CRMとは「顧客との関係性を管理するツール(もしくはシステム)」という意味で使われることが多い言葉です。
しかし本来、CRMとはツールそのものを指す言葉ではなく、概念を指します。
CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字をとった言葉であり、直訳すると「顧客関係管理」です。
もう少し詳しくいえば「顧客とのやりとりの情報を集約して管理する」という概念を指します。


このCRMの概念を採り入れることで、顧客を中心に考えたビジネスを展開できます。
そして、顧客や見込み客から選ばれ続ける企業を目指すことができます。
本記事では、全世界で12万社以上に導入されているCRMツールを提供する当社HubSpotが、CRMの基本機能やSFAとの違い、導入メリット、導入を成功させるためのコツを解説します。
「まずCRMがどのようなものなのかを知りたい」「CRMツールの導入を検討したい」と考えている方だけでなく、CRM導入済みで更に活用するためのヒントを探されている方もぜひ参考にしてみてください。
目次
- CRMとは?
- CRM=顧客関係管理
- 属人的になりやすい顧客情報を、全社共有の「情報資産」に変える
- CRMの概念を採り入れると、「お得意さま」が生まれる
- CRMツール・SFAツール・MAツールの違い
- CRMツールの主な機能
- CRMツールを活用する5つのメリット
- CRMの概念が注目されている背景
- 顧客と長期的に関わり、本質的な課題と向き合える企業が選ばれる時代
- 営業がもつ顧客情報のブラックボックス化を防ぐために
- CRMを推進するためのツール
- CRMツール導入の成功事例
- CRMツールの導入で失敗するケース
- CRMツールの導入前に確認したい13のチェックリスト
1.CRMとは?
1-1.CRM=顧客関係管理
ここであらためて、CRMという言葉を定義しておきましょう。
冒頭でお伝えしたとおり、CRMとは「Customer Relationship Management」という英語の頭文字をとった言葉で日本語では「顧客関係管理」と訳されます。つまり「顧客とのやりとりの情報を集約して管理する」という概念を表す言葉です。
たとえば、あなたが前任の営業担当者から、古くからの「お得意さま」を引き継いだとします。そのとき、そのお得意さまに関する情報があるのとないのとでは、コミュニケーションのしやすさが大きく変わってきます。
前任の担当者がそのお得意さまと重ねてきたやりとりの情報が残されている場合、あなたはその情報を参考にしてコミュニケーションできるでしょう。
相手の価値観はどういうものなのか、相手は自社商品のどんな点を気に入ってくれているのか、そういった情報がわかっていれば、お得意さまと以前と変わらぬやりとりが実現できます。

しかし、もしその情報が残されていなければ、お得意さまとのコミュニケーションを手探りでおこなうことになるかもしれません。
また、不用意な行動によっては、長年の縁がそこで終わってしまう可能性があります。
この話はお得意さまだけに限りません。
受注につながりそうな見込み客がいたとして、その見込み客とのコミュニケーションを全社で共有していない場合、誤って何度も営業をかけてしまうかもしれません。
その結果、相手に悪い印象を与えてしまい、失注につながるどころか、「あそこの営業は顧客のことを考えていない」とクチコミにも悪い影響が出る可能性があるのです。
そんな事態を防ぐためには、顧客とのコミュニケーションに関する情報を全社的に一元管理すべきです。そうしてCRMの概念が生まれました。
顧客とのコミュニケーションの履歴を記録し続ければ、一人ひとりの顧客に最適な対応をとれます。その結果、顧客や見込み客からの印象は良くなり、長期的な関係が生まれるのです。
「顧客や見込み客との良好な関係をつくり、育ててゆく」、それこそがCRMを活用する目的なのです。
1-2.属人的になりやすい顧客情報を、全社共有の「情報資産」に変える
顧客とコミュニケーションをとるすべてのメンバーが、そのやりとりの記録を同じ場所に集約すれば、その情報は企業の「情報資産」となります。
その情報資産があれば、一人ひとりの顧客に合わせた対応を全社的に実現でき、顧客に好印象を与えるコミュニケーションが実現できます。
ここで、ある営業の現場で実際にあった事例を紹介しましょう。
あるとき、クラウド型のSNSマーケティングツールを販売する会社に、「御社のツールを導入したい」という問い合わせがありました。
営業担当者が対応し、30分間の商談をおこなったものの、そのときは残念ながら相手のニーズに合致せず、受注につながりませんでした。
通常なら、案件を失注した場合はそこで話が終わりがち。
しかしその営業担当者は、問い合わせの内容や経緯、問い合わせの前にどんな資料をダウンロードしていたかなど、その相手とのやりとりの内容をしっかり記録し、管理していました。
半年後、営業担当者は、同じ相手がまた資料をダウンロードしていることに気付きます。さらにはツールの紹介ページを何度も見てくださっているようです。
「うちのツールに再び関心をもってくださったのかな?」そう思った担当者は、相手にメールを送ることにしました。
「以前は当社ツールをご検討いただきありがとうございました。
もし今もSNSマーケティングでお困りでしたら、お力になれるかもしれません。
必要であれば、ご遠慮なく仰ってください」
すると、相手から返信が届きました。
その営業担当者が推測したとおり、相手はツールの導入を再度検討していたのです。
その後、あらためて商談を進めることになりました。
商談は別の営業担当者が対応することになりましたが、元の担当者が以前にヒアリングしていた情報を活用できたため、商談はスムーズに進みました。
そのスムーズさに相手は驚き、この会社なら信頼できると感じ、ツールを契約してくれたのでした。
この事例は、当社HubSpotの営業担当者と顧客の間で実際にあった出来事です。
一般的には、失注した案件の情報が社内に詳細に共有されることはほとんどありません。
それ以前に、営業担当者は、自分が対応した顧客の情報を、自分にしか確認できない状態で管理している場合も多くあります。
そうなってしまうと、もしかすると将来的に契約につながっていたかもしれない案件が、ブラックボックス化してしまうのです。
だからこそ、CRMの考え方を採り入れ、属人的になりやすい顧客情報を一か所に集約し、企業の「情報資産」として見える化しておくことが重要なのです。
1-3.CRMの概念を採り入れると、「お得意さま」が生まれる
CRMの概念を採り入れれば、ひとりの顧客情報を常にアップデートしていくことになります。
その顧客が何に興味を示したのか?
逆に、何に興味を示さなかったのか?
その情報がアップデートされ続けることで、顧客に最適化した提案やコミュニケーションが可能となります。一人ひとりの顧客に最適な対応をとり続ければ、顧客はあなたの会社を信頼し、いわゆる「お得意さま」になってくれるでしょう。
お得意さまとは、ロイヤリティの高い顧客のことを指します。
このロイヤリティの高い顧客は、自分が支持する企業やブランドの商品を積極的に導入するだけでなく、周囲の人にそのブランドや商品を積極的に勧める傾向があります。
お得意さまが増えることで、自社ビジネスは加速度的に成長するでしょう。
2.CRMツール・SFAツール・MAツールの違い
ここで、CRMツールと合わせて紹介されることが多い、「SFAツール(通称:SFA)」や「MAツール(通称:MA)」との違いを確認しておきましょう。
特に「SFAツール」についてはCRMツールと似ている部分が多いため、明確な線引きが難しくなっているのですが、役割は明確に異なります。
●SFA(Sales Force Automation):営業担当者を支援するためのツール
SFA(営業支援システム)は、顧客情報の管理、商談状況の可視化、営業進捗を管理するダッシュボードや日報機能、請求書発行(もしくは請求書ツールとの連携)機能が実装されている、営業担当者の業務を支援することを目的としたツールです。
CRMとSFAは、どちらも顧客データを管理できるという点において共通していますが、CRMはどの部門でも利用できる想定なのに対し、SFAは営業部門での利用がメインとなります。(もちろん、マーケティング部門やその他部門でSFAが導入されるケースもありますが、基本的には営業部門での利用がほとんどです)
●MA(Marketing Automation):マーケティング関連作業を自動化するツール
MAは、見込み客の醸成から商談に至るまでの一連のマーケティング活動に関わる施策を自動化する仕組みや考え方を指し、それを実行するためのシステムをMAツールと呼びます。
MAツールを使うと、見込み客の状況に合わせて個別最適化した施策を実施しやすくなります。会員登録したばかりの方向けのステップメールや、休眠顧客向けの情報提供メールの送信作業を自動化したり、自社サイトの料金ページを閲覧した方限定のオファーを出したりするなど、顧客が欲しい情報を欲しいタイミングに合わせて提供できます。このように、MAツールを活用して個別最適化したマーケティング施策を自動化するにはCRMで顧客情報を管理する必要があるため、両者は切り離せない関係にあると言えます。
以下の図は、当社が考えるCRM・MA・SFAの役割の違いを表したものです。

上記の図のように、CRMは各部門横断で顧客情報を管理するために利用し、CRMの情報を基盤として、マーケティング部門ではMA、営業部門ではSFAといったように、各部門に特化したツールを導入するのが理想的な状態だと当社は考えています。
3.CRMツールの主な機能
では、CRMツールは一般的にどのような機能を有しているのかを見ていきましょう。
機能1:顧客情報の管理機能
CRMの基本的な機能は、顧客や見込み客の「顧客情報」を管理する機能です。
CRMツールを使うと、先にあげたように、見込み客や顧客の「属性」と「購買履歴」の情報を一か所で管理できます。
また、入力された情報はCRMツール上でリアルタイムで共有されるため、チームや担当者が見込み客や顧客の変化をすぐにキャッチアップし、見込み客や顧客の状況に合わせた対応ができます。
機能2:顧客のサポート機能(カスタマーサポート機能)
CRMツールには、顧客の「属性」「購買履歴」の情報に、メールや電話で顧客とやり取りした内容をひもづけて記録できます。
そのため、顧客から問い合わせがあった場合に、顧客の個人情報や顧客とのやりとりの履歴にアクセスし、どのような顧客なのかをチーム内の誰もが短時間で把握できます。
機能3:マーケティング機能(顧客にアプローチするための機能)
顧客や見込み客を、商品の購入履歴や購入前の行動などに応じてリスト化し、特定の顧客にのみ自動でメールを送信したり、顧客や見込み客の状態を理解した上で電話をかけてアプローチしたりできます。
たとえば、営業メールを配信する際に、すべての見込み客へ配信すると、特定の人にとってはすでに知っている不必要な情報を送信してしまう可能性があります。
そのようなことがないよう、「すでに資料をダウンロード済み」といった特定の条件を満たした見込み客を除外して営業メールを送ったり、逆に資料をダウンロード済みの相手には、商品に関してより具体的な活用方法を記載したメールを送るといったことが可能になります。
機能4:営業支援機能
顧客や見込み客と良好な関係をつくるためには、相手に合った営業提案をすることも大事です。
あとで詳しく説明しますが、CRMと似ているツールに、「SFA(Sales Force Automation)」と呼ばれる「営業支援ツール」があります。
このツールには、日報をカンタンに入力しチーム内で共有する機能や、営業活動のスケジュールや担当者のタスクを管理できる機能など、営業活動をサポートする機能が備わっています。最近のCRMツールにも同種の機能をもつものが増えています。
以上のように、CRMツールにはCRMを進める上での便利な機能がふんだんに用意されています。
ではここであらためて、CRMツールを活用するメリットを詳細に整理しておきます。
4.CRMツールを活用する5つのメリット
CRMツールを活用する大きなメリットとして、以下の5つのメリットがあります。
1.顧客情報や取引情報を効率よく記録できる
各担当者が、別々の場所に顧客情報を管理したり、それらの情報を口頭やメール、Excelで共有していると、情報の管理漏れが発生しやすくなります。
CRMツールを使うと、顧客情報と一緒にメールや電話でのやり取りの内容や、自分たちで残したメモなども一つの場所で管理できます。
また、各担当者がもつ顧客情報を一か所で管理することで、同じ情報を重複して入力する手間を省いたり、入力漏れがある項目をすぐに確認できます。
- 2.顧客とコミュニケーションをとるための機能が充実している
CRMツールには、フォームを柔軟に作成できる機能があり、「問い合わせ」「資料請求」「イベントのお申し込み」など様々なフォームを作ることができます。
また、どのフォームからお問い合せがあったのか、どこからアクセスされたのかという流入元別に顧客情報を自動で分類することもできます。
さらには、特定の条件に合った見込み客や顧客に限定してメールを送ることもできます。
- 3.他部署との連携がしやすい
- 他部署との連携をとるとき、利用しているツールが異なると、情報の受け渡しに苦労します。
全社的に同じCRMツールを利用していれば、ツールの画面にアクセスするだけで、全部署で同じ情報を閲覧できるだけでなく、情報の受け渡しもカンタンです。
- 4.さまざまな環境からアクセスできる
- クラウド型のCRMツールの場合、PCだけでなく、スマートフォンからのアクセスにも配慮されたものが多くあります。
たとえば、外出先での営業活動が終わったあとも、オフィスに戻らず、記憶が新しいうちに情報を入力することで、精度の高い顧客情報を記録できます。
また、外出先にて顧客からの問い合わせ対応が必要になったとしても、その場で顧客情報を確認できるため、素早く的確なレスポンスを実現できます。
- 5.バックアップをとる必要がない
- クラウド型のCRMツールの場合、入力した情報はインターネットサーバー上に保存されるため、バックアップを取る必要がありません。
5.CRMの概念が注目されている背景
2-1.顧客と長期的に関わり、本質的な課題と向き合える企業が選ばれる時代
先ほど、お得意さまをつくることが重要だという話をしましたが、お得意さまをつくることは容易ではありません。
とくに、市場に商品やサービスがあふれ、顧客がさまざまな手段で情報収集できる現代においては、お得意さまどころか、二度三度と取引してもらえる関係を構築するのもなかなか難しいものです。
顧客側の「選択の幅」が広がっている昨今、以前から取引している顧客がいたとしても、その顧客に継続して取引してもらえるとは限らない状況が起きています。
顧客との取引関係を維持するためには、あなたの会社が顧客の課題を本質的に解決できる存在であり続ける必要があります。
表面的に見えている課題だけでなく、その奥に潜む本質的な課題を見つけ出し、把握し、解決する。
それができなければ、顧客はあなたの会社を心から信頼してくれません。
そのような背景から、顧客のことをより深く知る必要のある時代が訪れたのです。
つまり、顧客と「点」でコミュニケーションするのではなく、「線」でコミュニケーションをし、長期的に寄り添うことが大切な時代の到来です。
そして、そのコミュニケーションを実現するためにこそ、顧客との関係値を高めていくCRMの概念が必要不可欠なのです。

ちなみに最近、売り切り型ではなく継続課金のサブスクリプション型の商品やサービスをよく目にするのは、顧客と長期的な関係を結び、顧客に寄り添いつつビジネスを成長させたいと考える企業が増えているからだといえるでしょう。
2-2.営業がもつ顧客情報のブラックボックス化を防ぐ
マーケティング部門が広告や展示会を通して、見込み客(リード)の情報を集める。
その後、その情報を営業担当者に渡したものの、営業担当者がひとりで情報を管理してしまい、結局、取引がどう進んだのかがわからない。
さらには、営業担当者が自分の成績を上げようとして、有望な見込み客の情報をあえて隠してしまうことも。
実際、そういった状況に陥っている企業は多くあります。
属人化の傾向が強い会社は、部署を横断して活用できる顧客の「情報資産」がなかなかたまりません。よって、顧客情報を一元的に管理し、全社的に活用できるようにするCRMの重要性が叫ばれているのです。
6.CRM推進に活用できるツール
CRMを推進するためには、どのツールを選択するかが重要です。
CRMツールはもちろん、顧客情報を管理するだけなら、Excelのような表計算アプリでも実施は可能です。
ここでは、顧客情報の管理に利用できる主なツールについて紹介します。
1.CRM専用ツール
結論からいうと、CRMを導入するのであれば、CRMツールが最もオススメです。
なぜなら、CRMツールはまさにCRMを円滑に進めるためにつくられたツールであり、顧客とのコミュニケーションの過程で手に入るさまざまな情報をスムーズに一元管理できるからです。
顧客や見込み客のプロフィール情報の管理はもちろん、商談の進捗状況やどんな書類を取引したかの情報なども一元管理できます。
以下の記事では、国内で利用されている主要CRMツールの機能を比較・解説しています。
2.Excel
Excelを使い、顧客情報を管理するためのシートを作成し、そのシートを皆で更新し続けるという方法です。この場合、更新したExcelのファイルを何らかの方法で共有する必要があります。
DropboxやOneDriveなどのクラウドストレージを使って共有するケースが多くありますが、ひとつのExcelファイルの共同編集は、誰がいつどう編集したかの履歴がわかりづらくなります。
また、ファイルの上書き防止のために毎回ファイルをバックアップすると、大量のバックアップファイルが生まれますし、バックアップしたファイルはカンタンにコピーできますから、外部に流出してしまうリスクも増えます。
たとえば、社員が自宅で作業をしようとデータをコピーしたUSBメモリーが紛失してしまうと、顧客情報の漏洩につながり大問題です。
そもそも、Excelは表計算ソフトで、時系列の情報の管理には向いていません。
深い分析をおこなおうとすると、複雑な関数やピポットテーブルなどを扱える必要があり、Excelに詳しい人材がいないと、顧客分析が厳しくなります。
また、その詳しい人材が辞めてしまうと、その複雑化したExcelのシートを触れる人がいなくなってしまいます。
3.Googleスプレッドシート
クラウドで使える表計算アプリのため、複数人でのオンライン編集に強みがあります。
ただし、Googleスプレッドシートを使った顧客管理も、基本的にはExcelと同じような問題が起きることが想定されるため、あまりオススメすることはできません。
4.名刺管理ツール
名刺に書かれている情報をOCRを通してテキスト化し、名簿をつくっていく機能が便利な名刺管理ツール。見込み客の情報を集める際、展示会などで得た企業の担当者の名刺は非常に有益な情報となります。
最近の名刺管理ツールの中には、CRMの専用ツールに近い機能をもったものも増えてきました。
7.CRMツール導入の成功事例
以下の2つの事例は、CRMツールを導入するメリットやベネフィットがとくにわかりやすい活用事例です。
事例1:業務を自動化し、空いた時間でマーケティングの効果測定を進められるようになった
キャリア支援事業を展開する「ポジウィル株式会社」では、キャリア面談の日時を決めるため、何度も顧客とメールでやり取りをしていました。
しかし、問い合わせ数が増加したことで、面談日時の設定をすべて手作業でおこなうことに限界を感じていました。
また、メールマーケティングをおこなう際に、メールを配信する顧客リストの作成に時間がかかり、マーケティングの効果も充分振り返られていませんでした。
しかし、CRMを導入したことで、面談を設定する際には担当者の空き状況がわかるミーティング用のURLを面談希望者に送るだけ済むようになりました。
また、顧客リストの作成についても、顧客の流入元別で顧客情報が自動でまとめられリストが作成されたため、リスト作成の手間が省けました。
業務が自動化されたことで、空いた時間で顧客情報の分析などをおこない、マーケティングの効果測定にも時間をかけられるようになりました。
活用事例をもっと詳しく見る
事例2:広告運用のPDCAをまわせるようになった結果、月間の成約数が10倍に
システム開発やコンサルティングを主な事業としている「株式会社構造計画研究所」では、自社商品として初めてハード製品を扱い始めました。
しかしその新しい事業は、既存事業のコンサルティングと扱う商品の形態が異なるうえ価格も安いため、過去の顧客の中に商品の販売対象となる顧客がほぼいませんでした。
そこで、自分たちで集客した見込み客を受注まで繋げられるように、商談の進捗を一括で管理できる「HubSpot CRM」を導入しました。
CRMツールの導入により、見込み客の情報とともに商談がどんな状態にあるのかを一か所で確認できるようになりました。
また、Web広告にかけた費用対効果も一目で確認でき、広告運用の方針をすぐに検討できるようになりました。
結果、営業を効率よく進められ、HubSpotを使い始めてから1年で、月間の成約数(CV)を10倍以上に向上することができました。
活用事例をもっと詳しく見る
このようにCRMツールを活用することで、業務の効率化や事業の成長が見込めます。
以下の記事では、その他の成功事例についても詳しく紹介しています。
次は、CRMツールの導入で失敗するケースについて触れてみましょう。
8.CRMツールの導入で失敗するケース
CRMツールの導入で失敗するケースは、以下のようなケースです。
- 1.CRMツールを使う文化が根付かなかった
- CRMツールを導入したとしても、何を目的として使うものかを社内共有できていなければ、ただ面倒な作業が増えたと思われてしまい、CRMの文化は定着しません。
CRMツールを導入することによって影響が出そうな関係者に、「自社や顧客にどんなメリットがあるのか」を事前に共有して、理解を得るようにしましょう。
- 2.何の顧客情報を記録すべきなのかを考えられていなかった
- 顧客情報を記録する際、「何を記録すべきなのか」「それによって顧客や見込み客にどんなメリットがあるのか」「自分たちの課題解決にどう活用できるのか」を前もって練らずに集めた情報では、ただ情報が集まってくるだけで、有効な情報活用ができなくなります。
CRMツールを使う上では、事前の設計がとても重要です。
- 3.CRMツールを運用できる人材がいなかった
- CRMツールの運用に詳しいメンバーがいない場合や、ツールの使い方で困ったときに、専任でツールのことを調べて困りごとを解決するメンバーがいない場合は、CRMツールがなかなか社内に浸透しません。
ツールのメリットをきちんと理解し、社内に文化として浸透させてくれる担当者を用意しましょう。
- 4.導入すれば短期的に成果が上がると思っていた
- CRMツールは基本的には顧客とのコミュニケーションを中長期的に改善していくツールです。
そのため、成果は中長期で測定したほうが社内に浸透します。
もちろん、短期的な利用であっても成果が上がることはありますが、短期的に成果を出すという用途での利用は「CRMツールらしくない」ことを知っておきましょう。
せっかく導入するツールですから、上記のような失敗は未然に防ぎたいものです。
そこで、CRMツールの導入前にチェックしておきたいポイントを、チェックリスト形式にまとめてみました。
9.CRMツール導入前に確認したい13のチェックリスト
CRMツールを導入する際は、以下の全13項目について、社内で認識をすり合わせしておきましょう。
1.導入する目的は明確か? |
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CRMによって解決したい課題は明確ですか? |
CRMツールは多機能な分、CRMによって自社の何を解決したいかが明確でないと、機能を持て余してしまいます。 CRMを導入することによって自社のどんな課題が解決されるかを明確にしておきましょう。 |
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CRMの効果を明確にするためのKPIを設置していますか? |
CRMツールを導入することで自社がメリットを得られたかどうかを評価しましょう。 「定量的」「定性的」どちらでもよいので、自社の問題に適したKPIを設定しておき、それを達成できたかをきちんと評価しましょう。 |
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社内で重要なKPIの定義は統一されていますか? |
いつ誰がCRMツールに入力しても差が出ないように、重要なKPIの定義を統一しておきましょう。 たとえば「営業件数」をカウントする場合、「対面での営業はカウントするが、メールや電話での営業はカウントしない」など決めておきましょう。 |
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CRMでできることが理解できていますか? |
CRMツールは導入しただけでは機能しません。 ツールの機能と特性を理解し、自社のどんな課題解決に役立つかを明確にしておきましょう。 |
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CRMで出来ないことは理解できていますか? |
CRMツールでは、実現できることと出来ないことがあります。 自社の解決しようとしている課題に求めている機能がきちんと内包されているかを確認しましょう。 |
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CRMで自社では使う必要のない機能もあることを理解できていますか? |
CRMツールは多機能な分、すべての機能を使いこなすのは困難です。 自社に最も効果的な機能を優先的に利用し、運用人員や体制によっては無理につかわなくても良い機能があることを理解しておきましょう。 |
2.CRMによって活用したい情報があるか? |
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CRMに入力するお客様のデータはありますか? |
すでにお客様のデータがある場合は、きちんと項目(お名前・会社名・役職・電話番号など)ごとに整理し、CSVなどで整理しておき、すぐにCRMツールにインポートできるようにしておきましょう。 |
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CRM導入後にどうやって顧客データを集めるか決まっていますか? |
CRMツールはお客様のデータを集めることによって、お客様を理解し、お客様にとってメリットとなるコミュニケーションができるようになるツールです。 既存のデータを元にするだけでなく、その後どのようにお客様にとって有益なコミュニケーションをするためのデータを集めるかを設計しておきましょう。 |
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CRMを運用することで得られるお客様のメリットは明確ですか? |
CRMツールを利用することで、自社のお客様にどのようなメリットをもたらすのかも明確にしましょう。 お客様のデータ収集やアプローチなどが目的化し、顧客体験価値が低下しないように注意しましょう。 |
3.運用できる体制はつくれるか? |
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CRMを運用を開始できるまでの担当人員を確保していますか? |
CRMツールは導入しただけでは機能しません。 どのようにお客様のデータを集め、どのようにそのデータをチームで連携し、どのように活用するかを設計する人員が必要です。 |
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CRMを運用開始後に、改善を行う担当人員を確保していますか? |
CRMツールは導入して終わりではありません。 常に市場やお客様の変化に応じて、運用を変化させる必要があります。そのための人員が確保できているかを確認しましょう。 |
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CRMを導入することで、業務に変化が生まれる部署との連携は取れていますか? |
CRMツールは特定の部署だけが活用するのではなく、チームや会社が横断的にデータを一元化することで、効果を最大化できます。 導入前にツールを導入することで業務に変化が発生する部署に、メリットを伝えたり、業務フローの変化のポイントを共有しておきましょう。 |
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CRMを導入後のフォローアップはしっかりしていますか? |
CRMツールのすべての機能を担当者が運用方法まで完全に把握するのは困難です。 そんなときに、きちんと導入後のサポートが充実しているCRMツールを提供してくれている企業かどうかを確認しましょう。 |
このチェックリストを用いて、CRMツールの導入をぜひ成功させてください。
「三方よし」を目指すなら、CRMを取り入れよう
「顧客や見込み客との良好な関係を構築し、関係者全員が良い状態で成長する」
CRMは、上記のような理想的な環境を構築するための基盤となりえます。
顧客を中心に捉えたビジネスは「お得意さま」を増やし、やがては顧客や見込み客から選ばれ続ける企業に成長できるでしょう。
当社HubSpotは「Help millions of organizations grow better」、多くの企業が、数字ばかりを追求した表⾯的な成⻑ではなく 売り⼿・買い⼿・働き⼿がともに 持続可能な利益を享受できる本質的な成⻑を遂げられるよう支援することをミッションとして掲げています。
ここで重要なのは、買い手である顧客や見込み客だけでなく、自社、自社の従業員も含めたすべてのステークホルダーがより良く成長できることを目指している点です。これは日本の近江商人から端を発する「三方よし」とも通じるものがあります。誰かを犠牲にするのではなく、全員が利益を享受できる状態でなければ、持続可能なビジネスにはなりえません。
買い手を深く理解し、ニーズに沿ったアプローチを継続して良好な関係を構築する、働き手の無駄な作業を削減し、買い手に寄り添うための時間を確保するなど、三方良しの状態を実現するために必要なプロセスのほとんどはCRMツールの活用で対応できます。本記事を通して、CRMの重要性が伝わっていれば幸いです。

