マーケティングチームにふさわしい人材を獲得するために、採用活動は何をどういう手順で進めていけばよいのでしょうか。
マーケティング活動を拡大する中では、さまざまな要素が作用しますが、特に優先して考えるべきは、マーケティングチームにどのような人材を迎え入れるかという点です。天才的なマーケティング戦略や最先端の技術があったとしても、その成否を左右するのは、結局は人なのです。マーケティングの構成を考えて、必要な役職を割り出したとしても、的確な候補者を見つけて採用するための効率的なプロセスを確立できなければ、よい結果は得られません(関連記事はこちら:How to Structure Your Content Marketing Team)。
私は、採用活動の成功例も失敗例も数多く目にしてきました。どの会社にもそのまま適用できる魔法のような手法はありませんが、この記事では、採用活動の7つのステップと、3つの鉄則をご紹介します。私自身の経験から言って、強力なマーケティングチームを構築するうえで絶大な効果があることをお約束します。
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採用活動の7つのステップ
1)社員からの紹介を促す
類は友を呼び、優れた社員は優れた社員を呼びます。既存社員からの紹介で候補者を獲得すれば、失敗の可能性は低くなります。
社員からの紹介を促進する方法の1つとして、大きな効果があるのが、報奨金制度です。私の経験上、ここでポイントとなるのは、紹介された候補者が採用に至った場合だけでなく、採用に至らなかった場合も、その労に報いることです。私が以前いた2社では、最終的に採用に至った人材を紹介した社員に報奨金を支給するだけでなく、紹介した社員全員を対象として毎月抽選を行い、豪華な賞品を贈呈していました。
検討に値する方法はもう1つあります。社員が自分のSNSアカウント(特にLinkedIn)で求人情報を手軽にシェアできるようにするというものです。自動でシェアできるようにしてもよいでしょう。採用支援ツールの中には、こうした機能を持つものがあります。オンラインで応募があったときに、どの社員からのつながりで応募に至ったのかを簡単に判別できるツールもあります。
プロの採用担当者の手を借りる必要がある場合には、ぜひその担当者を社内に迎え入れてください。会社の社風や活気を直接体験してもらい、社員に接してもらうことで、採用担当者の成果は驚くほど上がります。採用担当者をパートタイム契約で迎える予算しかない場合であっても、可能なときには会社に来てもらい、仕事をする場所を用意しましょう。
2)カバーレターは無視し、履歴書に集中する
この項目は、私の仕事仲間の間でも賛否両論がありそうですが、私自身は、この15年以上、カバーレターに目を通したことがありません。今後もその予定はありませんし、むしろ、カバーレター廃止運動を正式に立ち上げたいくらいです。候補者のやる気、文章力、経験を吟味する時間は、後でいくらでもあります。この段階では、候補者の一群から、話を聞いてみたい人を絞り込むのが先決です。
いわば、企業のサイトのトップページを開いたときと同じで、私としては、候補者のスキルと、会社に何をもたらしてくれるのかをざっと評価できれば十分です。それこそまさに履歴書の役割です。さらに言えば、必要な情報はすべて本人のLinkedInのプロフィールでチェックする、というくらいまで割りきってもいいと私は思っています。
私の業界の認識では、LinkedInに詳しいプロフィールを載せていない候補者は、それだけでかなりの危険信号です。そうなると、あらためて履歴書を作ってもらうのは二度手間ですから、履歴書もなくしてしまってはどうでしょう。候補者のLinkedInのプロフィールをチェックして、要件を満たしていることを確認し、その人が世界に向けてどのように自己マーケティングしているかを評価してみましょう。
3)電話面接を行う
直接話を聞いてみたい候補者が決まったら、電話かビデオ通話を使った30分間の面接をセッティングしましょう。この面接の主な目的は、コミュニケーション力を評価することと、最近の職務上のスキルを検証すること、そして、なぜ新しい仕事(あなたの会社の仕事)に就きたいのかを理解することです。
そのうえで、30分のうち15分は、質問を受け付ける時間にしましょう。どのような質問をしてくるかを聞けば、人となりがよくわかるはずです。
4)宿題を出す
募集職種に適任かどうかを判断するには、その仕事を実際に試してもらうのが一番です。本人の思考プロセスや、飲み込みの早さ、情報整理力、情報伝達力が如実に表れるはずです。
募集職種に関係する短い課題を編み出してください。たとえば、ブログ記事を1本書いてもらう、キャンペーンやリリース計画の素案を作ってもらう、などです。長い期間を必要とせず、鋭い思考力が求められるような課題がよいでしょう。それを、24~48時間(あるいは週末の間)で完成してもらいます。
5)優れた候補者を会社に招き、社員が面接する
電話面接にパスし、宿題の出来がよかった候補者は、次は会社に招いて、既存社員と面接してもらう段階です。候補者が入社した場合に直接のチームメートになる社員のほか、セールス担当や製品担当など、他部門の社員も交えましょう。私は、候補者に会う既存社員は4人程度がちょうどいいと考えています。7~8人を会わせたいのなら、グループ面接にするとよいでしょう。
面接時間は45分が理想です。それより大幅に短いと、核心に踏み込む前に時間が来てしまいます。面接にあたる既存社員には、候補者が提出した宿題を見てもらい、面接の場で話ができるようにしておきましょう。そこから興味深い議論を展開したり、内面を探ったりできるかもしれません。
また、面接を担当する一人ひとりが、それぞれ別々の分野に焦点を当てるようにしましょう。手始めとしては、こちらの記事の質問例を参考にしてみてください(関連記事はこちら:HubSpotのCMOによる、マーケター採用面接の質問および模範解答10例)。
6)照会先を確認する
照会先(リファレンス)を必須とする最大の理由は、候補者を推薦してくれる照会先が本当にいるのかどうかを確かめることにあります。私は、通常は3人の照会先を要求しますが、実際に連絡を取るのは2人です。また、複数の照会先を織り交ぜて記載してもらうとよいでしょう。たとえば、元上司、元同僚、元勤務先などです。
候補者本人が選んだ照会先だけに、候補者をほめてくる場合がほとんどですが、少しばかり掘り下げるために、本人の弱点や、改善の余地がある点を尋ねてみるとよいでしょう。その人をもう一度採用したいと思う理由や、また一緒に仕事したいと思う理由を尋ねたり、仕事でのエピソードを聞いたりするのも手です。
さらに、もし可能であれば、候補者本人が挙げた以外の照会先を独自に探すのもよいでしょう。つまり、あなた自身や既存社員とつながりがある人の中で、候補者と共に仕事した経験がある人を探し出し、連絡を取ってみるということです。面接で出た話題や実績について、別の観点から捉えることができます。
7)本人の懸念を解消する
内定を出したいと強く感じる候補者は、最終面接に招きましょう(電話面接も入れて、面接は計3回ということになります)。最終面接の目的は、候補者が抱いている懸念や疑問をすべて解消することです。この時点では、入社するよう説得したり懇願したりすることは通常は必要ありませんが、多少のアピールの姿勢は必要です。
CEOなどの幹部と顔を合わせてもらう時間もできれば確保しましょう。社員特典を大きく取り上げたり、オフィスを案内したりするのもよいですし、お茶やランチにも誘ってみましょう。そして最後に、内定の申し出や採用決定について話し合いましょう。
ここまで説明してきた採用活動の流れを基本的な枠組みとして、独自のアレンジを加えていけば、大いに効果が上がると思います。しかし、どのようなアレンジを加えるにせよ、以下の鉄則を忘れてはいけません。
採用活動の3つの鉄則
1)人柄が悪い人は採用しない
「頭はいいが人柄が悪い奴を大目に見てはいけない。チームワークに与える代償が大きすぎる」。NetflixのCEO、Reid Hastings氏の名言です。
私もまったく同感です。人柄が悪い奴は採用するな、などとは、当たり前のアドバイスに聞こえるかもしれませんが、人格的な欠陥を不問に付して、本人の経験、頭の良さ、人脈を過大に評価してしまうケースは、実によくあります。しかしその結果、チーム全体に致命的な悪影響が及ぶかもしれません。性格や人柄に難がありそうな雰囲気が少しでもあったら、手を引くのが賢明です。
2)50/50ルールを適用する
1)の延長線上にあるのが「50/50ルール」です。採用に関する決定では、スキルに関する判断は50%とし、残りの50%は、チームへの適合度や人柄を判断するというものです。
候補者が会社の文化にうまく適合するかどうかや、会社にどのようなプラスをもたらすかを判断しましょう。チームメートと力を合わせて、うまくやっていけそうでしょうか。一緒にいて楽しいでしょうか。一緒にいて楽しい、という判断基準を甘く見てはいけません。同じ職場で長い時間を共に過ごす相手ですから、それが実際に楽しい時間になれば、生産性も上がるはずです。
3)ニッチなスキルよりも、オールラウンドのスキルとやる気を評価する
プロのスポーツチームが新人選手を獲得するときに、特定の穴だけを埋めるスペシャリストではなく、運動能力に優れた人を獲る、という話を聞くことがあります。マーケティングでも同じ考えは成り立ちます。基本原則としては、特定の経験があるかどうかや、幅の狭いスキルを極めているかどうかよりも、オールラウンドのスキル、知力、やる気に重きを置くのが私の信条です。
この原則が当てはまらない場合もあります。たとえば、予算の大部分を検索広告にあてるときには、その分野で豊富な経験を持つ人が必要かもしれません。しかし一般論としては、成長著しいマーケティングチームでは、ニーズの変化、市場環境の変化、技術の変化に社員が随時対応しなくてはいけないはずです。
必要なのは、その環境で優れた成果を上げられるフレキシブルな人です。野球で言えば、走攻守の三拍子が揃った選手が望ましいのと同じで、マーケティングでも、ブログ執筆、ソーシャルメディア、PR、SEO、ウェブマーケティングと、柔軟に役割を変えられるマーケターが必要かもしれません。
あなたの会社がどのような業種で、現在どのような成長段階にあったとしても、人材を採用してトップクラスのマーケティングチームを構築するうえでは、さまざまな困難に直面するはずです。今後の採用活動の指針として、あるいは、これまでの採用活動を見直すチェックシートとして、今回の記事が参考になれば幸いです。
編集メモ:この記事は、 2014年11月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。J.D. Petersonによる元の記事はこちらからご覧いただけます。