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CRMとは「顧客との関係性を管理するツール(もしくはシステム)」という意味で使われることが多い言葉です。しかし本来、CRMとはツールそのものを指す言葉ではなく、概念を指します。

CRMとは「Customer Relationship Management」の頭文字をとった言葉であり、直訳すると「顧客関係管理」です。もう少し詳しくいえば「顧客とのやりとりの情報を集約して管理する」という概念を指します。このCRMの概念を採り入れることで、顧客を中心に考えたビジネスを展開できます。そして、顧客や見込み客から選ばれ続ける企業を目指すことができます。

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ユーザーを一元管理でき、チームで効率よく情報共有ができます。また、多彩な営業支援機能を実装し進捗状況の把握も容易なため、営業活動の時間短縮と顧客への最適なアプローチの実現が可能です。

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本記事では、全世界で18万社以上に導入されているCRMツールを提供する当社HubSpotが、CRMの基本機能やSFAとの違い、導入メリット、導入を成功させるためのコツを解説します。「まずCRMがどのようなものなのかを知りたい」「CRMツールの導入を検討したい」と考えている方だけでなく、CRM導入済みで更に活用するためのヒントを探されている方もぜひ参考にしてみてください。

営業チームを成功に導くためのCRMテンプレート

CRMとは

CRMとは

先述したように、CRMは「Customer Relationship Management」の頭文字を取ったもので、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。顧客・見込み客との良好かつ継続的な関係を維持できるよう、顧客の属性や行動履歴データを一元管理することを意味します。

ここでは、CRMが必要になった背景やCRMツールの仕組みについて解説します。

 

CRMが必要になった背景

IDC Japan 株式会社が2022年6月に公表した、「国内顧客エクスペリエンス関連ソフトウェア市場および国内CRMアプリケーション市場予測」によると、日本国内におけるCRMツールの市場規模は約1,800億円と、2020年に比べて13%増加したことがわかっています。この水準は年々高まる傾向にあり、2026年には2,900億円規模に成長することが予想されています。

CRMが必要とされているのは、次のような背景があるためです。

  • オンラインで商品やサービスに関する情報収集を行いやすくなり、購買行動の主導権が売り手から買い手へと移行しつつある
  • オンラインでの顧客接点が生まれたことでカスタマージャーニーが複雑化し、よりきめ細やかな施策が必要になっている
  • 景気の悪化により営業・マーケティングの予算が削減されている状況であっても、ROI(投資利益率)の維持や向上が求められる

営業・マーケティングの難易度が上がっているにも関わらず、予算が制限されている状況で成果を上げるには、顧客や見込み客への理解を深め、効率を高める取り組みが欠かせません

事実、当社HubSpotが実施した「日本のマーケティング組織が抱える課題についての意識調査」においても、全体の9割以上の回答者が、「営業・マーケティング施策のROIを高めるためには自社のターゲットを正しく理解することが重要だ」と回答しています。

一方で、CRMの重要性を理解しながらも「実践できていない」と答えた回答者が半数以上にのぼっています。CRMを実践するには、仕組みを構築し、顧客・見込み客のニーズに合わせたインパクトのある施策に落とし込むことが重要であることがわかるでしょう。
 

CRMツールの仕組み

CRMという言葉はあくまで概念であり、その思想にもとづいて顧客情報を一元管理するためのシステムを「CRMツール」といいます。基幹システムをはじめとして、社内に蓄積されたあらゆる顧客情報をCRMツールに集約し、データ分析へと落とし込むのがCRMツールの一般的な活用法です。

CRMツールは次のような仕組みで成り立っています。

CRMツールは次のような仕組み

  1. 顧客情報の収集:
    名刺や会員情報、問い合わせ内容などをもとに顧客情報を収集し、CRMツールに記録・蓄積します。外部システムに蓄積されたデータを統合することも可能です。CRMツールには、氏名や年齢(企業の場合は社名や事業規模)といった顧客・見込み客の属性データに加え、購買履歴やWebサイトの閲覧履歴なども記録できます。
  2. 顧客情報の整理・分析:
    収集した顧客情報を自社の基準に合わせて整理します。また、過去の行動傾向から顧客ニーズを分析し、次に取るべき適切なアクションプランを策定します。
  3. 顧客ニーズに合った施策を実施:
    アクションプランをもとに具体的な施策を実行に移したり、新製品の開発を行ったりします。メール配信やフォーム作成など、施策の実行をサポートする機能が搭載されているCRMツールもあります。

CRMツールを使って顧客のニーズに合う施策を実施できれば、顧客や見込み客の満足度の向上につながり、良好な関係を築けます。データドリブンな営業・マーケティング活動により、業務効率化につながる点もCRMツールのメリットです。
 

SFAやMAとの違い

営業・マーケティング活動で利用できるツールには、CRMのほかにも「SFA」や「MAツール」があります。これらのツールは、いずれも営業・マーケティング活動を最適化する役割がありますが、対象となる業務範囲や活用方法が異なるため、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。

  • SFA(営業支援システム):
    営業活動の進捗状況を可視化するパイプライン管理や、複数の営業レポートを一目で把握できるダッシュボードなどの機能が実装された、営業担当者の業務を支援するためのツールです。案件情報や商談スケジュール、売上見込みといった営業活動で取得できるデータを一元管理することで、的確な担当者の配置や従業員に対するフォローが可能になります。
  • MA(マーケティングオートメーション)ツール:
    見込み客の創出から購買意欲の醸成、ホットリードの特定に至るまでの、一連のマーケティング活動を効率化・自動化するためのツールです。Webページ・LP作成や広告連携、メールの自動配信、リード管理など、マーケティング活動を最適化するための機能が搭載されています。CRMツールとの連携により、リード情報と顧客情報の統合が可能です。見込み客が顧客に転換したあとでも、蓄積されたデータを活かして関係性の強化がはかれます。

次の図は、HubSpotが考えるCRM・SFA・MAの役割の違いを表したものです。

HubSpotが考えるCRM・SFA・MAの役割の違い

CRMは、顧客との接点があるすべてのプロセスにおいて、部門横断で顧客情報を管理するために利用します。CRMの情報を基盤として、マーケティング部門ではMA、営業部門ではSFAといったように、各部門に特化したツールを導入するのが理想的な状態だといえるでしょう。

 

CRMツールを導入する目的

CRMツールを導入する目的は次の3つに分類できます。

  • 顧客や見込み客に関する情報管理の属人化を防ぐ
  • 顧客情報を企業の資産として改善に役立てる
  • ロイヤルティの高い顧客を増やす

CRMツールの活用で、顧客や見込み客の情報の可視化が実現します。それらの情報を部署間でリアルタイムに共有することで、営業やマーケティング、カスタマーサービスなどの活動の最適化が期待できます。
 

1. 顧客や見込み客に関する情報管理の属人化を防ぐ

CRMツールを導入する最大の目的は、顧客や見込み客に関する情報を可視化・共有し、属人化を防ぐことです。

営業・マーケティングの現場では、顧客や見込み客に関する情報が担当者レベルで管理されるケースが珍しくありません。顧客や見込み客に対するアプローチやフォローが必要な状況になっても、情報が共有されないことで適切なアクションにつながらず、機会損失を生む可能性があります。

CRMツールの導入によって、顧客や見込み客に関するあらゆる情報を一か所に集約することで、状況に合わせた対応が可能になります。顧客や見込み客の立場になると、必要なタイミングで適切な対応をしてもらえるため、自社に対する印象が良くなり、関係構築のきっかけが生まれます

 

2. 顧客情報を企業の資産として改善に役立てる

CRMツールに蓄積された顧客情報は、企業にとって貴重な資産です。その情報を有効活用すれば、顧客のニーズに合った商品・サービスの開発や品質改善に役立てられるでしょう。

そのためには単に情報を蓄積するだけでなく、データ分析やビッグデータ解析などにより、生データを「意味のあるデータ」に昇華させることが重要です。パイプライン分析やエリア分析、失注分析など、複数の分析手法を組み合わせることで、CRMツールに蓄積された情報を最大限に活かせます。
 

3. ロイヤルティの高い顧客を増やす

CRMの実践によって、部署を越えて常に最新の顧客情報を共有できるようになります。

顧客の状況や営業ステータスの変化といった情報をもとに、営業・マーケティング・カスタマーサービスなど、顧客との接点がある部署が、それぞれのアクションを最適化できます。顧客に合わせて最適な対応を取り続ければ、企業に対する信頼が高まり、ロイヤルティの向上につながります。結果、リピート率や顧客単価が改善され、LTV(生涯顧客価値)の向上が実現するでしょう。

 

CRMツールの代表的な機能

CRMツールの代表的な機能

CRMツールには、顧客情報や問い合わせ内容の一元管理、データ分析などの機能が搭載されています。また、当社が提供しているHubSpot CRMのように、SFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)の機能が備わったものも存在します。

ここでは、CRMツールの代表的な機能を紹介します。
 

1. 顧客情報の一元管理

CRMツールの高度な顧客情報管理機能を活用すれば、部門横断的に情報を共有できます。営業やマーケティング、カスタマーサポートなどの各領域で、統一化された顧客情報をもとに業務を最適化できるのがメリットです。データドリブンな意思決定や戦略策定にも役立つでしょう。

CRMツールでは、会社名や受注・失注の履歴、商談担当者の氏名や電話番号といった属性データ、商談の日時や内容など、顧客に関するあらゆるデータを保存できます。次のような情報もCRMツールで管理可能です。

  • 過去に購入した商品の情報
  • キャンペーンの応募状況
  • クーポンを取得した回数や使用歴
  • 過去の問い合わせ内容や履歴

一般的にこのような情報を取得するには、さまざまなWebサービスやツールを経由しなければなりません。CRMツールは別のシステムと連携できるため、社内のあらゆる場所に散らばる顧客情報を一か所に集約できます。
 

2. 顧客分析

CRMツールによって集約した顧客情報は、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールなどを活用したデータ分析を行ってはじめて意味を持ちます

CRMツールに蓄積された顧客情報を、次のようにさまざまな軸でデータ分析することで、営業やマーケティング、カスタマーサポートなどで適切な意思決定を行うための情報として活用が可能です。

  • RFM分析:
    Recency (最近の購入日)・Frequency (利用頻度)・Monetary (金額の大きさ)の3指標をもとに顧客を評価し、正確な購買行動を把握する分析方法
  • デシル分析:
    顧客を購入金額の多い順にグループ分けし、購入比率や売上構成比を分析する方法
  • CTB分析:
    Category(カテゴリ)・Taste(テイスト)・Brand(ブランド)の3指標をもとに、自社商品・サービスに対する顧客の嗜好を分析する方法

近年はSNSやモバイルアプリなどが普及したことで、顧客情報そのものは以前よりも取得しやすくなっています。取得したデータを最大限に活用するためにも、データベースの役割を果たすCRMツールは重要な存在だといえるでしょう。

 

3. 案件情報の一元管理・営業分析

CRMツールのなかには、SFA(営業支援システム)の機能をあわせ持つツールも数多く存在します。SFAの機能を用いて営業活動を最適化するには、CRMツールが担う顧客情報管理の機能が欠かせないためです。

CRM・SFA統合型のツールであれば、案件ごとの成約率や受注金額、商談の進捗状況など、営業活動に関するあらゆる情報を一元管理できます。蓄積された営業データを時系列やチームなどの軸で分類し、ダッシュボードにグラフなどのレポートとして出力することも可能です。

また、営業プロセスを可視化できる「パイプライン機能」を搭載したツールもあります。営業プロセスのなかで発生しているボトルネックを発見したり、工程間でトラブルが生じた際の迅速な軌道修正を行ったりするのに効果的です。

 

4. リードナーチャリング

MA機能を持つCRMツールは、リードナーチャリングの精度を高めるために活用することも可能です。CRMツールとMAツールの連携でも同様の効果が得られます。

リードナーチャリングは、見込み客との関係性を深め、購買意欲を高めてホットリードへと転換をはかるマーケティングプロセスの一環です。特にBtoBビジネスの場合は、見込み客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの期間が長く、意思決定のプロセスも複雑になるため、リードナーチャリングが有効です。

MAに含まれるCMS(コンテンツ管理システム)や広告連携、メールの自動配信機能などは、見込み客との関係構築に最適です。また、MAに蓄積されたリード情報をもとに、自動でスコアリング(ホットリードの特定)を行ってくれるツールもあります。

リードナーチャリングによって見込み客の購買意欲を高め、ホットリードのみを抽出することで、マーケティング部門から営業部門へとリード情報を引き継いだあとに営業担当者が効率良くアプローチできるでしょう。MAの機能を持つCRMツールであれば、リード情報と顧客情報を一元的に管理できるため、マーケティング・営業部門間のスムーズな連携が実現します。

 

5. 問い合わせ管理

CRMツールのなかには、電話やメール、SNSなどによる問い合わせ管理機能を一元管理する機能を持つタイプも存在します。

問い合わせごとにチケットを発行し、そのなかで個別の問い合わせを処理することから、「チケット管理システム」とも呼ばれています。各チケットには、問い合わせ内容のほか、ステータス(未対応・非対応など)、ラベル(重要・保留など)、担当者のコメントなどが付与される仕組みです。複数名で問い合わせ管理を行う場合でも、現在の対応状況が一目でわかるため、重複対応や対応漏れのリスクを軽減できます

問い合わせ管理業務の最適化には、顧客の属性情報やコミュニケーション履歴といったデータが必要です。そのため、問い合わせ管理はCRMツールと相性の良い機能だといえるでしょう。CRMツールに蓄積された顧客情報とコミュニケーション履歴を紐づけることで、カスタマーサポートの品質向上や業務効率化に効果を発揮します。
 

顧客管理はエクセルで十分なのか?CRMツールを用いるメリット

営業やマーケティングの現場では、顧客管理をエクセルやGoogle スプレッドシートなどのツールで行っているケースがよく見られます。

取り扱うデータ量が少ない場合は、エクセルやGoogle スプレッドシートでも顧客管理は可能でしょう。しかし、次のような問題が起きている場合は、CRMツールの導入が解決策になります。

  • 営業活動の進捗に関するやり取りが頻発している
  • 営業担当者が変わる際の引き継ぎがうまくいかない
  • 営業担当者がデータ入力や書類作成などの雑務に追われている
  • 顧客情報の記入漏れや不備が多い受注率や商談化率が思うように向上しない

ここでは、CRMツールを用いるメリットを具体的に見ていきましょう。
 

1. 部門横断でPDCAが回せるようになり、受注率・商談化率改善に寄与しやすい

CRMツールを導入すると、集客からアフターサポートに至るまでの流れが可視化されます。それらの情報をもとにPDCAサイクルを回すことで、受注率・商談化率の効果的な改善が期待できます。

営業活動において受注率や商談化率を向上させるには、業務フローに存在するボトルネックを見つけ、適切な対処を講じる必要があります。CRMツールには、顧客に関する基本情報や営業のステータス、過去のやり取りなどのデータが蓄積されます。データを分析することで、顧客の実態に則った戦略立案やアクションプランの策定が可能です。
 

2. 部門間のスムーズな連携につながる

多くのCRMツールは、SFAやMAツール、CMS(コンテンツ管理システム)、SCM(サプライチェーンマネジメント)ツールなどの外部システムと連携できます。システムの連携は、部門間でのスムーズな情報共有につながります。

各ツールとの連携で実現できることを、それぞれ詳しく見ていきましょう。
 

SFA連携

CRMツールとSFAの連携により、営業のターゲットとなる見込み客に関する詳細な情報を一元管理できます。

ファーストコンタクトから成約に至るまでの営業プロセスを可視化し、そのなかで明らかになった見込み客のニーズをCRMツールに蓄積する流れです。
 

MAツール連携

MAツールに蓄積されているリード情報は、CRMツールの顧客情報との紐づけが可能です。

マーケティング部門が見込み客にアプローチし、営業部門が顧客へと転換をはかる一連のプロセスを、共通の顧客情報をもとに行えます。見込み客が抱えていた課題やニーズを、そのまま顧客情報に反映させることで、顧客に転換したあとも適切なフォローアップやカスタマーサポートを実行できるでしょう。
 

CMS連携

CMS(コンテンツ管理システム)は、WebサイトやLP(ランディングページ)などを効率良く制作・管理するためのものです。制作したコンテンツや、画像や動画といったメディアファイルを一元管理できるため、本格的なオウンドメディア運用に向いています。

CRMツールとCMSの連携により、CRMツール内に蓄積された顧客情報をコンテンツ制作に活用できます。活用の方法はさまざまですが、CRMツールの顧客情報にもとづいてコンテンツをパーソナライズ化できるのが大きな利点です。また、CMSで取得したアクセス解析データをCRMツールに同期させ、行動分析に活用することもできます。
 

SCMツール連携

SCM(サプライチェーンマネジメント)ツールは、原材料の調達から製造、物流、販売までのプロセスを一元管理するためのものです。サプライチェーン全体の流れを可視化し、リードタイムの削減や在庫量の最適化をはかります。

CRMツールとSCMツールを連携することで、顧客ニーズをもとに生産量や市場投入量をコントロールできます。原材料を仕入れるフェーズからムリ・ムダ・ムラを取り除けるため、過剰な在庫によって利益を圧迫するリスクを抑えられます。
 

3. 営業担当者の負荷が減り、パフォーマンスが向上する

顧客管理はエクセルやGoogle スプレッドシートでも行えますが、膨大なデータ量を扱う場合には適していません。非効率な方法による顧客管理は営業担当者の負荷が増え、情報の入力漏れや不備が起きやすくなるので注意が必要です。

HubSpotが公表している「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、顧客管理の方法について、「明確ではない・わからない」と回答する企業が全体の約3割を占めることがわかりました。このことから、明確な方法がわからないまま既存のツールを使用しているか、そもそも顧客管理に着手すらできていない状況が考えられます。

また、営業活動で無駄だと感じる部分については、1位が「社内会議(51.7%)」、2位が「社内報告業務(39.5%)」という回答結果が現れました。CRMツールは、このような営業活動の「無駄」を省くうえでも有効です。

SFA機能が搭載されたCRMツールを活用することで、日々の営業活動の進捗や案件情報などはダッシュボードで把握できるようになり、報告会議の回数を減らせます。日報や週報も、CRMツールのテンプレートを使えば容易に作成できます。エクセルなどのツールを使った分析作業も必要ありません。

営業担当者にとって、会議やデータ分析、日報作成などはノンコア業務にあたります。CRMツールによってノンコア業務の効率性を高めることで、各担当者がコア業務に集中できるようになり、部門全体のパフォーマンス向上に寄与します
 

4. 属人化を防いで情報を有効活用できる

営業担当者がエクセルなどで個別に顧客情報を管理している場合、異動や退職に伴う引き継ぎが生じた場合に時間や手間がかかります。また、担当者しか知りえない情報が増えることは、企業にとってリスクともいえるでしょう。

CRMツールですべての顧客情報を一元管理することで情報の属人化を防止できます。情報の有効活用にもつながるため、情報そのものの価値が高まるともいえるでしょう。
 

CRMツールを導入した成功事例

CRMツールを導入した成功事例

CRMツールを導入する場合、顧客情報管理やマーケティング支援などの機能をどのように活用すれば良いのでしょうか。ここで紹介する企業事例を参考にすると、CRMツールの具体的な活用方法や効果をイメージできます。
 

マーケティングから営業、ヘルプセンターまでの顧客情報を一元化

オンライン上でイベントの告知や参加申し込みができるプラットフォーム「EventRegist(イベントレジスト)」を運営するイベントレジスト株式会社は、属人的な営業活動や部門間の連携不足などの課題を解消するために、HubSpotのCRMツールを導入しました。その結果、マーケティングファネルの間口拡大に成功しています。

CRMツールの導入前は、営業部門・マーケティング部門・ヘルプセンターが、それぞれ別のツールを使用しており、正確な受注金額や顧客とのコミュニケーション履歴が把握できないといった課題がありました。

ビジネスイベントでは、イベントの参加者がのちに主催者になるケースも多く、顧客と接点がある部門間で情報を共有することは、新規顧客の創出という観点においても重要です。

CRMツールの導入後は、別々に管理されていた情報が一か所に集約され、過去のイベント参加情報から適切なアプローチが可能になりました。正式な受注金額についても、それまではイベント終了まで営業担当者しか把握できませんでしたが、部門間での共有が実現しています。

参考:マーケから営業、ヘルプセンターまでの顧客情報を一元化。一気通貫の体制で得た成果に迫る~イベントレジスト株式会社~|HubSpot
 

煩雑なスプレッドシート管理を脱却し、オペレーションの効率化と最適化を実現

クラウド会計ソフト「マネーフォワード」を提供している株式会社マネーフォワードは、新しく立ち上げた「マネーフォワード クラウドStore」の情報を一元管理するためにHubSpotのCRMツールを導入しました。

マネーフォワード クラウドStoreは、Google WorkspaceやMicrosoft 365、Zoomなどのクラウドツールを販売するWebサービスです。同サービスの売上は順調に推移していたものの、商材やプランの種類が増えるにつれて、情報管理が煩雑化する課題が生じました

取扱商品のなかには、月額制のものもあれば単品購入のタイプもあり、さらに、割引率が細かく設定されている商品も存在します。CRMツールの導入以前は、商品の情報や売上データなどをGoogle スプレッドシートで管理していましたが、同一の顧客に紐づく取引情報を一元化できていませんでした。

CRMツールの導入時に、Google スプレッドシートで管理されていた顧客や案件情報、売上データといった情報をすべてCRMツールへ移行しました。さらに、営業活動の業務フローや進捗状況、カスタマーサポートの問い合わせ内容といった情報もCRMツールに集約し、部門横断的な情報の一元管理に舵を切ったのです。

CRMツールの導入後は、ダッシュボード上で売上データの一元管理が実現し、資料作成や顧客情報管理の手間が大幅に削減されました。従来は1時間ほどかかっていた定例ミーティングの準備時間が20分程度に短縮され、手作業によって生じていたヒューマンエラーがほぼゼロになったといいます。

売上データがリアルタイムで更新されることにより、各担当者が数字に対する責任を意識するようになったことも成果の一つです。

参考:Operations Hubの活用で煩雑なスプレッドシート管理を脱却し、オペレーションの効率化と最適化を実現~株式会社マネーフォワード~|HubSpot
 

CRMツールを効果的に活用するポイント

CRMツールの導入を業績改善や営業パフォーマンスの向上につなげるためには、ツールを定着させるための仕組み作りが必要です。ここでは、CRMツールを効果的に活用するためにやるべきことを解説します。
 

1. CRMツールを導入した目的や効果を周知徹底する

組織のなかには、慣れないツールを利用することに抵抗を感じる従業員も存在します。また、ツールの導入目的や効果が理解されないと、定着が難しくなるでしょう。

管理職がリーダーとなり、CRMを導入する目的や効果を周知徹底することで、CRMを利用する文化を組織に根付かせることが可能です

メールや書面で一方的に伝えるだけではなく、コミュニケーションを取り合って従業員の理解が得られるよう、口頭でも伝えられる環境を整えると良いでしょう。

また、覚えることが多いという点も新しいツールが定着しない理由の一つです。CRMツールを導入する際は、担当者がスムーズに操作できるように事前に操作マニュアルを用意することをおすすめします。
 

2. 長期的な運用を視野に入れて社内体制を整える

CRMツールを導入し、成果を実感するまでには、ある程度の時間がかかります。長期的な運用を見据えて社内体制を整えるために、ツールの導入を検討する段階で次のようなポイントを押さえておくと良いでしょう。

  • 管理責任者とユーザーの決定、それぞれの責任範囲を明確化
  • 日次・週次・月次別の運用スケジュールの策定
  • 定期作業項目と不定期作業項目の分類
  • システム内で管理すべき項目の洗い出し
  • アクセス監視のスケジュール設定とログ設計

また、ツール導入後に担当者がストレスなく利用できるよう、社内研修の実施や相談窓口の設置なども検討しましょう。CRMツールの主な導入目的は売上向上ではあるものの、具体的な成果が見えるまで時間がかかることも考えられるため、業務改善や効率化といった定性的な評価制度を整えておくことも大切です。
 

3. 評価指標(KPI)を定める

CRMツールの運用にあたっては、目標と実績の差異を検証するための評価指標(KPI)の設定も重要です。CRMツールの費用対効果を高めるには、効果検証と改善のための施策が必要になるからです。

評価指標を設定する際は、中長期的に達成したい目標を決めましょう。営業部門の場合は、受注率・成約率、商談実施数、受注単価、月次経常収益などが代表的な評価指標です。ツール導入前後の実績を比較すると、CRMツールの費用対効果が検証しやすくなるでしょう。

また、継続的に評価指標の推移を確認することで、組織における課題がわかり、適切な解決策の立案が可能になります
 

4. 仮説を立てて施策に落とし込む

CRMツールの活用は、十分な量の情報を蓄積するところから始まります。その後は、BIツールとの連携によってデータ分析・仮説立案を行い、適切な施策へと落とし込んでいきます

感覚的になりがちな営業やマーケティングのプロセスを、データとして可視化することで、より具体的な仮説や施策の立案につながるでしょう。
 

5. 自社に合うCRMツールの導入を検討する

CRMツールには、SFAやMAなどの機能を網羅的に備えたものから、一部の機能に特化したものまで、幅広い種類が存在します。導入する目的によって向き・不向きがあるため、それぞれのツールを比較し、時間をかけて検討することが大切です。

CRMツールを比較する際は、次の7つの要素を基準に選ぶと良いでしょう。

  • 対応範囲・連携できるツール
  • インターフェースの操作性
  • カスタマイズ性
  • セキュリティレベル
  • 導入サポート
  • 費用対効果のバランス
  • トライアルの有無

代表的なCRMツールについては、こちらの記事で取り上げています。各ツールの特徴や選び方を解説していますので、ぜひ参考にしてください。

 

CRMツールを取り入れ、「三方よし」なビジネスを

CRMは、顧客や見込み客との良好な関係を構築し、関係者全員が良い状態で成長するという理想的な環境を構築するための基盤となり得ます。

顧客を中心に捉えたビジネスは「お得意さま」を増やし、やがては顧客や見込み客から選ばれ続ける企業に成長できるでしょう。

私たちHubSpotは、「Help millions of organizations grow better」というミッションを掲げています。この言葉は、数字ばかりを追求した表面的な成長ではなく、売り手・買い手・働き手がともに持続可能な利益を享受し、本質的な成長を遂げることを意味します。

ここで重要なのは、買い手である顧客や見込み客だけでなく、企業自身や従業員も含めたすべてのステークホルダーが、より良く成長できることを目指している点です。これは、日本の近江商人から端を発する「三方よし」とも通じるものがあります。誰かを犠牲にするのではなく、全員が利益を享受できる状態でなければ、持続可能なビジネスにはなり得ません。

CRMツールの活用によって買い手を深く理解し、ニーズに沿ったアプローチを継続して良好な関係を構築できます。働き手は、無駄な作業を削減し、買い手に寄り添うための時間を確保できるようになるでしょう。このように、「三方よし」の状態を実現するために必要なプロセスのほとんどはCRMツールで対応できます。

本記事が、CRMの重要性を理解する一助になれば幸いです。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

営業チームを成功に導くためのCRMテンプレート

  営業チームを成功に導くためのCRMテンプレート

元記事発行日: 2023/10/20 0:53:17、最終更新日: 2023年10月20日

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