日本国内のスタートアップ界隈は年々勢いを増しているようです。2020年に資金調達を行ったスタートアップ企業は1,686社に達しており、10年前の1,050社に比べて1.6倍程度に増えています。
スタートアップに流入する人材も、若手だけではなくなりつつあります。大企業で経験を積んだ人材がスタートアップ企業に転職し、企業の成長に貢献するケースも増えるなど、多くのビジネスパーソンのキャリアパスの選択肢にもなっています。
大手企業・ベンチャー企業とスタートアップ企業とでは何が違うのか、スタートアップ企業で働くメリットとはどこにあるのでしょうか。本記事で確認していきましょう。
事業計画書テンプレート
企業情報や製品の説明の書き方、売上やマーケティング目標と計画の設定内容、法的考慮事項など、事業計画書に記載すべき項目をすべてをまとめました。
- 営業に有利となる会社情報の書き方
- 成功するための目標と測定基準の設定方法
- 製品詳細や競合優位性の説明方法
- 順調なスタートを切るために必要な財務予測
今すぐダウンロードする
全てのフィールドが必須です。
「スタートアップ企業」の定義とは?
まず、「スタートアップ企業」とは何かを考えてみましょう。現状、明確な定義づけがあるわけではないのですが、世の中で「スタートアップ」の枠組みで語られる企業の共通点を見ていくと見えてきます。ちなみに、PayPal(ペイパル)の創業者ピーター・ティールは、著書『ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか』の中でスタートアップ企業を以下のように表現しています。
「スタートアップ企業は、新しく起業したベンチャーの中でも特に、テクノロジーによるイノベーションによって新たなビジネスモデルを作り、ベンチャーキャピタルなどからの資金調達を元手に急成長を目指して、株式公開や大企業による買収を狙うもの」
引用:ピーター・ティール; ブレイク・マスターズ 「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」 より
テクノロジーを駆使し、社会にイノベーションをもたらす存在を目指すのは、確かに多くのスタートアップ企業に共通するところでしょう。ただ、それだけではありません。
スタートアップ企業に共通する特徴
多くのスタートアップ企業は、創業後数年以内にベンチャーキャピタルや個人投資家から資金調達を実施しています。ベンチャーキャピタルとは、未上場企業に投資し、株式上場後の株式売却益や他企業への事業売却益を獲得することを目的とした業態です。
資金元はベンチャーキャピタルの自己資金か、ファンド(投資事業組合)を設立して投資家から資金提供を受ける場合があります。ファンドの場合は運用期間が定められており、期間内に利益を出し、出資者に還元することが求められます。
このように、創業間もない時期に、ベンチャーキャピタルから資金調達を実施している点が、スタートアップ企業の大きな特徴と言えるでしょう。
ベンチャー企業の定義は?
では、スタートアップ企業と混同されがちなベンチャー企業の定義はどうでしょう。ベンチャー企業も明確な定義が設けられているわけではないので、共通項を探ってみましょう。
国内でベンチャー企業の枠組みで語られる企業の成り立ちを見ると、テクノロジーを駆使ししてイノベーションをもたらす、ベンチャーキャピタルから資金調達を実施し急成長を遂げているなど、現在のスタートアップ企業とそれほど大きな違いはありません。
両者の違いは曖昧で、強いて言えば設立時期で分けられると推測できます。「スタートアップ」という言葉自体はアメリカでは一般的に利用されていたところから、国内では2010年頃から徐々に普及し始めています。スタートアップという言葉が普及する以前はベンチャー企業と呼ばれていました。
他方で、これも区分は曖昧ですが、設立年数と企業規模によって使い分けられることもあります。設立後ある程度の年数が経ち、一定規模に成長した企業はベンチャーと呼ばれることもあります。
スタートアップ企業とベンチャー企業の共通点は?
スタートアップ企業とベンチャー企業にはさまざまな違いがある一方で、共通点もあります。
ビジネスの視点やキャリアの幅が広がる
スタートアップ企業もベンチャー企業も創業年数が浅いため福利厚生や社内制度、評価制度などが大企業に比べると充実しておらず、組織体制も明確になっていないことも少なくありません。しかし、組織体制が不安定であるからこそ、専門職に特化した業務ではなく、横断的に業務を経験することで、ビジネスの視点やキャリアの幅が広がるというメリットもあります。
スタートアップ企業もベンチャー企業も人数が少ないため、個人が抱える業務内容が多岐にわたります。そのため、個人による裁量が大きいと言えるでしょう。
スタートアップ企業の事例
ここでは、国内の代表的なスタートアップ企業について解説します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、フリマアプリ「メルカリ」を運営するスタートアップ企業です。2012年に「株式会社メルカリ」は創業され、約7172億円以上の時価総額で2018年6月にマザーズに上場しました。
さまざまな競合アプリがある中で、大型の資金調達を複数回行い、テレビCMやカスタマーセンターの設置を行うことなどで急成長を遂げています。
freee株式会社
クラウド会計ソフト「freee」を運営しているfreee株式会社は、2012年7月に設立され、2019年12月に設立から約7年で上場している国内スタートアップ企業です。
freee株式会社は「スモールビジネスを、世界の主役に」をミッションとして、個人事業主や法人の開業や帳簿手続きや会計管理を簡単にすることを実現しています。アメリカ大手のベンチャーキャピタルやリクルートホールディングス、fintechファンドから資金調達を行い、クラウド会計ソフトのパイオニア的存在として急成長を遂げています。
スマートニュース株式会社
スマートニュース株式会社は、ニュースアプリ「Smart News」を運営しているスタートアップ企業であり、2012年6月15日に創業された非上場企業です。
スマートニュース株式会社は、今やグローバル展開して成功を収めた企業ですが、もとはスタートアップから始まりました。「世界中の良質な情報を必要な人に送り届ける」をミッションとして、ニュース配信プラットフォーム「Smart News」ではAI技術を駆使し最適化されたニュース記事を収集できます。これまで大型資金調達を重ね、2021年には251億円の資金調達を実施し、累計調達額は443億円に登ります。今回の調達ではアメリカを拠点とするPrinceville CapitalやWoodline Partnersが新規参画。日本のスタートアップ企業の中でも、海外で成功を収め投資対象として評価された稀有なケースと言えるでしょう。
ベンチャー企業の事例
ここでは日本のベンチャー企業について解説します。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、広告代理業やゲーム事業を基盤事業とした国内有数のベンチャー企業です。1998年に創業し2014年には東証一部上場企業となっています。
同社は「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンに掲げ、広告代理業などの基盤事業で得たキャッシュをもとに、「アメーバブログ」や「AbemaTV」などさまざまな新規事業を立ち上げています。
株式会社Speee
株式会社Speeeは、アドテクノロジーやデジタルマーケティングなどを基盤事業としたベンチャー企業です。2007年に創業し、2020年には東京証券取引所JASDAQ市場に上場を果たしています。
「解き尽くす。未来をひきよせる」をビジョンとして掲げ、デジタルマーケティング業などの基盤事業で得た利益をもとに、海外での事業展開や不動産などの国内レガシー産業におけるDX事業を展開しています。
ベンチャーキャピタルなどからの資金調達はなく、自社事業で得た資金をもとに事業を展開しています。
株式会社スタートトゥデイ
株式会社スタートトゥデイは、インターネット上のCD・レコードの輸入販売サイトを初期事業として、現在ではアパレルECサイト「ZOZOTOWN」を運営するベンチャー企業です。
株式会社スタートトゥデイは1998年に設立され、2012年には東証一部に上場を果たしています。企業理念を「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」として掲げ、ファッションとテクノロジーをかけ合わせながら、ECサイト運営で得られる利益をテクノロジーへと投資しています。
創業当時は珍しかったファッション系のECサイトでしたが、インターネット上のCD・レコードの輸入販売サイトで得た資金をもとに成長させ、国内最大級のファッション系ECサイトにまで成長させてきました。
イノベーションは、より高い価値提供を目指す組織だからこそ実現できる
スタートアップ企業は、イノベーションを伴う急成長が求められ、事業フェーズによって必要な人材も変わってきます。
当社HubSpotも、2006年アメリカのボストンでマーケティングツールを提供する小さなスタートアップ企業として誕生しました。当初はブライアン・ハリガン、ダーメッシュ・シャアの2名だけが在籍していましたが、2021年現在ではグローバルで4,000名を超える従業員が在籍し、顧客数は12万社を突破する規模にまで成長しました。
私たちHubSpotは、創業当初からインバウンドの思想を提唱しており、顧客に寄り添ったビジネス活動を実現するためのテクノロジーを追求してきました。
そして私たちと同じように、顧客に対してより高い価値を提供したいと考えているスタートアップを支援したいと考えており、起業家の成長に少しでも貢献できるよう、支援プログラム「HubSpot for Startups」を設けています。共感された方はぜひお気軽に問い合わせてみてください。
スタートアップは、イノベーションを実現した先により良い世界を見据えているかどうかが成功の分かれ目であり、その想いの強さはそのまま、周囲を巻き込む力と比例するでしょう。これからスタートアップを立ち上げたい、または転職しようと考えている方は、まずは自分は世の中に対してどのような価値を提供したいのかを考えてみましょう。