採用活動において競合他社が多い中小企業では、「応募が集まらない」「内定を辞退されてしまう」などの課題を抱えることもあるでしょう。中小企業が採用活動を成功させるためには、採用市場の現状把握と、自社の課題にあわせた解決策を実施することが大切です。
本記事では、中小企業が抱える採用課題と、課題を解決する10のポイントを解説します。採用活動の改善に成功した3つの事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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中小企業の採用の現状
昨今の中小企業において、採用課題となっているのが人手不足です。2022年1月に実施された「中小企業の雇用情勢に関する調査」では、調査に参加した約50%の中小企業が「大幅に人手が不足している」「やや不足している」と回答しており、多くの中小企業が人手不足の問題を抱えています。
その背景には2020年に実施された経済活動への制限や需要の変化があります。
製造業よりも非製造業企業の方が人材不足と回答している割合が高く、特に飲食・宿泊業、運輸業、サービス業で大幅に人材が不足しているとの回答が得られました。一方で、需要の変化により製造業では、人材過剰の傾向が顕著となりました。
2022年には規制緩和によって景気は回復傾向となるものの、中小企業における人材不足は続いています。2022年9月に実施された「人材不足に対する企業の動向調査」においても、50%以上の企業が「正社員の人手不足」を実感しており、今後も企業の人手不足は続いていくと予想されます。
中小企業が抱える採用課題
中小企業が抱える採用課題は企業によってさまざまに異なります。本章では、多くの中小企業が抱える5つの採用課題をご紹介します。
求める人材からの応募がない
2021年11月に東京商工会議所が実施した「 企業における採用・人材育成・教育支援に関するアンケート調査結果」では、中小企業が抱える採用課題として「求める人材からの応募がない」との回答が66%を占めました。
その背景には、中小企業は競合企業が多く採用においても競争率が高いため、優秀な人材の確保は難しいという現状があります。応募者はより良い条件を求めて転職先を探す結果、競合に比べて条件が劣る場合には選択肢から外されてしまうこともあるでしょう。
また、中小企業は大企業と比べて待遇や福利厚生面で不利な条件が多いことも理由に挙げられます。
応募者が少ない
中小企業の採用活動においては、そもそも応募者の母数が少ないことも課題です。中小企業は大企業に比べて認知度が低く、求職者からの認知も低いことが理由として考えられるでしょう。
辞退されることが多い
求人総数が求職者数を上回る「売り手市場」の場合、大企業に比べて中小企業では内定辞退率も高くなります。
株式会社リクルートが2021年9月に実施した「就職プロセス調査」では、2022年卒の内定辞退率は約62%となり、10人に内定を出しても6~7人に辞退されている状態です。
株式会社ガロアが2022年3月に行った「大学生の就職活動・企業選びの実態調査」では、50%の学生が大企業を好んでおり、中小企業でも良いと考えているのは全体の31%ほどでした。この結果から、中小企業から内定を受け取ったのちに大企業から内定を獲得した場合、中小企業からの内定を辞退する傾向が高いと推測されます。
採用活動のコスト不足
2022年9月に株式会社マイナビが実施した「2023年卒マイナビ企業新卒内定状況調査」では、新卒採用にかかる採用費総額の平均は上場企業が771.9万円で、非上場企業は267.4万円でした。このように、上場企業と非上場企業では採用予算に大きな差があります。
採用活動には、求人広告や採用イベントなどのコストがかかるにもかかわらず、予算が少ない中小企業では十分なコストをかけられないことも採用課題の一つです。
人員不足により採用活動に時間がかけられない
人員不足が深刻な中小企業では、採用担当者1人あたりの業務の幅が広くなりがちです。そのため、本来行うべき採用活動に十分な時間をかけづらい傾向にあります。
採用計画の立案や面接調整、選考、内定者のフォローアップなど、採用担当の業務は多岐に渡ります。そのため、担当者はリソース不足に陥りやすく、結果として採用活動に十分な時間がかけられなくなるのです。特に内定後のフォローを十分にできない場合には、内定辞退率増加にもつながるため、採用活動全体を通じて効率化を図るなど見直しを進めましょう。
中小企業の採用課題を解決する10のポイント
中小企業の採用課題を解決するには、大企業とは異なる自社の魅力を伝えることが重要です。
また、求人媒体からの問い合わせだけでなく、公式サイトやSNSから直接採用の相談が来るケースもあります。常に採用を意識して日々の業務に取り組むことも、中小企業が採用活動を成功させるポイントです。
1. 求める人物像を具体的にする
求める人材を採用するためには、自社に必要な人物像を具体的に考えることが大切です。人物像を明確にできれば、欲しい人材に最適な採用戦略や採用プロセスを展開できます。
自社が求める具体的な人物像は、社内や採用チームの共通認識として共有しておきましょう。ミスマッチを防ぎ採用活動をスムーズに進められるため、時間やコスト削減にもつながります。
2. 採用広報を行う
広報活動は認知度が低い中小企業の採用においても認知拡大に役立ちます。特に、BtoBビジネスを行う中小企業は社名や事業内容が一般に知られていないため、応募候補に挙がりにくい傾向にあります。認知拡大のためには、自社の情報を求職者に向けて発信しましょう。
また、採用広報活動を通して求職者の企業への理解が深まり、ミスマッチも防げます。
採用広報活動には、SNSやオウンドメディアが活用できます。自社のビジネスに関するコンテンツを作成し、求職者が企業について深く理解できるようにしましょう。
3. 求職者への情報開示
求職者が注視する基本給や福利厚生などの情報は、事前に開示しておきます。
必要な情報を掲載したうえで応募者が集まらない場合には、競合他社より条件が悪い可能性が考えられます。競合他社と比較して条件を見直しましょう。
4. 自社の魅力を伝える
求職者は条件だけではなく、社内の働く環境や働いている人など、さまざまなポイントを検討しています。
「ワークライフバランスを大切にしている」や「多様性を重視している」など、他社にはない自社の魅力を言語化し、採用サイトや求人広告、説明会などで求職者へ向けて伝えましょう。
SNSや公式サイトのブログ更新なども活用し、定期的に伝えると効果的です。
5. 入社の動機付けを行う
応募者の入社意欲を高める「動機付け」も辞退を防ぐためには重要です。キャリアプランや配属先、仕事内容を具体化し、入社後をイメージできる情報を伝えましょう。
例えば、次のような内容は入社の動機付けにつながります。
- 担当業務の説明
- キャリアアップや評価体制
- 獲得可能なスキルや知識
- 業務形態
- 仕事の裁量の有無
実際にどのような環境でどのような人が働いているのかを知ってもらうために、先輩社員との座談会を開催するというのも良いでしょう。入社後のイメージが沸きやすくなり、応募者に安心感を与えられます。
6. 選考プロセス・面接の改善
他社の採用選考・面接の内容が良いことを理由に、応募者が第一志望以外の企業に入社を決めるケースもあります。
選考プロセスや面接は、志望企業を変更するほど大切な要素です。応募者からの印象を良くするためにも、面接官のトレーニングを行いましょう。
また、選考プロセスの短縮化も重要です。選考期間が長引くと、他社が先に内定を出す可能性があるためです。
選考プロセスの短縮化には、フェーズごとの役割分担を決めておくと良いでしょう。具体的には、1次面接と2次面接で確認すべき事項の具体化、評価シートを面接プロセスごとに作成し担当者で共有するなどが挙げられます。
7. 採用活動を多様化する
中小企業の採用方法は、多様であり新卒では次のような採用方法もあります。
- インターン制度
- ダイレクトリクルーティング
- 採用オウンドメディアの活用
中途採用であれば、次の2つも活用できます。
- 紹介制度のリファラル採用
- 退職した人を再雇用するアルムナイ採用(カムバック制度・ジョブリターン制度)
採用活動を多様化することで接触できる人材に多様性が生まれ、結果的に求める人材を採用できる可能性が広がります。
8. ツール導入で省人化
中小企業の採用における人材不足の課題を解決してくれるのが、採用管理システムの導入です。
採用管理(選考管理システム)は、採用計画・応募者情報・面談の日程調整など採用活用に必要なデータや業務を一元管理できるシステムで、採用業務を効率化できます。
メールや日程調整などの煩雑になりがちな採用業務を自動化できるため、人材不足で十分なリソースを準備できない場合に役立ちます。
採用管理システムを比較したい方はこちらの記事を参考にしてください。
9. 内定者フォローを怠らない
内定辞退率の改善には、内定者へのフォローがポイントです。
フォロー内容には主に次のような対策があります。
- 内定者懇親会(食事会)
- 先輩社員との面談
- 内々定式
- フォローアップメール
オンラインでの選考が増える一方で、応募者に安心感を持たせるためには懇親会や面談などのフォローアップを対面で実施しましょう。
HubSpotのツールでは、採用管理システムとMA機能を連携できるためフォローアップメール配信などによって応募者とのコミュニケーションをより効率的に行えます。中長期にわたる採用活動において良好な関係を築くことで、内定辞退率を下げる効果が期待できます。
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10. 採用代行サービスの活用
人材不足が深刻な企業では、採用活動をアウトソーシングできる採用代行サービスの活用もおすすめです。
人材紹介とは違い、採用計画の立案から面接選考、内定対応といったところまで幅広い業務を委託できます。自社での採用業務を削減できるだけでなく、プロに委託することで採用業務の品質向上も期待できます。
中小企業の採用課題を克服した実例
実際に採用における課題を改善した中小企業の実例をご紹介します。課題を分析し、採用活動の改善に成功した例となりますので、ぜひ参考にしてください。
応募者をファン化し入社承諾率の改善に成功|ヒガノ株式会社
建物の外構やエントランスインテリア製品を行うヒガノ株式会社では、面接をしても辞退者が続出する採用課題を抱えていました。
そこで、人材サービス会社と提携し、自社の事業内容や経営状況、理念や魅力を第三者の立場から求職者に伝えてもらえるように改善したところ、ミスマッチが減り入社承諾率が上昇しました。
また、採用プロセスの見直しも実施し、応募者を見極めるための面接から会社説明を中心としたオンライン面談に切り替えています。面談では自社のありのままを伝えてファンになっていただき、共感を得られるようにしました。
その結果、2021年には面接合格の連絡をしたほぼ100%の内定者から入社承諾を得るまでになりました。
アプローチする層を変えて母集団形成を約4倍に|株式会社不二製作所
株式会社不二製作所は採用代行サービスを利用しており、大手採用媒体への掲載、大量のスカウトメール送信が主な求人手法でした。そのため、どのスカウトからどういった反応があったのかなどの成果が見えづらく、応募者の母集団形成の時点から採用課題を抱えていました。
そこで、「CASTER BIZ 採用」を導入し、担当者からの提案により、自社の持つ独自技術を学生に知ってもらえるようアプローチの層を変更します。応募者が求める条件について仮説を立てて、その層を中心に積極的にスカウトしました。
その結果、従来とは異なる層からの応募が増え、30名程度だった母集団が約4倍の110名以上にまで拡大しました。
企業理念への共感を高める取り組みで定着率100%|株式会社田村ビルズグループ
株式会社田村ビルズグループ大手求人サイトへの掲載を中心とした待ちの姿勢の採用活動を行っていたため、母集団を形成しづらい採用課題を抱えていました。
大量のスカウトメールを送信する手法では、年間1,000通送ったとしても返信が来るのは10通程度と反応率は低く、さらにスカウトメールに対する分析・改善などもできません。そこで、自社でスカウトメールを送信できる「ビズリーチ」を契約し、メッセージに企業理念を記載する、互いへの理解を深めるためのカジュアル面接を実施するなど、マッチング率を高める取り組みを行いました。
この取り組みは自社の理念に共感してもらえる人材の採用につながり、定着率100%という結果を生み出しています。
中小企業における採用課題を見直して施策を実施しよう
中小企業の採用を成功させるためには、自社の採用課題を見直すことが大切です。応募者が集まっていないのか、ミスマッチにより欲しい人材が集まっていないのかなど、採用における課題は企業によって異なります。
まずは自社の採用課題を見直し、適切な施策を行いましょう。施策実施時には、本記事で紹介している課題解決のポイントや事例をぜひ参考にしてください。