「〇〇だったらA社のものを」「~で困ったらB社に依頼すれば解決する」・・・特定のカテゴリで第一想起を取りたいという想いは、ほとんどの企業が持っているはずです。
第一想起を取れるのは大手だけ、というイメージがあるかもしれませんが、マス広告に継続投資できるような予算がなくても、ターゲットユーザーの第一想起を取れる可能性はあります。
その手段が「企業PR」です。効果的な企業PRは、あなたの企業のファンを作ります。本記事では、第一想起を取るための企業PR方法について説明します。
PRの基礎と必須ツールがわかるPR活動完全ガイド
PR活動の基礎を学び、自社ブランドの認知度向上を実現!
- PRと広報の違い
- 具体的なPR活動方法
- 戦略の設計方法
- プレスリリースとは
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全てのフィールドが必須です。
企業PRとは?
PRとは「Public Relations(公衆との関係)」という意味で、ある組織や団体が、広く社会の人々に対して自分たちの組織のことを知らせ、信頼関係を構築することを指します。
日本ではPRというと、宣伝や広告と狭い意味でとらえられることが多い傾向にあります。本来のPRはより広い意味をもっています。宣伝や広告が販売促進を目的としているのに対して、PR活動の目的は、企業の理念や価値を伝え、双方向的なコミュニケーションをすることにあります。
企業PRは、言うなれば企業を取り巻く社会と企業が良い関係を築き、信頼関係を維持・発展させていくためのコミュニケーション活動なのです。
企業とステークホルダー
PR活動では、ある組織を取り巻く社会のことを「ステークホルダー(利害関係者)」と呼びます。企業にとってのステークホルダーは、もちろん顧客や取引先だけではありません。「従業員」「企業が拠点をおく地域社会を取り巻く社会」「金融機関」「政府」もすべてステークホルダーです。企業PRとは、企業とステークホルダーとの双方向的なコミュニケーションのことなのです。
企業は各ステークホルダーとの間に双方向的な関係を築きます。それぞれの関係はステークホルダーとの関係によって以下のように呼ばれています。
- メディアリレーションズ…メディアとの関係
企業が発信する情報のほとんどは、新聞や雑誌、TVなどメディアを通じて社会に配信されます。そのため企業PRにおいて、メディアリレーションズは、他の関係性にはない特別な役割を担っています。 - カスタマーリレーションズ…顧客との関係
企業の経営理念や創造する価値への理解を求め、教育や啓発活動を行います。また、新製品や新サービスの訴求を行います。メディアを通じたコミュニケーションのほか、独自のチャネルとして、社外広報誌を発行したり、WebサイトやSNS(オウンドメディア)を活用したりする場合もあります。 - インベスターリレーションズ…株主や投資家との関係
株主や投資家に向けて、企業の経営状況を公開した年次報告書(IR)の発表や株主総会の開催も、インベスターリレーションズの一環です。 - エンプロイーリレーションズ…従業員との関係
自社で働く従業員と良好な関係を構築するために、社内広報を作成したり、社内のイベントを開催したりします。従業員からの要求を受けて、労働環境を改善するなどの施策も必要です。 - インダストリーリレーションズ…同業他社との関係
同業他社やベンダーやサプライヤーとの関係も含みます。業界紙・専門誌を活用したり、交流会や研究会に参加・開催したりしてコミュニケーションを図ります。 - ファイナンシャルリレーションズ…金融機関との関係
取引銀行や証券会社との良好な関係を構築するための活動です。「IRの発行」「定期的な面談」「地域情勢や経営課題についての情報交換」などを行います。 - コミュニティリレーションズ…地域住民との関係
企業が本拠地とする地域や、支社、工場が設置されている地域の住民や地域コミュニティとの関係を良好にするための活動を行います。「学校での出張授業」「会社見学を受けつける」「ボランティア活動を行う」などがあります。 - ガバメントリレーションズ…政府や地方行政機関との関係
関係する省庁や団体と定期的な面談やヒアリング、研究会などを行うことによって、信頼関係の構築を行います。
PR活動のツール
PR活動を行うツールには、以下のようにさまざまなものがあります。
- プレスリリース
- 動画
- 自社Webサイト
- SNS
- Web広告
- 印刷物
- イベント
etc...
企業PRが重要な理由
企業PRを担当するのは、主には広報部でしょう。従来、広報部の仕事の中心は、メディアへのプレスリリース配信と社内広報の作成が中心でした。しかし、現在の役割はより拡大しています。
かつては、社会の人々に広く発信するための手段はマスメディアだけに限られていました。しかし現在はSNSや動画プラットフォームなど、様々なチャネルを通じて発信できるようになりました。、SNSを通じて個人が大きな発信力を持てる時代になった今、企業としては自社WebサイトやSNSを通じて積極的に情報を発信しつつ、、多くの人々から発信される自社の話題についても耳を傾ける必要があります。
企業PR担当者は、以下4つの役割をふまえてさまざまな活動を行います。
- 社外の情報収集…自社を取り巻く業界や社会状況や、自社への言及、消費者の意見、SNSや商品の口コミなどを幅広く収集する
- 社外情報の社内への発信…収集した情報を整理・構成して社内に発信する
- 社内情報の収集…各部門の動きや開発中の製品情報などの情報を収集する
- 社内情報の社内への発信…収集した社内の情報を社内報などで発信する
企業PRの活動の中で、特に重要なのは以下の2点です。
- 企業マネジメントとしてのPR活動
- 危機管理としてのPR活動
この2種類の活動について、詳しく見てみましょう。
1. 企業マネジメントとしてのPR活動
PRを通して、理念や自社の行う社会活動、新商品の開発理念など、ポジティブな面をアピールできます。PR方法には、WebサイトやSNSなど自社メディアで発信するほか、メディアに向けたプレスリリースの発行などがあります。
プレスリリースとは、自社が行う活動や、新商品・新サービスを、メディアに向けて知らせる文書です。メディアが関心をもった場合には、プレスリリースがそのまま新聞や雑誌に掲載されたり、メディアが取材した内容が報道されたりします。
企業PRは、直接的な販売促進や売り上げ増加を目指すものではありません。しかし、企業の理念や提供価値を伝えることで、支持や共感を獲得できる可能性があります。また、企業PRとプロモーションや広告を組み合わせることで、広告に多額の費用をかけられないスモールビジネスであっても、大きな効果が得られます。
2. 危機管理としてのPR活動
PR活動のもうひとつの側面に「自然災害や事故、労務問題、SNSの炎上などが起こった際に、企業がどのように問題と向き合い、解決に向けて行動しているかを見せる」という点があります。
直近の好事例として、大手スーパーのイオンの対応があります。トイレットペーパーの買い占めが起こっていた時期に、イオンは首都圏の店舗を中心に、店頭に大量のトイレットペーパーを陳列しました。
イオンの行動は、不安感を抱く消費者の心理を落ち着かせるとともに、消費者が必要とするものを確実に届けるという企業の理念を示しました。イオンの行動に感動した消費者は、トイレットペーパーが大量に陳列された店内の様子をSNSで拡散し、広く認知されました。
一方、企業PRはポジティブな影響だけを与えるものではありません。従業員による不適切な発信などを通じて企業が批判にさらされる場合もあります。PRを担当する広報部は、社外、社内の情報を広く収集し、素早い対応を取ることが求められています。
企業PRを実施するメリット
企業PRは、直接的に販売促進を行ったり、売上を増やしたりするものではありません。しかし、PR活動は以下の2つのメリットを通して、マーケティング効果を高め、経営上の目標達成に寄与できます。
- 企業PRを通して自社に魅力を感じてもらえる
- 双方向的なコミュニケーションを行うことで自己修正できる
1. 企業PRを通して自社に魅力を感じてもらえる
自社の理念や社会活動を広く伝えることで、社会全体にその企業の価値を知ってもらえます。
2019年、電通が全国の1万人を対象に行った調査によると、人々が企業の魅力をどのようなときに感じるかが明らかにされています。
調査結果によると、47.2%と多くの人が企業の魅力の根拠に「ビジョン」を挙げています。消費者からすると「ビジョンを掲げ、業界を牽引している」かどうかは、2位、3位のチャレンジングスピリット、5位のイノベーションなど、商品やサービス、また価格やコストパフォーマンスを上回るのです。
広告やプロモーションの本来の目的は、あくまでも販売促進です。しかし、広告やプロモーション・宣伝でも企業の理念を伝えることは可能です。企業PRを通じて人々に自社を魅力的だと感じてもらえれば、マーケティングの面でも、大きな優位性が得られます。
2. 双方向的なコミュニケーションを行うことで自己修正できる
企業PRの役割のところで述べたように、企業PRは企業の側からの発信だけを指すのではありません。
企業自身が「すばらしい理念(商品・サービス)だ」と感じていても、それを受け取った側が、企業と同じように感じるとは限りません。時代や状況の変化で、かつては優れていたはずのものが、まったく魅力を感じなくなったりすることがしばしば起こります。
自社ではなかなか気づけない社会とのずれは、社会の声からわかります。ステークホルダーや社会全体の声に耳を傾け、聞き届けた声を取り入れて修正しながらPDCAを回していくことで、企業はより良い企業活動が続けられるようになります。
企業PRのツール
企業PRはオンライン、オフライン両面のツールを活用して幅広く展開していく必要があります。企業PRのためのツールを紹介します。
ちなみに当社HubSpotでは、オフラインでもオンラインでも使えるプレスリリースの無料テンプレートを用意しています。ぜひダウンロードしてご活用ください。
企業PRのためのオンラインツール
インターネットがなかった時代には、企業は宣伝や広告を除けば、企業が直接発信する手段は、プレスリリースに限られていました。しかし、今日ではSNSや動画など、さまざまなツールが活用できます。ここではその中から以下の4つのツールについて説明します。
- プレスリリース
- 動画PR
- SNS
- Web広告
プレスリリース
PRの代表的なもので、かつては紙のツールとしてマスメディアに配信していました。しかし今日では、数社が展開しているプレスリリースの配信サイトに送ることで、大手メディアへの掲載やオーガニック検索などを通じて、多くのユーザーの目に留まるなどのメリットがあります。
動画PR
スマホの普及とともに、動画が手軽に視聴できるようになりました。それとともに動画広告やPRも増えています。
動画はストーリーを視覚に訴えることで大きなインパクトを与え、効果的に魅力を訴求します。また、短時間で多くの情報が伝えられるというメリットもあります。
SNS
SNSはユーザーとの直接的な対話が可能で、「共感」を集めたり拡散を期待したりできるPRに効果的なツールです。方向性をはっきりと打ち出し、発信量の多い企業アカウントは、ユーザーの注目を集め、多くのファンを獲得しています。
Web広告
Web広告は、販売促進のために行うだけでなく、企業PRとして活用することもできます。Web広告で注目を集め、自社WebサイトやSNS、キャンペーンへ遷移させる形態で活用します。
企業PRのためのオフラインツール
オンライン同様、オフラインのツールでも一貫して「企業らしさ」を伝えることが大切です。なかには、ある企業が一貫したブランド性を訴求することで、20%以上も収益が増加したという統計があります。
企業活動の中心がオンラインに移行しても、企業PRに活用できるオフラインツールはさまざまにあります。オフラインツールとして代表的な5つのツールについて説明します。
- ポスター
- チラシ
- パンフレット
- パッケージ
- イベント
ポスター
工場や作業現場の控室などには、よくポスターが貼ってあります。危険と隣り合わせの現場では、つねに注意を喚起しなければなりません。ポスターは繰り返しメッセージを伝えるのに役立つツールです。
オフィスでも企業理念などをポスターにして貼っておくと、あるメッセージが従業員の意識に浸透していきます。また、社外に対しても企業理念やブランドのキャッチコピーなどをポスターにすれば、認知を高めるのに役立つのです。
チラシ
チラシは集客のために使うことの多いですが、他の印刷物にくらべてコストが安いです。また、配布方法もポスティングや新聞折込、設置などのさまざまな方法が取れます。なお配布するチラシは、認知を促すため他のツールと統一性をもたせることが重要です。
パンフレット
企業理念や沿革、代表者あいさつ、事業内容、組織図、商品やサービスなどが掲載されている、企業の「顔」と呼べるものです。オンライン中心の現在でも、有形で残るため、リマインド効果が期待できます。
パッケージ
パッケージや包装紙は視認性が高く、ひと目で覚えてもらえるものです。企業PRの一環として、自社の事業内容とイメージカラーに即した、魅力的なパッケージデザインとコピーを考えます。
イベント
イベントは格好の企業PRの場となります。自社の業務内容にふさわしいイベントを開催します。行政とタイアップすると、例えば出張授業など、コストを抑えながら自社のファンを増やせるようなイベントが行えます。
効果的な企業PRを実施するためのポイント
企業PRを効果的に行うために押さえるべき点を説明します。
目的の明確化
最初に、今回は何のために企業PRを行うのかを明確にします。企業PRの目的は、企業の業務全体の目的、マーケティングの目的と一致している必要があります。
企業PRの内容は、企業の置かれた状況や目指しているものによって異なります。目的の内容によって、以下の5つのどの要素に相当するかを決定します。
- 商品の認知度を高める
- 企業名の認知度を高める
- 企業イメージを向上する
- 企業ブランディングを行う
- その他
誰に情報を届けるのか?対象にもっともふさわしいチャネルは何か?
目的を定めたら、次に企業PRを届けるターゲットを決定します。ターゲットが決まれば、もっともリーチしやすいチャネルも決まります。
KPIの設定
企業PRを行う場合には、かならず効果の測定をしなければなりません。「認知度」や「イメージの向上する」「ブランディング」などは、「売上」「販売数」「集客数」とくらべて定量的な評価がしにくいです。しかし、KPI(最重要評価指標)を設定することで、定量的に計測できるようになります。
企業によって、業種によって、また商品やサービスによって、PRの目的は異なります。ここではKPIの例をいくつか挙げますので、自社のKPIを設定する上での参考にしてください。
カバレッジ数
「カバレッジ数」とはメディアに掲載された数を指し、2種類の算出法があります。
- 自社が発行したプレスリリースがそのまま掲載された記事も含めてカウントする場合…メディアへの露出増加を重視するとき
- 独自の記事としてメディアに掲載された記事だけをカウントする場合…メディアが情報を正しく理解した上で伝えてくれているかどうかを重視しているとき
特定のメディアに、狙った切り口で掲載されたかどうか
自社が正しくメディアに位置づけられているかどうかをカウントします。例えば「日経にSaaSの切り口で取り上げられた」記事の数だけをカウントし、それ以外の観点や媒体に掲載されたものはカウントしない、という方法です。
広告換算値
広告換算値とは、掲載された記事を広告費に置き換えて数値化する方法です。PRの本質とは外れるため、評価しない人もいますが、経営者がPRを信頼しておらず、わかりやすく成果を出さなければいけない場合などには有用な指標となります。
その他
以下のものを設定することも可能です。
- バックリンク…自社がどのような媒体に、どのような切り口で言及されているかがわかります。
- ブランドが話題に上った回数…ブランドの認知度を測定できます。
- コンバージョン…PR活動を通じてWebサイトに流入した数をカウントします。
- センチメント分析…SNSで肯定的に言及されているか、否定的な文脈で言及されているかを計測します。
- アクセス数…自社サイトへのトラフィックがPR以降どれだけ増えたかを計測します。
- SNSのエンゲージメント率…SNSのエンゲージメント数を計測すると、ユーザーのエンゲージメントの度合いが測定できます。
- ソーシャルシェア…シェアされた数だけでなく、どのような投稿がシェアされているかどうかも確認します。ユーザーがどんな投稿を楽しんでいるかが把握できます。
PR計画の作成
あらかじめ決めてある目的や対象、チャネルを元に、PR活動のPR活動の内容を決定します。実行前に以下の5点を決めておきます。
- 実行プログラムを策定する
- 時期と期間を定める
- 予算を立てる
- 役割分担を行う
- 定期的な会議日程を定める
定期的な効果測定
効果を測定しつつ、問題点を洗い出します。対処が必要なことがあれば、すぐに対応プランを練る必要があります。
分析と評価、対応策の検討
PRが終了した時点で、KPIを元にPRの分析と評価を行います。その上で、修正すべき点などを確認します。
企業PRを行う際の注意点
企業PRは中長期的な目標をもって行うものです。そのために中長期を見通した戦略が必要になってきます。中長期的な戦略を策定するための注意点を説明します。
企業PRは広報部だけの仕事ではない
企業PRで効果を上げるためには、他のマーケティングや事業全体との一貫性が重要です。そのため、戦略の策定は、広報部だけが担うのではなく、マーケティング部や経営部門と協働して策定します。
企業としてのUSPを考える
USPとは「Unique Selling Proposition」の頭文字で、他社にはない独自の販売提案のことです。その市場において他のどの企業も提供できてない独自のUSPを確立し、企業PRでも、マーケティングや広告の中でも、一貫して打ち出すことが必要です。
その際に盛り込むのは、以下の3点です。
- 自社が独自にもっており、競合にはない特質であること
- 要点を明確に、自信をもって伝えること
- 商品やサービスではなく、顧客の利益に焦点を当てる
企業PRを通じて双方向的コミュニケーションを生み出そう
企業PRは社会にあふれる情報の中から、人々の声を「聞き取り」「自社が提供できるものと関連づけ」「自社から社会へ届ける」という3つの役割を担っています。この3つのステップが、ステークホルダーとの対称的で双方向的なコミュニケーションを可能にしています。
企業PRというと、どうしても3番目の「届ける」という役割が重視されがちです。オンラインとオフライン双方のツールを駆使しながら、顧客、取引先、投資家、地域住民など、多様な人や組織から成るステークホルダーに企業PRを展開していくことは、PRの中心には相違ありません。
しかし、本当の意味で企業の経営や事業にとってプラスとなる企業PRを行うためには、社会の声に耳を傾けるのはもちろん、その声を受けて自己修正を行うことが必要です。
PR活動は1回だけのものではありません。成果を計測し、分析して、次のPRにつなげます。粘り強く活動を続けることで、たとえスモールビジネスであっても「〇〇といえば」と真っ先に思い出してもらえる企業になっていくことでしょう。