コールドメールについて世間にあふれるアドバイスは間違いだらけだ━━私はあえてそう言いたいと思います。
反発を招くようなことをわざとぶち上げたわけではありません。私が心から思っていることです。最近ますます混迷しているこの話について、ぜひこの機会に皆さんにお伝えしておきたいと考えました。
コールドメールについてのアドバイスが間違いだらけだとなぜ言えるのか。これから理由をきちんと説明していきたいと思います。認識不足という昔ながらの問題に帰結するケースもあれば、もっと根が深い問題もあります。
何はともあれ、世間の誤解を正そうというのが今回の趣旨です。ではさっそく始めましょう。
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1)「セールスは不要」という誤解
コールドメールの世界にはびこっている考え方のうちで、これは圧倒的に最悪だと私は思っています。コールドメール(正しく実行するコールドメール)を信奉し、セールスに情熱を注いでいる私としては、これは特に困った認識です。
FacebookやLinkedInで、私はリードジェネレーションのグループに数多く参加しています。その中では、コールドメールの話題がたびたび持ち上がります。
よくあるのは、次のような感じの質問です。「プロスペクト開拓のEメールキャンペーンを実施しました。当方のスケジュールを管理しているオンラインサービスのリンクを載せて、メールを見た人が自分で予約を入れられるようにしたEメールを○百通送ったのですが、反応はゼロです。件名についてアドバイスをお願いします」。こうした質問に対して、件名や出だしの改良方法を説明した返信やコメントが付きます。
でも、ちょっと待ってください。
気は確かでしょうか。この問題は、件名や出だしはまったく関係ありません。戦略そのものが間違っています。
コールドメールで知ったスケジュール管理サービスで自ら予約を入れるなんて、普通は誰もしません。コールドメールの目的はただ1つ。その人と電話で直接話す機会につながるような反応を得ることです。
セールスなしでも売れると思っている実務家がごまんといるのは、私としてはがっかりです。
コールドメールは、電話につなげるための橋渡しです。それに尽きます。確かに、優れた成果を上げるコールドメールには、膨大なスキルと専門知識が詰まっていますが、Eメールがひとりでにセールスしてくれるといった話は、たとえ本人がよかれと思ってしているアドバイスでも、耳を傾けてはいけません。
2)「アウトバウンド戦略は不要」という誤解
コールドメールの件名と出だしの一節は、コールドコールで言う最初の一言とエレベーターピッチに相当します。件名や出だしを知りたがる人は、戦略がないままで特効薬を探している人です。
コールドメールを基盤にした適切なアウトバウンド戦略の実例を簡単にご紹介します。わずかな変更を重ねていくことで、成果が大きく高まるのが、おわかりいただけると思います。ここでは、「Outbound System Optimization Calculator」という特製のスプレッドシートを利用しました。
フェーズ1: 送信するEメールを最適化する
これは2つの要素から成ります。
- 送信するEメールを増やす:プロスペクト開拓の効率を高め、最適なテクノロジを活用し、1週間の標準的スケジュールを維持し、優れた指導を受けるという策を講じれば、送信するコールドメールの質を落とさないままで、数を大きく増やすことは可能です。我々の例では、送信するEメールの数を500件から600件に20%増やしました。
- バウンス率を下げる:Eメールアドレスのリストをリアルタイムで生成できるデータサービスは数多くあり、新しいものが日々登場しています。いろいろなサービスを試してみましょう。我々の例では、バウンス率は10%となりました。30%というスタートラインからすると、簡単に達成できる数字です。
この2つの微修正の結果、到達したEメール数は54%増えました。
なお、ここではメール到達率の専門的要素は考慮していません。そちらについて詳しくは別の記事(英語)を参照してください。
フェーズ2: 開封率と返信率を最適化する
こちらも2つの要素から成ります。
- 開封数を増やす:ここは誰もが意識を向ける部分です。ここで肝心なのは、魅力的な件名や出だしにばかり焦点を当てるのではなく、以下を考えることです。
- a)ターゲットオーディエンスに適した送信時刻と開封時刻の効果をテストし測定する
- b)先頭140~160文字の効果をテストする。スマートフォンで表示される文字数がその程度です。出だしの内容は件名と合致させましょう。何も売り込んではいけません。また、この貴重なスペースを無駄な自己紹介に費やしてもいけません。「はじめまして。○○と申します。××社で△△の責任者を務めております」といった出だしだと、プロスペクト(潜在見込み客)はすぐに離れていきます。
- c)ベネフィットで導く件名をテストし測定する。魔法のテンプレートはありません。実践、テスト、改良、拡大というのが、魔法の方程式です。
- 返信の数を増やす:返信率を高めるためにできることはたくさんありますが、何より大切なのは、最も欲しいと思う反応に照準を合わせることです。与える選択肢が多すぎはしないでしょうか。メールを見た本人に面会の予約を入れさせようとはしていないでしょうか。私の考えでは、追求すべき反応はただ1つ。返信してもらうことです。返信が得られれば、電話をかけて直接話をする大きな理由になります。
我々の例では、開封率が10%増、返信率が150%増となった結果、トータルで返信は324%増となりました。月間の返信数が32件から134件への増加です。
フェーズ3: Eメールの返信からファーストコールへの転換を増やす
これは、多くの人の戦略でかなり欠けている要素です。
我々が顧客と手がける事例では、Eメールの返信からファーストコールへのコンバージョン率は約10%が一般的です。下の図にあるとおり、10%から20%に高まると、ファーストコールへと転換する返信の数は、トータルで3件から27件に増えます。
この段階で、きちんとしたスクリプト(台本)とプロセスがあれば、返信からファーストコールへのコンバージョン率で40%超を達成することも比較的簡単です。
私が使っているスクリプトの実例はこちらのブログ記事(英語)で紹介しています。これを実践することで、上に挙げたような結果が得られるはずです。
全体の体系に照準を合わせ、最初と最後の数字を考慮した企業では、この種の成果が出るのはごく普通です。
また、トータルでの効果という私の考え方がしっくり来ない方は、このフェーズのみにきちんと焦点を当てるだけでも、同じような種類の成果が得られます。
この戦略は、この後フェーズ4、5、6と続き、電話から案件へのコンバージョン率、案件の平均規模の拡大、プロスペクト開拓の拡大という話をそれぞれ取り上げています。またホワイトペーパーでは、アウトバウンドのコールドメールの体系を構築したうえでEメールに返信する方法について取り上げています。
アウトバウンドのコールドメール戦略で基盤になるのは売り文句やEメールテンプレートのパワーだという思い込みは捨てましょう。そのような思い込みのまま動くと、自分の評判を落とすことになります。大切なポイントです。
3)効果のない言い回しが蔓延
私は、長年にわたってコールドコールを教える中で、お手本が染み付くことによる学習、という考えを抱くようになりました。テレセールスやコールドコールの仕事に就く人が、周囲の人が使っているのと同じ言葉や言い回し(たいていは悪い例)を使うようになっていくことを表しています。
コールドメールも、同じような状況がまたたく間に広がりました。
皆さんが、良いにせよ悪いにせよ、コールドコールにどのようなイメージを抱いているのかはわかりませんが、コールドコールに関しては、どのような言葉が成功に大きく貢献したかを調べるテストや計測が数多くなされました。しかし残念ながら、コールドメールに関してネットで見られるアドバイスのほとんどは、そうした知見の数々があまり生かされていないようです。
いくつか例を挙げます。
件名:「Chat about [insert pain point here](○○○[悩んでいる点]について話しましょう)」
英語のコールドコールでは、「chat(おしゃべり)」という言葉を使うと、コンバージョンががた落ちになることがよく知られています。組織内で立場が上の人になるほど、「chat」という言葉を使ったEメールは失敗します。
理由は明らかです。誰もおしゃべりの時間などないからです。
プロスペクトは多忙ですし、結果を切に求めています。何の価値も示さずにおしゃべりを申し出ても、時間がもらえるはずがありません。
「I'm sorry to bother you ...(お邪魔してすみませんが…)」"
これも、コールドコールでは長年にわたってご法度とされている言い回しです。それがなぜ、コールドメールでは大丈夫だと思うのでしょうか。
この言葉を使うと、最初から自らを次のように認識させることになります。
- このEメールは読み手の時間を浪費する邪魔者である。
- この送り手は読み手の顔色をうかがう立場である。
ウェブ上で公開されているひどいコールドメールのテンプレートから、2つだけ例を挙げました。こうした点について、見識を広げたいのであれば、Jeff Hoffman氏の文章を読んでおけば間違いありません。
4)魔法のテンプレートという誤った通念
アウトバウンドセールス戦略の土台になるのは、コンバージョンで抜群の成果を生む魔法のEメールテンプレートではありません。しかし、そのような認識は広く浸透しています。
ネットで拾ったコールドメールのテンプレートだけを頼りにすると、困ったことになります。いくつか例を挙げましょう。
- ある優秀なライターが、ある顧客企業向けに作った素晴らしいテンプレートを公開しました。しかし、半年足らずのうちに私は、まったく同じテンプレートのEメールを5社から受け取りました。文面もほとんど同じです。こうしてテンプレートが大量に導入された結果、元の顧客企業も、真似した企業も、成果は下がることになります。
- ある有名なテンプレートで、企業内の何人かにEメールを送って、しかるべき立場の人に推薦してもらうとよい、と勧めているものがありました。しかし、ある経営コンサルタントがこのテンプレートを使ったところ、何の成果もありませんでした。なぜなら、このコンサルタントは、自分のやり方に合わせてテンプレートを使うのではなく、テンプレートに合わせてやり方を変えていたからです。このコンサルタントが本当に話を持ちかけるべき相手はCEOしかいません。しかもこの人は、CEOのEメールアドレスを知っていました。つまり、誰にEメールすべきかを知っていたにもかかわらず、テンプレートのうたい文句に流され、自分の常識を頼りにしていなかったのです。CEOのみを相手にするようEメールを変えたところ、返信率は急増しました。
- 正しい方向を目指すよう勧めていたあるテンプレートが、企業のスパムフィルターで弾かれていました。膨大な数の人(スパムのSEO企業も含む)が、まったく同じテンプレートを使うようになったからです。
テンプレートは良い出発点ですが、そのままコピーしようと思う前に、まず次のような適性チェックをした方がよいでしょう。
- 作ったのは誰か。
- 自分の分野のトーンやスタイルに合いそうか。
- 自分の分野で飽きるほど使われていないか。
- 文面の一部をGoogleで検索したときに、何件ぐらいヒットするか。
- テンプレートに何か風変わりな部分はないか。ターゲットのプロスペクトにとってその部分は必要か。
- パーソナライゼーションの自由度が大きいか。
- そのメールを自分が受け取ったとしたら、スパムだと思わないか。
現在のコールドメール戦略で使われているテンプレートの数々について、原点を知りたい方は、『Barking Up a Dead Horse』という本をぜひ読んでみてください。
以上の話をまとめたいと思います。
アウトバウンドのプロスペクト開拓で大きな成果を上げたいのであれば、以下のポイントを頭に入れておいてください。
- 些細な一部分にばかり意識を向けるのではなく、全体の体系を完璧にしてください。
- 誰からのアドバイスなのかに警戒の目を向けてください(私からのアドバイスも含めてです)。
- コールドコールを使っていない方も、数千時間に及ぶコールドコールの試行錯誤から確立された有益な教訓を無視しないでください。媒体こそ違えど、ゼロから始める必要はありません。
- ネット上の誰かが、ある方法で大成功を収めた、という話をしていたとしても、何がうまくいくのか、何が適切なのかという判断は、ご自身の常識を優先してください。
編集メモ:この記事は、2015年7月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Peter O’Donoghueによる元の記事はこちらからご覧いただけます。