パーソナライズド動画とは、視聴者一人ひとりに対して配信内容が最適化された動画のことです。パーソナライズド動画は、カスタマーサービスの効率化や営業支援、マーケティングといった、さまざまなシーンで活用できます。
また、視聴者の状況に合わせて動画の内容が個別最適化されるため、パーソナライズド動画は視聴者にもメリットがあります。本記事では、パーソナライズド動画の仕組みや効果・注意点・活用事例を解説します。
パーソナライズ事例大辞典
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パーソナライズド動画の基本
パーソナライズド動画の基本を知るために、概要や仕組みを以下で解説していきます。
パーソナライズド動画とは?
パーソナライズド動画とは、視聴者一人ひとりに対して最適化された動画のことです。
そもそもパーソナライズド(personalized)は、「個人化する」という意味を持つパーソナライズ(personalize)の受動態であり、「個人化された」という意味を持ちます。
パーソナライズド動画では、視聴者の属性(性別・年齢・住所など)や、行動履歴(Webサイトの訪問履歴など)、購買行動(過去の購入履歴)といった内容に合わせて、動画の一部がその視聴者に合った内容に変更される仕組みになっています。
例えば、保険の契約更新を促す動画では、単に「契約更新のお知らせ」という動画よりも、「鈴木様におすすめの契約更新プラン」という動画の方が、「自分に向けた動画だ」と感じてもらいやすくなります。また、氏名だけではなく、契約内容も顧客情報に合わせてパーソナライズすることで、契約者一人ひとりに合った内容の動画を配信できます。
パーソナライズされた動画は視聴者の興味を惹きやすいため、動画を最後まで見てもらいやすくなります。
パーソナライズド動画の仕組みについて
パーソナライズド動画は、ベースとなる動画にパーソナライズ項目が組み込まれたデータ・音声などのパーツを組み合わせることで構成されています。パーソナライズ項目は、外部のデータベースから抽出されます。例えば、自社で保有している顧客情報から氏名や住所を抽出して使用できます。
パーソナライズド動画への関心が高まっている理由
動画市場が拡大したことと、パーソナライズの重要性が認識されたことから、パーソナライズド動画への関心は急速に高まっています。
動画市場の拡大
スマートフォンの普及により、動画コンテンツはパソコンだけでなくスマートフォンでも閲覧できるようになり、動画広告市場は急成長を遂げました。また、TikTokやYouTubeなどの動画コンテンツの成長とともに、動画広告市場はさらなる成長を続けています。
直近の動画広告市場規模を見ると、たった1年で1,843億円(2018年)から2,592億円(2019年)にまで141%の成長を遂げていることが分かりました。
(参考:サイバーエージェント、2019年国内動画広告の市場調査を実施)
5Gの普及などにより、動画市場は今後もさらなる拡大が続くことが推測されています。
(参考:動画広告市場推計・予測 <デバイス別> (2018年-2023年))
デジタルでもパーソナライズが重要
デジタル体験の好みや企業への期待について調査した「Adobe Digital Experience Index 2019」では、日本の回答者の57%が、「実店舗かオンラインかを問わず、パーソナライズされたエクスペリエンスを期待している」と回答しています。
また、パーソナライズされたエクスペリエンスのやり取りの手法について、「コンピューターより人とやり取りしたい」と回答しているのは回答者の23%のみで、日本人はコンピューターによる自動化を好む傾向があることが分かりました。
このことから、日本ではデジタルにおけるパーソナライズの重要性が高まっていると言えるでしょう。デジタルにおけるパーソナライズを行うことで、「コンピューターを通して個別化された経験をしたい」というユーザーの需要を満たせます。
パーソナライズド動画における3つの効果
パーソナライズド動画における効果は、主に以下の3つが挙げられます。
- クリック率・コンバージョン率の向上
- 効果的なリード創出
- 商品・サービス説明の支援
それぞれ詳しく解説します。
クリック率・コンバージョン率の向上
パーソナライズド動画は、視聴者一人ひとりに個別で最適化されています。通常の動画と比べて「自分向けの動画だ」と感じやすいため、動画を最後まで飽きずに見ることができるでしょう。
また、動画を最後まで見れば、商品・サービスの特徴やメリットに対する理解も深まりやすくなります。その結果、クリック率・コンバージョン率が向上しやすくなる点が、パーソナライズド動画の効果です。
効果的なリード創出
パーソナライズド動画では、ユーザーに合わせた情報を見せることが可能です。そのため、ユーザーの状況や属性に合わせて、最適な方法で商品・サービスを提案できます。
ユーザーは、「今、自分にとって必要なことだ」と感じやすくなるため、嫌悪感を覚えることなく、動画を最後まで見たくなるでしょう。
商品・サービス説明の支援
パーソナライズド動画を活用すれば、顧客の属性や契約状況に応じて、適切な商品・サービス説明動画が配信可能です。また、動画内に分岐ポイントをいくつか設置することで、ユーザーの気になるポイントに絞って商品・サービスの説明を行えます。
パーソナライズド動画を通じて納得できる回答を得られれば、ユーザーは企業に問い合わせる手間が省けるでしょう。
企業目線で見ても、ユーザーからの問い合わせ件数を減らすことができ、カスタマーサービス業務を効率化できるでしょう。
パーソナライズド動画を活用する際に検討すべきポイント
パーソナライズド動画を活用する際は、以下の3点に注意しましょう。
- 個人情報に関する取り扱い
- 制作・運用体制
- 費用対効果
1点ずつ解説します。
個人情報に関する取り扱い
パーソナライズド動画では、氏名や住所などの個人情報を取り扱います。動画の制作を外注する場合、個人情報が外部へ流出するリスクがあるため注意してください。顧客情報の管理体制とセキュリティ対策を整える必要があるでしょう。
制作・運用体制
パーソナライズド動画の制作・運用をすべて外注すると、コストがかさむ可能性が高まります。一方で、すべてインハウスで作ると知識・スキル不足でうまく進まないでしょう。
簡易的なパーソナライズド動画であれば、動画制作ツールなどを活用する手段もあります。社内状況に合わせて、適切な方法を選ぶことが重要です。
費用対効果
パーソナライズド動画には、向いている業務と向いていない業務があります。例えば、定型の説明には向いていますが、応用が多い説明には向いていません。どの業務に対してパーソナライズド動画を活用するかは、社内でじっくりと検討すべきです。
また、パーソナライズする箇所がユーザーのニーズとずれていると、費用対効果が上がりづらくなってしまいます。費用対効果を高めるためには、動画配信後も分析を続け、効果の低い動画は差し替えていくなどの対応をしましょう。
パーソナライズド動画を活用した成功事例
ここからは実際にパーソナライズド動画を活用した成功事例を見ていきましょう。
チューリッヒ保険会社 - 自動車の事故解決までの流れを案内
チューリッヒ保険会社は、パーソナライズド動画を用いて自動車の事故解決までの流れを案内しています。動画を見ると、以下の5点をパーソナライズしていることが分かります。
- 名前
- 居住地
- 証券番号
- 事故番号
- 事故日
最初に名前を呼びかけたり、居住地に合わせて指定修理工場を紹介したりすることで、「自分向けの動画だ」と思わせることに成功しています。
また、動画の最後に分岐ボタンを設置することで、次のアクションを提示しているところも参考にすべき点です。ページを変えることなく、次に知りたい情報へすぐアクセスできるため、顧客にとって使い勝手が良い動画となるでしょう。
自身が知りたい情報を自ら取得しにいける仕組みのため、細かな質問の対応を減らすことにもつながります。顧客対応を効率化したい方は、ぜひ本事例を参考にしてみてください。
マニュライフ生命 - 契約内容のお知らせ
マニュライフ生命では、一年に一度契約者に送る「契約内容のお知らせ」にパーソナライズド動画を採用しています。動画内でパーソナライズしている項目は以下のとおりです。
- 名前
- 加入している保険内容
- 証券番号
- 契約日
- 年齢
年齢に応じた心配ごとやそれに応じた保険を紹介することで、アップセルを狙うことに成功しています。「自分向けの動画だ」と感じてもらうことでロイヤリティ向上にもつながり、契約更新の促進にも役立つでしょう。
Cadbury社 - 菓子・飲料の販売促進
Cadbury社は、菓子・飲料の販売促進にパーソナライズド動画を活用しています。動画内でパーソナライズしている項目は、次のとおりです。
- 名前
- 写真(Facebookより引用)
写真が組み込まれる動画は珍しく、SNS上で広く拡散され話題を集めました。また、本パーソナライズド動画の視聴完了率は90%まで上りました。
パーソナライズド動画を用いた販売促進やプロモーションを行いたい方は、ぜひ参考にしたい事例です。
Oxfam International - 募金への感謝
Oxfam Internationalは、募金への感謝動画としてパーソナライズド動画を活用しています。パーソナライズされた箇所は名前と募金額のみですが、募金先の子どもたちの映像を使うなどの工夫を凝らしています。
動画を見ることで募金が役立っていることを実感でき、継続した募金につながる可能性が高まるでしょう。
Citi Prestige Credit Card - ポイントの説明
Citi Prestige Credit Cardは、パーソナライズド動画を活用してカードのポイント説明を行っています。パーソナライズされている項目は以下の通りです。
- 名前
- 保有ポイント
- 交換ポイント
ただポイントについて説明するだけでなく、保有ポイントや交換ポイントを顧客ごとに提示することで、具体的な活用方法を想起させることに成功しています。
サービスの利用回数を増やしてもらいたい場合や、継続して利用してもらいたい場合に役立つ成功事例です。
パーソナライズド動画の作成・配信に役立つサービス
パーソナライズド動画の作成・配信に役立つサービスを3つ紹介します。サービスごとに特徴を解説していますので、利用するサービス選びの参考にしてみてください。
PRISM
PRISMの特徴
- 顧客データに合わせて、サーバーで動画が自動的に最適化される
- リアルタイム方式やプレ生成配信方式など、さまざまな提供方法を選べる
- 外部ソリューションと簡単に連携できる
株式会社クリエ・ジャパンが提供する「PRISM」は、視聴者に合った動画を自動で合成・生成できる、日本初のパーソナライズド動画生成エンジンです。映像演出が多彩なだけでなく、視聴端末やブラウザによる表示ズレが発生しないため、顧客体験を向上させられます。
また、一般的なサーバーにエンジンを組み込むだけのシンプルなシステム構成となっているため、外部ソリューションと組み合わせて活用することもできます。カスタマーサポートやアップセル・リードナーチャリングなど、さまざまな場面で活躍するでしょう。
WebBureau Movie
WebBureau Movieの特徴
- 動画視聴時の行動データを取得して可視化できる
- 動画内にボタンを配置し、シナリオを分岐させることができる
- コールセンターの平均通話時間を30%削減した実績がある
トッパン・フォームズ株式会社が提供する「WebBureau Movie」。事前情報に基づいて動画をパーソナライズするだけでなく、動画内に分岐ボタンを設置し、回答によって動画の内容を変化させることができます。
コールセンター業務の効率化や、契約更新の促進に役立つでしょう。
OneDouga
OneDougaの特徴
- すでに保有しているデータを動画用データに自動変換してもらえる
- 動画視聴後に、デジタルギフトが入手できるページへ遷移できる
- OneDougaアナリティクスで、さまざまなデータを一元管理できる
「OneDouga」は、共同印刷株式会社が提供するパーソナライズド動画作成・配信サービスです。サービス体系は「パッケージ」と「個社対応」の2つに分かれており、予算や規模に合わせて使い分けることができます。
公式サイトでは業種別の活用方法や導入事例が紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。姓とメールアドレスを入力することで、デモ動画の閲覧もできます。
パーソナライズド動画を活用し、ユーザーへ最適なサービスの提案を
今回は、パーソナライズド動画の仕組みや効果・注意点を解説し、活用事例とツールを紹介しました。
パーソナライズド動画を活用すると、一人ひとりに適した動画を配信できるため、ユーザー満足度の向上につながります。それだけでなく「自分向けの動画だ」と感じてもらうことでユーザーからの信頼度も上がり、問い合わせ対応の効率化にもつながるでしょう。
記事内で紹介したツールを活用し、ぜひパーソナライズド動画を導入してみてください。