静止画像とテキストによるコンテンツと比べて、動画コンテンツは「伝達できる情報が多い」「ユーザーの関心を得やすい」「ユーザーの記憶に残りやすい」という特徴があります。
また4G、LTEの高速通信エリアが全国に広がり、スマートフォンなどのモバイル環境でも標準画質であればストレスのない動画再生が可能です。今後導入が進む5Gなら、4K画質のストリーミングも快適に再生できるようになるでしょう。
モバイル環境における通信技術の進化、および動画コンテンツの特徴により、今後さらにPR動画が増える傾向にあります。PR動画は「企業のイメージアップや商品の紹介」「自治体による観光誘致」「学校の入学案内」などでも強力な伝達手法として利用されています。
本記事ではこれからPR動画に取り組む企業や自治体などの団体の担当者向けに、PR効果を最大限に活かす動画コンテンツの作成方法や注意点を解説します。
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- PRと広報の違い
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PR動画とは?
企業が作成するPR動画は主に下記に利用されます。
- 事業紹介
- 商品やサービスの販売促進
- ブランド認知
- CSR活動紹介
- 人材採用
一方、地方自治体が作成するPR動画は主に下記に利用されます。
- 観光促進
- 移住促進
総務省は地方自治体による「地方への人の流れの創出に向けた効果的広報」に対して財政支援を行っています。PR動画による広報活動も支援の対象に含まれるため、地方自治体でもPR動画の作成が活況です。
動画コンテンツの特徴の分かりやすい例として、ミュージックビデオがあります。本来の素材は音楽であり、商品はCDや音楽ファイル、ストリーミングです。ミュージックビデオでは音楽の世界観が視覚的に表現され、音楽の魅力をより分かりやすく消費者に伝えています。
つまり、動画コンテンツには以下の特徴があります。
- 伝達できる情報が多い
- ユーザーの関心を得やすい
- ユーザーの記憶に残りやすい
これらの特徴は、PR活動の目的の実現に非常に合致しています。
PR動画が注目される背景
動画コンテンツをストレスなく再生するためには、どこでも高速通信可能な環境や動画配信プラットフォームの整備が必要です。動画再生が可能な環境は、すでに構築されていますが、今後はさらに快適な通信インフラ環境が実現する予定です。
モバイルデバイスの普及
令和元年の情報通信白書によると、スマートフォンのインターネット利用率(59.5%)が、パソコンの利用率(48.2%)より大きくなっています。4G/LTEの全国的普及により、モバイル環境の通信速度が向上し、標準画質の動画であればストレスなく再生できるようになりました。通信環境の向上がスマートフォンやタブレットなどによるインターネット利用率に寄与しています。
5Gの普及
次世代通信規格である5Gは、4G/LTEと比較して桁違いの通信速度を実現する技術です。そのため、5Gを使ったモバイル環境では、4Kなどの高画質動画の再生が可能です。
また多数端末の同時通信や微弱な信号による通信が切断される(パケットロス)問題への対策として、高速通信の安定化対策も盛り込まれました。つまり、動画コンテンツの配信がより活発化する環境が整備されつつあります。
動画配信プラットフォームの整備
動画をインターネット上に配信する際には、YouTubeのような動画配信プラットフォームの利用が一般的です。無料で利用できるYouTubeのほか、セキュリティやマーケティング機能など独自のサービスを提供する有料の動画配信プラットフォームも多くあります。
PR動画の目的
PR動画を作成する際は、目的をひとつに絞って明確にすることが大切です。「とりあえず新商品の紹介をする」などのように目的がぼんやりしている、もしくは「ブランド認知と人材採用の募集」のように複数の目的を盛り込むことは避けるべきです。どちらの場合も、ユーザーにメッセージが伝わらない可能性があります。
目的の設定は現状把握からです。例えば自治体の移住促進のPRでは「現状0人から10人に増やしたい」ケースと、「現状10人を20人に増やしたい」ケースで、コンテンツの内容が大きく変わります。
目的が決まったらコンテンツ作成、配信、効果測定などのスケジュール策定を行い、合わせて予算を確保します。なお、PR動画に関する全ての作業には、目的がベースになります。事前に関係者全員で目的を共有化しておくことが大切です。
PR動画を活用するメリット
PR活動には、商品の価値など伝えたいことをユーザーに理解してもらい、良好な関係作りを形成する狙いがあります。
動画コンテンツの特徴は下記の通りです。
- 伝達できる情報が多い
- 多様なデバイスに対応できる
- ユーザーの記憶に残りやすい
この特徴はPR動画の狙いとマッチしています。ここからはそれぞれのPR動画を作成することのメリットを詳しく説明していきます。
伝達できる情報が多い
動画の中に文字やナレーションを入れ、視覚と聴覚の双方を使ってユーザーに情報を伝えることができます。また、音楽や映像の工夫により、イメージや雰囲気も表現できます。ユーザーの関心を得ながら、静止画像やテキストによるコンテンツより多くの情報を理解しもらえる点が動画の特徴です。
多様なデバイスに対応できる
モバイル環境における高速通信の実現により、パソコンだけでなく、タブレット、スマートフォンでの動画閲覧が可能です。今日ではドコモ、au、ソフトバンクそれぞれの4G/LTEのサービスエリアは人口カバー率98%を達成しており、ほぼどこでも動画再生が可能です。
またPR動画を再生する端末として、公共施設や大型施設を中心にデジタルサイネージ(電子看板)を見かけるようになりました。デジタルサイネージは、さまざまな映像や文字を表示する端末として効果的な場所でPR動画を流すのに活かせます。
ユーザーの記憶に残りやすい
心理学におけるメラビアンの法則によると、コミュニケーションをとる際には、視覚情報55%、聴覚情報38%、言語情報7%で印象が決まります。PR動画にあてはめて考えると、文字だけの情報伝達より、映像や音声の効果が大きく、強い印象を与えることで記憶に残りやすいことが分かります。
PR動画の作り方
PR動画は短すぎると伝えたい情報が少なくなり、長すぎるとユーザーに途中で離脱される可能性があります。そのため、PR動画の長さは数分程度が平均的です。
PR動画の目的とターゲット、テーマにもとづき、数分間のシナリオを検討します。離脱されないためのキャッチーなファーストシーン、テンポのよい複数のシーンでユーザーの興味をそそり、ラストシーンで上手く着地させて、ユーザーにしっかりとメッセージを伝えます。
最近は動画作成ツールが充実しており、誰でも動画が作成できるようになりました。より高い出来栄えを求めるならシナリオ作りから動画撮影、編集、音楽、ナレーションの挿入までプロに依頼するとよいでしょう。
動画コンテンツの場合、動画の内容を短く説明したテキストとサムネイル画像の見栄えにも配慮して、まずはユーザーに興味をもってもらう、つまり再生してもらう工夫が大切です。例えば、Google検索で「小林市 動画」で検索すると、以下のようなリッチスニペットが表示されます。
動画を見てほしいユーザーはどのようなキーワードで検索しそうなのかを考え、最適だと思われるテキストを設定してみましょう。
PR動画の成功事例
ここからは下記のそれぞれのPR動画を事例としてご紹介します。
- 大企業(JR西日本)
- 中小企業(株式会社Voicy)
- 自治体(宮崎県小林市)
- 教育機関(園田学園女子大学)
- 地域コミュニティ(丸の内仲通りアーバンテラス)
事例1. JR西日本 観光列車「○○のはなし」
山口県(萩、長門、下関)を走る観光列車の紹介動画です。明治維新において、山口県は日本と西洋をひき合わせるきっかけとなった歴史舞台のひとつです。
歴史をテーマにしたコンセプトをもとに設計された観光列車に乗る楽しさを動画で伝えています。観光列車に乗る体験を画像やテキストだけで伝えるのは難しいですが、動画ではしっかりと表現されています。また、挿入された音楽が「日常から離れて旅行したい」気分を演出しています。
事例2. 株式会社Voicy「Voicy’s Vision」
音声技術のサービスを提供するVoicy社のPR動画です。Voicy社が開発を進める「音声メディア」や「音声プラットフォーム」を活用して、企業のコミュニケーション、観光案内、地方創生、ファンコミュニティ支援など、さまざまな分野で音声による価値創造ができることをPRしています。
動画を見た後には「音声メディアで何ができるのかもっと詳しく知りたい」と思わせるストーリーになっています。
事例3. 宮崎県小林市「移住促進PRムービー」
宮崎県小林市の移住促進のPR動画です。小林市の森や水、星、食、人について、それぞれ美しい映像で伝えています。フランス語のようなナレーションが実は地元の西諸弁(にしもろべん)というユニークさが話題になりました。
ちなみに、動画の最後までネタばれしないように、ナレーション、標準語字幕、西諸弁字幕の作り込みに相当苦労されたそうです。
事例4. 園田学園女子大学「学校紹介プロモーションビデオ」
園田学園女子大学の学校紹介プロモーションビデオです。学生自身が元気な声で、園田学園女子大学に通うことが「国家試験対策」「将来の夢」の助けになることなどを紹介しています。部活や学部ごとのPR動画も用意されており、本動画よりさらに詳しい情報を知りたい人向けのニーズにも応えています。
事例5. 丸の内仲通りアーバンテラス×東京ミュージカルフェス「PR動画」
毎年丸の内仲通りアーバンテラスで開催される東京ミュージカルフェスのPR動画です。毎日ストレスを抱えた女性が、丸の内仲通りアーバンテラスを訪れることで非日常的な体験をして、新しい人生の楽しさを知るといったストーリーです。動画を視聴したユーザーは、思わず丸の内仲通りアーバンテラスに行きたくなります。
PR動画作成時に重要なポイントは?
PR動画において最も重要なポイントは「誰に何を伝えたいか」です。そのためには、動画作成の目的をしっかりと関係者の間で共有することです。
目的が共有されていないと関係者との連携が上手くいかず、不明瞭なメッセージのコンテンツになってしまいます。最近はPR動画が多く配信されるようになり、明確なメッセージ性のないPR動画はアクセス数を伸ばせないという結果になりがちです。
また、動画を最後まで見てもらうシナリオ作りも大切です。映像や音声でテンポよく情報を提供して、最後まで飽きさせない工夫に注力します。映像とBGMのマッチングによると心地よい雰囲気作りも配慮します。
多くの人にPR動画を見てもらうためには、ユーザーが拡散したくなるアイデア出しが大切です。アイデア出しのために、ユーザー目線で多くのPR動画を見てみましょう。ユーザーとして心動かされている様子を観察・分析することにより、さまざまな工夫が見出せます。
PR動画作成時の注意点
PR動画は作成して終わりではなく、ターゲットに届けなければ意味がありません。PR動画の広め方の検討についても十分に検討しましょう。いくら時間やコストをかけて出来映えのよい動画コンテンツを作成したとしても、自社サイトに掲載しただけでPRが不足していれば、多くのユーザーに視聴してもらえません。
そこでPR動画をターゲットユーザーの目に触れるようにする手立てが必要です。例えば自社でFacebookページを運営していて、多くのファンがいれば動画を投稿して見てもらいましょう。Facebook上での拡散も期待できます。ファン数が少なければ広告配信を検討しましょう。
自社サイトの掲載、SNSやプレスリリースなどを活用して、PR動画の露出経路を検討しましょう。加えて、アクセス数、離脱までの時間などの効果測定を行い、次のPR動画作成のフィードバックも実施しましょう。
伝えたい相手を明確にイメージして作成に取り組もう
「少しでも多くの方に見ていただきたい」という考え方だと、ともすると最大公約数的になり、結果的に誰にも響かない動画になってしまう可能性があります。対象となるユーザーを明確にイメージした上で、どう関心を持ってもらえるのかを考えましょう。
ユーザーの関心を惹きつける工夫を知るには、すでに成功を収めているPR動画を視聴することが一番の早道です。本記事ではPR動画の事例を5つピックアップしています。PR動画をユーザーの視点で見ていただくと、本記事で説明した下記のポイントを体感できると思います。
- 目的を明確にすることの大切さ
- PR動画のメリット
- 離脱されないシナリオ作りの大切さ
- 拡散を期待したコンテンツのヒント
PR動画のコンテンツ作成は注力すべき作業ですが、作成後のPR動画の露出経路の検討と実施、再生回数などの効果測定、次のPR動画作成へのフィードバックも忘れてはいけません。PR動画による効果をしっかりと出すためにすべての作業をスケジュールに盛り込んでおきましょう。