ビーコンとは、電波などを用いて10~100m程の範囲で位置情報を伝える装置のことです。GPSやWi-Fiより近距離通信である特徴から、広告やクーポンを店舗近くにいる見込み客のスマートフォンに配信できます。また位置情報を活用したエンターテイメント、介護や防犯関連のサービスも実現可能です。
一方、ビーコンの多機能化やセキュリティ対応など、今後しばらくは仕様の変更が予想されます。つまり、 ビーコンを活用したサービスを検討する際は、導入メリットに加えて、今後の技術動向や課題についても理解しておく必要があります 。
本記事では、ビーコンの基礎知識とサービス事例、活用における課題など、ビーコンを活用したサービス導入を検討されている方に役立つ情報を解説します。
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意外と身近な存在である「ビーコン」とは?
ビーコンとは、電波や赤外線を用いて10~100m程度の範囲に位置情報などを発信する無線装置を指します。カーナビやゲームアプリ、店舗での来店チェックインなど、様々な方面で活用されており、意識せずとも皆さん一度はビーコンを用いたサービスを利用しているはずです。
最近では、ビーコンと近距離無線通信規格の1つであるBluetoothとの組み合わせで構築されたサービスが多数展開されています。
ちなみに、Bluetooth以外にも「RFID(Radio Frequency Identification)」「超音波」「地磁気」「Ultra Wide Band」を利用した無線装置があります。その内、バーコードの置き換えとしてRFIDが多く利用されています。
RFIDを利用すれば、商品に取り付けられたRFタグ内の情報を非接触で読み書きできます。レーザー光で1枚ずつ読み取るバーコードと違い、RFIDでは、電波が届く範囲あるRFタグを一度にスキャンできます。RFIDの特徴を活かせば、在庫管理の作業効率を高めることが可能です。
右肩上がりのビーコン市場
位置情報を利用したマーケティング、エンターテイメント、介護、防犯などのサービスの広がりにともない、Bluetoothを利用したビーコンの市場規模は拡大傾向にあります。BlueTooth SIGが発表した「 Bluetooth市場動向2020 」によると、2020年のBluetooth位置情報サービス機器の出荷台数は1.86億台で、2024年は5.38億台と予想されています。
出典:Bluetooth SIG「 Bluetooth市場動向2020 」より
ビーコンを利用するなら知っておきたい3つの「通信仕様」
インターネット接続されたスマートフォンでビーコン情報を受信すれば、さまざまなサービスが実現できます。
ビーコンを用いたサービスを提供するためには、スマートフォンとビーコンの通信に関する仕様が必要になります。下記に主な通信仕様を紹介します。
1.iBeacon
Appleが開発し提供しているBluetooth low energy(BLE)を利用したiOSの通信仕様で、iOS7から搭載されています。iPhoneなどのアプリがビーコンの固有IDをインターネット経由でサーバーに問い合わせ、サーバーからの情報をアプリに表示させる仕組みを規定しています。
2.Eddystone
Googleが規定したBLEを利用したビーコンの規格で、Android、iOSなどBLEを利用するさまざまなプラットフォームで利用できます。ビーコンの固有IDを送信する「Eddystone-UID」、URLを送信する「Eddystone-URL」、バッテリー残量などの情報を送信する「Eddystone-TLM」で構成されています。
3. LINE Beacon
LINEアプリに実装されたビーコン機能です。例えば、ビーコン端末が設置された店舗では、スマートフォンの位置情報を利用してクーポンや広告を配信できます。配信には「LINE公式アカウント」を利用します。店舗側はLINE公式アカウントの開設、消費者側はLINE公式アカウントの友だち登録が必要です。
GPSとの違いとは?ビーコンを活用するメリット
ビーコンを調べていくと、「GPSと何が違うのだろう」と疑問を持つ方が多いと思います。GPSは人工衛星からの電波を受信して位置を特定するため、地下や建物の中では、電波が届きにくいというデメリットがあります。
一方、ビーコンは、Bluetoothをオンにした状態のスマートフォンであれば、GPSが届きにくいような場所でも位置を特定できます。他にも、ビーコンには次のようなメリットがあります。
- 成功体験による営業担当者のモチベーションアップ
- ビーコンの大きさは「コインサイズ~たばこサイズ」程度と小さい。応用範囲が広い。
- ビーコンにセンサーを取り付ければ、センサーで検知した情報を送信可能。(例:圧力センサー、温度センサーなど)
あらゆる業界で活用が進むビーコンの使い方とは?広告・在庫管理~見守りサービスまで
では、実際ビーコンはどのようなシーンで使われているのか、代表的な用途を紹介します。
販売促進
位置特定、及びインターネットからの情報を利用して、「One to Oneマーケティング」が実現できます。例えば、見込み客に合った商品やキャンペーンの紹介、クーポンの配信が可能です。さらに、店舗に入った見込み客にインセンティブを提供するなどのサービスを実施できます。
在庫管理
ビーコンの発信機器と圧力センサーを組み合わせれば、圧力非検知の状態を検知すると在庫がなくなった際に通知するシステムが構築できます。
エンターテイメント
遊園地、美術館、動物園などでは、来場者のスマートフォンに、テーマやイベントに応じた案内情報を送信できます。
介護
病院、介護施設、老人ホームなどの施設内にビーコンを設置し、利用者の見守りサービスに活用することができます器具や設備品の在庫管理も可能です。
防犯
街頭 にビーコンを設置し、小さな子どもや認知症の高齢者の見守りサービスに利用できます。位置情報を保護者や家族にメールで通知する機能も構築可能です。
ZOZOやコカ・コーラも採用。ビーコンの活用事例3つ
ビーコンの活用事例として、「実店舗での販売」「自販機」「防犯」の3つのケースを紹介します。
実店舗での販売:商品紹介やキャンペーンの配信(ZOZO)
アパレルの実店舗にLINE Beaconを利用したボタン型ビーコンを商品に取り付けました。来店者が商品に取り付けられたビーコンのボタンを押すと、スマートフォンにインストールされているLINEに商品情報などを配信します。
自販機:自販機とビーコンの組み合わせ(コカ・コーラ)
コカ・コーラでは、2016年にアプリと自販機を連動させて収益を改善するプラットフォーム「Coke On」をスタートさせました。2017年2月からCokeOnにビーコンを導入して、品揃え最適化、社会的価値を高めるサービスの開発を強化しています。キリンも「Tappiness(タピネス)」の名称で同様の取り組みを実施しています。
防犯:子供や高齢者の見守りサポート(加古川市)
兵庫県加古川市では、本人や家族の不安や労力軽減を目的に、ビーコンタグ(BLEタグ)を利用した子どもや認知症の高齢者の見守りサポートに取り組んでいます。ビーコンタグ検知器にカメラが内蔵されており、検出機がビーコンタグを検出すると、画像と位置情報を保護者に送信します。
ビーコンを用いたサービス開発で注意するポイントとは?
ビーコンを利用したサービスの普及は今後さらに活発化し「ビーコンでどのような顧客体験を提供できるか」が成功のカギとなります 。
またビーコンの通信規格であるBluetoothのバージョンアップが随時行われており、新技術が継続的に実装されていると予想されます。さらに、DXプラットフォームを構築しているunerry社はBeaconBankの名称で、ビーコンを保有してなくてもサービスを開始できる環境を提供しています。
このようにビーコンを取り巻く環境変化が続く状況で、自力でのサービス開発は現実的に困難です。そこで自社向けのサービスを開発する際は、 ノウハウを蓄積した専門の開発パートナーとの連携が重要です。
ビーコン普及と、スマホユーザーのセキュリティ意識
販売、ホスピタリティ、輸送や物流、エンターテイメントを中心とした位置情報データの活用がさらに広まり、また適用分野も広がることが予想されています。
Bluetoothを利用したビーコンの普及は、GPS、Wi-Fi、NFC(Near Field Communication)では実現困難なサービス創出に依存します 。例えば、デジタルサイネージとスマートフォンとの通信により、利用者に合わせたコンテンツを表示する仕組みなどはBluetoothが適しています。今後さまざまなサービスが開発されることでしょう。
一方、Bluetoothを利用したビーコン普及の妨げとなりうるものへの理解も必要です。
ビーコン普及において、スマートフォンの存在は欠かせません。スマートフォンのセキュリティに対する意識が高まる中、下記のような課題があります。
- セキュリティ対策として、スマートフォンでBluetoothの設定をオフにしている人が多い
- 本当に必要と思わない限りアプリをインストールしない人が多い
つまり、ビーコン利用においては、利便性だけでなく安心安全に使えることを示すための説明が求められます。
今はノウハウ蓄積の時期。スモールスタートからチャレンジしよう
Apple、Google、LINEなど影響力のある企業がビーコン活用のプラットフォームを提供することにより、今後ますますビーコンの普及が進むと予想されます。
さらには Bluetoothの多機能化、セキュリティ対応が進むにつれて、スマートフォンとビーコンを組み合わせた新たなマーケティング手法が確立されていくことでしょう 。具体的には、O2Oマーケティング、さらにはオムニチャネルにおいてビーコンの利用が進むと考えられます。本メディアの 別ページ でO2Oマーケティングの活用を紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
Bluetoothを用いたビーコンの普及において、利用者が安心安全に使うことができる対策も求められます。また蓄積された位置情報の活用方法など、運用面での試行錯誤も起こり得ます。 初めはスモールスタートでビーコンを導入して、システム開発と運用のノウハウを蓄積しましょう。