マーケティングに投じる予算を増やさずに、成果を増やしたい━━そんな願いを叶えられる方法があります。それが共創マーケティングです。複数の企業がタッグを組んで、力を合わせることによって、作業の手間を減らしながら、多くの報酬を得ることができます。
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この記事では、これから共創マーケティングを始める人のために、共創マーケティングのキャンペーンを立ち上げて成功へと導くまでの手順を、詳しく説明していきます。
共創マーケティング
ここで言う共創マーケティングとは、企業2社が共同でプロモーション活動を進め、両社のブランドを冠したオファーを制作することです。共創マーケティングで協業する2社は、同じコンテンツや商品をプロモーションし、その成果を分かち合います。互いの協力関係とリーチを生かして、見込み客、話題性、認知度を高めながら、作業の負担を減らすことができます。
共創マーケティングと共創ブランディングの違い
先日の記事で共創ブランディングに関するに関する記事をご紹介しました。「共創マーケティング」と「共創ブランディング」という言葉は、何度か聞いたことがあると思います。でも、この2つに意味の違いはあるのでしょうか。
結論から言えば、両者はとてもよく似た意味合いです。
共創ブランディングとは、企業2社がそれぞれの商品や得意分野を組み合わせて、付加価値のある商品やオファーを開発する提携です(米国の例としては、DoritosとTaco Bellがコラボした「Doritos Locos Tacos」があります)。一方、共創マーケティングは、さらに1歩先まで行くものです。
共創マーケティングのキャンペーンでは、2社が互いに協力して、共通のオファー(たとえば共同ブランドの商品やコンテンツなど)をプロモーションします。そして、プロモーションの結果を分かち合います。
共創マーケティングの効能
共創マーケティングの効能は、新たなオーディエンスを獲得できることと、新たな種類のコンテンツをオーディエンスに提示できることです。共創マーケティングの形態で最も多いのは、同じようなオーディエンスを持つ2社が力を合わせて、コンテンツを共同で制作し、そのコンテンツを両社のオーディエンスにプロモーションするというものです。
こうして共同制作したeBook、ウェブセミナー、テンプレートなどのコンテンツを、リードジェネレーションのフォームからダウンロードできるようにすることで、見込み客の連絡先情報を入手するという形態が一般的です。その成果を両社で分かち合えば、通常より2倍の見込み客を獲得できることになります。
しかし、共創マーケティングキャンペーンの形態はそれだけではありません。ほかにもたとえば、パートナー2社がイベントを共同開催して費用を折半するという方法もあります。あるいは、もっと小規模なものなら、パートナー同士で互いのサイトにゲストブログ記事をいくつか寄稿し合うという方法もあります。
共創マーケティングの相手となるパートナーを見極める段階で何より重要なのは、プロジェクトの狙いと目標が両社で似通っているかどうかです。1社は見込み客を獲得したいと思っているのに、もう1社は年次イベントのチケットを売りたいと思っているようだと、両方のニーズを満たすプロジェクトを探り当てるのに苦労するはずです。
パートナーと共創マーケティングを行うかどうかを決めるときには、私は以下の点を検討します。
- 先方が持つオーディエンスは、当社が持つオーディエンスや、当社が拡大したいと考えているオーディエンスと似ているだろうか? そこが異なるようなら、先方のオーディエンスにコンテンツをプロモーションしても、労力に見合った成果は得られないかもしれません。
- このパートナーシップで新たに得られる見込み客はどの程度か? 時間と労力に見合った数か? その数が具体的にいくつなのかは、各社の判断次第です。
- 当社にはない専門知識や経験が先方にあるか? たとえば、私のオーディエンスがローカルSEOの詳しい手法を知りたがっているときに、私の知識が一般的なSEOに限られているとしたら、ローカルSEOの専門家とパートナーを組むのはありかもしれません。
- 先方のブランドや社名は評判が良いか? 自社の評判が下がるような相手とパートナーを組んではいけません。
- 先方の担当チームの面々は、一緒に仕事をして楽しい人たちか? この項目は最近付け加えたのですが、重要なポイントです。共創マーケティングは、いくら仕事とはいえ、やはり楽しさは必要です。一緒に仕事をするのが楽しみと思えるパートナーを探しましょう。
共創マーケティングのパートナーを的確に見つける方法
共創マーケティングでは、両社が協力することで互いに利益が得られる関係かどうかが肝心です。
この企業と組みたい、という相手が決まったら、次は先方に提案するアイデアを考えます。この段階に臨むときには、まず「宿題」を済ませておきましょう。つまり、相手企業とそのオーディエンスについて勉強し、先方が魅力的と感じるようにアイデアを調整したうえで、自社がどのような価値を提供できるかを先方に提案します。
提携を申し入れてアイデアを提案する側の企業に比べて、先方のほうが大物という構図になることは多々あります。この場合、先方は簡単にノーと言える立場です。それを阻止するには、最後のひと頑張りが大切です。提携しないのは大間違いだ、と思ってもらえるようにしましょう。
逆に、提携の申し入れを受ける立場のときには、オープンな姿勢でアイデアを歓迎しましょう。相手が自己アピールのプロでなかったとしても、頭ごなしに軽くあしらってはいけません。まったく非現実的な話だったとしても、誠実な態度で接しましょう。
また、アイデアそのものは興味深いけれども、今すぐプロジェクトに取りかかるのは難しい、という場合には、いずれ協業したい企業のリストに加えておくとよいかもしれません。
共創マーケティングの合意書作成
こうしてパートナーが見つかったとします。次に何をすればよいでしょうか。
物事を円滑に進めるためには、プロジェクトの目標点と計画を明確に定めておくことが重要です。両社が責任を持って互いの約束を果たすことにつながります。次のようにしておくことをお勧めします。
- 目標をとことん明確にしておく。 あなたの会社が見込み客の獲得を目指すのなら、先方にもそのことを伝え、先方も見込み客の獲得を目指すようにしましょう。そうしておかないと、両社とも提携から価値を得られなくなってしまいます。
- コンテンツのトピックとテーマについて合意しておく。 両社に利益をもたらすトピック、両社のオーディエンスが魅力を感じるトピックを選びましょう。
- 両社にとって妥当なスケジュールを決める。 eBookやウェブセミナーなど、規模が大きめのコンテンツを手がける場合は、自社のチームが単独で制作する場合の2倍の時間を取ることをお勧めします。そうすれば、承認やフィードバックのための時間を確保できます。
- 互いの得意なスキルを判断する。 両社やそのチーム同士を見比べると、この作業はこちらの方が得意、という違いがおそらくあると思います。得意分野に基づいて作業を割り振れば、途中の苦労が減り、はるかに効率が上がるはずです。
- 以下のような基本事項を網羅した合意書を作成しておく。
- 取り上げるトピック
- プロジェクトのスケジュール
- 目標
- コンテンツやアセットの管轄(誰が何を制作するか)
- コンテンツをホスティングする場所
- 見込み客の共有に関する合意
- プロモーションのスケジュール
- プロモーションの計画
最初の時点で合意書を作成しておけば、何か問題や食い違いが生じたときでも、立ち戻る場所ができます。法務部門が関与を求めるようであれば、法務文書にしてもよいですし、互いの誠意に基づいて、法務文書でない形にしても可です。
共創マーケティングのコンテンツ制作の進め方
次は、どのような種類の共創マーケティングプロジェクトを進めていくかを決める段階です。足がかりとして、よくある例を以下にいくつか挙げておきます。
プロジェクトの形式
eBook
共創マーケティングのコンテンツとして、eBookは典型的な例です。この人はレイアウト担当、この人は文章担当、といった形で、作業を分担しやすいからです。下の例は、HubSpotがLinkedInのセールス ソリューション チームと共同制作したeBookです。
ブログ記事
ブログ記事の共同制作は、あまり手間をかけずに実践できる共創マーケティングプロジェクトの1つです。下の例では、SEMrushのサイトにあるQ&Aに、BuzzsumoのディレクターのSteve Rayson氏が登場しています。
ウェブセミナー
ウェブセミナーも、共創マーケティングでよく頼りにされるタイプのコンテンツです。なぜなら、自分の専門分野の話題について1時間話しても構わない、という専門家は簡単に見つかるからです。ウェブセミナーは、教育用コンテンツのフォーマットとしても高い認知度があります。
下の例は、HubSpotが実施したウェブセミナーです。ソーシャルメディアに効果的な投稿を行う方法について、Guy Kawasaki氏とPeg Fitzpatrick氏が解説しています。
動画
パートナーと共同で動画を制作するのも、メッセージを届ける素晴らしい方法のひとつです。下の例は、MOZとWistiaが協力した動画で、動画制作に関するヒントを紹介しています。
Twitterでの対話
人々が集まって、共通の話題について対話する仮想イベントです。たとえば、GoogleとTwitterは、スモール ビジネス サタデーに関するキャンペーンを共同で実施しました。同日に至るまでの1週間に、共通のハッシュタグを使って有益なアドバイスをTwitterに投稿したうえで、すべてのツイートをこちらのウェブページにまとめました。
オンラインとオフラインのイベント
共創マーケティングとして、大規模なイベントを行う場合もあります。オンラインとオフラインのどちらのイベントもありです。たとえば、2015年にUnbounceが初めて開催した#CROdayというイベントでは、世界各地の専門家が、CROに関するオンラインイベントやウェブセミナーを開催しました。
プロジェクトの準備と遂行
まずは下準備
共創マーケティングのトピックと形式が決まったら、まずは、頭の中のアイデアをすべて洗い出して、計画の概略を決めるための共有ドキュメントを作成しましょう。私の場合は、最初からGoogleドキュメントを用意して、提携相手と共有します。そして、先方が持つ有益なコンテンツを載せてもらったり、先方が加えた内容にコメントを記入したりします。期間としては、両社のチームが1週間程度をかけてアイデアを練り上げましょう。
コンテンツ制作
概略について両社が合意したら、いよいよライターが参加して、コンテンツの制作に取りかかります。私の場合は、1社が文章担当、もう1社がデザイン担当、という形で、コンテンツ制作を役割分担して、内容とデザインの一致を図るのが通例です。もう1つの方法としては、両社がeBookを半分ずつ担当して、それぞれ文章とデザインの両方を作成したうえで、両者を合体するというやり方もあります。こちらの場合、それぞれの担当部分を合体する段階で、整合性を綿密に確認する必要があることは頭に入れておいてください。
最初の草稿が完成したら、相手に送り、フィードバックや承認を求めましょう。フィードバックの期間が十分に確保できるように、それぞれの期限を設定してください。私の場合、早い段階で計画を立てられたときは、フィードバックの期間を1週間確保するのが普通です。
コンテンツが完成するまでの期間
コンテンツの中身が確定してから完成するまでの間に、コンテンツのプロモーションに必要なアセットの制作をプロモーションチームに始めさせましょう。具体的には、ランディングページ、Eメール、ソーシャルメディア用画像、インフォグラフィック、スライド、ブログ記事などのアセットの制作です。パートナーとの共同制作は、通常のコンテンツ制作より期間がかかりますので、早めに取りかかる方が、プロモーションチームの時間を節約できるはずです。
ここからは、ランディングページの制作とプロモーションの方法について説明していきます。
共同のランディングページの制作方法
コンテンツだけでなく、ランディングページも共同ブランドにしましょう。それも、ひと目でわかるように、ヘッダーに両社のロゴを載せ、ページ全体を通して両社に言及してください。
オファーをダウンロードした見込み客の情報も、2社で分かち合うことになりますので、フォームの末尾に記載する但し書きについて、法務部門に相談する必要があります。たとえば、当社の場合は、eBookをダウンロードする際に利用者が入力する情報について、当社が特定のパートナーと共有する権限を有する、という旨を記載しています。
また、マーケティング オートメーション ツールの中で既存のページと区別して管理しやすくなるよう、共同ブランドのページの名前に独自のコードを付ける方法を考えておきましょう。その方が、内部検索でも見つけやすくなります。
プロモーションの方法
プロモーションの開始日を設定して、パートナーと合意しておくことは重要です。その日から両社のチームが、Eメールキャンペーン、ソーシャルキャンペーン、ブログでのプロモーションを開始します。
開始日の2~3週間ほど前に、両社のチームの関係者全員が参加するブレーンストーミングを実施して、プロモーションの施策や実施期間について話し合いましょう。両社がTwitterで同じハッシュタグを使うかどうかや、どのようなオーディエンスを対象にするかなども考えておきます。
以下に、インバウンドマーケティングの各種チャネルでコンテンツをプロモーションする方法の例を紹介します。
ブログ記事
共創マーケティングのオファーにトラフィックを呼び込むうえで、ブログ記事は優れた方法の1つです。HubSpotの場合、ブログでのコンテンツのプロモーションは2つの方法で行っています。1つは、プロモーションの開始日に投稿する「ローンチ記事」というものです。通常の解説記事とは違って、数百ワードしかありません。興味深い新しいオファーの告知だけを目的とした記事です。
期待を持たせられるよう、記事のタイトルでもオファーに言及します。
ブログ記事でコンテンツをプロモーションする方法の2つ目は、そのままツイートできるテキストや、人目を引くCall-To-Action(CTA)を使う方法です。
ソーシャルメディア
キャンペーンの認知度を高めて、サイトへの訪問を促すためには、ソーシャルメディアでコンテンツをプロモーションすることも効果的です。価値を高めるために、ツイートの中で共創マーケティングのパートナーに言及したりタグを付けたりすることも忘れないでください。下の例は、ホリデーシーズンのマーケティングのベストプラクティスについてTwitterとHubSpotがウェブセミナーを実施したときに、Twitterがプロモーションとして投稿したツイートです。
さらに、画像自体に両社のロゴを入れる手もあります。上と同じウェブセミナーのプロモーションで、HubSpotは次のようなツイートを行いました。
Eメール
共創マーケティングのイベントに大勢の参加者を呼び込んだり、コンテンツのダウンロードを促したりするうえで、Eメールは現在でも最善の方法の1つです。ポイントは、ビジュアルなEメールにすることと、これが共創マーケティングである(つまり2社が絡んでいる)と明確にしておくことです。
突然両社からメールが届くようになって利用者が驚く、という事態はぜひとも避けなくてはなりません。下の例は、HubSpotがUnbounceと共催したウェブセミナーで送信したプロモーションのEメールです。
両社のプロモーション活動を比較対照してトラッキングできるよう、それぞれ固有のトラッキングURLを作成しておいてください。どの見込み客がどこから来たかを見極めやすくなります。
共創マーケティングの成果の測定方法
キャンペーンを立ち上げて、プロモーションも始めたら、まずはその時点までの取り組みを振り返って、成否を測りましょう。
まず肝心なのは、当初の目標を達成できたかどうかです。達成できなかったとしたら、何が問題だったのでしょうか。自社とパートナーのどちらが達成できなかったのでしょうか。同じパートナーと再び組むかどうかを考えるときには、こうした点を念頭に置きましょう。
次に目を向けるのは、このキャンペーンで獲得した見込み客の質についてです。自社でコンテンツを単独制作した場合の見込み客と比べてどうでしょうか。ここで考慮すべき項目は、見込み客から顧客へのコンバージョン率、オートメーションツールとCRMでの質の評価、見込み客の水準に関するセールスチームの印象です。
最後に、一呼吸置いて、質的な面を測定してみましょう。このパートナーシップは成功だったでしょうか。先方との共同作業は進めにくかったでしょうか。それとも、円滑に進んだでしょうか。自社だけでは難しい高品質のコンテンツを制作できたでしょうか。何がうまくいき、何が失敗したでしょうか。
共創マーケティングのパートナーへのフォローアップ
プロジェクトが進行中の段階(あるいは完了した段階)で、パートナーに対するフォローアップを行いましょう。
自社のウェブサイトでランディングページをホスティングしたのであれば、合意書の規定に従って、フォームで得られた見込み客の情報をパートナーに送るためのアクションを起こしましょう。たいていは、見込み客のリストをCSVファイルとしてデータベースからダウンロードするのが一番簡単です。手作業の工程をもっと減らしたければ、Zapierなどのツールを使って、自社のマーケティング オートメーション プラットフォームから、特定の見込み客の情報をパートナーに送るという方法がお勧めです。
そこをきちんと済ませたら、その後も連絡を取り合いましょう。同じパートナーとの共創マーケティングをいくつも続けて行うことは、通常はあまり意味がありません。しかし、今後いつか、再びタッグを組む機会がやって来る可能性はあります。
編集メモ:この記事は、2016年1月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Amanda Sibleyによる元の記事はこちらからご覧いただけます。