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スマートフォンがすっかり生活に根付いた今、購買行動は大きく変化しました。

→ダウンロード: オムニチャネル基礎無料ガイド

多くの人は、スマホを商品情報の検索だけでなく、最寄りの実店舗を探したり、クーポンが発行されていないかを確認したりする手段として利用しています。目当ての商品を見つけ、店舗に行ってもすぐには購入せずに、まずは実際の商品を自分の目で確かめてみます。そこからスマホでクチコミを確認して評価をチェックすることも。そして実店舗、ECのどちらで買うのが安いのか、ECで購入する場合の商品到着までの日数も確認した上で、最終的にどこで購入するか決定する・・・この記事を読まれている方も、無意識のうちに一度は上記のような購買行動を取っているのではないでしょうか。

今日の購買行動には、あらゆる場面でインターネットが密接に関わっています。買い手に選ばれるために、実店舗やEC、SNS、メールなどあらゆるチャネルをシームレスに連携して、購買機会を提供する必要があります。そして、これらを連携して構築するのが「オムニチャネル」です。

本記事では、まずオムニチャネルの基本を解説します。さらに、初めてオムニチャネル戦略を策定する人のために、ノウハウや、構築するまでの手順も合わせて説明するのでぜひ参考にしてみてください。

オムニチャネル基礎ガイド

そもそも、オムニチャネルの定義とは?

オムニ(omni)とは「すべての、あらゆる」という意味を持つ接頭語です。ECサイトや店舗、メールやアプリなど、あらゆるチャネルを統合し、消費者にシームレスで一貫した購買体験を提供するという思想が、オムニチャネル戦略の根幹にあります。
 

オムニチャネルが登場した背景

オムニチャネルという言葉は、アメリカの老舗百貨店であるメイシーズの取り組みをきっかけに、2010年代にアメリカで広がっていきました。

オンラインショップの台頭によって旧来型の小売店が大きな打撃を受けるなか、メイシーズは2016年、新しく”Ship From Store”(店舗から直送)”というシステムを構築しました。これは、 消費者が注文をオンラインで行い、全国に868箇所ある最寄りの店舗で受け取るというシステムでした。 国土の広いアメリカでは、配送センターから消費者の手元に届くまでに時間がかかるため、最寄り店舗ですぐに商品を受け取れることは大きな魅力だったのです。

一方「店舗から直送」システムは、店舗側にとっても大きなメリットがありました。店舗はオンライン注文用の在庫を別に抱えるのではなく、現在の在庫で販売を行い、欠品の際は在庫に余裕のある店舗から配送してもらうことで、総在庫コストを最小限に抑えられるようになりました。さらに商品を受け取りに来た消費者が、店舗内を見て回ることで、さらに売上が得られるメリットもありました。

メイシーズの成功は、ECによって打撃を受けた小売業に、実店舗を持つ強みを改めて認識させるものでした。オンライン・オフラインを横断することで顧客体験が向上し、顧客の潜在的な購買意欲を満たせるようになったのです。

メイシーズは 自社の利便性から多チャネル戦略を開始したのではなく、顧客の利便性を起点として、デジタルテクノロジーを活用しながらさまざまなチャネル管理を行いました。この点こそがオムニチャネル戦略 を推し進める最大のポイントと言えるでしょう。
 

マルチチャネルからクロスチャネル、そしてオムニチャネルへ

小売業は、顧客との接点が実店舗のみ、あるいはECサイトのみ、というシングルチャネルから、複数のチャネルを持つ方向に進化してきました。

顧客との接点が増えれば増えるほど、マルチチャネルからクロスチャネルへ、さらにオムニチャネルへと変遷しています。そして、それぞれのマーケティング施策も変化を続けています。

チャネルの種類

特徴

顧客側のメリット

課題

マルチチャネル

顧客と多くのタッチポイントを持つ

オンライン、実店舗のどちらからでも購入可能

受け取り方法は選べない

オンライン、実店舗など複数のチャネルが独立して管理されているため 在庫管理で問題が生じやすい

クロスチャネル

店舗・ECなど複数のチャネルのシステムが連携される

それぞれのシステムの運用は各チャネルで行われる

「知る」「調べる」「買う」「受け取る」などアクションごとにチャネルを自由に選べ、チャネルをまたいだ購買体験が可能

統合的な在庫管理が可能になったが、システム運用が別であるため、 チャネル間で売上の奪い合いが発生することもある

オムニチャネル

顧客管理・商品管理から在庫管理、物流管理まで全チャネルを横断したシステム

複数のチャネルを、意識することなく行き来し、顧客の望む購買体験が得られる

全社的な再編が必要なため、設計・実施までに時間と費用がかかる

マルチチャネルについては、別ページの「 マルチチャネルの仕組みや導入メリットとは?成功事例も合わせて解説 」でも説明しています。
 

オムニチャネルと「OMO」、「O2O」の違いは?

オムニチャネルと語感が似ているために意味が混同されがちな言葉として、OMO、O2Oがあります。ここではOMO、O2Oの違いを説明します。
 

OMO

オムニチャネルが小売業の販売戦略であるのに対し、OMOとはOnline Merges with Offline(オンラインとオフラインの融合)という意味で、人々が常時オンラインと接続されている世界観を指す言葉です。

インターネットの常時接続が当たり前になった世界では、あらゆるものがデジタル化され、データ化されています。スマホによって、時間と場所を選ばずデータを取得でき、現実社会で商品やサービスを受け取った場合も、データを通じて決済が可能です。また商品の宅配を頼んだ場合は、商品が今どこにあるかもデータによって追跡できます。

このようにOMOが進行する世界で、ビジネスに求められているのは「OMOを前提としていかに高度な顧客体験が提供できるかどうか」です。データ化された顧客行動を個人IDに結びつけ、UX(顧客体験:User Experience)の向上やコンテンツ改善に結びつける施策への活用が進みつつあります。
 

O2O

O2OとはOnline to Offline の略語です。例えばSNSなどのオンラインから、実店舗へ誘導したり、商品購買をうながしたりするような施策を指します。具体的には以下のような例が挙げられます。

  • オンラインで割引クーポンを発行し、実店舗に誘導する
  • 位置情報サービスを利用して店舗への来店を誘導する
  • SNSでポイント付与を告知し、実店舗へ誘導する

O2Oはオンラインが起点となっているために、効果の測定がしやすいという特徴があります。チラシなどで配布されるクーポン券などは、何がどのように効果を上げているのか測定することはできませんが、オンラインで発行されるデータであれば、トラッキングも容易です。またスタンプアプリなど導入も簡単なので、実店舗の側も特に知識がなくても手軽に始められるというメリットがあります。

OMOやO2Oについてくわしく知りたい場合は「 OMOとは?オムニチャネルやO2Oとの違いや成功事例を解説 」をご覧ください。
 

オムニチャネルの市場規模は拡大し続けている

国内ではBtoCの分野で、ECの市場規模が年々7~8%の割合で拡大を続けています。EC市場拡大に大きな役割を果たしているのが「スマートフォン」です。

出典:経済産業省「 令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査) 」より

スマホ経由の市場規模の拡大は目覚ましく、スマホを通じた消費者の購買が、BtoCのEC市場拡大の大きな要因となっているのはデータから明らかです。

消費者はスマホを利用して、いつでもどこでも商品や口コミ、価格の調査が可能になりました。さらにアプリなどを活用した購買体験はより利便性の高いものになっています。

さらにEC市場の拡大とあわせて、オムニチャネル市場も拡大を続けています。

出典:野村総合研究所「 ITナビゲーター2020 」より

野村総研による2020年の調査 では、 2017年には52.2兆円規模だったオムニチャネル市場は、毎年4~5.5%の成長を遂げ、2025年には80兆円規模のビジネスになることが予測されています。
 

オムニチャネルが拡大する3つの理由

オムニチャネルが拡大する背景には、以下の理由が考えられます。

  • 高齢化社会と人口減少
  • 女性の就業人口の増加
  • 単身世帯の増加
     

高齢化社会と人口減少

日本の高齢化は急速に進み、2025年には人口の1/3が65歳以上になります。しかしシニア世代であっても、現在60代の約7割、70代の約5割がスマホを所持しており、約20%の人が月1回程度はオンラインショッピングを活用しています( 「シニアの生活実態とICT利用」 調査による)。

今後はさらに、ネットスーパーの利用や店舗で購入した商品の宅配サービスなど、シニア世代の生活を支えるインフラとしてオムニチャネルの需要が高まっていくことが予想されます。
 

女性の就業人口の増加

女性の労働力人口は年々増加しており、買い物に要する時間や時間帯が従来とは大きく変化しています。 日清オイリオの「フルタイム有職女性の買い物行動に関する調査」によると、仕事がある日のスーパー利用時間帯で最も多いのが19~22時です。昼休みにネットスーパーで買い物をすませ、帰りにピックアップする消費行動など、オムニチャネルの活用は、今後働く女性にとってますます欠かせないものとなるでしょう。
 

単身世帯の増加

世帯主が1人の単独世帯は毎年増え続け、2040年には全世帯の40%にも上ると見込まれています。どこで、どうやって受け取るか、利用者の要望にきめ細かく対応できるオムニチャネルは、消費者のニーズにマッチしているのです。

ここまで 見てきたように、顧客の購買行動は今後ますます変化していくことが考えられます。顧客の購買行動に対応するために、オムニチャネルの拡大が 理にかなっているといえるでしょう。
 

オムニチャネルを構築する上で欠かせないツールとは

オムニチャネルは、顧客が満足できる購買体験をしてもらうために、4つのポイントを踏まえて施策を立てます。

  • 顧客とあらゆるチャネルから接触する
  • 顧客1人ひとりのニーズに合わせた商品・サービスを提案する
  • 購買から手元に届くまでのリードタイムを最適化する
  • 購入後、購買決定を後悔しないようなサポートを行う

顧客が満足できる購買体験を支えるためには、以下の図のようなオムニチャネルシステムを構築する必要があります。ECや店舗をすでに運用している小売業者にとって、新たに構築しなければならないのが、最下段の在庫管理システムと顧客情報一元管理システムです。ここではその2つを説明します。
 

在庫一元管理システム

顧客が好きな場所で好きなタイミングで商品を受け取れるようにするには、適切な在庫管理が必要です。店頭にある商品や店舗のバックヤードにある商品、物流センターにある商品、物流センターから配送中の商品など、在庫すべての量と場所を把握できるシステムを構築しなければなりません。
 

顧客情報一元管理システム

顧客起点のオムニチャネルを運用するためには、顧客情報の一元管理が前提となります。単に購入履歴を記録するだけでなく、Webサイトの閲覧や、モバイルアプリのプッシュ通知に対するリアクション、メールの開封まで含めた顧客情報を一元管理して、適切なタイミングで提案やニーズの掘り起こしが可能になります。
 

オムニチャネルを導入する4つのメリット

オムニチャネルの活用によるメリットとして以下の4点を挙げられます。

  • 多様なチャネルを活用して顧客と深い関係性を構築する
  • 多様なデータを元に、より良い提案ができる
  • オンライン/オフラインを横断して多様な購買体験を提供できる
  • 在庫管理の最適化によって機会損失が減らせる
     

多様なチャネルを活用して顧客と深い関係性を構築する

小売業者はさまざまなチャネルを活用して、顧客とコミュニケーションを取り、ニーズを掘り起こします。顧客が求めるタイミングで、抱える課題へ解決策を提案し、商品を提供します。

提供後もフォローアップを続けることで、顧客は実際に購入する前の段階と、購入した後の段階で最良の購買体験が得られます。
 

多様なデータを元に、より良い提案ができる

タッチポイントの幅が広がることで、顧客1人ひとりの行動が可視化され、顧客心理の分析・洞察の精度が向上します。より的確になった洞察をもとに、最適な情報を提供したり、提案を行うことが可能です。
 

オンライン/オフラインを横断して購買体験を提供できる

購買行動を起こしている顧客には、欲しい商品やサービスがあれば購入ルートがオンラインかオフラインかは関係ありません。オムニチャネルを構築すれば、顧客にオンライン/オフラインどちらでも気持ちの良い購買体験を提供できます。

例として、以下のようなことが可能になります。

  • 会社の昼休みにスマホアプリで購入した商品を、仕事帰りに最寄りのスーパーで受け取る
  • 商品を店舗で確認し、サイズと素材を確かめた後でECから購入する
  • 入店すると、スマホにプッシュ通知が届き、店舗で利用できるクーポンを受信する

このような購買体験を通じて「自分の生活に欠かせない店」という意識を持ったファンを生むことが可能になります。
 

在庫管理の最適化によって機会損失を減らすことができる

オムニチャネルでは在庫の一元管理が前提となります。在庫管理システムを導入することによって、どこにどれだけの在庫が確保されているかが、常に確認できます。

このシステムの強みは、過剰な在庫を抑制できるだけではありません。店頭やバックステージに商品がない場合には、在庫がある場所がすぐにわかるため、商品が配送される正確なスケジュールがわかります。顧客が希望すれば、顧客の自宅に届けることもできます。

商品が入手できなければ、顧客は失望して二度と店舗やECを訪れようという意思を失いかねません。逆に、フォローがしっかりしていれば、仮に一時的な品切れ状態でも、顧客の信頼感を失わずにすみます。
 

オムニチャネル戦略の策定は3ステップで進める

オムニチャネル戦略の目標は 「顧客ニーズを満たす商品の情報を提供する」「顧客が商品をほしいと思ったときにいつでも注文できる」「希望する場所・方法で受け取ることができる」を同時に満たすシステムの構築 です。オムニチャネルは事業の内容や形態によって大きく変わるので、この目標が達成できるように、自社に適合した戦略を策定する必要があります。

戦略策定の上で必要なのは以下の3点です。

  • 目的の明確化と共有
  • ペルソナの策定とカスタマージャーニー設計
  • 他社の事例研究
     

目的の明確化と共有

自社の独自戦略を策定する第1歩として、何のためにオムニチャネルを導入するのか、目的を明確化し、社内全体で共有する必要があります。

オムニチャネルを導入するということは、販売部門、物流部門、システム部門を始めとした全社的な改革を行うことでもあります。全社的な理解と共感が得られるよう、「自社のオムニチャネルはお客様に〇〇を提供する/お客様と〇〇を行う」といった全体で共有できるビジョンを提示しましょう。
 

ペルソナの策定とカスタマージャーニーの設計

顧客起点のマーケティングを行うためにペルソナを策定します。ペルソナとは自社にとって理想の顧客像です。 ペルソナを策定することで、何に関心があるのか、何を求めているのか、どのようなサービスを望んでいるのかなど、マーケティングを行う対象について深く理解することができます。

ペルソナを策定したら、次はそのペルソナが購入するまでの道筋を考えます。購入までの道筋の見える化がカスタマージャーニーです。

カスタマージャーニーを設定することで、より顧客目線に沿ったマーケティング施策が立てられます。 どのタッチポイントで顧客が商品を知り、関心を持つようになるかなどを検討しましょう。

検討したカスタマージャーニーは、上記のようなカスタマージャーニーマップに落とし込みます。このカスタマージャーニーを元に、タッチポイントの設計や、各ポイントでのマーケティング施策を立案しましょう。

なおHubSpotでは、カスタマージャーニーマップの基礎と作成の手順までくわしく説明した「 カスタマージャーニーマップテンプレート 」を無料で提供しています。
 

他社の事例研究

オムニチャネル導入に成功している企業の事例を研究します。

オムニチャネルには決まった形態があるわけではなく、業種や事業規模によっても大きく異なります。すでにオムニチャネルを導入している企業のなかには、ヨドバシカメラやオムニ7を展開するセブン&アイ・ホールディングスなど、導入のプロセスがくわしく紹介されている企業もあります。

先行事例を研究し、実際に稼働している状況を見ながら、自社にどのように適用できるか検討します。
 

オムニチャネル化を成功に導く4つの重要ポイント

オムニチャネルを実施する4段階のステップを紹介します。

  1. ロードマップの作成
  2. 社内体制の構築
  3. システム統合
  4. 店舗へのハードウェア設備
     

ロードマップの作成

オムニチャネル導入という全社的なプロジェクトを推進するために、目的地と現在地をつなぎ、そこに至るプロセスを見える化するロードマップを作成します。

まずロードマップには、ロードマップ軸とプロセスごとのマイルストーンを設定しましょう。そのためロードマップを策定することで、現在どこまで進んでいるか、これから何をすべきか、複雑なプロジェクトの全容が可視化できます。

HubSpotでは、ロードマップ作成ができる無料テンプレートを「 事業目標を時系列に見える化するプロダクトロードマップテンプレート 」で提供しています。
 

社内体制の構築

オムニチャネルを導入するためには、販売部門、物流部門、システム部門、カスタマーサポート部門を始めとした社内全体の新しい仕組みづくりが必要です。そのために、オムニチャネルを主導する部門横断型の体制を構築する必要があります。

※このほかにもEC部門、オンライン部門など状況に合わせて体制を組む

統括部門には、経営部門とマーケティング部門の責任者、および販売やカスタマーサポート、物流、システムなど各部門からメンバーを集め、リーダーシップの下で推進します。
 

システム統合

オムニチャネル導入の核となるのは、仕入れから販売までの状況を一気通貫で管理できるシステムを構築することです。オムニチャネルを実践する際は、部門ごとの課題を把握して、それをシステムでできる限り解決できるよう設計しましょう。
 

顧客管理情報の一元化

顧客管理もこれまで各部署でバラバラに管理されていた情報を一元化した上で、新システムに統合する必要があります。

システム統合ではロードマップや工程計画表を活用しましょう。

HubSpotでは、システム構築を行う上で役立つ工程計画表を無料で提供しています。「 DX推進に活用!デジタル トランスフォーメーションのチェックリスト & 工程計画表 」でダウンロードしてご活用ください。
 

店舗へのハードウェア設置

店舗に配置するPOS(Point of Sale:販売時点情報管理)端末やデジタルサイネージ端末、販売員が携帯するモバイル端末、ビーコンなどを設置します。

POSシステムはすでに導入している小売業も多いでしょう。ここではオムニチャネルで活用される機会の多いビーコンを紹介します。
 

ビーコンを活用して、顧客との接点をつくる

ビーコンはBLE(Bluetooth Low Energy)モジュールを店舗内に配置しておくことで、顧客が持つ通信可能なスマホが近くを通った際に、プッシュ通知を送ったり、メッセージを表示したりできます。

ビーコンは、スマホのBluetooth受信機能を活用して、半径数十メートル程度の狭い範囲で信号を送る仕組みです。Bluetooth信号を受信できるスマホに、以下のような情報を発信します。

  • クーポンの配布
  • 商品情報表示
  • 売り場スペースへのナビゲーション
  • 顧客の店内行動の把握

ビーコンについては「 ビーコンとは?GPSとの違いや活用シーンを解説 」で説明しておりますので、ぜひご覧ください。
 

オムニチャネル・マーケティングの成功事例

日本でも多くの企業がオムニチャネルを構築しています。ここではオムニチャネルの代表的な成功事例として、ヨドバシカメラと無印良品を紹介します。
 

ヨドバシカメラ

ヨドバシカメラのEC部門であるヨドバシ・ドット・コムは、国内ECサイトでの売上はAmazonに次ぐ2位ですが、顧客満足度では7年連続1位を記録しています。

ヨドバシカメラが在庫情報の一元化に着手したのは、オンライン販売が一般化するはるか以前の1989年のことです。ヨドバシカメラは20年かけて在庫一元管理と販売価格の統一、オムニチャネルのシステム構築を推進しました。

オムニチャネル化がヨドバシ・ドット・コムの顧客満足度を支えている主な理由は、以下の点にあります。

  • 優れたロジスティクスによって、配送リードタイムの短縮化を図り、即日/翌日配送を実現
  • 顧客にとって、商品受け取りで店舗/自宅が選べる利便性
  • 店頭・ECでの在庫の一元管理が可能にした在庫情報のWebサイトへの開示
  • 販売価格の統一化で顧客はEC、実店舗のどちらでも安心して購入可能
  • 顧客情報の一元化で、ECでも実店舗でもポイントが利用可能
     

無印良品 MUJI Passport

次に、 モバイルの導入を起点にオムニチャネルを推進した例として、無印良品を紹介します。

無印良品がリリースするスマホアプリ「MUJI Passport」は、オムニチャネル専用アプリです。ユーザーにカスタマイズしたキャンペーン情報やクーポンを提供するだけでなく、店舗の在庫検索やバーコードスキャンなどの機能があります。

MUJI Passportはクーポン取得や店舗検索など、さまざまな機能が用意されていますが、最大の特徴は「実店舗への来客を増やす」という明確な目的で設計されていることでしょう。

店舗から600メートル圏内に近づくと「チェックイン」が通知され、店舗にチェックインすることでマイルを獲得できるなど、店舗に誘導する仕組みが用意されます。MUJI Passportは無印良品のマーケティング施策のカギになっているのです。
 

オムニチャネル・マーケティングの課題とは?

オムニチャネル・マーケティングを運用する上での課題として、以下の2点があることを知っておきましょう。

  • チャネル間の連携をいかに構築するか?
  • 初期コストをいかに抑えるか?
     

チャネル間の連携をいかに構築するか

タッチポイントが増えることで、小売業者は顧客とさまざまなチャネルを通じてコンタクトがとれるようになりました。しかし、タッチポイント間で連携がうまくいっていないと、同じ通知を何度も顧客に送ってしまうなど、顧客の心象を悪くする可能性もあります。

そこで、多チャネルで発生している顧客行動を把握する方法が「マーケティングオートメーション」です。マーケティングオートメーションは、顧客1人ひとりの行動や興味、関心に応じてコミュニケーションを実現する手段 です。顧客の状態によってメールを出し分け、メールが開封されたか、リンク先がクリックされたかどうかによって、顧客の状態を探ります。

オンラインで得たデータとオフラインで得たデータを連携し、顧客に最適なコミュニケーションを行えるマーケティングオートメーションについて関心がある方は、ぜひ「 マーケティングオートメーション 」のページを参考にしてください。
 

初期コストをいかに抑えるか

オムニチャネルの成功事例として上がっている企業の多くは大企業であるため、オムニチャネルは大企業のものと思うかもしれません。しかし、1つの店舗や1つのECであっても、オムニチャネルを始めいつでもどこでも商品を受け取る仕組みを作るのは可能です。大企業ではハードルが高い部門の壁も、小規模店舗にとってはほとんど問題にはならないでしょう。

スモールビジネスがオムニチャネルを考える場合は、まず顧客理解を起点とした関係づくりから始めます。タッチポイントを増やしてコミュニケーションを深めつつ 顧客ニーズを掘り起こします。店舗の魅力を多チャネルを通じて 発信すると同時に、顧客が自店に何を求めているか把握しましょう。

その場合、いかに初期コストを抑えるかがカギになります。大がかりなシステムを構築するのではなく、「無料の顧客管理ツールを導入する」「SNSを通じて顧客接点を作る」「小規模でECサイトの運用を始める」など、まずは小さな1歩から検討しましょう。
 

オムニチャネル化の流れの中で顧客起点の戦略を策定しよう

現在、日本でも90%近い人がスマホなどを通じてインターネットにアクセスしています。オンラインでの購買行動も、幅広い年齢層で増加しつつあります。

オムニチャネルは、オンライン、オフラインを自由に行き来しながら買い物がしたいという顧客ニーズに応えるものです。顧客1人ひとりに一貫性のある最適な商品やサービスを提供するオムニチャネル化は、小売業やアパレルだけでなく、今では金融業や製造業、観光など幅広い業界で進みつつあります。逆に言えば、顧客が自由に購入方法を選べるオムニチャネル化を進めなければ、今後は消費者の選択肢から消えてしまう可能性もあるでしょう。

ライフスタイルの多様化とともに、消費者の購買行動が大きく変化しつつある現在、自社が顧客にどのような価値を提供できるかを改めて考えましょう。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

オムニチャネル基礎ガイド

 オムニチャネル基礎ガイド

元記事発行日: 2021年5月25日、最終更新日: 2023年8月23日

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