過去には指標や分析に疎く、エクセルの表を見ようとしないCMOも多かったものですが、インターネットのおかげでマーケティングの成果を細かく確実に測定することができ、CEOやCFOもその結果に注目するようになりました。ですが現在でも、どのような指標を使えばCEOやCFOに納得のいく説明をしたり、企業の売り上げにマーケティングがどう貢献したかを示したりできるのかわからず苦労しているCMOは、私のまわりにも大勢います。
マーケティング指標で最も重要なのは、キャンペーンの費用や人件費、間接費などのトータルコストに注目し、それを利益や顧客獲得といったマーケティング結果と関連付けて分析できることと私は考えます。
そのほかに、見込み客1人あたりのコストや、フォロワー1人当たりのコスト、ページビュー1回当たりのコストなどの指標をマーケティングチーム内で分析すれば、マーケティングのどの部分を重視すべきかを判断したり、どのプロセスが無駄かを調べたりするのに役立ちます。
ですが、CEOが実際に注目するのは、マーケティングのコストと最終的な結果だけです。つまり、そのあいだの過程を気にすることはほとんどありません。そこでこの記事では、CEOがマーケターに真っ先に質問するような、経営に直結する重要なマーケティング指標をいくつかご紹介します。
これらの指標は、成長を続けるHubSpotで私自身が5年前から使用し、有効だと思ったものばかりです。CEOやCFO、そして役員たちにも提示し、議論に活用してきました。もちろん、これらがすべてではありませんので、ほかにも良い指標をご存知の方や、この記事についてご意見のある方は、下のコメント欄でぜひお聞かせ下さい。
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CEOが注目する6つのマーケティング指標
1)顧客獲得費用(CAC)
CACはある一定の期間に支出したセールスおよびマーケティングの費用(活動費と広告費 、給与、コミッションとボーナス、および間接費)の合計を出し、その合計金額を、同じ期間に獲得した新規顧客数で割ります。期間はひと月、四半期、または1年で設定します。たとえば、ひと月に3,000万円をセールスとマーケティングで支出し、その月に30人の顧客を獲得した場合、CACは100万円になります。
2)CACにおけるマーケティング費用の割合(M%-CAC)
私は顧客獲得費用(CAC)の中でマーケティングの費用だけを合計した値をM-CACと呼び、それがCAC全体に占める割合を、パーセンテージで出すようにしています。この値を長期的に調べることで、マーケティングのストラテジーや効果に何らかの変化があったとき、それをすぐに認識することができます。
たとえば、この値が増加した場合、その理由には、1)マーケティングチームの間接費が高すぎる、2)セールスチームが良い結果を出せなかったため、コミッションおよびボーナスの金額が下がった、3)質の高い見込み客を獲得し、セールスの生産性を改善するために、より多くの費用をマーケティングチームに投資している、のいずれかが考えられます。
たとえば、セールスを外部に委託し、長期的で複雑なプロセスでセールスを行う企業では、M%-CACの値は10-20%程度になります。一方、セールスを外部に委託せず、セールスプロセスが比較的シンプルな企業では、M%-CACは20-50%くらいが妥当です。さらに、人手をかけずに低コストでシンプルにセールスを行う企業では、M%-CACは60-90%と非常に高くなります。
3)顧客生涯価値とCACの比率(LTV:CAC)
顧客が定期的に使用料を支払ったり、あるいは定期的に商品を購入するような企業では、顧客の現在の価値を計算し、その顧客を新規獲得するために支出した金額と比較する必要があると思います。
顧客生涯価値を計算するには、ある顧客が一定の期間に支払った金額から粗利をマイナスし、それを顧客のチャーン率(キャンセル率)で割ります。したがって、1年に1,000万円支払った顧客がいて、粗利が300万円であり、1年間のキャンセル率が16%と予測される場合(顧客のタイプ別にキャンセル率を予測してください)、LTVは4,375万円になります。
LTVを計算した後、先ほど説明したCACをLTVと比較してください。たとえば、この顧客を獲得するために1,000万円を支出し、LTVが4,375万円であったとすると、LTV:CACは4.4対1になります。成長途中のSaaS企業などの場合、投資家や役員はこの比率を3倍かそれ以上にしたいと考えるでしょう。
この比率が高ければ、セールスやマーケティングのROIが高いことがわかるからです。ただし、高ければ高いほどよいというわけではなく、高過ぎる場合は、投資の追加を検討することをお勧めします。費用をあまりにも削減すると企業の競争力が低下し、成長にマイナスの影響が出る可能性があります。
4)CAC回収期間
新規の顧客を1人獲得するために使った費用(CAC)を、企業が何ヶ月で回収できるかを見るための指標です。CAC回収期間は、CACを顧客ごとの月平均売上額で割って算出します。顧客が定期的にではなく一度で支払いを終える企業では、その一度の支払いがCACの金額よりも大きくなるはずですので(そうでなければ赤字になります)、この指標は使えません。
一方で、顧客が製品やサービスに対して月額使用料、あるいは年額使用料を支払うタイプの企業では、この回収期間を12か月以内で終わらせるのが望ましいと思います。そうすれば、新規の顧客から1年以内に利益を得始めることができます。
5)マーケティングに起因する顧客の割合(%)
この指標では、マーケティング活動が発端となって顧客を獲得できたケースの割合を調べます。マーケティングに起因する顧客の割合(%)を算出するには、一定の期間に獲得した新規顧客の総数を出し、そのなかでマーケティングチームが獲得した見込み客が転換して顧客化したケースが何人いるかを調べます。
この指標はクローズドループ対応のマーケティング分析システムを使用すれば簡単に計算できますが、手作業で計算することも(非常に手間がかかりますが)可能です。
この指標の良いところは、マーケティングチームによる見込み客獲得の取り組みが、新規顧客の獲得にどの程度貢献しているかがはっきりとわかる点です。パーセンテージが高くなればなるほど、セールスと比較して貢献度が高いことがわかります。
この指標の値は企業によって大きく異なります。たとえば、セールスを外部に委託し、社内のセールスチームがそれをサポートするようなビジネスモデルであれば、20-40%程度になります。また、セールスを社外に委託せず、マーケティングが見込み客の獲得を中心に活動している場合は、40-80%程度が妥当でしょう。そして、何らかの理由でセールスに人員を配置しない企業では、この値は70-95%になります。
この割合は、新規顧客の数ではなく収益で計算することもできます。人数よりも売上金額を重視する場合は収益で計算してください。
6)マーケティングが関与した顧客の割合(%)
この指標は先ほどのマーケティングに起因する顧客の割合(%)とよく似ていますが、見込み客を獲得したというケースに加えて、セールスサイクルのいずれかの時点で、マーケティングが見込み客と何らかの対話をした、あるいはナーチャリング(育成)した、というケースもすべてカウントします。
たとえば、セールス担当者が見込み客を獲得したが、その見込み客がマーケティングのイベントに参加し、その後顧客化したという場合は、マーケティングが関与した顧客の1人として数えます。この割合は、マーケティングに起因する顧客の割合よりも必ず高くなり、ほとんどの企業で50-99%になると思います。
企業の重役、CEO、あるいは役員と、どのような指標を使って話し合いますか? 他にも重要な指標をご存知ですか? これらの指標に関してご意見をぜひお寄せください。