コーチングで部下育成をするには?ティーチングとの違いや上手に進めるポイントを解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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部下育成の手法には種類がいくつかありますが、なかでもコーチングは、部下の主体性を引き出すうえで有効です。コミュニケーションが活性化することもコーチングの特徴で、部下が上司に対して疑問や不安などを打ち明けやすくなるため、信頼関係が深まるでしょう

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    本記事では、コーチングの特徴や定義、必要なスキル、実施にあたってのポイントを解説します。

    コーチングとは

    コーチングは、対話を通じて相手の可能性や強みを引き出し、主体的な成長を促すことができる育成方法です。まずは、コーチングの目的や特徴などの概要を理解しましょう。コーチングと混同されやすい「ティーチング」との違いも解説します。
     

    コーチングの目的

    コーチングの目的は、部下に自分の職責を理解してもらい、それを果たすための努力を促すことです。コーチングの目的は、主に次の3つに分かれます。

    • 仕事の職務のルールを教え、特定の行動ができるようになる
    • 相手に協力を求める
    • 職責を果たすために相手に努力をさせる

    組織が中長期的な成長を目指すときに、人材の成長は欠かせない要素です。しかし、部下が負担に感じるような育成方法は離職を引き起こすため、避けるべきでしょう。コーチングがうまく機能すると部下が自ら成長するようになり、組織基盤の強化が期待できます。
     

    コーチングの特徴

    コーチングの特徴は、対話を通じて相手の主体的な発見や成長を促すことです。問題や課題に対する回答が、相手の中にすでにある前提で行います。

    「コーチ」はもともと、「馬車」を意味する言葉で、コーチングは、「大切な人を目的地まで届ける」というニュアンスになります。そこから派生して、目的達成を支援する育成方法の名称になりました。

    コーチ自身は答えを示さず、対話や質問によって相手に気づきを与え、相手が自ら回答にたどり着けるようサポートします
     

    ティーチングとの違い

    ティーチングは、指導者が相手に答えを教える方法です。相手が初心者であったり、課題に対する答えを持っていないことが明らかな場合に使われます

    ティーチングは指導者からの一方向の指導であるのに対して、コーチングは相互のコミュニケーションを通じて相手の主体的な成長を促す点が大きく異なります。

     

    マネジメントとの違い

    マネジメントは、売上目標や業績評価、職務要件、期待値を明確に示し、部下に対する指示と監督を行うことです。部下が職務を果たすために必要なツールを与えたり、モチベーションを維持しやすいように職場環境を良好に保ったりする必要もあります。

    マネジメントは結果に焦点を当てる手法であるため、メンバーの追加や入れ替えといった采配も含まれます。一方のコーチングは、プロセスと個人の発展に重点を置く手法です。
     

    部下育成でコーチングを行うメリット

    部下育成でコーチングを行う主なメリットは、部下が自分の頭で考えて答えを見つけ出すことによる、部下自身の主体性の向上です。

    普段から上司の指示ばかり受けて動いていると、部下の主体性は育ちません。しかし、組織が大きくなると上司だけでチームをまとめることは難しくなります。

    コーチングによって、上司の代わりも務められる主体性の高い部下を育成すると、組織が拡大してもまとまりを維持できます。団結力が高まった結果、より大きな成果を出すことも可能になるでしょう。コーチングを通じて主体性を身につけた部下との間には、信頼関係も育ちます。

    このように、組織にとってコーチングはメリットの大きい人材育成方法です。
     

    コーチングに必要なスキル

    コーチングに必要なスキル

    コーチングによって部下の主体性を引き出すには、傾聴・質問・承認の対話のスキルが必要です。

    それぞれ詳しく説明します。
     

    傾聴スキル

    傾聴とは、相手の話に丁寧に耳を傾けることです。

    ただ単に話を聞いていれば良いわけではなく、相手を受け入れ、共感し、それが相手にも伝わることが重要なポイントです。

    具体的には、相手の話に合わせた「うなずき」や相槌、相手の話を理解していることを伝えるためのオウム返しや言い換え、要約などを行いながら話を聞きます。

    コーチングでは、自分が話す時間は2割で、相手の話を聞く時間が8割程度のイメージを持つと良いでしょう
     

    質問スキル

    コーチングにおける質問は、相手が答えにたどり着くきっかけを与えるために行います。

    オープンクエスチョン形式で、次のように相手がより深く物事を考えたり、具体的にかみ砕いて考えるきっかけとなったりする質問を意識すると効果的です

    • 成功した理由は何だと思いますか?
    • どうしてそのようにすれば良いと思ったのですか?
    • 具体的にはどうしたら良いと思いますか?

    コーチングでは、相手を問い詰めたり、クローズドクエスチョンで「はい・いいえ」だけ答えれば済んだりするような質問は避けましょう。
     

    承認スキル

    承認とは、相手の言ったことを認めたり許可を出すことです。ただし、コーチングにおける承認では、相手の言ったことを単に褒めるだけでなく、相手の考えや存在そのものを認める姿勢が重要です。

    例えば、結果に対して単に「すごい」と言うだけではなく、そこに至った考え方や行動に賛同することで、相手は次回も同じようなアクションが取れます。仮に失敗しても、考え方や行動したことそのものが良ければ、そこを認めるのがポイントです。

    承認されることで、部下は失敗を恐れずに発言し、主体的に行動できるようになります。

    承認とは、相手との間に信頼関係を築くスキルでもあるといえるでしょう。
     

    部下育成におけるコーチングの進め方

    部下と信頼関係を構築し、主体性を引き出すことを意識しながら、次の手順で育成プランを進めます。

    1. ヒアリング(現状把握):部下の課題や状況をヒアリングする
    2. ゴールの設定:部下にとっての理想の状態を確認する
    3. 課題の設定:ゴールと現状とのギャップを認識する
    4. アクションの決定:上司がフォローしつつ、課題をクリアするための行動を決める

    アクションを実行した後は、面談でアクションの振り返りを行い、改めて新たなゴールと課題を確認し、次のアクションを設定します。

    部下が目標をクリアするまで、コーチとして一貫した姿勢で主体的な考えや行動をサポートし続けます
     

    コーチングの効果を高めるポイント

    コーチングのポイントは、あくまで相手が主体的に課題を解決できるようサポートを行うことです。その際に、4つのポイントを意識しましょう。
     

    マンツーマンで行う

    コーチングはマンツーマンで行います。

    コーチングには正解がありません。そのため、指導者が複数いると人によって主張が異なり、混乱が生じます

    指導者と指導を受ける側が1対1で向き合い、より多くの時間を過ごすことで方向性が定まるだけでなく、深い信頼関係の構築も可能です。
     

    部下が相談しやすい雰囲気をつくる

    コーチングを行う際は、相手が相談しやすい雰囲気をつくりましょう。

    上司が話しかけにくかったり、いつも忙しそうにしていたりすると、部下は本音で話そうとしなくなり、上司に「面倒だ」と思われそうな相談を避けるようになります。

    部下が自分の考えを遠慮なく伝えられるよう、いつでも耳を傾ける姿勢を見せておくと良いでしょう
     

    双方向のコミュニケーションを行う

    コーチングで、一方的なコミュニケーションは禁物です。答えのないことを部下と一緒に考えていく姿勢を通じて信頼関係を構築し、部下の主体性を育てましょう

    すぐに答えが見つからない場合も、上司が一方的に話すのではなく、傾聴や質問のスキルを使い、粘り強く話を聞きます。部下の考えを掘り下げて答えにたどり着けるようサポートできると理想的です。
     

    中長期で考える

    コーチングを通じて部下が成長し、主体性を身につけるまでには時間が必要です。また、部下が遠慮なく自分の考えや意見をぶつけてくれるようになるには、深い信頼関係が欠かせません。

    部下が課題をクリアして成長できるまで付き合う覚悟を持ち、十分に余裕を持ったスケジュールの設定を行いましょう

    部下の課題やゴールを明らかにしつつ、育成のロードマップを描き、計画的にコーチングを継続すると効果的です。
     

    コーチングスキルを学ぶ

    対話の中から相手の回答を導き出すコーチングのスキルは、一人で学んでいても習得が難しい場合があります。

    組織としてコーチングを効果的に行いたい場合は、外部の研修への参加や資格の取得を通じたスキルアップがおすすめです。

    コーチングに関する資格や研修は次のような機関で実施していますので、参考にしてください。

    • 国際コーチ連盟(ICF)
    • 一般社団法人日本コーチ連盟
       

    部下育成でコーチングを取り入れる際の注意点

    ここでは、コーチングを取り入れる際の注意点や、事前に上司が知っておくべきことを紹介します。
     

    コーチングが適さない場合もある

    コーチングは、相手が自分自身で課題の解決策を見つけるようサポートする手法です。そのため、相手が期待されている役割に対して、ある程度のスキルを身につけている必要があります。

    経験が少なく、答えを見い出すための基本的なスキルが不足している場合は、コーチングを実施しても相手の成長につながらないことがあるので注意が必要です。

    その場合は、まずティーチングを実施し、基本的な知識や課題に対して取るべきアクションを指導します。

    また、コーチングによる成長には時間がかかります。課題の解決を急いでいる場合は、ティーチングを実施したり、別の担当者をその課題に割り当てたりするなどの対応をした方が良いでしょう。
     

    発言の内容によっては主体性を奪ってしまう

    部下との対話では、相手の意見に対して否定的な言葉を使わないように注意します。あくまでも部下の主体性や独自性を尊重し、自分の考えで課題に取り組んでもらうためです。

    例えば、「そんなことは常識だよ」、「それじゃ普通だね」、「こう考えるのが当然だよね」などの発言は避けましょう。このような言葉がけは部下自身の考えを奪い、一般的な常識や上司の考えの範囲で発言をさせてしまいます

    また、「私はこうしてきた」、「私はできた」などの発言も同様です。部下が自己肯定感を持てなくなり、考えることを止めてしまうかもしれません。

    部下の成長を信じ、サポートする姿勢を忘れないようにしましょう。
     

    コーチングで部下を育成して組織力を強化しよう

    コーチングは、対話によって相手の主体的な考えや発見を促し、人材を成長させる方法です。部下の主体的な行動は、組織力の向上にもつながります。

    実際のコーチングでは、傾聴・質問・承認の3つのスキルを使い、主体的な行動によって自ら課題を解決することで、部下を成長させていきます

    部下育成がうまくいかないと悩んでいる場合は、本記事のポイントや注意点を参考にコーチングを取り入れてみてはいかがでしょうか。

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