大きくなります。また複数チャネル全体を取りまとめ、対策実施の決定権をもつ部門、もしくは人材も必要です。
例えば、実店舗、ECサイト、カタログ通販による販売チャネルを導入した場合、各チャネルが独自に機能する形態となります。実際の業務では在庫確認などの連携作業が必要となり、各担当者によるマニュアルの連携が行われます。
マルチチャネルが持つ3つの目的
マルチチャネルの1つ目の目的は、多様な消費者行動に対応した販売機会の拡大 です。店舗販売の場合、地理的な制約により、来店者数の増加には限界があります。店舗販売に加えECサイト導入をすれば地理的制約、営業時間の制約から訴求できなかった消費者の獲得が可能になります。
2つ目の目的は、顧客満足度の向上 です。例えば、ECサイトで商品を認知して、店舗で直接商品確認を行えてそのまま購入できる、または逆に店舗で実物を確認してECで好きなタイミングで買うなど、顧客が自然と利用できるチャネルを選択できる環境を提供します。顧客満足度が向上し、ロイヤリティ向上も見込めるでしょう。
これら2つの目的を活用した「他社との差異化」こそが、マルチチャネルに隠された3つ目の目的となります。
マルチチャネル導入時の注意点
将来的にはクロスチャネル、オムニチャネルの構築につなげられるよう、事前にマルチチャネルを持つ際の注意点を知っておきましょう。
在庫管理が複雑になりやすい
複数の店舗とECサイトの在庫管理が連携していない場合を想定してみましょう。消費者が店舗で商品を購入する際、対象商品が店舗になく、他の店舗やECサイトに在庫がある場合があります。販売機会を逃さないためには、正確な在庫状況を把握しておかなければなりません。在庫状況を把握するには担当者によるマニュアル作業が必要であり、担当者の作業負荷が発生します。商品数が多い場合はより一層、在庫管理が複雑になります。
ショールーミングによる店舗売り上げの減少
商品確認のためだけに店舗に来店し、気に入ればECサイトで購入する行動を「ショールーミング」と呼びます。店舗の売り上げ減少につながりやすい一方で、顧客としては便利な購入ルートでもあります。ショールーミングそのものを減らすのではなく、クロスチャネル化して店舗の購買アシストを評価する、オムニチャネルを推進して店舗単体での売り上げ管理をしないなど、従来の枠組みに囚われない体制構築が重要です。
マルチチャネルの成功事例
Usabillaは、ウェブサイト、アプリ、メールのテストツールを提供するオランダの企業です。2009年創設以来、世界で20,000を超えるクライアントが同社のツールを利用しています。
Usabillaでは弊社HubSpotプラットフォームに既存のリストデータを取り込み、「ランディングページ作成」「Eブック」「製品デモ」など、ユーザーとの接点である複数のチャネルを整備しました。
各チャネルの効果検証と改善を継続的に実施した結果、12ヵ月以内に下記成果を達成しました。
- インバウンドマーケティングによる売上が全体の40%
- リード獲得数が2倍
- ランディングページにおけるコンバージョン率56%を達成
さらには、求人広告をかけずともスキルの高い人材が集まる副次効果も得られました。
マルチチャネルマーケティング成功のポイント
顧客との信頼関係を築いたうえでビジネスを発展させるため、当社弊社HubSpotでは「インバウンド」の思想を推奨しています。マルチチャネルを推進し、成功させていく上でも、とても重要な思想だと考えています。
インバウンドとは、相手から価値を受け取る前に価値を提供することを核とします。無理に自社商品を押し付けるのではなく、相手に取って有益な情報を適切なチャネル(SNSやチラシ、店頭など)を使って発信し、興味を持ってもらえたらそこから関係性を構築していく。このような流れを生み出すためには、まずは顧客理解が欠かせません。
どのチャネルを活用する場合でも、消費者の購買情報、ウェブサイトやECサイト上での行動履歴、問い合わせ履歴など、消費者に関する情報を一元管理して分析することが重要です。つまり、 個々の消費者が「どのチャネルどのような行動」を行っているかを分析し、行動の動機につながるニーズを推測して最適な施策を行いましょう。
個々の消費者のニーズを推測するためには、データ収集から分析までをサポートするプラットフォームが欠かせません。顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management)ツールなどを用いて、複数チャネルの顧客情報を一元管理できる体制の整備が不可欠です。
ただ、あくまでプラットフォームは道具であり、どう使うかが成果に大きく影響します。大きな成果をあげるための一手法として、下記を実施してみてください。
- チャネルを横断して消費者にどのような価値を提供できるのかを検討する
- 各チャネルにおいて価値提供を行う施策を決定する
- インバウンド手法の考え方に基づき施策を実行してみる
フライホイールを回し続けることにより、顧客との良好な関係性を構築でき、結果的に自社の長期的な成長につながります。
インバウンドを軸としたマルチチャネル展開でより良い顧客体験を
マルチチャネルにより大きな成果を得るためには、インバウンド手法に基づく各チャネルの運用が必須です。つまり、 消費者のニーズを推定し、タイミングよく適切な情報を提供する取り組みを実施 します。また各チャネルの定期的な効果測定を実施し、継続的な改善を行う業務フローも構築しましょう。
またマルチチャネルの運用には、顧客関係管理(CRM)導入が欠かせません。 顧客との良好な関係性を構築して長期的な成長を実現するためには、顧客関係管理のプラットフォームを活用してフライホイールを回し続けることが大切です 。
なお、マルチチャネルで成果を得つつ課題が明確になったら、マルチチャネルの運用で蓄積されたノウハウを反映したクロスチャネルやオムニチャネルの導入を検討しましょう。