パーソル総合研究所の推計によると、2030年時点での労働需要は7,073万人、労働供給は6,429万人となり、644万人もの人手不足が起こると予想されています。労働人口の減少は、企業の人材採用の難易度が高まることを意味します。
採用活動を計画通りに進めるためには、多様化する中途・新卒採用のニーズに合わせた最新の採用手法を取り入れることが大切です。
しかし、採用活動のトレンドを自社の戦略に取り入れる方法がわからないとお悩みの人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、2023年最新の採用手法のトレンドと、自社の採用活動にトレンドの手法を取り入れる際のポイントを解説します。すぐに真似できる手法を具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
採用手法のトレンドの変化
採用手法のトレンドは、市場動向やその時々の採用課題に応じて変化しています。
採用手法の移り変わりやその背景を知ることで、自社の採用課題を解決するヒントになります。まずは、採用手法のトレンドの変化について見ていきましょう。
採用手法のトレンドは「マス型採用から個別採用へ」
従来の採用手法は、就職・転職ナビサイトなどを利用する「マス型採用」が一般的でした。しかし、昨今の採用手法のトレンドでは、企業から求職者にSNSなどを使ってアプローチする「個別採用」が主流になりつつあります。
特に新卒採用では、マス型採用と個別採用を併用するスタイルが浸透しています。従来のように、企業側がただ応募を待つのではなく、企業側から求職者に直接アプローチすることで効率的な採用活動が可能になるでしょう。
従来の採用手法の課題点
これまでの採用活動では、次のような手法が一般的でした。
<中途採用の場合>
- 求人情報サイト
- 求人検索エンジン
- 人材紹介
- 自社採用サイト
- 転職エージェント
- ヘッドハンティング
- 公共職業安定所(ハローワーク)
<新卒採用の場合>
- インターンシップ
- 就活イベント
- ミートアップ
これらの採用手法では、基本的に求職者側が情報収集を行う必要があります。多くの企業が求人募集を行っているなかから、自社に興味をもってもらい、応募をしてくれるのを待つだけでは効率が悪くなります。また、確実に求職者と接点をもてる可能性が低いという課題もありました。
これからの採用活動では、企業側が多数の候補者から人材を選ぶのではなく、望ましいスキルや経験をもつ人材などから「自社を選んでもらう」という姿勢が求められます。また、採用活動の迅速化や効率化のためにも、採用活動のオンライン対応が急務となっています。
さらに、長期勤続志向の低下や転職志向の高まりにより、雇用の流動化も進んでいます。東京商工会議所が発表した「新入社員意識調査集計結果」によると、「定年まで働きたい」と答えた人は10年前と比べて14.7%も減少しています。これに対して、「チャンスがあれば転職したい」と答えた人は8.5%ほど増加しています。
このことから、転職を希望する優秀な人材が自社を選びたくなるような採用手法の導入が、採用市場の課題の一つになっているといえます。
2023年最新版|採用手法のトレンド
では、具体的にどのような採用手法がトレンドとなっているのでしょうか。2023年最新情報をもとに、「採用手法」と「説明資料や面談方法」のそれぞれのトレンドに分けてご紹介します。
採用手法のトレンド
2023年現在の採用市場では、ターゲット層と効率的に接点をもつことを目的として個別採用が重視される傾向にあります。具体的には、次の5つの採用手法があげられます。
リファラル採用
リファラル採用は、自社の社員から親族や知人を紹介してもらう採用手法です。
縁故採用(コネ入社)に似ていますが、採用が確定している訳ではなく、自社の採用水準を満たしている人材でなければ採用を見送る選択ができる点が異なります。
リファラル採用を取り入れることで、求人ポータルサイトや転職エージェント、求人広告などの外部サービスを利用するよりもコストを抑えやすくなります。また、第三者を介しての紹介であるため、一定の水準を満たした人材にアプローチできる可能性が高いというメリットもあります。
アルムナイ採用
アルムナイ採用は、一度退職した人を再雇用する採用手法です。「カムバック制度」「ジョブリターン制度」とも呼ばれます。
この採用手法には、企業文化や業務の進め方を理解している人材を採用しやすいという利点があります。企業側と応募者の双方で入社後のミスマッチが起こりにくく、即戦力を採用できることで教育コストの軽減も期待できます。
ダイレクトリクルーティング
ダイレクトリクルーティングは、企業の人事担当者から求職者にアプローチする採用手法です。
具体的には、就職・転職サイトのスカウト機能の利用や、TwitterやFacebookといったSNSのDM(ダイレクトメッセージ)でメッセージを送るなどの方法がとられます。
この採用手法は、自社の求めるターゲット層に絞って接点をもてるため効率的です。また、応募者から自社が認知されていない場合や、まだ自社に対する興味が薄い潜在層にもアプローチすることが可能です。
ソーシャルリクルーティング
ソーシャルリクルーティングは、Twitter・Facebook・Instagram・YouTubeなどのSNSを使って採用する採用手法です。
求職者と直接連絡を取りあえるため、気軽にコミュニケーションしやすいことが特徴です。さらに、企業のSNSアカウントを使用して求人情報や事業内容などを発信することで、転職潜在層に対しても認知拡大やアプローチが可能です。
採用ミートアップ
採用ミートアップとは、共通の目的がある人や、共通の分野に関心のある人たちが集まる交流会・イベントです。
企業説明会よりもカジュアルに開催できるため、参加者とのコミュニケーションを重視しながら、お互いの距離を縮めて興味をもってもらいやすいというメリットがあります。
採用ミートアップには、交流を楽しむ気軽なものから、特定のテーマに沿って勉強会や議論を行う会など、さまざまな種類があります。
説明資料や面談方法のトレンド
採用活動の一環として、説明資料や面談方法を工夫する企業も増えています。ここでは、説明資料や面談方法のトレンドを2つご紹介します。
採用ピッチ資料の作成
採用ピッチ資料とは、就職・転職希望者向けの会社説明資料のことです。オンライン面接・オンライン転職フェアなど、採用のオンライン化に合わせて採用ピッチ資料を作成することもトレンドの一つです。
企業サイトに掲載している会社概要などを用いて説明することもできます。しかし、企業サイト内の会社概要は、顧客・株主・投資家など幅広いターゲットに対して作られているケースが多いことから、必ずしも採用ピッチ資料に向いているとは限りません。
採用ピッチ資料は求職者にターゲットを絞った資料であり、より効果的に情報を伝えられます。企業の代表から求職者へ向けたメッセージや、企業理念・事業内容などを、ストーリー性をもたせて魅力的に伝えることが可能です。
カジュアル面談
リファラル採用やダイレクトリクルーティングなどを行う際に、求職者との接点として注目されている面談形式が「カジュアル面談」です。
一般的に、カジュアル面談は企業と求職者が正式な選考へ進む前に情報交換を行う場として設けられます。
求職者にとっては、求人企業への理解を深められるという利点があります。企業側は、資料やWebサイトなどで伝えきれない会社の雰囲気や、採用への熱量などを知ってもらう機会として活用できます。
トレンドの採用手法を選定する際のポイント
採用市場では次々と新しいトレンドが生まれますが、すべての手法が自社に適しているとは限りません。明確な基準をもってトレンドを選定しましょう。
ここでは、自社に適したトレンドの採用手法を選定するためのポイントを3つご紹介します。
自社の方針・求める人物像を明確にする
個別採用の手法に見られるように、昨今のトレンドでは人材の多様性を尊重する傾向があります。
自社の方針・採用したい人物像を明確にすることで、その方向性に沿った人材を採用するための手法を選定しやすくなり、採用活動の効率化につながります。
求める人材の年齢・学歴・職歴・資格や、人柄や価値観などを洗い出し、その人物像に合わせた採用手法を検討することが重要です。
採用までの期間・緊急度を想定する
採用手法には、導入してすぐに採用につながる手法と、成果がでるまでに期間を要するものがあります。採用計画を策定する際に、採用までの期間・緊急度を想定しておくと採用手法の選定がしやすくなるため効率的です。
採用手法のトレンドとなっている個別採用は、ターゲット層と効率的に接点をもてる一方で、採用までに時間がかかるケースもあります。緊急度の高いポジションの採用では、人材紹介や求人サイトの方が適している可能性もあるため、採用までの期間・緊急度を想定したうえで、適切な手法を取り入れましょう。
複数の採用手法を併用する
採用活動で成果につなげるためには、一つの採用手法にこだわらず、いくつか併用することもポイントです。
特に、一定の周期でかつ継続的に採用活動を行う新卒向けの場合、広く情報を拡散できるマス型採用と、集中的なアプローチが可能な個別採用を併用すると効果的です。
また、企業によって求めている人材・採用のための予算・採用までの期間などは異なります。他社の成功事例をそのまま取り入れるのではなく、自社にフィットした採用手法を選ぶことが大切です。
既存の採用手法がある場合は、トレンドを取り入れつつ従来のやり方と併用しながら効果を検証し、取捨選択すると良いでしょう。
複数の採用手法を並行する際に役立つツールとして、採用管理システムがあります。採用活動の進捗管理で煩雑になりがちな人事の業務を効率化できるだけでなく、採用担当者が空いた時間を応募者とのコミュニケーションに使えるようになるため、内定辞退率の低下なども期待できます。
トレンドへの理解を深めつつ、自社に最適な採用手法を選ぼう
自社で求める人材を採用するためには、従来のような企業側が「待つ」スタイルの手法だけではなく、「自社を選んでもらう」ための積極的な姿勢が求められます。
中途・新卒ともに、マス型採用よりも個別採用に注力するのがトレンドですが、トレンドの採用手法や他社の成功事例が必ずしも自社にとって効果的とは限りません。情報収集を行ってトレンドへの理解を深めつつ、自社に最適な採用手法を取り入れましょう。
なお、マーケティングの領域には、見込み客の関心をひきつけるコンテンツを発信し、関係を構築していく「インバウンド」と呼ばれる考え方があります。
採用手法を検討するにあたり、マーケティング思考を採用活動に応用した「インバウンドリクルーティング」を取り入れることも検討してみてはいかがでしょうか。
企業側から応募者を理解するために歩み寄り、応募者起点で採用戦略を設計することで、効率的かつ応募者の興味を引く採用活動を実現しやすくなるでしょう。