CRMとは、ひとつのシステムでさまざまな顧客情報を一元管理するためのツールです。「顧客関係管理ツール」とも呼ばれています。
【不動産業界向けDX推進ガイド】 CRMの活用で業務効率化・成果最大化を実現するには
不動産DXがもたらすメリットを具体的な改善策と導入事例で学びましょう
- 不動産DXとは
- 不動産業界の主な課題と改善策
- HubSpot活用によるDX化で不動産業務を改善するには?
- 不動産業界のHubSpot導入事例
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株式会社LIFULLと不動産業界の6社が共同で行った 不動産業界のDX推進に対する実態調査で、DXに取り組む予定の企業の間で特にCRMが積極的に活用されていることがわかりました。高単価で検討期間が長くなる傾向が強い不動産業界では、それぞれの顧客にフォーカスしたOne To Oneマーケティングが有効で、その実現にはCRMが欠かせません。
本記事では、不動産業界におけるCRMの重要性や、おすすめのCRMを紹介します。CRMによって顧客情報を最大限に活用し、マーケティングや営業の質を高めましょう。
不動産業界でCRMの導入が有効な理由
不動産業界でCRMの導入が有効な理由として、流入経路の多様化や購買行動の変化などがあげられます。移り変わるビジネス環境に柔軟に対応するには、CRMを活用して顧客一人ひとりのニーズや行動傾向、嗜好などを正確に把握することが大切です。
ここでは、不動産業界でCRMの重要性が高まっている背景や要因について詳しく解説します。
情報収集手段の変化や流入経路の多様化に対応するため
不動産業界の従来の流入経路は、マス広告や折込チラシが主流でした。しかし、インターネットが普及した現代では、情報収集の手段が大きく変化しています。
国土交通省 住宅局の 住宅市場動向調査報告書(2022年度)によると、分譲戸建住宅取得世帯と分譲集合住宅取得世帯のうち、インターネットを通じて情報収集を行う世帯の割合が8割近くを占めています。
加えて、ホームページや不動産ポータルサイト、SNS、メールマガジンといったチャネルが誕生し、流入経路が多様化しています。顧客行動の変化に合わせてオンラインの流入経路を幅広く構えておかなければ、機会損失につながるといえます。
CRMを活用すると、顧客の行動傾向をもとに流入経路を割り出せます。アナログ・デジタルを問わず、顧客一人ひとりの流入経路をシームレスに分析することで、自社にとって最適なチャネル戦略がわかります。
購買行動の変化に対応するため
現代では、インターネットを通じてユーザーがニーズに合った物件を手軽に探せる環境が整いつつあります。
それに伴い、ユーザーのニーズも多様化・複雑化しています。例えば、物件を探す際の条件として、家賃や部屋の広さ、駅からの距離に加え、オートロックの有無やペットの可否など、細かく指定するケースも珍しくありません。
このようなユーザーのニーズを理解するためには、CRMのような顧客情報を一元管理できる仕組みが不可欠です。さまざまな顧客の属性や行動傾向、フィードバックなどを分析することで、顧客単位あるいはセグメント単位で正確なニーズをつかめます。購買行動の変化を素早く把握し、柔軟に施策を変更することも可能です。
顧客満足度の低下を防ぐため
不動産業界では古くからの慣習を重んじる傾向にあり、マーケティング・営業活動が属人化している場合も多々あります。これは見込み客や顧客とのやり取りを特定の担当者しか把握できていない状態です。
休暇や離職などで担当者が不在になると、顧客とのコミュニケーションがうまくいかず、満足度が低下する可能性があります。
CRMが導入されている組織では、問い合わせ履歴や顧客の状況、コミュニケーション履歴といった詳細情報をすべてシステム内に蓄積できます。担当者が変わっても、次の担当者がスムーズに業務を引き継げるのがメリットです。
また、過去のやり取りのなかには、見込み客や顧客の意見、フィードバック、提案などが含まれています。これらの情報を分析することで、商品やサービスの改善に活かせるでしょう。
不動産業界に合ったCRMを選ぶポイント
不動産業界に合ったCRMを選ぶ際の比較ポイントは次の通りです。
- 機能性
- 不動産業界に対する専門性や実績
- 外部システムとの連携範囲
- セキュリティ
- サポート体制
それぞれのポイントから重視すべき点を明確にすることで、自社にとって最適なCRMを選びやすくなります。
機能性
CRMは顧客情報の一元管理に特化したツールですが、製品によっては、SFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)の機能も搭載されています。
このようなツールには、顧客情報を管理するための機能だけでなく、案件管理や営業分析、ワークフロー、スコアリングなど、さまざまな機能が備わっています。また、物件管理やWeb接客といった不動産業務に役立つ機能を搭載したCRMもあります。
自社にとって必要な機能を洗い出すために、まずは現状の課題をもとに要件定義を行いましょう。マーケティングや営業の現場で抱えている課題をヒアリングするほか、ベンダーに他社の事例を問い合わせるのも一案です。
不動産業界に対する専門性や実績
CRMを選ぶ際は、不動産業界での導入実績が豊富なツールに絞り込むことをおすすめします。
不動産業界での導入実績が豊富であれば、自社と事業形態が近い企業の当初の課題やCRMの活用方法、導入時に注意したポイントなどを把握できます。そのようなベンダーは業界特有の事情にも詳しいため、より適切なサポートやアドバイスを得られます。
外部システムとの連携範囲
CRMの多くは外部システムとの連携に対応しています。
例えば、カレンダーアプリと連携することで、商談スケジュールと顧客情報を紐付けられます。BIツールとの連携では、CRMに蓄積された顧客情報を活用して、データ分析やレポートへの出力が可能です。
SUUMOやHOME'Sといった不動産ポータルサイトと連携できるツールもあり、CRMと不動産ポータルサイトの顧客情報を紐付けたり、フォローメールを送る際に顧客情報を自動で読み込んだりと、さまざまな活用が可能です。
連携できる外部システムの数が多いほど、CRMの機能を拡張しやすくなるため、ツール選定の基準のひとつにすると良いでしょう。
セキュリティ
不動産業界では、氏名や年齢、住所、年収といった顧客の個人情報を扱うケースが多いため、セキュリティレベルの高いCRMを選ぶことが重要です。万が一、機密情報が漏えいすると、信用失墜や損害賠償などのトラブルに発展しかねません。
CRMのセキュリティ機能として代表的なのは、データ暗号化や多要素認証、アクセス制御、ログ監視などです。セキュリティ認証資格の有無やベンダーの実績を確認することも大切です。
サポート体制
CRMを導入・運用する際は、さまざまな疑問や不明点が発生するものです。わからないことがあった場合に、親身になって相談に乗ってくれる窓口があれば、安心してツールを利用できるでしょう。
サポート体制はベンダーによって異なり、電話やメール、チャットなど幅広い窓口を用意しているベンダーもあれば、メールのみでしか問い合わせを受け付けていない企業もあります。不動産業界に関する知見の深さもポイントになるでしょう。
CRMの運用経験がない場合は、導入・運用サポートを受けられるベンダーを選ぶのも方法のひとつです。KPI・ロードマップ策定支援や初期設定サポート、運用実績の定期確認など、充実したサポートを有償で受けられるのがメリットです。
不動産業界におすすめのCRM8選
不動産業界向けのおすすめCRMには、次のような種類があります。
それぞれの特徴や導入メリットを解説します。
1. Sales Cloud
出典: Sales Cloud
Sales Cloudは、CRMとSFAの機能が統合されたツールです。顧客情報の一元管理のほか、SFAの営業活動管理や商談管理、売上予測などの機能が備わっています。マーケティング活動だけでなく、営業活動で取得した詳細な顧客情報も1つのシステムに集約できるのが強みです。
また、「Einstein(アインシュタイン)」と呼ばれるAI機能を利用すると、見込み客の優先順位付けや分析データの抽出などの作業を自動的に実行できます。マーケティングや営業の効率性を高めたい場合におすすめです。
- 【価格】
- Starter:月額3,000円/ユーザー
- Professional:月額9,600円/ユーザー
- Enterprise:月額19,800円/ユーザー
- Unlimited:月額39,600円/ユーザー
- Einstein 1 Sales:月額60,000円/ユーザー
- 【主な機能】
- 顧客情報の一元管理
- 営業活動管理
- 商談管理
- 売上予測
- 営業分析
- 【公式サイト】https://www.salesforce.com/jp/sales/
2. HubSpot
出典: HubSpot
HubSpotは、無料から導入できるCRMツールです。CRMの基本機能のほか、チャットツールやAI搭載のメール生成機能、さらにはレポート作成ツールや取引パイプライン機能など、営業・マーケティング活動を効果的に進めるうえで役立つ機能が充実しています。CRMツールに蓄積された情報をもとに、パーソナライズされたコンテンツ提供ができることもHubSpotの強みです。業種別に導入事例を検索することも可能で、CRMの活用手段を考える際のヒントになるでしょう。
HubSpotにはほかにも、SFAやMA、CMS(コンテンツ管理システム)、問い合わせ管理システムなどのツールがあり、CRMをベースに複数のシステムを組み合わせられるのが特徴です。最新の顧客情報をもとに顧客対応やマーケティング活動を展開することで、顧客体験の向上にもつながります。
- 価格
- 無料プラン
- Starter:月額1,800円/1シート
- Professional:月額140,400円/5シート
- Enterprise:月額516,000円/7シート
- 主な機能
- 顧客情報の一元管理
- レポート・ダッシュボード
- メッセージング分析
- SFAやMAのシステム拡張
- 公式サイトhttps://www.hubspot.jp/
3. Zoho CRM
Zoho CRMは、CRM・SFA・MAの機能が統合されたツールです。顧客情報の一元管理に加えて、商談管理や営業分析、メール配信、ワークフローなど、営業・マーケティングに関するさまざまな機能をワンストップで利用できます。Web接客ツールや問い合わせ管理システムなども展開されており、Zoho CRMとの連携が可能です。
Zoho CRMはさまざまな業種で採用されている汎用型CRMですが、不動産業界や建設業界でも導入されています。自社に近い事業形態の導入事例を参考にできるのがポイントです。
- 価格
- スタンダード:月額1,680円/ユーザー
- プロフェッショナル:月額2,760円/ユーザー
- エンタープライズ:月額4,800円/ユーザー
- アルティメット:月額6,240円/ユーザー
- 主な機能
- 顧客情報の一元管理
- 商談管理
- 営業分析
- ワークフロー
- 公式サイト
4. eセールスマネージャー Remix Cloud
出典:eセールスマネージャー
eセールスマネージャー Remix Cloudは、CRMとSFAの機能が統合されたツールです。案件管理やスケジュール管理、地図、名刺OCRなど、効率的に営業活動を行える機能が充実しています。
「AIコンシェルジュ」の機能を利用できるのも特徴で、PDFや画像などのファイルをシステム内にドラッグ&ドロップすると、文書の内容を自動的に項目に反映してくれます。データ入力や書類作成の機会が多い不動産業界でも、工数を大幅に削減できるのがメリットです。
- 価格
- スケジュールシェア:月額3,000円/ユーザー
- ナレッジシェア:月額6,000円/ユーザー
- スタンダード:月額11,000円/ユーザー
- 主な機能
- 顧客情報の一元管理
- 案件管理
- 日報管理
- スケジュール管理
- 公式サイトhttps://www.e-sales.jp/
5. Mazrica Sales
Mazrica Sales(旧Senses)は、CRM・SFA・MAの機能が搭載されたツールです。顧客情報の一元管理だけでなく、案件管理や行動管理、メール配信、コンテンツ管理などの機能を利用できるため、営業とマーケティングの両部門で活用できます。
Mazrica Salesの特徴的な機能のひとつとして、案件ボードがあげられます。リード創出・アプローチ・ヒアリングといったプロセスごとに、案件内容や担当者などが一目でわかるカンバンを配置できます。対応する顧客数が多く、案件管理が煩雑化しやすい不動産業界でも、営業活動のリアルタイムな進捗状況を確認しつつ、即座にフォローアップできるのがメリットです。
- 価格
- Starter:月額27,500円/5ユーザー
- Growth:月額110,000円/10ユーザー
- Enterprise:月額330,000円/20ユーザー
- 主な機能
- 顧客情報の一元管理
- 案件管理
- 名刺管理
- メール配信
- 公式サイトhttps://product-senses.mazrica.com/
6. kintone
出典:kintone
kintoneは、部門を問わず、さまざまな業務アプリを自由に組み合わせて、独自のプラットフォームを構築できるツールです。
顧客管理アプリを導入すればCRMとして活用できるほか、案件管理やタスク管理、受発注管理、契約管理など、幅広い種類の業務アプリが存在します。マーケティングや営業だけでなく、販売管理や人事、経理といった領域でも活用できるため、組織全体を通じた情報共有に役立ちます。
業務アプリは部署と業種の2タイプから検索が可能です。不動産業界で検索すると、作業依頼申請や不動産物件マスタ、物件契約管理といった業務アプリがヒットします。
- 価格
- ライトコース:月額1,000円/ユーザー
- スタンダードコース:月額1,800円/ユーザー
- ワイドコース:月額3,000円/ユーザー
- 主な機能
- 顧客管理
- 案件管理
- タスク管理
- 日報作成
- 公式サイトhttps://kintone.cybozu.co.jp/
7. いえらぶCLOUD 顧客管理システム
出典:不動産向け顧客管理システム [CRM]|いえらぶCLOUD
いえらぶCLOUD 顧客管理システムは、不動産業界に特化したCRMです。顧客情報管理の基本機能をベースに、物件管理やWeb接客、Web内見予約、物確自動応答といった不動産業界向けの機能が搭載されています。
サポート体制が充実しているのもポイントで、ホームページを作成したい場合は、4,000サイト以上の制作実績を活かしてサポートを行ってくれます。また、専門スタッフによる定期コンサルティングや、電話やビデオ通話、訪問などに対応したサポート窓口が用意されています。
- 価格
- 要問い合わせ
- 主な機能
- 顧客情報の一元管理
- 物件管理
- 不動産コンバーター
- Web接客
- 公式サイトhttps://ielove-cloud.jp/service/crm/
8. nomad cloud
nomad cloudは、不動産業界向けの豊富な機能を搭載したCRMです。マーケティングや営業で取得した顧客情報を1か所に集約できるほか、自動追客や物確自動応答、内見予約カレンダーといった機能を利用できます。ビデオ通話やSMS、LINEなどのコミュニケーション機能が充実しているのも特徴です。
さまざまな不動産ポータルサイトと連動しており、反響通知をnomad cloud内でまとめて確認できます。反響が発生するとスマートフォンに通知を送信できるため、対応漏れや見逃しのリスクを減らせます。
- 価格
- 要問い合わせ
- 主な機能
- 顧客情報の一元管理
- 反響対応漏れ管理
- 自動追客
- 物確自動応答
- 公式サイトhttps://lp.itandibb.com/crm/
不動産業界にCRMを導入して顧客と良好な関係を構築しよう
不動産業界向けのCRMには、さまざまな種類があるため、選定基準や比較ポイントを明確にしたうえで適切なものを選ぶことが重要です。
HubSpotは、最新の顧客情報をもとに営業・マーケティング活動を効果的に展開できるツールで、不動産業界での導入実績も数多くあります。
例えば、中央日本土地建物株式会社は、HubSpotを導入してマーケティング基盤の構築や、Web広告単価の削減といった効果を生み出しています。HubSpotを活用すれば、顧客情報管理機能により、タッチポイントの細かいルートまで可視化することが可能です。無料プランも用意されているので、スモールスタートにも対応できます。