広告がコンバージョンに結びついていない、Webサイトへの流入も頭打ち、ブランド認知も進まない…。そんな悩みはありませんか?
広告は日常生活にあふれていますが、消費者の44%はまったく広告を覚えていない、という統計もあります。インターネットの登場により、多くの人が情報の発信者となった結果、情報量が爆発し、情報の99%は処理されないままになっているという見方もあります。
このような時代に自社が広く認知され、ブランディング力を高めていくためにはどうしたら良いのでしょうか。その答えのひとつが「PR」です。
PRという言葉は、「自己PR」「新商品のPR」など、私たちの日常にも溶け込んでいます。ただ、PRって何だろう? と改めて考えてみると、わかったようでわかっていない言葉なのではないでしょうか?
本記事では、まずPRの定義を確認した上で、自社の理念や活動を伝え、受け手からのフィードバックを取り入れつつ、より良い企業活動へとつなげていくPRについて、多面的に解説していきます。
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PRとは?広報・マーケティング・プロモーション・宣伝・広告との違いと関係性
PRとは、Public Relations(公衆との関係)の略です。「公衆との関係」をもう少しわかりやすく説明すると、組織と社会の人々との間に良い関係性を構築するための、戦略的コミュニケーションプロセスとなります。
PRとよく似た使い方をされる言葉として、広報やマーケティング、プロモーション・宣伝、広告があります。それぞれの目的や対象、伝達方法、掲載場所を比較しながら違いを見ていきましょう。
《PRと広報、マーケティング、プロモーション・宣伝、広告の違い》
種類 | 目的 | 対象 | 伝達方法 | 掲載場所 |
---|---|---|---|---|
PR | 組織の価値や商品・サービスの価値を伝えるために戦略的コミュニケーションを行うこと | 社会全般 | 双方向 | メディア Webサイト SNS |
広報 | 組織の施策や業務内容を広く知らせるために情報を発信すること | 社会全般 | 一方向 | メディア 広報紙 Webサイト |
マーケティング | 商品やサービスの販売を促進するために、顧客の課題や痛みを知り、解決策を提案すること | 顧客 取引先 消費者 |
双方向 | Webサイト SNS 広告 |
プロモーション(宣伝) | 商品やサービスの販売を促進するために、特質や自社ブランドを理解してもらえるように情報を発信すること | 顧客 取引先 消費者 |
一方向 | メディア Webサイト SNS 実店舗 |
広告 | 商品やサービスの販売を促進するために、有料メディアを使って商品やサービスの内容を宣伝すること | 顧客 取引先 消費者 |
一方向 | 有料メディア Web広告枠 実店舗 |
マーケティングやプロモーション・宣伝、広告が、商品やサービスの販売促進を目的とするのに対して、PRや広報は組織の認知や理解を広め、全ステークホルダーとの関係構築を目的としています。売り上げだけを考え、直接ていな効果を狙って実施するものではないのです。
適切なPRを実施できれば、多くのステークホルダーに、企業や組織に対する好ましいイメージを持ってもらえます。マーケティングなどの販促活動とPRを連動させると、PRの効果の向上が期待できます。
PRにおける「ステークホルダー」とは?
ここで一旦、先述した「ステークホルダー」の定義を確認してみましょう。「パブリックリレーションズ(Public Relations)」の「パブリック」とは、国や地域、共同体の構成員のことです。企業活動の場合、事業に関与するパブリックを「ステークホルダー(利害関係者:stakeholder)」と呼びます。
企業にとってのステークホルダーとは、おもに以下の8つがあります。
- メディア
- 消費者(顧客)
- 株主
- 従業員
- 行政機関
- 金融機関
- 取引先
企業はこの8つのステークホルダーと、PR活動を通じて良好な関係性の構築を目指します。
《企業を取り巻くステークホルダー》
8つのステークホルダーのなかでも、特にPRと深い関係を持つのがメディア(新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、通信社など)です。PRのほとんどはメディアを通じて各ステークホルダーに届けられるからです。そのため本記事でもメディアとの関係を中心に解説しています。
PR活動の中核となるメディア・リレーションズ
企業のPR活動は、おもにメディア及びオウンドメディアを通じてステークホルダーに届けられます。社内報のように、従業員だけに届けられるメディアもあります。
《企業の発信とメディア》
PRには外部メディアだけでなく、自社が管理するオウンドメディア、投資家に向けて情報発信するIR(Investor Relations)、従業員に向けて発信する社内広報など、さまざまな種類があります。
しかしPRの大半は、メディアを通してさまざまなステークホルダーに届けられます。まずはメディアとの関係(Media Relations)と良好な関係性を構築することが、PR活動の出発点となります。
PRの目的とは?
企業のPR活動の目的は、ステークホルダー・社会と双方向のコミュニケーションです。しかし企業活動の一環である以上、直接的な販促活動はしなくても、間接的に企業の目的や目標の達成、マーケティングの目的や目標の達成を助ける必要があります。では、PR活動の目的はどう捉えればいいのでしょうか。
企業の理念や活動を発信
PR活動で設定する目標は、業種やその企業が置かれた状況によって変わってきます。ただ、あらゆるPRに通じるのは、自社の理念や文化、提供できる価値をを発信し続けることが重要だということです。
その際、企業は以下の3点に留意します。
- ステークホルダーに合わせた情報の提供
- 適切なメディア、コミュニケーションツールの活用
- 中長期的な戦略計画と持続的な一貫性を持つ
寄せられた意見を事業に反映し、発信する
PRと広報の違いとして、広報が一方向的であるのに対し、PRは双方向的である特徴が挙げられます。PR活動にはターゲットであるステークホルダーの反応を受け留め、自己修正を行うことも含まれています。
この面で重要なことは以下の3点です。
- 双方向の対話を可能にする仕組みづくり
- 外部情報を受信できる仕組みづくり
- PRを受け取った側から寄せられたフィードバックや批判を真摯に受け留め、企業としてPR内容や商品、サービスを自ら進んで改める体制づくり
PR活動の種類
ここではPR活動の具体的な種類として、企業PR、商品PR、地方や自治体のPRを取り上げます。
企業PR
企業PRとは、企業や企業の理念、事業の価値をステークホルダーに正しく伝え、ステークホルダーとの間に信頼関係を構築することが目的です。
高度経済成長期の「良いモノを作れば売れる」という時代には、自社の商品やサービスの認知を高めることが、直接の売り上げにつながっていました。しかし、経済全般が停滞し始めるのに合わせて、消費者は「自分の好きなブランドの商品だけを買う」ように行動が変化したのです。
企業も消費者の行動にあわせて商品認知を高めることから「自社のファンを増やす」方向でPRを行うようになりました。現代では、自社の経営理念や経営者の理念、社会活動を広く紹介することが、企業PRの中心になっています。消費者のニーズを知り、本当に求めているものに合わせてPRも展開することが求められているのです。
企業のPR活動の中心は、以下のようなものです。
- プレスリリースを通じて企業の理念やビジョン、どのような価値を創造しているかを伝える
- WebサイトやSNSを活用して、企業理念や価値をステークホルダーと共有する
- ステークホルダーとの接点を増やすための参加型イベントを開催する
「企業PR」のポイントやおすすめツールを確認したい方は、当ブログの以下の記事をどうぞ。
商品PR
商品やサービスのPRは、企業PRと一貫性のあるものとして展開する必要があります。
従来の商品PRでは、新商品がどれほど高性能であるか、他社にはない機能を備えているか、どれだけコストパフォーマンスに優れているか、という面に、主な焦点が当てられていました。
現代では、「自社はスタートアップを応援します」という企業PRを行う企業であれば「このサービスはお試し期間があり、〇日間、無料で使える」「カスタマーサクセス部門の担当者がサポートする」という形で、一貫した主張が必要です。企業理念に賛同したファンが、顧客に転換できるような流れを用意します。
商品PRは以下のようなPR活動を行います。
- 商品にどのような価値があるかを伝えるプレスリリースをメディアに向けて配信する
- Webサイトで商品を紹介する
- 商品についてブログで、誰のどのような問題を解決するか、詳しく伝える
- SNSで紹介する
- インフルエンサーを活用して、画像や動画で配信してもらう
- ニュースレターを配信し、既存顧客や見込み客に伝える
- 商品とユーザーや社会との接点を増やすためのイベントを開催する
地方・自治体PR
従来はPRというと公共団体であれば「広報」、企業は「PR」と使いわけることが中心でした。しかし現代では地域定住促進やインバウンドなど、地方行政が主催するPRも増え、評価の高いPR動画も作成されています。
特に「PR動画」は話題になると、拡散され、さらに注目度が増し、地域の知名度も上がるという効果があります。総務省や地方公共団体が、動画を制作する際の経費に財政措置を実施していることもあって、地方のPR動画が続々と制作されています。
PR動画にはマーケティング戦略と、視聴者の感情に訴えかけるストーリーが重要となります。松山市が映像制作会社と共同制作したWebアニメ「マッツとヤンマとモブリさん-七つの秘宝と空飛ぶお城-」では、松山の名所や歴史を盛り込んだ冒険物語でとして国際的にも高い評価を得るなど、名作も生まれています。
PR動画のほかにも、地方・自治体PRには以下のようなものがあります。
- PR動画と組み合わせたSNSで地域を超えて全国に発信する
- 広報紙を発行するだけでなく、広報紙を地域の情報プラットフォームにする
- シニア層を活用し、若年層の地域愛を育むイベントを開催する
- 都市圏にアンテナショップを設置する
戦略PR
消費市場が成熟し、モノが売れにくくなった時代に登場したのが、「戦略PR」という考え方です。
戦略PRとは?
PRを通じて消費者に気づきを提供し、消費者自らが「買う理由」を見い出す、というのが、戦略PRの基本的な考え方です。
従来、企業は広告によって商品認知を高め、販売へ結びつけるという手法を取ってきました。しかし、情報量の爆発的な増加により、ただ広告を配信しても見てもらえる可能性は低くなってきています。そのようななかで、広告では商品を直接的に訴求するのではなく、PRによって「空気をつくる」ことで、広告が消費者に届くようにするのが戦略PRのアプローチです。
戦略PRの例として、パンテーン(P&G)の「#この髪どうしてダメですか」が挙げられます。髪型や髪の色が校則によって厳しく定められた学校では、地毛の明るい色の生徒に、地毛証明書の提出を求めるところもあります。しかも地毛であっても黒染めを求める学校まであります。
こうした現状を取材したパンテーンは、先生と生徒が話し合うきっかけになれば、と「#この髪どうしてダメですか 先生と生徒の対話」というPR動画を作成しました。
この動画はSNSを通じて18万件ものリアクションや共感の声を生みました。実際に多くの人が現在の学校の指導に疑問を抱くようになり、行動を起こす人も現れたほどです。企業と社会の間で双方向的なコミュニケーションが成立した事例といえます。
マーケティングの一環として行われる戦略PRの必要性
戦略PRを展開していくためには、根幹となる戦略を立てる必要があります。この戦略は、経営戦略、マーケティング戦略とも関わるため、広報部だけでは策定できません。戦略PRは広報部だけでなく、マーケティング部門や経営部門と一体となって推進する必要があります。
また展開するPR活動も、プレスリリースとデジタルコンテンツや動画、SNSなどと幅広く連動させる必要があり、全体にかかるコストも大きくなります。PR活動がそのコストに見合うだけの効果を上げているのかも、計測しなければなりません。
初期は「空気をつくる」という言葉で抽象的に表現されてきた戦略PRですが、これからの戦略PRは、マーケティングの一環として、計測、分析を繰り返しつつ行われます。
「戦略PR」で考慮すべき要素や具体的なPRについて方法を確認したい方は、本メディアの別ページをご覧ください。
PRを実施するための手段・ツール
企業PRの中心になるのは、メディア・リレーションズの一角を占めるプレスリリースでしょう。しかし、実際にはPRには数多くのツールがあります。ここではその代表的なツールを紹介します。
プレスリリース
プレスリリースとは、自社の情報をメディアに向けて公式に発表した文書のことです。プレス(press)とは、新聞のことを指しており、「自社の情報を新聞で報道してもらう」という意味でした。最近では「プレスリリース」のほかに「ニュースリリース」「報道発表」という呼び方もあります。
企業は新製品をローンチしたり、新しいサービスの提供を開始したりする場合や、新しい取り組みや社会的事業を行ったりするときに、プレスリリースを作成します。プレスリリースを読み、興味を感じたメディアは、企業に取材にいき、記事やニュースにして報道します。
インターネットやSNSが普及していなかった時代において、企業の発信手段はほぼマスメディアに限定されていました。しかし、今日は多くの企業がSNSやオウンドメディアを通じてステークホルダーと直接繋がり、情報を発信できるようになってきています。
従来と比較すれば、プレスリリースの役割は、相対的に低下したのですが、今なおプレスリリースは企業PRにとって重要なものと考えられています。プレスリリースを元にメディアで紹介される際は、広告枠ではなく一般記事の枠に掲載されるからです。
メディアが自ら報じることで、より広範な人々にリーチできる可能性があり、広告のように高いコストもかかりません。そのため企業のPR担当者は、採用されるプレスリリースを作成する必要があります。
「プレスリリース」のメリットや具体的な配信方法について確認したい方は、本メディアの別ページをご覧ください。
PR動画
近年、多くの話題を集めているのがPR動画です。販促用の動画とは異なり、企業の理念や社会的な取り組みをストーリーにして伝えるのがPR動画の役割です。
成功した企業のPR動画は、1企業の枠を超えて、視聴者の共感を生んだり、社会に大きなインパクトを与えています。言葉で説明するのではなく、視聴者に、見て、感じてもらうことを通して、企業の理念が共有されていきます。
そんな例のひとつが、ユニリーバの「Lifebuoy Help A Child Reach 5」(ライフブイのおかげで子どもは5歳を迎えた)キャンペーンです。農村部のインドで、手を洗う習慣を全員が身につけた結果、衛生状態が大きく改善して乳幼児の死亡率が下がったことを印象的な映像で伝えています。
「PR動画」の効果的な作成方法について確認したい方は、本メディアの別ページをご覧ください。
SNSを活用したPR
SNSの持つ拡散力に注目する企業は、PRとSNSを組み合わせて活用しているところも少なくありません。その代表的な例がワークマンです。
現場、工場向けの衣類や用具類を扱うワークマンのマーケティングの特徴は、広告費を抑え、PRを積極的に取り入れた点です。また、SNSを使ったインフルエンサーマーケティングもあわせて展開しています。
インフルエンサーの効果は計測しにくいのですが、ワークマンでは「共感指数」という独自のKPI(最重要評価指標)を設定し、インフルエンサーの持つ影響力を可視化してきました。さらにSNSを通じてユーザーとのコミュニケーションを密にし、商品の開発にユーザーの声を積極的に取り入れてきました。
Web広告を活用したPR
Webページに掲載されるPPC(Pay Per Click)広告やバナー広告でもPR活動を行う場合があります。その場合は販促や売り上げを伸ばすことよりも、自社が行っているPRキャンペーンの紹介や、Webサイトにユーザーを流入させることが目的となります。
企業としての理念や主張に、他のPR活動と一貫性が必要です。一貫性のある主張によって、Web広告においても競合他社との差別化が図れます。
紙媒体の企業PRツール
古くからあるPR方法ですが、ペーパーレス社会に移行しつつある現代でも、今なお多く活用されています。紙媒体は「正式なもの」「保管に適している」「記憶に残りやすい」などがメリットです。紙媒体の企業PRには、以下のものがあります。
企業パンフレット
企業理念や沿革、代表者あいさつ、事業内容、組織図、商品やサービスなどが記載されている、企業の正式な案内です。
企業広報誌(紙)
企業が発行している小冊子で、多くは無料で頒布されています。資生堂の「花椿」や大林組の「季刊大林」、キヤノンの「C-magazine」など、企業の枠を超えて多くの読者を擁している広報誌もあります。
ディスクロージャー誌
企業の経営内容を開示した、株主や投資家向けの冊子です。財産や収支の状況、経営方針や商品情報など、企業活動の全般が把握できるように幅広い情報が記載されています。
CSRレポート
CSR(Corporate Social Responsibility)は企業の社会的責任のことで、環境や地域社会への貢献活動を通して、ステークホルダーからの信頼を勝ち取る活動です。その活動を紙の媒体としてまとめたものが、レポートや冊子として、広く一般に公開されています。
企業カレンダー
企業がPR活動の一環としてステークホルダーに無料で配布するグッズを「ノベルティ」と呼びます。ノベルティのなかでも人気が高いもののひとつにカレンダーがあります。企業イメージや理念を反映したカレンダーを配布することで、自社の存在について1年間を通じてステークホルダーにアピールできます。
パッケージ、包装紙
視覚的に印象付けられるパッケージや包装紙も重要なPRツールです。クリスマス後に大量のゴミが問題になっているため、包装紙をやめる企業も出ています。ユニリーバは12月の第2日曜日に、ニューヨークタイムスの見開きページを、かわいいデザインの全面広告にしました。その新聞紙をクリスマスプレゼントの包装紙に使うアイデアで、消費者を驚かせました。
イベント
イベントも企業にとっては重要なPRの場です。富山県にある段ボール会社のサクラパックスは、募金活動とPRを組み合わせて、ユニークな取り組みを行いました。折しも熊本大地震によって熊本城の一部が崩壊し、さまざまな団体が熊本城修復のための募金活動を行っていました。
サクラパックスは、自社の扱う段ボールで、組み立て式のミニチュア熊本城を作成し、2000円で販売、その売り上げをすべて募金に充てました。段ボールで小さな熊本城を作ることを通じて募金活動を行うという取り組みは、富山県にある地方企業の理念を大きく広めることになりました。
PRを実施するなら押さえたい基本の5ステップ
PRは広報単独の活動ではありません。マーケティング担当者やブランディング担当者、マネジメント部門が一体となって、複合的な視点から行う必要があります。では、PRを実施する際はどのようなステップを踏めばいいのか、確認していきましょう。
1.状況分析
業界の状況、市場の状況、競合の状況などデータを集め、分析を行います。自社の優位性を見極め、反対に競合が優位な点を確認します。商品やサービスの場合は、市場と適合しているか、市場のニーズを満たしているかなども含めて検討します。
2.目的の明確化
状況分析をふまえて、PRの目的を設定します。PRの目的は企業や企画内容によって様々あると思いますが「ステークホルダーとの関係構築」という前提を忘れないようにしましょう。
3.ターゲットの絞り込みとコミュニケーションチャネルの決定
PRを伝える対象となるのは誰か、その目的に合致するターゲットを絞り込みます。ターゲットを設定することで、どのチャネルを選ぶべきかが決めやすくなります。
4.KPIの設定
PRの効果を測定するために、KPI(最重要評価指標:Key Performance Indicator)を設定します。
企業や商品、サービスによって、PRの目的や目標は異なります。KPIはそれぞれの目的・目標に合わせて、設定する必要があります。
例1:カバレッジ数(メディアに掲載された数)
メディアに掲載された数をカウントする場合でも、企業が発信したプレスリリースをそのまま転載した記事をカウントする場合と、転載ではなく、しっかり独自の記事として出されたものだけをカウントする場合があります。
プレスリリースを転載した記事も含めてカウントする場合は、メディアへの露出増加を重視している場合です。
独自の記事として出された記事だけをカウントする場合は、メディアが情報を正しく理解した上で伝えてくれているかどうかを重視している場合です。
例2:特定のメディアに特定の切り口で掲載されたかどうか
例えば、日経にSaaSの切り口で取り上げられるなど、自社がどのようにとらえられたいかをベースに考えます。
例3:広告換算値
広告換算値とは、プレスリリースが記事になった場合、そこに広告を出したらどのくらいかかるのか、記事の価値を広告費に換算した費用です。PRの本質とは外れるため、評価しない人もいますが、経営者がPRを信頼しておらず、わかりやすく成果を出さなければいけない場合などには有用な指標となります。
5.PRの効果測定
PRを行った場合は、効果を測定する必要があります。設定したKPIに従って、定量的な測定を行います。PR活動がうまくいったか、いかなかったか、求める目的・目標が達成できたかどうかを分析・評価します。
PRの成功事例
成功したPRはいずれも社会に大きなインパクトを与え、ブランド価値を高めています。ここではその事例を見ていきます。
1.伊藤園「お~いお茶俳句大賞」
PRの成功事例として有名なのが、飲料メーカー伊藤園の「お~いお茶俳句大賞」PRです。伊藤園は1980年代半ばに缶入りの緑茶を売り出したものの、お茶を買って飲むという習慣がなかったために、販売には苦戦していました。
販売当初は「お茶はタダ」という日本人の意識を変え、販促に結びつくような企画を考えだす必要があったのです。そこで生まれたのが、俳句を一般から募集し、受賞作品をパッケージに印刷する、という企画でした。
「なぜ俳句?」と、社内からも期待されていなかった予想に反して、俳句がPRに貢献し「お~いお茶」は前年の2倍以上の売り上げを出し、その後も売り上げを伸ばし続けました。「お~いお茶俳句大賞」は、1989年から2020年までの累計で4千万句近くの俳句が投稿されています。
2.P&G Always #LikeAGirl
消費財メーカーP&Gが販売する生理用品"Always"のPR動画「#LikeAGirl」は、若い女性や男性に「女の子らしく走ってみて」と話しかけるところから始まります。「女の子らしく」という言葉に、くねくねと走る女性や男性。しかし10歳の女の子たちは、自分たちの走り方、ありのままの走り方で走って見せます。
この動画は、誰もが思い描く「女の子らしさ」は、決して生まれついて持っていたイメージではなかったことを浮かび上がらせます。多くの人、女性自身までもが無意識の偏見にとらわれていることを浮かび上がらせるものになりました。このPR動画はわずか1週間で再生回数2,200万回を突破し、94%の女性の賛同を得ました。
3.サイボウズ「がんばるな、日本」
2020年4月に発令された緊急事態宣言は、これまで多くの人が「嫌だけれども仕方がない」とあきらめていた、満員電車での長時間出勤が、必要不可欠ではなかったことを浮かび上がらせることになりました。
出社したい人は出社し、在宅勤務したい人は在宅勤務する、という、個人に合った働き方をソフトウェア開発会社のサイボウズは「がんばるな」という言葉で提案しています。サイボウズのテレワーク推進のPR動画は、公開8日間で10万回を超える再生数を記録しました。
《結論》PRを通じて、社会に価値提供を
PR活動は、即座に売り上げアップをもたらすものではありません。PR活動の成果は時間をかけて浸透していきます。1つのWeb記事や動画が消費者の共感を呼んだり、問題解決に寄与したりすれば、自社と消費者との関係構築に寄与するでしょう。
消費者からのの好意的な反応は、企業の従業員のエンゲージメントやモチベーションを高めることにもつながり、それがより良い活動へとつながっていきます。
PRを行う上では、必ず目標と数値目標を立て、ターゲットとそれにふさわしいコミュニケーションチャネルを選んでください。そして、自社商品や取り組みがどのような価値を提供するのかを理解した上で発信しましょう。